こちら環境省超自然災害対策室総務班でございます!   作:パプリオン

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~これまでのあらすじ~

転生したと思ったらそんなことはなかったと思ったらそんなことはあったぜ!!




episode 3 主人公

神宮寺菖蒲と二階堂桐。現実で存在しないはずの両人と邂逅を果たした俺は焦燥し、錯乱しきり……

 

「おい涼、記憶喪失って本当なのか!?」

 

その後、物凄い勢いで病室に入ってきた両親への対応に苦慮していた。

 

「私達のことも、本当は誰か分からなかったの?分からないまま…今まで話していたの!?」

 

「や、違くて…」

 

迫真の表情で迫ってくるうちの親だが、もちろん父と母(あなたたち)のことはちゃんと知っていますよ。なんせ顔も声も変わってないんですし…

 

「どうやら彼には、事故の後遺症から部分的な記憶障害の症状が出ているようです。それも、特にここ1~2年の部分が顕著なものになっているようでして…」

 

と、これは後から入ってきた主治医の談である。

まあ、あれだけ錯乱するさまを見せてしまったのだから、そうとられてしまうのも仕方ないことだ。

 

「記憶喪失って…まさか、そんなことが!」

 

「嘘でしょう…」

 

で、両親は両親で頼むから泣き崩れるのだけは辞めて欲しい。なんかこっちが悪いことした気分になってくるから。

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

入院生活が始まり、1ヶ月が過ぎていた。

 

それはつまり、俺がこちらの世界に来て早1ヶ月が経過したということを意味しており。

寝て起きてを繰り返していた自らの生活にも、少しずつ変化が生じ始めている。

 

その変化とは、徐々に体の可動域が増えているということだ。初めはチューブとギプスだらけで身動き一つとれなかった自分の体が、指先・掌・足元・二の腕…といった順番に動かせるようになってきているのである。

 

尤も、それに伴う大きな苦痛も存在している。俗にいう”リハビリ”というやつだ。

ヒトは1ヶ月も寝たきりだと、本当に体を動かせなくなるようで。

 

「ぐ、お、お、お、お!!」

 

日常生活に戻るためのそれは、まさしく困難を極めていた。身体を動かそうとするたびに骨が軋むレベルなのに、それを度外視して本来の機能を回復させようとするのだから、そりゃ冷静に考えたら並大抵で出来るわけがないんだけどさ…

当初「リハビリなんて余裕だろJKwww」とか考えてた自分をぶん殴ってあげたい。

 

 

そして俺には…この七難八苦に拍車を掛ける、もう一つの困難が存在していた。

それは憑依する以前の『関谷涼』の記憶が、俺自身に全く流入してこなかったということだ。

 

は?(威圧)

 

大体こういうときってあれじゃん?転生先の人物の記憶が一気に入ってくるみたいな展開があるじゃん?

『俺はこの世界でこういう風に生きてきていたんだ』ということを突発的に理解するやつね。

 

俺は転生を自覚してから、この世界で生きてきた自分自身__『関谷涼』の記憶が舞い込むのを大きな期待とともに待ち望んでいたわけだが…待てども待てども一向にその気配が訪れることはなかった。

 

つまり転生した自分が持っているのは、決して大っぴらにできない前世の記憶のみであり。

医者の言うように、俺はある意味で記憶喪失ととられても仕方のないような境遇に陥ってしまったのだ。

 

で、そんな八方塞がりの状況に一筋の光が差し込んだのは、つい先日のこと。

不測の事態が重なり苦悩する俺を見かねた両親が、この世界で生きていた『関谷涼』の生い立ちを余すところなく話すように努めてくれたのである。

 

まず我が家…関谷家は代々伝わる退魔師の家系であるらしい。これに関しては、まあ驚きというよりは安堵の感情が大きく、そこまでの衝撃は無かった。

仮にこの世界で民間人Aとかに転生していたら、きっと俺は即・悪・霊と化していたことだろうからな。

 

この話のなかで目を大きく広げることになったのは、関谷家が『土御門』の分家筋にあたるという話を聞いたときのことだ。

土御門家とは、この世界では退魔師としてかなり由緒のある家系であり、かの安倍晴明を祖とする陰陽道の主派である。

その分家筋ってことは、要するに土宮や諫山という名門と同等に値する、退魔師としては申し分のない血筋なわけでして…

 

つまりあの二大ヒロインズ(黄泉と神楽)と親戚関係ってことだよ!やったね!!

 

しかもその話が真実なのであれば、恐らく俺は名門の関谷家を継ぐ存在として、とてつもない才能に恵まれているはずだ。

学生時代には黄泉や神楽と同じように神童と呼ばれていたりだとか、若干10才にしてカテゴリーAクラスを倒しちゃっただとか、そういう話ね!

