こちら環境省超自然災害対策室総務班でございます!   作:パプリオン

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クソみたいな投稿頻度でなんかごめんよ、ごめんやで



episode 4 退院

長い夢を見ていた。

 

世界に絶望し、闇に足を踏み入れてしまった少女を救い出す夢。

本来であれば…それは決して叶うはずのない、虚な夢。

 

これは、その夢の続きなのか。それとも__

 

「……んぁ」

 

そこで目が覚めた。

欠伸をしつつ、()()()()()を堪えながら上半身を起こす。

知らない天井はとっくに知ってる天井になってしまったが、毎朝目にするこの柄模様には未だに慣れることがない。

 

この世界に来て半年…振り返るとそれだけの時が経っていた。

 

黄泉と邂逅を果たしたあの日__完全な黒歴史と化したあの日__から、自分に対するお見舞いは両親ら一部を除き完全にシャットアウトされることとなった。いわゆる面会謝絶というやつである。

まあ原作キャラが来る度にナースコール連打したり気絶したりしてたんだから、そらそうなるよ。

 

しかし黄泉たちと出会いがしらに二度気絶してしまった件については…思い返すたびにベッドの枕を濡らしている。あれは感動を興奮が上回ってしまったが故の悲劇だった。

前世で「"自称"諫山黄泉ファンクラブ名誉会長」および「"自称"諫山黄泉ガチ恋研究博士課程修了」の自分が、黄泉本人と現実に遭遇したら、一体どんなことになってしまうのか…そのシュミレーションが実に甘かった。ある意味で、あんなふうになってしまったのは必然だったのかもしれない。

 

無論俺はあの後約2ヶ月ほどずっと落ち込み続けていた。尋常じゃねぇ凹みっぷりだった。それを見かねてだろう、お医者さんからは急遽精神的なケアもオプションでつけられてしまった。

しかしながら『転生して黄泉と会えて興奮して気絶して情けなくて落ち込んじゃったんです』などと、まさか本当のことを言えるわけもなく…

俺は定期的に来てくれることになったメンタル担当の医師に対しても、適当なごまかしを繰り返し続けるしかなかった。

 

 

そして以降は、件の黒歴史を必死に頭から振り払うべく、ひたすらリハビリに専念をし始めた。無理にでも体を動かしていた方が、陰鬱な気分をいかばかりか紛らわせることができたからだ。

 

で、その副産物として、俺の体は『奇跡的な回復の兆し』を見せてくれた…らしい。

後で聞いた話だけど、可能性としては一生体を動かせなくなることもあり得たそうな。

九死に一生スペシャルに出せそうな話だなおい。

 

なんにせよ、神様マジ感謝である。でもチート能力くれなかったのはもう許さねぇからな~?(豹変)

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

そんなこんなで退院の日がやってきた。

 

……色々とすっ飛ばしているみたいだが気にするな。俺は気にしない。

 

ミイラのようにぐるぐる巻きにされていた包帯はすっかりとれ、縫合でツギハギだらけだった体から糸が抜けると、完全にとはいえないが事故に遭う前の状態に復活することが出来たのである。

 

両親は本当に喜んでいたし、なんと神宮寺室長からお祝いの電話が来たりもした。

あの室長から祝電が来るという、転生特有の想像の斜め上をいく展開。案の定持ち前のコミュ障スキルが発揮されることになり、俺は壊れた機械のようにすいませんとありがとうごさいますをひたすら繰り返す始末だった。

 

 

 

「あの、本当にお世話になりまして…」

 

「お大事にしてくださいね。この先、職業柄大変なことも多々あると思いますが…くれぐれも無理をしないように」

 

「はい。ありがとうございました…」

 

病院から出るときには、主治医やら看護師さんやらが総出で迎えてくれた。普段なら気恥ずかしさしか感じないような状況だったけど、仮にも半年近くお世話になった人達に見送られれば、羞恥よりも感謝の念のほうが強く湧くというものだ。

 

 

両手を振って病院を出ると、うちの両親がエントランスにで車を待機させていた。

二人はいつ出てくるか分からない自分のことを、およそ4時間待ってくれていたらしい。

とんでもねえ親バカだなどうもありがとうよ!!

 

「さぁ、家に帰るとしようか。涼にとってはどれくらい振りだ?」

 

「あれからもう半年以上経つのかしら。なにはともあれ、今日はたくさんお祝いしましょうね」

 

「わ、わーい」

 

この二人だけは前世と何も変わってなくて、つくづく良かったと思わされる。

 

いくら憧れだった世界に転生できたといっても、人見知りの自分にとって人間関係のリセットというのは割と致命的な出来事だ。

たまにでも連絡を取り合っていた数少ない友人などがこの世界でも都合よく友達のままでいてくれるはずもなく、かといってこの世界に生きる人たちとの交流はほとんどが初対面の状態。

