俺は《戦士 ガイ》。我らが祖国《ツヴァイ》では《ナイス・ガイ》のダサい二つ名で通っている、国お抱えの専属傭兵だ。主な得意武器は剣と槍。未来あふれる20代前半にして勇者パーティの新メンバーでもある。
そうとも、打倒魔王を目的に掲げる勇者パーティへと
最初は、リーダーである《勇者 アルス》[*1]。年齢は15~16くらいだろうか[*2]。見た目はなんか全体的に
正直なところ頼りないが、戦闘力は悪くはない。勇者殿は剣と各種呪文をそれなりに扱うことができる、いわゆる《魔法戦士》の類いであり、万能・汎用といえば聞こえは良いが、悪くいえば半端者だ[*4]。
事実、パーティメンバー全員を足して割ったような能力の持ち主といえる。だからこそ、前衛専門である俺を仲間に引き入れたのだろう。
次に、パーティの主力である《魔術士 ソフィーリア姫》[*5]。隣国《アイン》のお姫様だ。姫さんは呪文攻撃特化のバ火力なので回復や補助は出来ない。外見は
最後に、パーティの命綱である《僧侶 セシリア》。我らがセシルちゃん。穏やかな性格で人懐っこい女の子だ。少々気弱なところもあるが、細かな気配りや気遣いが出来るのも
見た目はペド……ロリ。声も幼い感じだし最初は年齢一桁かな、と思っていたんだが、なんと勇者殿と
そんなセシルちゃんは見た目どおり物理・呪文ともに攻撃力は皆無で、呪文による回復や補助しかできないが、限定的な状況判断力に優れていて適切な支援をくれる有能ちゃんだ。姫さんともほぼ真逆の子。
だが、か弱い。その優れた支援能力の代償とでも言いたげに、か弱い。小盾すら持てないって……。幼い風貌も合わさって、腹パンしただけで死んじゃいそうな気がする。体力的な意味では俺の真逆とも言えるか。
モンスター共もそれが判っているのか、戦闘となると優先的に彼女を狙ってくる。そうでなくとも敵の回復役は邪魔だしな。そりゃ狙いもする。俺だってそうする。
要するに、セシルちゃんは俺の最優先護衛・保護対象だ。勇者殿ひとりじゃ前衛の手が足りないからな。
以上の面々が、誉れある勇者パーティのメンバーたちなのだが……。
やっぱり、このパーティは色々とおかしい。
ハッキリといおう。勇者殿と、勇者を送り出したアイン国の王族ってバカなの?
不敬罪? 名誉毀損? 知るか。そんなもの、口に出さなければ何も問題はない。
姫さんってホントなんなの? 呪文攻撃力の高さは俺も認めるところだけど、一国の姫が護衛も付けずにホイホイと城の外を出歩いたらダメだろ[*9]。敵はモンスターだけじゃないんだぞ[*10]。魔王という人類共通の敵が居るからって人間が安全だとか思っているのか? そうだとしたら、大変おめでたい頭をしていらっしゃると見える。
魔王が台頭し、モンスターが
せめて見た目だけでも忍んでほしい。高そうな格好しやがって。どうぞ襲ってください、って言っているようなものだぞ。アホか。ただでさえモンスターの脅威だってあるというのに。
ノブレス・オブリージュ……だったか。王族としての義務を果たそうとする姿勢は立派だと思うけど、あんた、やり方を間違えてんぞ。高貴な身分に在らせられる尊いお方が最前線にお立ちになられるとか普通に迷惑です。責任ある立場だというのなら安全地帯で構えていてくださいな。あんたが怪我をしたら誰が責任を取ると思ってんの? 現場のヤツらだよ。
ついでにこの姫さん、性格もいわゆる
しかもだな、他国のとはいえ民に当たるとか王族としてダメだろ。最低だぞ。民は国の宝なんだぞ。
勇者殿、お前の
そっちはノブレス・オブリージュっていうけど、こっちはギブ・アンド・テイクがしたいんだよ。勇者パーティの性質上、そんなことは期待できないけどな。クソが。
まあ、アイン国は勇者輩出国だし、調子に乗っているんだろうな。あとは各国への示威行為みたいなものもあるのだろうか。国同士の関係って、どこか下に見られたらお終いなところあるし。だからって、これはないが。
頭に回るはずだった栄養がご自慢のお胸にお回りになっていらっしゃるのでしょうかねぇ。おかげさまで巨乳嫌いが加速して反比例的に貧乳に傾いてロリコンになりそうだよ。姫さんは俺に特殊性癖を持たせたいの? なんか俺に恨みでもあるの? なんなんだよ。
パーティ人数もおかしい。なんだよ、3人だけって。純前衛枠の俺を入れても4人だぞ。古来より、数は力だって決まってんだろ[*11]。どうして《国》という枠組みがあると思ってんだ? これじゃあ、勇者一行というより暗殺者一行だろ。少数精鋭のつもりなの? (生存)戦争なめんな!