ええ、皆まで言わずともわかりますとも。

いやー参っちゃうよね、でもこれって転生者の特権なのよね。

"鬱フラグクラッシャー"…皆、俺の事をそう呼んでもらっても構わんよ。

 

 

…で、それを確認してみたらどうしてうちの両親はあからさまに目を背けているんですか?

え、なに?なんか嫌な予感ががが。

 

「涼、お前はその…霊能力の面においては、あまり適していなかったというか、その…」

 

「あなた、そこをはぐらかしたってしょうがないでしょう。いずれわかることよ。

…いい、涼?あなたの退魔師としての素質はね…

 

ほとんどゼロに等しかったの」

 

 

 

……は?

 

 

ゼロ?

ゼロってなんだよセブンの息子か?

 

いやそんなわけがない。つまるところ両親が言いたかったのは、俺の能力がゼロってことか…?

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

うん。嫌な予感、当たったね。

 

 

オイオイオイオイ冗談じゃねーよオイ!喰霊ファンの皆さん、目を覚ましてくださーい!

助けてー!歴史の修正力に襲われてまーす!神様はこいつらの仲間でーす!!

 

…母曰く、俺はその系統の能力が"ゼロに等しい"…つまり全くないわけではなかったそうで、普通の人には視認できないような"霊"を一応見ることはできるそうだ。

されど、原作で幾度となく目にしたような「悪霊」と呼ばれる存在を倒せたことは、人生で一度もないらしい。

 

霊能力はほぼゼロ。全てを筋肉で解決するみたいな肉体的チートも一切なし。どうやら、それが今の自分のステータスみたい。

 

……オィィィィッス!!!

まあ今日は、転生当日ですけども。えーっとまぁね、転生先の…喰霊の世界に来た訳なんですけどもね。

 

 

__残念なから

 

 

__能力は

 

 

__何一つ、ありませんでした……

 

 

ガチャッ(心の鍵を閉める音)

 

 

だが、しかし。

これで終わりなら俺の物語は終了してしまう。流石にそれは可哀想だと天界からの温情があったのかは知らないが、俺には一つの大きな救済措置が与えられていた。

 

環境省、超自然対策室。

 

それが自分…『関谷涼』の現在の勤め先であるらしい。

 

おファッッッッ!?!?

 

これは一体どういうことだ?霊力ゼロの男が対悪霊専門組織に在籍できるって、そんなことがありえるの?まるで意味が分からんぞ!!

そう母に訴えてみれば、次のように返答が帰ってきた。

 

 

 

「コネの力よ」

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

あ、そっかあ(思考放棄)

 

繰り返しになるが、我が家は祖先から代々続く退魔師のお家柄であり、それなりの格式もある。

……要するに関谷家というのは、この業界に結構な顔が効くわけだ。

つまり俺はそこに生じた見えない力により、あの対策室に配属となった。そんな経緯があるらしい。

 

はえ~すっごい辻褄合わせ…

裏で「ナナヒカリ」とかあだ名つけられてそう。

 

で、俺の所属名を略称なしで言うと、『環境省自然環境局超自然災害対策室総務班』らしいのね。

この新手の早口言葉みたいな名称の中で、『喰霊』という作品に関して知らぬことはまずないと自負する俺が、全く聞き馴染みのない部分が存在していた。

それは「総務班」という部分である。

そんな部署原作にあったっけと一瞬考えてみたが、確実にないです。

 

作中に出てくる環境省の組織は、超自然対策室の「処理班」のみであり、これは要するに出現した悪霊を除霊する実働部隊のことだ。

しかしそれとは別に、この世界でのみ存在しているという「総務班」。

総務ということは、会社でいえばいわゆる裏方。何でも屋さんである。

確かにああいう環境の中で事務仕事を専門的にやる人がいてもあまり違和感は無いように思えるし、霊能力が無いやつでも事務方であれば全く通用しないということはないだろう。

…ないよね?

 

そんでもってさらに驚愕の事実がもうひとつ。その総務班って、どうやらメンバーが俺一人だけじゃないみたいなのね。

それを聞いて「なにそれ他にオリキャラとかがいるの!?」って興奮気味に反応したらまたお医者さん呼ばれちゃったんだけど、まあそれは一旦置いておく。

 

もう一人の総務班メンバーとは、なんとあの二階堂桐さんであるそうな。

なんということでしょう。おったまげ。マーリンのなんちゃら。

 

確かにあの人は室長の秘書的なポジションだったし、アニメだと終盤以外で前線に出ることは滅多に無かったはずだから、事務方所属と言われてもそこまで遜色はないのかもしれないけど…

あの人も、本当はめちゃくちゃ強いんだよなぁ。

 

 

とにかく、こういう形で自分の素性というものを知ることが出来た俺は…

一刻も早くこの世界に慣れていかねばならないと、そんな決意を抱かざるを得なかったのである。

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

「関谷さん、お見舞いの方がいらっしゃていますが…お通ししてよろしいですか?」

 

「あっ…はい、大丈夫です」

 