これに加えて、もし父と母までもが全く見知らぬ人物だったしたら…俺は入院生活の間におかしくなっていたかもしれない。

見た目も声も、喋り方や考え方なども…ちゃんと元のままでいる二人がいてくれたからこそ、俺は血迷うこともなく、自分を保ち続けられたのだ。

 

「あのさ…長い間心配かけてごめん。それと…俺の両親でいてくれて、ありがとう」

 

「なんだなんだ涼、そんな改まって…そんなこと…いわれてもな…お゛と゛う゛さ゛ん゛は゛な゛い゛た゛り゛し゛な゛い゛か゛ら゛な゛」

 

「もうあなた、運転中に号泣するのはダメですよ…ぐすっ…本当によかったわね、涼」

 

こうやって、感情がすぐ表に出るところなんかもさ…変わってなくて、本当に安心するよ。

 

俺はひとしおの感慨深さを味わいながら…ふと窓から外の様子を眺めた。

絶えることのない人の流れ。立ち並ぶ高層のビル群。自分の眼下には、一見すると転生したとは気付けないほどに現実的な、いわゆる超都会の光景が広がっていた。

 

勿論それは東京という土地柄を考えれば当然の事なんだけど、自分がこれから暮らすことになる『我が家』がその一角に存在しているというのは…正直どこか不思議な気持ちにさせられる。

期待と不安の両方が入り混じる、というヤツだ。

 

色々なことを考えながら20分ほど父の運転に身をゆだねていると、車はテレビでしか見たことの無いような大邸宅に入っていく。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

俺は思わず突っこみをいれようと前のめりになる。

まだアスファルトの道を走っているものの、この場所が公道ではないことは一目瞭然。なんせ、ついさっき巨大な門を誰の許可も得ずにくぐってしまったのだから。

 

「どうしたの、涼」

 

「いや、ここって私有地でしょ?なにやってんの!?」

 

普通に不法侵入で犯罪なんですがそれは…

慌ててそう主張する俺を尻目に、しかし両親はは落ち着き払い…なんだったらむしろ憐れみに近い表情を浮かべていた。

 

「…涼、お前まさか自分の家の記憶もなくなっているのか?」

 

「ここが、私達の家なのよ」

 

「ぅえ゛っ」

 

リアルで変な声が出た。

ちょっと待て。一旦落ち着け。言ってる意味がよくわからん。

 

よし、冷静に整理するぞ。つまり貴方たちは、東京の天井をブチ抜く勢いの地価を鑑みた上で、門付き庭付きの一戸建てを「我が家である」と、そう仰りたいわけですね。

 

おっp…おっぱげた…!!

 

しかしよくよく考えてみりゃ、劇中に出てきた土宮や諫山の家もこれに負けず劣らずの豪邸だったはずだ。

 

たいましの かせぎって すげー!

 

つまり、こういうことなんだな(納得)

アニメで見ていたときは考えもしなかったけど、都内であのレベルの家って考えるだけでも恐ろしい費用がかかっていたはずだ。

そして、それはこの我が家とて同じこと。

お父さん、お母さん…俺は前世以上に貴方たちを尊敬することにしよう。

 

 

それからややあって家の中へと入ってみれば、まあシャンデリアやら鹿のはく製やら、テンプレみたいな豪邸の内装が眼下に広がっていた。も、もうこの程度で驚きはしないぜ(満身創痍)

 

「自分の部屋の場所は覚えているか?」

 

「いや…どこだっけ?」

 

「ああっ、なんでことでしょう…」

 

「泣くな、母さん。一番つらいのは涼なんだぞ…!」

 

いやもういいからこのくだりは!こっちも心が痛くなるだけだから!!

 

両親に泣く泣く案内された部屋は、階段を登って正面すぐのところにあった。

 

俺はなんら大きな警戒心もなく、今までこの世界で生きてきた『関谷涼』の部屋の扉に手をかける。

 

…それがある種の命取りであるなどと、想像だにもせず。

 

 

「…ん?」

 

部屋に入って即座にその"異常"に気付いたのは、偶然ではなく必然だった。

 

異常の正体は…そう、壁だ。

前、後ろ、右、左。この部屋を覆っている壁のほぼすべてが、黒・橙・紫の三色に染まっていたのである。

 

「え…え?」

 

思わず目をこすって辺りを凝視する。だが、やはりそれは見間違いなどではなく。

やがて…その三色というのが一人の人物を表すものであるということに気付かされる。

 

黒は、彼女の漆黒の髪の色。

 

橙は、彼女の白く透き通る肌の色。

 

そして紫は、彼女が日頃袖を通している…学生服の色を顕していて。

 

 

 

__壁一面に在ったのは、おおよそ数百枚にわたる諫山黄泉の隠し撮り写真だった。

 

「……うわあああああっ!!??」

 

な、な、なんじゃあこりゃああああ!?!?

 

ちょっと待てよこれどういうこと!?下手なホラーゲームより怖い展開なんだが?