魔王は世界中・全ての国々・全人類に対して宣戦布告をしてんだぞ。万をゆうに超える軍団戦力(推定)を所持しているんだぞ? 月一で大襲撃をかましてくるくらいだっていうのに、そんな一大勢力の親玉を倒すのに、たったの4人で挑むとか、なんなの?
敵は強大だから暗殺って手段を取るのも解らなくはないけど、それって勇者的に
だがそれを指摘したら逆に俺が非難されそうだから何も言わない。古来より、口は災いの元、って云うし。勇者殿は人類の希望扱いだ。そんな勇者殿を惑わしたらどうなる。仮にも《離間の策を講じようとした魔王軍の間者》扱いなんてされたら社会的に死ぬ。
そして俺は名も顔も知らぬ人々から石を投げつけられ、やがて投擲術を極めた人類が魔王軍と対峙する場面を突拍子もなく思い付いてしまうくらい死ねる。しかし残念なことに、俺はそこまで自己犠牲にあふれてはいない[*12]。
そんな誇大被害妄想を抜きにしてもだ。姫さんって性格キツイし、絶対ツッコんでくるだろ。判ってんだよ。セシルちゃんも、やたらと勇者殿のカタを持つし。……あれ? 同じパーティなのに、俺に味方が居ない……。
…………。
パーティ構成も
せめて勇者殿が《探索技能》を持っていたら良かったんだがな……。魔王軍の拠点とかダンジョン内に無造作に置いてあった宝箱をいきなり開けたときは驚いた。たまたま罠が無かったからいいけどよ。無用心過ぎんだよ。少しは怪しめ。どう考えても不審物だろ。仮に毒矢の罠が仕掛けてあったとして、俺や勇者殿は避けられても後衛2人に刺さったりでもしたら、どうすんの? あの子たち、ワクワクとした顔で後ろから覗き込むのマジで止めてほしい。心臓に悪い。
これについては、たぶん、今まで罠付き宝箱と遭遇することがなかったんだろうな[*14]。だから勇者殿も「これ以上はパーティ人数は増やさない」とかトチ狂った事を言い出したんだろうし。曰く「あまり人数が増え過ぎても身動きが取り難くなる」んだとか。確かにそれは一理ある。人が増えるほど意見も増えるし割れやすくもなるし、隠密性や機動性といったものが損なわれてしまうしな。……やっぱり、暗殺者御一行様じゃねーか!
新参者に発言力なんて無いし、必死こいて《探索技能》を身に付けたよ。クソが。俺はこんなバカ共の巻き添えを食って死にたくはないし、か弱いセシルちゃんが巻き添えを食ったら寝覚めが悪い。ついでに姫さんが重傷を負ったら外交問題に発展して俺の首が飛ぶ[*15]。勇者殿が再起不能になったら俺に石が飛ぶ。なんだよこれイジメかよ。どんな罰ゲームだよ。誰か、俺と役目を交代してください。後生ですから。
年齢もおかしい。なんで
そんなヤツらに人類の命運を託してんじゃねーよ。思い立ったが吉日、とでも云いたいの? 《教会》が勇者出現の報を出したのって、本当は人々に希望を持たせるためだろ。意味を履き違えてんじゃねーよ。
どうせ旅を通して育つことを見越しているんだろうが、もしも途中で死んだらどうするつもりなの? 俺がパーティに加入していなかったら全滅していただろう場面が割りとあるんだけど? そういう意味では、
男女比もおかしい。なんで女の子が混ざってんの? 魔王暗殺の旅なめてんのか。観光でも旅行でもねぇんだぞ。勇者殿も男だし「ハーレムじゃなきゃ嫌だ!」なんて言わなかったのは、同じ男として褒めてやるよ? 俺がパーティに加入するまでは事実上のハーレムだったけどな?