ふと時計を見やれば、時刻は丁度午後4時を指していた。

大体この時間になると、室長と桐さんが揃ってやって来てくるのだ。

 

あの二人に対しては、初回以降はなんとかまともに応対ができるようになった。それからは怪我の具合や記憶喪失について、事細かな事情聴取が繰返しなされている。

 

始めのうちは記憶があいまいな振りをしつつ、"この段階で知りすぎている原作知識"を下手に口走れない為、会話も探り探りでかなり神経を使っていた。

しかし慣れというのは恐ろしく、また原作キャラと言葉を交えられるというのは相当に新鮮な体験であり、最近に至っては密かに楽しみな時間へと変わっている。

 

さて、今日はどんな話をすることになるのだろうか。

 

そんなことを考えていると、病室に向かって、"二人分"の軽快な足音が近付いてきた。あれ、室長は車椅子のはずだからいつもと違__

 

「えっと、305号室は……あ、ここみたい!」

 

「関谷涼…間違いないわね。それじゃあ入るわよ」

 

作中で室長と桐さん以上に()()()()()()()その声を、俺が聞き違えるはずがなかった。

 

扉が開き…何でもないかのように二人が入ってくる。しかし俺の目には、その光景がスローモーションのようにゆっくりと映っていた。

 

「涼さん、目を覚ましたって聞いて…本当に良かったね!」

 

表裏のない華やかな笑顔を覗かせる『喰霊』の主人公、土宮神楽。

 

 

そして__

 

 

「全く、命が助かったっていうのに…相変わらず元気無さそうな顔してるわね?」

 

 

 

腰近くにまでかかる長い黒髪。

 

 

 

人形と見間違わんほどに透き通った白い肌。

 

 

 

一度聞いたら決して忘れない、深く澄んだ声色。

 

 

 

そして…何よりも特徴的な紫の大きな瞳は、彼女の勝ち気さと、聡明さと……

 

 

 

見るものを捉えて離さない、絶対的な美しさを兼ね備えていた。

 

 

 

 

 

__諫山黄泉。

 

 

 

俺が『現実世界で』始めて彼女の姿を目にした…その瞬間である。

 

 

 

「……あっあっ」

 

ドクドクドクドクッ!と血流が昇っていくのを体で感じたときには、時既に遅し。

脈拍がどんどん上昇していき、俺の体を繋いでいた装置がけたたましい音を鳴らし始めた。

 

「…ってちょっと、どうしたのよ!?」

 

「わ、私お医者さん呼んでくるね、"黄泉"!」

 

「ええ、お願い"神楽"!」

 

二人が呼び合ったその名前をしっかりと耳にしながら。

薄れゆく意識のなかで、それでも俺は彼女の姿を視界から捉えて離さなかった。否、離せなかった。

 

 

 

次元という名の大きな壁に隔たれ、今までずっと遠く離れたところからしか見ることのできなかった彼女は__

 

端的に言って、あまりにも美しかったのである。

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

再び目が覚めると、俺の周りでは主治医と看護師さんがせわしなく動き回っていた。

 

「あ、あの…俺」

 

「先生、患者の意識が戻りました!」

 

「なに本当か!?関谷さん、声が聞こえますか?私が見えますか?」

 

「は、はい」

 

いやなんというか、正直スマンカッタ。

もし黄泉と遭遇したら緊張でまともに喋れたもんじゃないだろうなとか想像はしてたんだけど、それを軽く上回るような事態になるとは思わなかったんだ。

 

事故による怪我もまだまだ癒えぬ内にいきなり気絶とかすれば、そりゃこんな大事にもなろう。

お医者さんごめんなさい。僕を死刑にしてください!!

 

「す、すいません、もう大丈夫です。本当に迷惑をおかけしまして…」

 

「ご無理をなさらないでください!これから精密検査の準備を行いますから」

 

「いえ、あの、俺マジで元気ですから!…ほら、こんなにも__」

 

そう言って体の動かせる部位を動かそうとした矢先のこと。

 

「あ、意識戻ったみたいね。心配したんだから、もう…」

 

「涼さん、大丈夫なんですか?」

 

再度、黄泉と神楽の二人が病室に顔を覗せた。

 

「あっあっ」

 

__そして歴史は繰り返す。

 

今度はさっきとは逆に、貧血のようにスーっと意識が薄まっていくような感覚。

 

「え、ちょっとまたなの!?」

 

「涼さん!?」

 

辺りに鳴り響いたのは、やはり脈拍異常を知らせる警告音だった。

 

「駄目です先生!このままでは…!」

 

「くっ…駄目か。大至急呼吸器を用意しろ!

そこのお二人、今はお引き取りを願います!!」

 

医者にそう急かされ、困惑しながら部屋を後にする二人を流し目に…

俺は将来への明確な不安を浮かばせながら、再度意識を失ってしまったのだった(30分ぶり二度目)

 

 

 

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