ボールはともだち! ~One For Ball~ 作:HDアロー
日本語に訳したら『ボールのために在る者』です。
『ボールに生きる者』とかでも可。
そんなわけで『ボルとも!』が7:00をお知らせします。
ブクマ3000越しました、ありがとうこざいます。
零話 「それは私の選択」
多世界解釈というモノがある。
漢字が連なっていて難しい気もするが、一言で言えばパラレルワールドのようなものだ。
些細な偶然が起こる度に、何かが起こった世界と、何も起こらなかった世界に分かれている。
そんな話だ。
一つ具体例をあげてみようか。
あなたはキリキザン使いだ。
目の前にはシャンデラ。
シャンデラが火炎放射を打ってくるならば、あなたは不意打ちを打てば勝てる。
だがしかし、不意打ちに合わせて身代わりなんて使われようものなら、次のターンにどうあがいてもやられる。
それを読んで追い討ちを選べば、相手が火炎放射を選んだ時に敗北する。
要約すると、以下のような力関係になる。
火炎放射<不意打ち<身代わり<追い討ち<火炎放射……。
この時、あなたは不意打ちを選ぶだろうか?
それとも追い討ちを選ぶだろうか。
……相手の心理まで読めば、一度は追い討ちを挟みたくなるかもしれない。
身代わりに追い打ちを合わせられても、その場で負けが決まるわけじゃないからね。
確かに、身代わりがあるなら打ちたくなるだろう。
だけど、そもそもの話だ。
相手が『身代わりを持っているという確証はどこにもない』のだ。
あくまで最悪の想定。
そんな不確かな存在に怯えて、日和った行動をとるだろうか。
私?
私は、そうだね。
分からない、かな?
単純な理屈だけではなく、その場の空気だとか、相手の様子だとか。
データじゃ測定しきれない部分から、好き嫌いという直感を経て、その場その場で対応すると思う。
要するに、そこには二つの分岐世界が存在するわけだ。
一つは『偶然不意打ちを選んだ世界』。
もう一つは『偶然追い討ちを選んだ世界』。
そのほんの僅かな選択の違いが、その後の勝敗を左右する。
勝利した世界と、敗北した世界に分岐していく。
何が言いたいのかというとだ。
「失敗した。あの
ハクタイシティの、ディアルガとパルキアを祀る祭壇で。
私は、願った。人生のやり直しを。
空は夕日に焼けていて。
私の影を、どこまでも長く伸ばしていた。
喉が締め付けられた。
声が、出て来なくなった。
それでも叫ばずにはいられなかった。
張り裂けてでも、声を張り上げた。
⁂
それは昨日の話。それは私の選択。
やり直したいと願った、私の物語。
⁂
ハクタイ空港に着いてすぐ。
私はハクタイの森にやってきていた。
理由? 言わなくても分かるでしょ!
「モンメンはいねがぁ!」
あれは秋田だったか。
間違っちゃった。てへぺろ。
そんな時もあるよ、ドンマイ私。
それよりもさ、直面してる問題をどうにかしようよ、ね?
「迷った」
そう、迷ったのである。
ハクタイの森でである。
「最悪アローに乗って帰ればいいやとか、浅い考えだったなぁ。もうどっちに進んでいるのかすら分かんないや」
進んでいるのか、戻っているのか。
それすらわからない。
「ついでに言えばモンメンもいないし……、ホント最悪」
途中で広い道から外れたのは失敗だった。
もはや道と呼んでいいのか分からないほど森は生い茂り、地面から盛り上がった根っこが歩く邪魔する。
「あ、あそこ
今回の調査で我々は、何の成果も得られませんでした!
