冗長だとわかってるのに直さないのかとか、流れを可能な限り連続させていないで場面ごとに区切れよとか、いっそのこと全カットしろよとか、今更更新するのかよとか、これ捨ててエログロだけ書いてたほうがまだいいんじゃないかとか自分でも思わなくもないですが、一応は処女作だし好き勝手にやってやらぁ的な心持ち。これも素人小説の大ゴミ……醍醐味ですね!(てきとう)
「総員、周辺警戒!」
「周辺警戒!」
オッさんの号令で、その仲間たち──女の子11人が塔周辺の警戒にあたる。
オッさん自身は周辺警戒にはあたらず、俺たちの前に立ったままだ。
「さーて、申し開きを聞こうじゃねーか?」
「…………」
そしてニヤニヤとした嫌味ったらしい顔付きと不機嫌なことを隠さない声色で、こちらへと話しかけてきた。
現在は、塔の防衛戦終了直後。我らが勇者一行は塔の外──砂地の上に突っ立ったまま、姫さんが迷惑をかけた
また疲れ果てた勇者殿のことは、不測の事態に備えて俺が例の消防夫搬送で担いでいる。ついでに空いた片手でセシルちゃんも小脇に抱えている。人ひとりを背負っても片手が空くのが、この運び方の良いところだ。けっして「面倒だからさっさと終わらせろよ」と暗に言っているのではない。俺は心配性なだけだ。
早く2人を休ませてやりたいという気持ちもあるが、こちらの不手際で危うく被害を出しかけた相手方を放って自分たちを優先させるのはド外道もいいところなので、こうして面と向かって話し合いに臨んでいるわけなんだが……。
「……姫さん? 黙っていちゃあ何も伝わらないぞ?」
「さしたる理由もなく、このわたくしに下賎な者と対話しろと?」
──
姫さんはご自慢のお胸を誇示するように、胸の前で腕を組んでいる。しかも目線を
そういえば、俺も《下賎》に
「いやー、俺はともかくこの人は……オッジさんは下賎じゃあないと思うぞ」
俺の発言に、オッさんはピクリと片方の
こう言ってしまってはなんだが、ただ謝罪(金)がほしいだけならサブリーダー(暫定)の俺が代わりに頭を下げればいいだけだ。俺もオッさんもそんな事は解りきっている。大抵の問題は金で解決できるし、そうするよりほかない。金は判りやすい代償足り得るからだ。
オッさんには
オッさんとは約7年も共に旅をした仲だし、何か企んでいるにせよ悪いようにはしないだろ。
「そういや、自己紹介がまだだったな。オレの名は《オッジ》。《フィーア国》の食客だ」
「わかりました。《下賎の者》と言うのは取り消してあげます。これからは、ガ……ガイさ──名前で呼んであげてもよろしくてよ」
「わー、うれしーなー」
「フフ、そうでしょう」
「聞けよッ!!」
俺とオッさんによる流れるような身分の提示!
しかしそのまま流された!
