ボールはともだち! ~One For Ball~   作:HDアロー

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【ムウマージから女の子を解放した】
【新ルートが開拓されました】

   【零話】      【新ルート】
―――――――――一日目―――――――――
(朝)      ハクタイ空港
(昼) ハクタイの森 | ポケモンセンター
(夕)  森の洋館  | ポケモンセンター
(夜)  森の洋館  | ポケモンセンター
―――――――――二日目―――――――――
(朝)   ぬるぽ  |  【NEW!】←一話今ここ
(昼)   ぬるぽ  |   ???
(夕) ハクタイシティ|   ???
(夜)   ???  |   ???


一話 「きんのたま!」

 ハクタイシティに着いて『二日目』。

 私は探検セットを貰い、地下通路に向かっていた。

 本当はハクタイの森にモンメンを探しに行くつもりだったのだが、『昨日一日ポケモンセンターで過ごして』考えが変わった。

 

 仮にモンメンがいたとして、太陽の石が無ければ微妙じゃね?

 

 モンメンてあれでしょ。

 頭とお尻に申し訳程度に綿が付いてるレベルでしょ?

 それじゃあ私は満たされない。

 当然、早々にエルフーンに進化させたいわけだ。

 

 しかしその時、確実に太陽の石は手に入らない。

 物欲センサーが働くからね。

 アメリカの大企業かなんかは、暗号にそれを取り入れようとしてモンハンを解析したらしい。

 それくらいバカにできないものなのだ、物欲センサーと言う代物は。

 欲しいものは往々にして手に入らないものなのだ。

 

 そこで私は閃いた。

 先に太陽の石を手に入れる。

 その後でモンメンを探しに行く。

 すると生殺しにされずに済む。

 

 そういうわけで私は、偶然にも。

 【ハクタイの森に向かうよりも先に地下通路に向かうことにした】のだった。

 

 もしかすると、【昨日そのままハクタイの森に向かった】可能性もあるだろう。

 そんな無数の可能性が、世界には溢れている。

 その際生じる小さな差異が、未来を無限に枝分かれさせる。

 だけどそれを私たちは観測できない。

 多世界解釈というやつだ。

 

 生きていくしかないのだ。

 どれだけ理不尽であったとしても。

 どれだけ不条理であったとしても。

 自らの選択を噛み締めて、悔いてでも進むしかないのだ。

 

 だけど、そうだね。

 もしもあの時間()あの空間(場所)に戻れるならば。

 私はきっとやり直すだろう。

 こんな未来を、私は望んだんじゃない。

 

 私は走る。

 そいつから逃げるために。

 すぐそこに、絶望が近づいているのが分かる。

 

 岩壁が続くこの道を。

 わずかな灯りを当てにして、一心不乱に駆け抜ける。

 逃げるんだ。

 逃げなくちゃいけない。

 

 そいつは、すぐそこにいる。

 

「それはおじさんの金の玉!」

 

「来るな! この変態!」

 

 そう。金の玉おじさんだ。

 さっさと逮捕されろ!

 なんでこんな歩く公然わいせつ罪が許されてるんだよ。

 警察は仕事しろ。

 

 右に、左に、また右に。

 幾重にも枝分かれするその道を、直感に任せて走り抜く。

 

 肺が苦しい。

 張り裂けそうだ。

 

 足が重い。

 引きつりそうだ。

 

「もう、無理……」

 

 そこで私は、振り返った。

 追ってくる様子はない。

 足音もしない。

 

 肩で顔の汗を拭った。

 乱れた呼吸を整える。

 変態が寄ってくる気配はない。

 いや、気配とか読めないんだけどね?

 

「ふぅ、まいたかな……?」

 

 どうにか逃げ切れたようだ。

 いや本当に、何を思ってあの変態を作ったんだ。

 小学生男子はあれでキャッキャ出来るんでしょ?

 私には絶対無理だ。

 分かり合えない生き物だよ。

 

 回れ右して、また歩き出す。

 いや、歩き出そうとした。

 振り返ればそこに、奴はいた。

 

「おじさんの金の玉だからね!!」

 

「きゃぁぁぁぁ!」

 

 地下通路に悲鳴が響き渡った。

 

 酷い目に遭った。

 私のたから入れ*1には、金ぴかに光る玉が入っている。

 小ボケを挟む癖のある私をもってしても、『エロ同人誌みたいに!』なんて戯言を言う余裕すらなかった。

 本当に、終わったと思ったよ。

 

 ……これ、しばらく夢に出て来るんじゃなかろうか。

 逆に考えよう。

 ほら、おじいちゃんの家にいた時にも差し入れしてくれた人とかいるじゃん。

 あれと同じだと考えよう、うん。

 

 気を取り直して、探検セットに含まれるレーダーを取り出した。

 近くの岩壁を示している。

 あそこに道具が埋まっているのかな?