嘘である。
モンメンもエルフーンもいないということが分かったのだ。
それは大きな進歩である。
茂みを避けて、木々をかき分け、日の下に出る。
木漏れ日は浴びていたが、サンサンと降り注ぐ太陽は久々だ。
活力が湧いてくるね。
「わぁ! 旅人さん!?」
「うん?」
振り返ればそこに、古びた洋館があった。
レンガ造りの壁にはツタが生えていて。
屋根は色あせ、時間の流れを匂わせる。
今にでも黒い霧が沸き上がり、魔女が飛び出してきそうだと、私は思った。
その館の窓から、女の子が身を乗り出している。
私と同い年くらいだろうか。
無邪気で無垢を思わせる、幼い子供だった。
その女の子は窓から身を引くと、奥へと消えてしまった。
何だったんだと思ったが、すぐに理解した。
カチャリという音がして、館の扉が開かれたのだ。
そしてそこからは、先ほどの女の子が現れた。
「こんにちは! 今お時間ありますか?」
「え? ええ。はい」
「良かった! 私、ずっと外の世界に憧れてて……、でも留守番をしなくちゃいけなくて。良かったら、お話を聞かせていただけませんか?」
「えー、うーん」
ぐいぐいくる子だなと思いながら、私は思慮を巡らせる。
話すことがめんどくさいとかじゃない。
問題はここが、ハクタイの森にある館だということだ。
(えー、これ絶対森の洋館だよね。いやいや、私ホラーダメなんだって。この子じゃないの? 例の女の子。あ、今のは別に例と霊をかけたわけじゃないんだけどね? つまり森の洋館に現れる、幽霊なんじゃないかなって思うわけですよ)
改めて女の子を見る。
扉に触れている手。地についている足。
森を吹き抜ける風に揺れる髪。
これらの事が、幽霊にできるだろうか。
いや、無理だと思う。
実体がない事には実現不可能だろう。
ということは……幽霊ではない?
(時系列ってどんな感じだったっけ? あんまり詳しくないんだけど。まだ幽霊になる前ってこと?)
そう考えるのが妥当か。
なら別にいいかな?
「いいよ。と言っても、旅立って日も浅いしすぐに終わっちゃうと思うけどね」
「本当!? ありがとう! どうぞあがって!」
「あ、うん。おじゃまします」
⁂
屋敷の一室の、客間だろうか。
外観のボロさからは想像できないほどに手入れされた部屋。
ふかふかの絨毯に、緻密に細工の刻まれた綺麗な椅子。
黒檀で作られたと思しき机は、これまたオシャレなシャンデリアに照らされて輝いている。
今までの暮らしからは想像もできない豪華なお部屋。
そこで私は、これまでの話をした。
ヒワダにはヤドンの井戸と呼ばれる場所がある事。
コガネにはポケスロンドームや空港がある事。
流星の滝にある、クレーターの事。
夜のルネシティの、星に包まれたような情景の事。
空の柱という、とても高い建物の事。
それをその子は、楽しそうに聞いていた。
時に相槌を打ち、時に語りを促し。
興味津々といった様子で目を輝かす。
思えば、年の近い子と話すのはマサキの妹以来だ。
マサキの妹とも、話した時間はわずかだ。
おしゃべりするのが、楽しかった。
楽しい時間というのは、あっという間に過ぎる。
つい先ほどまで日が差していた気がするのに、今は月明りが夜を告げ始めている。
「すっかり遅くなっちゃったね。今日は楽しかったよ」
「あっ、あの!」
椅子から立ち上がろうとしたら、女の子が声を上げた。
意を決したように。
「きょ、今日はもう……遅いでしょ? だから、あのさ……。泊っていかない?」
「うーん、ありがたいけど、親御さんに迷惑掛かっちゃうでしょ? そんな迷惑かけられないよ」
「ち、違うの。実は、お父さん帰ってこなくて、寂しくて……。一緒にいてくれると嬉しいんだけど……」
どんどん小さくなっていく声で、その子は最後にこう言った。
「だめ、かな……?」
そんな風に言われたら、断れるわけないじゃん。
困ってる人がいたら、放っておけるわけないじゃん。
「ううん、大丈夫だよ」
「ほ、本当に……?」
緊張からか、女の子の顔が強張る。
少しでもほぐすことができれば。
そんな思いから、私は微笑みかけた。
女の子は、顔を下に向けた後、震える声でこう言った。
「……あり、がと」
⁂
それから私は、館を案内してもらった。
トイレがどこにあるだとか、客室がどこにあるだとか、寝室がどこにあるだとか。
そして最後に、食堂にやってきた。
そこには、作り立ての料理が並んでいた。
「あれ? この屋敷、あなた以外にも誰か住んでいるの?」
「うん!」
「へー、お礼言いに行かなきゃね。あとで案内してくれる?」
「うーん……、それは難しいかな。恥ずかしがり屋さんで、人前に顔を出さないから」
そう言う彼女に、私はそっかと返した。
我ながら軽いな、一宿一飯の恩義とは。
まぁ、それはこの子の寂しさを緩和することで許してもらおう。
(あれ? 他に人がいるなら別に私がいなくても寂しくないんじゃ……?)