オッさんは、誰がどう見てもイラついた様子で地面を踏みつけている。40代中年男性、
「ガ、……ガイ」
「なんだ、姫さん」
「フフッ、呼んでみただけですわっ」
「そっかー」
「はわわ……!」
「イチャついてんじゃねーよ!!」
イチャついているというか遊ばれているだけだと思うなぁ、これ。だって姫さん妙に笑顔だし。今までに見たこともないほどにニッコニコだぞ。自尊心が発露したのだと思ったら、ただの煽りかよ。交渉の場だろうと相手を煽り倒すとか、俺にはちょっと理解のできない精神構造をしていらっしゃいますね。人を煽るのが姫さんの趣味なの? 生き甲斐なの? いやそもそも《交渉の場》だとすら認識していないのか? スーペルの一件で煽ったのはまあ判る。
「……わたくしは発言を許していませんが?」
ここにきてやっと姫さんは声と眼差しをオッさんに向けたが、俺のときとは一転して両方とも冷たい。その青い瞳に心といい、暑い昼の砂漠にピッタリですね。本当になんなんだ、この
王族や貴族といった上流階級には《自分よりも身分が下の者
「この《Ⅳ》の刻印が目に入らねェってか? ああん?」
オッさんも負けじと、フィーア国の
「お黙りなさい。わたくしはその汚い言葉遣いも許可していません」
「ぐぬっ……! ……はー、これがあのちっこかったお姫サマたァな! オメェもそうは思わねェか? なあ、ガイぃ?」
脅しが無駄だと悟ったのか、オッさんは俺に
「……そりゃ人間6年も経てば成長もするだろ」
「はっ、随分な成長の仕方だなオイ!」
なるほど。目には目を、歯には歯を、煽りには煽りをってか。
「6年……?」
「姫さんの10歳のお披露目(*2)を
俺たちの問答に姫さんが訝しむが、俺はすかさず釈明をする。会話を繋いだだけで
「まあ……そうでしたの」
釈明は無事、審査を通過した。いや、もしも本当に審査されていたら、これまでとはまた別の意味で頭がおめでたいんだな、と俺は思っただろう。
10歳の姫さん。もしも姫さんが小さいままだったら、姫さんとセシルちゃんの見た目が逆だったら、あの横暴で傍若無人で我侭で理不尽で理解不能な性格も子供がする事だと思って、かろうじて笑って流せていたのかもしれない。……それはそれで性癖が歪みそうな気もするが。いやセシルちゃん(大人版)に癒されるなら歪みもしないか。どうして逆じゃないんだよ。
「やはりこれは、この出会いは運命ですのね」
姫さんはボソッと呟いたつもりだろうが、俺の耳には確りと届いている。俺は姫さんに虐げられる運命にあるとか勘弁してください。俺が何をしたっていうんだ……。
「嫌味も効かねェのかよ……ああクソッ、回りくどいのは止めだ! おう、ガイ! オレはオメェを迎えにツヴァイまで行くつもりだったが、何がどうして
「……」
「おう、どうした? 答えられねェのか?」
「あー、いや……
「なんでオメェがガキ共のお守りなんざしてンだよ?」
「ああ、そっち? 俺も勇者殿には期待したかったんだがなぁ……あっ」
……ヤバイ。気が緩んで、つい本音を口走ってしまった──期待はずれなのだと……!
「勇者ァ? 勇者ってェとー……クソ教会が
思わず口が滑った俺が言うのもなんだけどよ、そんな男に好意を寄せている子も居るんだから、貶すのもほどほどにしてやってくれ。まだ15歳そこらだということを考えると、勇者殿の未熟さは歳相応とも言えるのだから。せめてあと5年、いや3年は歳を重ねていたら……。
チラリと姫さんの様子を窺うと、特に不快に感じている様子ではなかった。……あれ? あんた、勇者殿に好意を寄せていましたよね? 怒らないの? んん??
「こんなチビスケが英雄役たァ、世も末だな」
「ふぇ?」
「え? ……違う違う! 肩の男のほうが勇者殿だ」
「冗談だ。チビスケはシスター見習いだろ? そんくらいオレでも判らァ」
「あのぉ……?」
なあ、
「まあミニスカなのは点数高いな。しかもニーハイにガーターたァ、お前の仕業か? ……おいおい、ガキにこんなパンツ穿かせんなよ」
「きゃあっ!?」
「うお、あぶねっ! 蹴りやがったな、このガキ!」
「確かにそのとおりだけど、その言い方だとなんか俺の趣味みたいに聞こえるからやめて? 単に実用性や効率を重視した結果だし、俺は下着の種類まで指定するような束縛系の変態じゃあないからな? それとセシルちゃんは15歳だ」
「うー……!」
俺とセシルちゃんの後ろに回りこんで何をしているんだよ……。ミニスカは
セシルちゃんはセクハラに耐え切れずに涙目だ。俺も泣きたい。
「なんだ、15か。ついに
「……それより俺を迎えにきたって、何かあったのか?」
混沌としすぎて流しそうになったが、多少強引でも話の本筋に戻させてもらう。このままでは俺の評判が悪くなる一方だ。それに、どうやら姫さんは──元々話す気はなかっただろうが──これ以上は会話に参加する気はないみたいだし。話を進めるなら今の内だ。意識を切り替えていこう。
オッさんは俺を迎えにきたと言っていたが、何か俺の手まで必要なほどの大事件でも起きたのだろうか?