間違いなくストーカーさんが息を潜めて暮らしていた痕跡を残しているよ!?

 

え、まさかこれ全部転生前の『関谷涼』の仕業なの?

 

ちょっと待て、前世の俺でもさすがにここまで歪んではいなかったぞ!

せいぜいDVDについてたポスターカード眺めてニヤニヤするとか、アニメの画像フォルダ作ってデュフフするだとか、そんくらいのことしかしてないからね!?

 

……あれ、ひょっとしてやってることそんなに変わってない…?

 

「今の声…涼か!?」

 

「ええ、何かあったみたいね。行きましょう!」

 

!?!?や、やべぇ早々の親フラグだ!

もしかしなくてもさっきの絶叫を聞かれてしまったらしい。

 

俺はこの超常的な展開に錯乱しつつ、しかし寸でのところで我に返り、とっさに部屋の内鍵を閉めた。こんな部屋を両親に見られようものなら、恥ずかしいとかそういうレベルじゃない。っていうか確実に社会的に死んじゃう。

 

「あなた、鍵がかかってるわ!」

 

「なんだと…おい涼、大丈夫なのか!いますぐにここを開けるんだ!!」

 

いや大丈夫なわけあるかい!そんでもって開けれるかい!!

 

なし崩し的に始まってしまった両親との籠城戦。多少の時間稼ぎができているこの間に、俺は是が非でもこの現状を理解しなければならなかった。

 

扉を背に自分の部屋を改めて見渡してみれば、やはりそこかしこに写っている黄泉の姿。

その一つ一つを注視してみれば、なかにはアニメ第3話で出てきた『中学生時代の黄泉』の写真なんかも見受けられた。

 

つまりこの部屋の主は、かなり前から黄泉の写真を隠し撮りし、部屋中にペタペタと貼りまくっていたことになる。

 

「関谷涼って…どんだけヤベー奴だったんだよ!?」

 

いやそれは今や俺自身でもあるんだけどでもそうじゃなくてヤベーのは俺が転生する前の俺自身であってああもうややこしい!!

 

……でもさ、ちょっと待てよ。

よくよく考えたら入院している間、この部屋にずっと鍵がかかっていた筈がなく…つまりこのストーカー部屋は今までずっとあけっぴろげの状態になっていたわけだよな?

 

「……」

 

一瞬、げにも恐ろしい想像が脳裏をよぎった。

まさか…いや、でもそうだとしたら最悪の形で辻褄が合うんけど……

 

そのおぞましき考えにたどり着いたとき、俺は賭けともみえる行動に出た。

 

再度扉に向き直った俺は、一度施錠した鍵を再び開放したのだ。

 

「あ、開いたわ!…涼、どうしたの急に。なにか辛いことがあったの?」

 

「きっとよほど深刻な悩みなんだろう。言ってみなさい、涼」

 

…俺の最悪の想像は、どうやら当たっているらしかった。

 

部屋の中が__つまりは諫山黄泉の写真で埋め尽くされているこの空間が__はっきりと見えているにも関わらず、しきりに俺の心配をしてくれる二人。とても優しいんだね、ありがとう。

でもさ…どう考えてもそのリアクションはおかしいんだよね。

 

父さん、母さん…

 

貴方達は、どうしてこの後ろの光景に突っ込まないんだい?

 

「どうしてって…ここがお前の部屋だろう?何もおかしなことはないじゃないか」

 

「貴方が大好きな黄泉さんの写真も、ちゃんと"そのまま"にしておいたのよ」

 

ンなるほど。

やはりこの部屋の中身は『親公認』であったと。

そりゃそうだよね、そうでなきゃバレないわけがないもんねこんなクレイジールームがあははは…

 

 

 

 

……

 

 

いや止めろよおおおおっっっ!!!!

 

なに考えてんだ両親ッッッ!アホか?アホなのか?いやアホだよ!!

これ見れ下さいよこれ!どう考えてもストーカーのやることですよ!!あんたらの息子さん道を踏み外しまくってるからね!?!?

 

目の前の二人だけは外見も声色も元の世界と変わらない"本当の両親"だったからすっかり安心しきっていたけど…まさかこんなところでヤベー部分が浮き彫りになってしまうとは思いもしなかったよ。

…でも一番ヤベーのは今んところ俺自身だけどな!!

 

「と、とにかくこれは全部剥がすから!一旦出てって!もう騒がないから!」

 

「ええっ、そんなことを涼が言うなんて…!」

 

「本当にいいのか涼!?記憶を失う前のお前が、何年もかけて完成させた部屋なんだぞ?」

 

「いやだったら尚更駄目でしょうが!お願いだからもっと別のとこ心配してくれよ!主に自分の息子の頭の中だよ!!」

 

こうして、大狂乱ファミリーブラザーズと化した自宅での初日は…

 

俺が半泣きになりながら部屋中の写真を処分するという形で、幕を閉じるのだった。

 

 

 

……これはいよいよだめかもしれんね。

 

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