誰かがいるのは間違いないのだ。
この子はずっと私と一緒にいた。
つまり、これらを作った人物がいるはずなのだ。
(あー、恥ずかしがり屋さんだから一緒に寝ることもできないとか? 極度の上がり症とかならあり得るのかな?)
結局私は、その違和感を思考の隅に追いやった。
何か事情があるんだろう。
無遠慮に踏み込むのは良くない。
久しぶりの誰かとの食事は楽しかった。
最近はコ食*1ばっかりしてたからね。
やっぱり賑やかな食卓というのはいいものだ。
⁂
その後私たちは、二階にあるテレビの部屋に向かった。
「そういえば、森の中にあるのに電気通ってるんだね」
「あはは……、森の中と言っても、ハクタイシティに近い所にあるから」
「へー、もっと深い所にあるのかと思ってたよ」
結構歩いたつもりだったのだが、どうやらぐるぐるしているだけだったようだ。
でないと、ハクタイシティの近くに存在するはずがない。
だって私は、ハクタイ空港から真っすぐ向かってきたのだから。
「それより、ほら! 始まったよ! スーパーコンテスト!」
「そっか、シンオウと言えばスーパーコンテストがあったね」
それから私たちは、お話をしながらコンテストに夢中になった。
ミカンさんはいなかったが、なかなかにハイレベルなものだったと思う。
いやコンテストとか詳しくないんだけどさ。
あれだ、いいものはいいってやつだ。
そこに理屈はいらないんだよ。
「んー、いい勝負だった。っと、もうこんな時間なんだね。そろそろ寝よっか?」
「……うん。寝室、だよね。こっち、だよ」
良い子は寝る時間になった。
やんわりとそのことを指摘すると、明らかに女の子の顔が曇った。
そんなに寝るのが寂しいのだろうか。
(んー、でも確かに。私もこれくらいの時は寝るのがもったいないって思ってたっけ)
寝たら寝た分だけ、楽しい時間が減っていくようで。
出来る限り起きていようと頑張っていた気がする。
今? 今は寝られるときには寝るですよ。
いつ忙しくなるか分からないし。
そんな感じで納得し、一緒に部屋を出た。
カーペットの敷かれた、長い廊下を並んで歩く。
手と手を取り合い、歩幅を合わせ。
女の子の足取りが、どんどん重くなる。
私は何を言うでもなく、そのペースに合わせた。
だけど、部屋まであと少しというところで、完全に足が止まった。
明日の朝、早起きしてまたお話しよ?
そう言おうとした。
だけど、それよりも早く、女の子が口を開いた。
「ごめんチエちゃん。やっぱり、嘘つけないや」
「う、そ……?」
心当たりはなかった。
騙されている自覚もなかった。
なんだ? 何の話をしているんだ?
「私はさ、もう、死んでるんだ」
「……え?」
私は自分の手を見た。
確かに手を繋いでいる。
触れているという感覚もある。
間違いなく実体はそこにある。
「はは、そういう冗談は言っちゃだめだよ? 生きたくても、生きられなかった人もいるんだから」
「違うの!」
軽くたしなめようとした私に、その子が反発した。
大きく声を出した後、小さく呟いた。
「違う、違うんだよ。冗談じゃなくて、本当に、死んでるんだ」
「……それじゃあ、この手はどう説明するの? 確かに触れてるよね?」
「ううん。それはチエちゃんが、そう思い込んでるだけだよ。この家に住んでるムウマージの幻覚で、そう思いこまされてるだけ」
「はい?」
ムウマージ?
ムウマージが、何だって?
「ムウマージはね、幻を見せることができるんだ。私はここに居るけど、魂だけなんだ。チエちゃんが見えてるのは、気のせいなんだよ」
「……仮にそれが本当だとして、生きているって言ったわけじゃないよね? じゃあ、嘘って、いったい何のことなの?」
「私、私は……」
下を向く彼女の手が、私の手をぎゅっと握りしめた。
この感覚が幻なんて、本当にあり得るのだろうか。
「チエちゃんに、私と同じになってもらおうとしていたんだ」
背筋に冷たいものが走った。
指先から、冷えていく気がした。
この子は、何を言っている?