「ああ、今のはこれから話す内容にちゃんと関係のある事だぜ。……で、ブルマはどうした?」
「それも防寒対策だって俺は解るが、この流れだと女性陣にはセクハラにしか聞こえないからな? まさかとは思うが、フィーア国の女連中に囲まれて色ボケでもしたのか?」
だから、姫さんと同レベルとか悲しいことに──。
「おいおい、それこそ冗談にもなんねェだろ。
「あんなの?」
「なら、ここからは真面目にやってくれよ」
ですよね。俺もフィーア人は恋愛対象外だよ。まあ、そんな事はどうでもいい。重要な事じゃない。セシルちゃんが少し不思議そうな顔をして、俺の脇から見上げてきたが、俺に語る気はない。語りたくはない。
それよりも
「おう。──でだ、2年前の依頼は覚えてるな?」
さて何をさせられるのかと思えば、2年前に関係する事か。依頼の事はよく覚えている。
「ああ。ドライ国の依頼で遺跡から金の女人像を盗み出した。それがどうかしたのか?」
「まずそれがひとつめだ。ドライ王からの依頼で、像を元の場所に戻してこい、だとよ」
「えぇ……。受け取った時はあんなに上機嫌だったのに?」
そんな、せっかく掘った穴を埋めるような真似をさせられるのか、俺たちは。ドライ王族に対する好感度も下がりそうだよ。ドライ王族まで
「今は女人像の呪いでサンドマンが湧くようになったと思い込んでいるみてェだ。魔王とやらの仕業って線もあるってのにな。まあ報酬が出るならオレはなんだっていいがな」
「なるほど。ふたつめは?」
偶然かもしれないが、盗み出した同時期に嫌な事象が重なったなら縁起が悪いものな。そんな不吉だと思うものを手元に置いたままでいたくはないだろう。それなら納得だ。売っ払うよりかは元の場所に戻したほうが安心もできる。
ふたつめは何だろうか?
「例の《手鏡》の捜索だ」
「……マジで?」
「マジだ」
「マジかー……」
2年前、俺たちが盗み出した品のひとつに《呪いの手鏡》がある。前以って提示された報酬の額では少ないからと、オッジさんが独断かつ無断で遺跡から持ち出したものだが、あれは覗き込むと強さを数値化したり、名前を文字として写し出す奇妙な鏡だった。
俺はそんな
あんなものを探しに行かないといけないのか……。「どうして今更」という気持ちもあるが、あの場にいた者として俺も探索に参加するのは別に文句はないが……どうやって拾うつもりなんだ? 拾いにいけなかったから、なかった事にしたはずなんだが。防毒完全装備を纏って沼に入るのか、
「探すのはいいとして、毒沼はどうするんだ? まさか毒沼に立ち入って足元を調べて回るとかしないよな?」
「ンなワケねェだろ。呪文で毒を凍らせて、砕いた断片を運び出すンだよ」
その発想はなかった。たしかに、液体から固体に変えてしまえば毒沼の中を歩かずに済むし、大掛かりな装備や
そして運び出した氷片は、傾斜のある場所かつザルの上に置くなりすればいい。そうすれば比較的安全かつ確実に毒と手鏡を分離できる。要するに毒沼の移し変えだ。なるほど、これなら無理でも無茶でもない範囲だ。
「オッさん、頭良いな」
「あンだ、オメェはオレを何だと思ってやがる」
「仲間に決まってるだろ」
俺の返事がお気に召さなかったのか、オッさんはなんとも言えない
「よし。じゃあ、この話はまとまったな」
「えっ」
……のだが。俺は現パーティのサブリーダー(暫定)だ。そしてあくまでも
「あ?」
「え?」
しかし、俺の思いとは反してオッさんの
セシルちゃんも不思議そうな
「リーダーは勇者殿だ」
「ハァ? オメェじゃねェのかよ」
「俺にも色々あるんだよ……」
途中合流した新参者がパーティ乗っ取りとか