それは別にいいんだけど、女の子には生理があるって知っているよな。人にもよるそうだけど、生理って辛いらしいな。俺は男だが、前にも女剣士とかと行動を共にした
具体的には、情緒不安定に加えて注意力散漫・集中力欠如になって危なっかしいし、戦闘では使い物にならないし、濃厚な血の臭いに釣られてモンスターや野生生物が集まってくるし、気まずい雰囲気に陥りやすいし、次の町やダンジョンまでの行程・日数・物品その他諸々の入念な管理や計算が必要になるし、お世辞にも「女の子の躰は旅にも戦闘にも向いている」とは言えない。
だから今回もまた、女の子と共に旅をするに当たって最善を尽くすべく、2人の生理周期を訊こうとしたら姫さんに
あの時は苦節数十分間もの力説を経て、やっと解ってもらえた。なんでも生理が終わってから旅に出て、次の生理が来る前だったから、事の重大さに気付いていなかったとか。
2人とも勇者殿に話すのは恥ずかしいのか、2人の生理周期は俺が管理・把握することになった。勇者殿に「生理だからしばらく休みたい」とは直接言えないんだとか。その時になったら、俺からそれとなく伝えることになっているが……。
なんで俺には言えんだよ。アレか、勇者殿のことが好きなのか。だから言いたくないのか。だからって、好きでもない男に生理周期を教えちゃうのも
あんた王族だろ。腹芸のひとつやふたつくらいやってみせろよ。言葉巧みに誘導しろよ。つーか、恥を捨てて
そんな事もあって新参者の俺、サブリーダーへとパーティ内地位が昇格。なんでだよ。
こんな滅多にお目にかかれない嫌なパーティなんか参加したくはなかったが、姫さんのせいで強制参加の運びとなった。かのアイン国は自国のお姫様まで派遣したっていうのに、我らがツヴァイ国は誰も派遣しないだなんて、
勇者殿は蛮勇だし。姫さんはバカだし。セシルちゃんは俺の唯一の癒しだし。普通に優しいし、小さくて
……セシルちゃん。あぁ、セシルちゃん。
そんな趣味は持っていなかったつもりだけど、我ながらヤバイ扉を開けちゃいそう。セシルちゃんと一緒にあいつらを置いて逃げて、静か
これが《悟りの境地》なのだと、今なら解る。《悟り》と書いて《小五ロリ》と
俺が勇者パーティに加入して間も無いけどよ、その結果が
俺の知っている《過酷》と意味が違う気がするんだけど、そこんとこ、どうなの?
「ッ! 姫っ、危ない!」
「あら、気が利きますわね」
「おいおい……」
夜の森で野犬の群れと交戦中だというのに、散々感傷に浸っていた俺が
「勇者様ぁっ!」
「《
「は、はいっ! 《
おお、支援きたきた。勇者殿のことが心配なのは分かるけど、それで
さて、ご指名を受けたからには働かないとな。気を取り直して、手近な野犬を斬り伏せる。所詮は犬っころ。強化された一太刀の
「いくら倒しても、次から次へとワンさか出て来やがる。これがホントのワンコ・ソバってか。野犬の群れってのは厄介なもんだな。減る気がしねぇ。それどころか少しずつ俺たちを取り囲み始めているな。早くなんとかしないとまずい事になりそうだ。よし、姫さん。順次適当な群れに範囲攻撃をぶち込んで一掃してくれ」
実戦を通して指揮と情報の重要性を
「なぜこのわたくしが下賤な者の言う事を聞かなくてはならないのかしら」
ですよね。まずは指示を通すための下地作りからですよね。俺と勇者パーティとじゃ、そもそもの
だが今はそんな悠長に構えている場合じゃあない。俺の目論見は簡単に崩れ去ったが、危険な状況になりつつあるのは変わらない。俺たち前衛組が盾になることで後衛への被害を防いでいるが、敵の包囲網が完成してしまえば前衛組の手が回らなくなる。