「どうして死んじゃったのか、もう思い出せない。ただ、気づいたらここに居て、物に触ることも出来なくて、誰とも話すことも出来なくて、他にいるのはムウマージだけで。あの子は優しかったけど、でもどこか距離感があったの。人と会うの、すっごい久しぶりだった。嬉しかった。昔みたいに、誰かとお話しできることが。ずっとこうしたいと思っちゃった。そうしたらね、ムウマージがこう言ったんだ」
女の子が、窓から屋敷の外を見る。
憧れるように、懐かしむように。
月明りに照らされた横顔は、私の心を締めあげた。
「日付が変わるまでチエちゃんをこの屋敷に留めておけば、私と同じ幽霊にしてくれるって。そうしたら、ずっと一緒に居られるって」
彼女が顔を向けた。
その目には、涙が浮かんでいた。
「本当は最後までだますつもりだった! でも、やっぱり無理だった! チエちゃんにまで、こんな寂しい思いをしてほしくない、苦しんでほしくない! だから!」
彼女が私に抱き着いた。
不意の出来事に、私は困惑した。
「お願い! ムウマージがあなたを呪い殺す前に、早く逃げて!」
だけど、確かに言えることがあった。
それは、彼女が震えていたということだ。
それだけで、勇気を振り絞っていることが分かる。
もう二度と、人と会えないかもしれない。
ずっと独りで居なければいけないかもしれない。
生きることも死ぬことも許されないかもしれない。
それでもなお、彼女は私の身を案じてくれた。
それは、私が彼女の友達になったから。
だというのなら、私の行動も決まっている。
「日付が変わるまでは、大丈夫なんだね?」
私は手を回し、その背中を優しく撫でた。
びくっとした彼女だが、小さく頷いた。
なら大丈夫だ。時間は十分にある。
「元凶のムウマージをやっつけよう! そうすれば、日付が変わっても大丈夫なはず!」
一体どうやって私を幽霊にするつもりかは知らないけれど、つまり無力化してしまえばいいんだ。そうすれば、少なくとも死ぬことはない。この子にこれ以上罪悪感を持たせなくて済む。これが最善だ。最善だけど、問題もある。
時間は十分にあると言っても、それは正攻法の場合だ。いつものように、ボールで解決しようとすれば、ボールを作る時間が必要になる。間に合うとは思うが、出来なかった場合のリスクが大きすぎる。リスク管理もまた、大切な能力だ。
そうなると、ムウマージを倒すしかあるまい。
瀕死にして、能力を使うだけの余力を奪い取る。
それが最善択だ。
「でも……」
「大丈夫、任せといて!」
女の子の意見も打ち切って、私は続けた。
今の私には、強力な仲間がいるからね。
さあ、出番だよ。
「出ておいで、チルル!」
ボールから、綿のような青龍が現れる。
中国名では七夕を、英語名では歌姫*2を冠する青い鳥。
私の新メンバー、チルタリスだ。
うーん、エコーボイスとかで探るのが手っ取り早い気がするけど、ゴーストタイプには無効なんだよね。
うん?
ならフェアリータイプにすればいいんじゃね?
さすがは私。脳の作りが違うね。
「行くよチルル! メガシンカ!」
左手首に付けたキーストーンに、右手を添える。
たしかこんな感じだったはず。
見様見真似のそれは、しかし発動しなかった。
(あ、あれ? メガシンカは?)
なんでできないの?
え? 偽物とかそういうオチ?
いや、感覚で分かる。
これは本物だ。
だとしたら、なんで。
(メガシンカには、やっぱり絆が必要……?)
チルルは私に懐いていない。
だからか?
だから、メガシンカができないの?
「チエちゃん! やっぱりいいよ。それより、早く逃げて」
「あ、あー。こほん。ちょ、ちょっと待って! 今別の策を考えるから!」
しまった。隣に人がいることを忘れていた。
せめて誰も居ないところで実験しておくべきだった。
ミスったなぁ。
とと、そんな事考えてる場合じゃない。
次の一手を考えないと。
(そもそもゴーストだから見えないって何? そんなことあるわけが……、いや、逆か?)