「あのぉ……オッジぃ、さんたちのお手伝いはしないんですかぁ?」
「うん、まあ、そういう話の流れだったけどね? 俺の一存で決めていい事じゃあないしな。一度、話を預かって、休んでから全員で話し合って決めようと思う」
「ま、道理だな。今すぐやるぞってワケでもねェしな。──だが、いい返事を期待してンぞ」
そう言って、オッさんはニカッと笑う。
俺は言葉ではなく、ひとつ頷いて返した。
さて、俺たちも塔の中に入って休むとしよう。
「それはそうと、今回の襲撃についてドライ王に報告しなくちゃならねェ。オメェたちも来い」
──っと思っていたら、まだまだ解放してくれないようだ。そろそろ勇者殿と離れたいんだが。
「オッさんだけでいいだろ」
「よかねェよ。アインのお姫サマも居ンなら、すぐにでも挨拶に行くのが筋ってモンだろ。どうせだから一度に済ませちまえ」
「そうだな……」
本来ならば個別に謁見するべきだとは思うが、防衛戦では姫さんの爆裂攻撃もあったから、たしかに結果報告に立ち会ったほうが自然だし当然ともいえる。塔のすぐ近くで爆破したから、中の人たちもあの爆音を耳にしているだろう。参戦後、たった数秒で方を付けた
問題は姫さんの態度だが、王族同士の会話ともなれば、少しはまともに話せるんじゃないかと思うが……こればかりは、なるようになる、しかないか? ツヴァイでは、
そのほかにも勇者殿の
「その前に、勇者殿のことを頼めるか」
勇者殿をドライ国に任せては、怪我を負っていないことから
「おうよ。そんな状態のガキを連れてったところで邪魔なだけだしな。──おい!
オッさんが大声で呼びつけてくれた女の子2人に勇者殿を引き渡す。間近で見るフィーア国の面鎧[*5]にセシルちゃんが若干怯えていたが、無い方が怖いんだよな……。
「装備の補填はどうされますか?」
「うーん、余裕があれば頼む。それくらい、いいだろ?」
「鎧着ねェで戦うとかバカだろ。むしろ着させろ」
ごもっともで。筋骨隆々なオッさんの鎧が勇者殿に着れるとは思えないが、オッさんの許可が出たということは、偶然にも勇者殿でも装備できる
「ってか、オメェも兜はどうした? なんで着けてねェんだよ?」
「……仮にも勇者一行に同行するのなら顔、というか頭を隠すなと言われていてだな」
「バカじゃねェの!?」
下手をすれば一撃で倒れることになる頭部を無防備にさらすとか、俺も心底、そう思うが、いつか勇者殿が言っていた「顔を見せることの周囲への安心感(要約)」というのも理解はできる。俺はそれを鎧の色と《Ⅱ》の刻印で示していたが「それでは足りない」と言われて泣く泣く──徒歩の旅ということもあり──装備を変更した。そうだ、今着ている鎧も全身型じゃなくて、胴などの急所や腕といった要所を守るだけのとても簡素なものだ。その分、動きやすくはあるのだが同時に不安でもある。
……馬車さえ、馬車さえあれば。
「……オメェ、なんでこいつらと旅してんだよ」
「おれにもいろいろあるんだよ……」
オッさんも言葉にできないほど呆れ果てているが、俺だって勅命がなければ同行なんてしていない。
「まあ、それはあとでもいい。おら行くぞ」
「ああ……。悪いけどセシルちゃんもついてきてくれるか? 勇者一行から2人だけってのは少し格好がつかない」
勇者殿の負傷をより演出するためにもセシルちゃんにはついてきてほしい。勇者一行で勇者殿だけが倒れた、という事実が必要なのだ。そのほうがそれっぽい。
そう声を掛けるとセシルちゃんは、運ばれていく勇者殿、何か考え事でもしているようにその場にニヤけ面で静かに佇む姫さん、そして俺を順番に見たあと、小さく頷いてくれた。
──さあ、いよいよドライ王との謁見だ(白目)。