察するに、野犬共の作戦はこうだ。1匹2匹では歯が立たないのなら物量で押し潰せばいい。前に邪魔な壁があるなら回り込めばいい。実に単純明快。
ならばこちらも単純明快に範囲攻撃で踏み潰せばいいのだが……一国の姫より犬畜生のほうが賢いって、それってどうなの? うだうだ言ってないで、とっとと一掃してくださいよ。
「……勇者殿っ!!」
ああ、もう、こんなときは
「ひ、姫! 範囲攻撃呪文を早く!」
「ええ、もちろんですわ。燃えなさい! 《
「あっ、おい、バカッ! こんな森の中でそんなもん使ったら……ッ!!」
当然というか、飛び火するわけで。呪文の対象識別? 仲間保護? 地形無視? そんな便利な機能なんて有るわけが無いわけでして[*19]。
俺の訴えも空しく、無慈悲にも姫さんを中心に炎を帯びた風が現れ、誰彼構わず無差別に襲い掛かろうとしている。こうなってしまっては最早、打つ手などない。俺に出来る事は、セシルちゃんを守る、それだけだ。
事前に敏捷強化が掛かっていて良かった。俺はセシルちゃんを素早く抱え、覆い被さるようにして地に伏せた[*20]。
「……ッ!!!」
「うわあぁぁっ!?」
直後、炎の嵐が俺の上を通過する。熱い。背中がものすごく熱い。目や
姫さん、今のあんた、最高に魔王してるよ。もういっそのこと、あんたが《魔王》を名乗れよ。人の身にして魔に至りし王女、ってことで《人魔王女》とかどうよ? それっぽい響きだろ。魔王の2文字が中心にくるから目立つし。
……アホな事を考えている間に嵐は過ぎ去ったようだ。現実逃避って、やっぱ大事。体感時間が短くなる。辛い時はこの手に限る。
だが今現在一番大事なのはセシルちゃん(現実)だ。いろんな意味で癒してくれるしな。
「せ、セシルちゃん……大丈夫かっ?」
「あ、ありがとうございますぅ……。あっ! 《
「ふぅ……。さっすが、判ってるぅ」
状況を把握するべく起き上がって辺りを見渡すと、そこには燃え盛る木々と吹っ飛ばされた野犬の群れと勇者殿の姿が!
笑えるだろ? これ、味方の攻撃なんだぜ。
「うぅ……あぁ……」
「ゆ、勇者様っ!? 勇者様ぁ! 《
「ああ、勇者よ! 倒れてしまうとは情けない!」
「情けない、じゃねーよ。どうしてくれんの? これ。この状況」
我らがツヴァイ国で森林火災を起こすとかやめてくれよ。
「ハァ? 元はと言えば、あなたがやれと言ったのでしょうに」
「確かに言ったが、実際にやらかしたのは姫さんだ。しかもここ、
「それが?」
「それが、って……。アイン国の姫さんが
「ツヴァイ国所属のあなたの要請に応えて、わたくしが直々に手を貸してあげたのですわ。感謝こそされ非難される覚えはありません!」
ダメだこれ話が通じないヤツだ。仕方ない。この事は記録に残しておいて、あとで
……しかしなぜ急に姫さんは不機嫌になったのだろうか? 意味が解らん。女心は男には理解が難しいとは云うが、そんな意味不明なモノのせいで森に火を放たれたとしたら堪ったものじゃない。もっとほかに遣り様があっただろ。なんで、よりによって火炎呪文なんだよ。アレか、これは嫌がらせか? 嫌がらせなのか?
「け、ケンカしちゃダメですよぉっ」
姫さんの発する怒気(?)にあてられたのか、セシルちゃんが慌てた様子で仲裁に入ってきた。
ケンカ? しないよ。思うところはあるけど外交問題になるからね。それは俺の
とりあえず、火ぃ消してもらえませんかね?