てっきり、ゴーストタイプだから見えないのかと思っていた。幽霊には実体がないとか、そんな感じで。でも実際、ゴーストポケモンにも接触技のダメージは入る。ということは、見えない理由は別にある。
(魂だけの存在を知覚できている……逆に、実体そのものを知覚できなくしている?)
視覚に干渉してきているんだ。
なくはない。
なら、対処法はある。
「チルル、白い霧」
白い霧、能力変化を下げられなくするフィールドを生み出す技。
実はこれ、氷タイプの技だ。
ゴーストだろうと関係ない。
「さて、霧があると光が乱反射するよね。視覚に干渉するのも、演算が間に合わないでしょう?」
チルルにゴッドバードの待機をさせて、機会を窺う。
すなわち、ムウマージの姿を捕らえることができる瞬間だ。
その一瞬を、虎視眈々と狙い続ける。
そしてそれは、すぐに訪れた。
霧の中で、黒い影が動く。
「そこ! ゴッドバード!」
勝負は一瞬。
空の柱でも、トップクラスの実力を持っていたのだ。
そこらの洋館で引きこもり、生存戦略から逃げ出したムウマージなど敵ではない。
一撃、ただの一撃の下、勝敗は決した。
「これで大丈夫! だから――」
私は振り返った。
そこにいた女の子は。
今日一日で仲良くなったその女の子は。
体が、薄れかけていた。
「やっぱり、こうなっちゃうよね」
「……なん、で?」
彼女が自分の手を見ながら、そう言った。
半透明になったその手を見ながらである。
「私の体は、ムウマージが作ってるんだもん。でも、もうその元気もないみたい」
私はもう一度振り返った。
そこには、地に伏せたムウマージの姿。
私が倒したのだから当たり前だ。
そのつもりで、一撃を放ったのだから。
だというのならば……。
「……私の、せいなの?」
思えば最初から、彼女はムウマージを倒すことに反対だった。
だけど、私が聞く耳を持たなかった。
私が倒したから。
だから、一緒にいられなくなった?
「チエちゃんのせいじゃないよ。むしろ、ありがとう。今なら私を縛り付ける力もない。成仏するチャンスをくれてありがとう」
「成仏って……」
「ムウマージがね、私の魂をこの世に縛り付けてたんだ。だから、私はこの家から離れられなかった。でも、ようやく天国に行けるよ。だから、ありがとう。私の事なんて忘れて、生きて」
叫んだ。
嫌だった。
別れたくなかった。
消えゆく手を、両手で包んだ。
「何を言ってるの! 友達の事、忘れられるわけがないじゃん!」
「……本当に? 私がいなくなっても、言葉が伝わらなくなっても、友達でいてくれる?」
「当たり前だよ!」
「……ありがとう。もう、大丈夫。それだけで、十分だよ」
先ほどまでそこにあった腕が、消失した。
包んでいた両手が空を切る。
最期に。
完全に消え去る直前に。
女の子が零した。
「チエちゃんに出会えてよかった。ありがとう」
姿が、完全に見えなくなった。
気配が、キッパリと断たれた。
「……ばか」
私のその言葉は、誰にも届かなかった。
少しの期間だけ(2/1~2/2)改行を大幅に減らしてたんですけど、そんなことしたら文章として成立しなかったのでまた戻しました。だってこの作品、構造が川柳とかに近いんだもん……(体言止めが多かったり、5音や7音を好んで使用してたり、接続助詞の次に句点が来たり、倒置法多用していたり……etc)。言っちゃえば全部、係り受けの解釈を狭める(orリズムを重視する)ためにやってることなんですけど、そのせいで改行を取っ払うと日本語として変な感じに……。要するにこのくらいの改行量を前提に作ってるからこれがベストな形だと判断しました。
改行多いと目が滑るとか聞きますけど、そもそも頭空っぽで読んで面白いを目指してるしそれでいいかなって。
全話に(改)が付きましたが、内容に変化は無いです。せいぜい格助詞と副助詞を一部差し換えたり、見つけた誤字を修正した程度。
流石に全文書き直す余力は無いです。改行多いって思ってる人は許して!
本当はアンケートで決めようと思ったんですけど、匿名でアンケート取る方法が無いことに気付きました。解散。