「はぁ……。せめて消火してくれ」
「お断りしますわ。これだけの火を消すとなると、わたくしでも精神力が枯渇して気を失ってしまいます。……ああ、そういうことですの。気絶した わたくしに
「しないからな。したくもないし」
嫌ですか、そうですか。俺も嫌だよ、こんな面倒くさい女は。韻を踏んだあとに倒置法で強調したいくらい嫌だ。俺にだって相手を選ぶ権利くらいはあるし、それ以前に王族に粉をかけるとか断頭台待ったなし。俺は無難で幸せな人生と老後を送りたいんだよ。勘弁してくれ。
「なんですって? したくもない? 誰もが羨む美貌を持つこのわたくしに向かって、なんて口の利き方なのかしら!」
「いかがわしい事をされたいのか、されたくないのか、どっちだよ。わけわかんねーよ」
「まあっ! やっぱり下心を持っていましたわね! なんてイヤらしい……!」
姫さんは吐き捨てるようにそう呟くと、自らの躰を抱いてクネクネとし始めた。躰ごと頭を振り回しながらも視線は俺から外さないのが妙に
その踊りをやめろ。その攻撃は俺に効く。俺の精神力が枯渇しそう。だれかたすけて。
「あのぉ……」
「ん? どうした、セシルちゃん」
防具の隙間からハミ出た服の裾をクイクイと掴んで気を惹こうとするなんて、かわいいな。
その攻撃は俺に効く。いいぞもっとやれ。ヤバイ何かに目覚めそう。
「火が……ケホッ、ケホッ……!」
セシルちゃんに促されて、再度、周囲を見渡す。
野犬の群れは見事に全滅している。
勇者殿は相変わらず、ぐったりとしている。
そして俺たちを取り囲むように炎が燃え広がっている。
姫さんは不思議な踊りを踊っている。地味に体力あるな。
セシルちゃんは不安そうに俺のことを見上げている。かわいい。
そして炎の勢いは増すばかりだ。
……俺にどうしろっていうの? 俺、しがない戦士だよ?
でも、やるしかないよね。姫さんはやる気ないし、勇者殿は気絶しているし、セシルちゃんはカワイイし(混乱)。
「早く避難しないとダメなのにぃ……どうしたらいいんでしょうかぁ……」
「大丈夫だ、問題ない」
かわいい女の子に頼られたら、がんばっちゃうのが男のサガってもんよ。道がなければ作ればいいじゃない。
適当な方向へと剣を構えて衝撃波を放つと、目論見(またの名を直感)どおり、衝撃波は炎の輪を割り裂き、なんとか人が通れるくらいには抜け道を作ることができた。
戒めをこめて、今の今まで無名だったこの技を《
あ、やっぱ《オブリージュ》だけで。クソ≒尻拭い≒ケ○穴≒放屁≒衝撃波みたいで汚いじゃん。嫌だよ、そんな連想ゲーム。
「す、すごいですぅ!」
想像以上の成果だったのか、これにはセシルちゃんも
興奮したセシルちゃんの姿をこのまま眺めているのもいいが、そうは言ってはいられない。
「よっこら──」
「キャッ」
「──っと」
「……」
この惨状現場から離脱をするために、続いて左腕で
姫さん? 自分で走れよ。あんた五体大満足だろ。無傷だし、なんか余裕そうだし。俺の両手は塞がっているし、残る箇所は背中か首くらいなものだが、誰が貸してやるものか。
……ん? 背中……? って、あぁ……。遠くで俺のキャンプセットがメラメラと真っ赤に燃えていらっしゃる……。あまりの事態に頭からスッポリと抜け落ちていた。いや、存在そのものを忘れていた。
いつの間にかキャンプ地から離されていたようだ。犬畜生なんかに出し抜かれるなんて屈辱だ。どうせ燃え尽きる運命だったのだろうが、なんか悔しい。
チクショウ! 毎日が厄日だ!! お家帰りたい!!!
「離脱すんぞ! セシルちゃん、頭を守っとけ!」
「は……、はいぃっ! 《
「これだから下賤の者は仕方ないですわね……って、どこに行きますのっ?!」
呪文の効果によってセシルちゃんは元より、勇者殿の重みが無くなった。これなら全力で走り抜けることができそうだ。
抜け目なく俺と姫さんを強化するとか、ホントこの子好き。マジ有能。最高、かわいい。
この森を抜けると、いよいよ砂漠の国《ドライ》か。国境代わりの森が焼け落ちたせいで領土の区切りが曖昧になったドライ国が「この土地は
アホはアイン国だけで充分なんだよ。