 多分そうだよね。

 

 同じく探検セットから、ハンマーとピッケルを取り出した。

 まずはハンマーで大まかに削っていく。

 お、こんごうダマ見っけ。

 ここからはピッケルを使って……あっ。

 

 あと少しで掘り出せそうというところで、壁が崩れてしまった。

 そっか、ゲームの時は壁の強度が視覚化されていたけど、こっちだとわからないんだ。

 その辺は感覚を覚えるしかないか。

 もう一回レーダーを使って……。

 

(このレーダー、どうやって実装してるんだろう?)

 

 どこかしらに何かしらのセンサーを取り付けているのだろうけれど、一体どんなセンサーを使っているのやら。

 

(気になったけど、どうせ分かんないからいいや)

 

 分からないことを考えたって仕方ない。

 そう、金の玉で喜ぶ男子の気持ちが分からないように、世界には分からないことが溢れているのだ。

 だというのに、人の一生は驚くほど短い。

 すべてを知ることなんてできないのだから、知るべきことと知らなくていいことを取捨選択しなければいけない。

 レーダーとか知らんし。

 必要になったら調べるよ。

 

 というわけで、今度は慎重に掘り返していくよ。

 お、プレート出た! ラッキー!

 あっ、こっちは要石(かなめいし)じゃん!

 今度はジュエル!?

 最高じゃんこの環境!

 わたしもうここで生きていく!

 

「って違う!」

 

 私の目的は何だ!

 もふもふとスローライフすることだろ!

 手段を目的にしてどうする!

 

 なんてことを考えていられたのも、最初の内だけ。

 気が付けばへとへとになるまで、無我夢中で化石を掘り続けた。

 けれど、結局太陽の石は出なかった。

 ふっ、やはりね。

 

「とはいえさすがにこれ以上は足腰が持たない。また明日以降に持ち越しだね」

 

 そうして、潜ってきた場所に戻ろうとした。

 戻ろうとして、異変に気付いた。

 先ほどまで無機質だったこの通路に、花弁が舞い散っていた。

 これは一体……あっ。

 

 花びらトラップとかありましたね!! すっかり忘れてたよ!

 

「チルル、霧払い!」

 

 マイクを使え?

 いやいや、舞い散る花びらを吹き飛ばすとかどんな肺活量なのさ。

 私はマサラ人でもフタバ人でもないんだ。

 普通にチルルに任せます。

 

「もしかしてトラップって、あちこちにある?」

 

 そう思い、私はレーダーを起動する。

 地面は輝いていた。

 それはもう、太陽に照らされた夏の海のようにキラキラと。

 いや誰だよこれ仕掛けたの。

 ……全部回収してしまおう。

 

「あれ? 結構時間たったと思ったけど、夕暮れまでまだ時間あるね」

 

 トラップを回収しおえた私は、地表に上がってきていた。

 そして抱いた感想が、今口にした言葉そのまま。

 へとへとになるまで採掘してたのになぁ。

 思ったよりも高い位置に日はあった。

 

 体の節々は痛むけど、まあ子供の体だし。

 明日には治ってるでしょ。

 ならまあ、別に急いでセンターに戻る必要もないかな?

 折角だし、街巡りでもしてみようか。

 

「そうだ! あのディアパルが混ざった感じの石像! あれを見てこよう!」

 

 そうと決まれば善は急げだ。

 先ほどまでの疲労はどこへやら。

 私はルンルンとそちらに足を運んだ。

 

 

 

 像の前に立つ。

 思ったより時間が経ってしまっていた。

 茜さす陽に影が伸びている。

 

 石像には、説明のプレートが打たれている。

 ところどころ欠けているが、なんとなく分かる。

 特に意味はないが、私は一つ一つを読み上げた。

 

「生み出されしディアルガ。私たちに時間を与える。笑っていても、涙を流していても、同じ時間が流れていく。それはディアルガのおかげだ」

 

「生み出されしパルキア。いくつかの空間を作り出す。生きていても、そうでなくても、同じ空間に辿り着く。それはパルキアのおかげだ」

 

 こんなに立派な石像だったんだなと、私は仰ぎ見た。

 神々しさというのだろうか。

 雨風に晒される青空にあるというのに、朽ちないその姿は圧巻の一言だった。

 壮大で荘厳な雰囲気が滲み出ている。

 

 私の口から、音が零れた。

 言葉にもならなかったが、言葉にするなら感嘆の声というやつだろうか。

 その時だった。

 奇妙なことが起きた。

 

「何……これ」

 

 石像が輝き始める。

 かと思えば、時間が、空間が歪み始めた。

 まるで違う世界と融合するように。

 世界がうねりを上げて、混ざり合う。

 

 乗り物酔いにあったかのような吐き気を覚えて、ふらふらと立ち上がる。

 立ち上がり、前を見た。

 その先には、見紛うこともない。

 

「……私?」

 

 私がいた。

*1
地下通路で手に入れたバッグにしまえる道具を保管しておく袋。決してチエちゃんの宝箱とかではない。




ここを一話とする。
最後に出てきたドッペルゲンガーはゼロ話のチエちゃん。
前話がちょっと長かったのは無理に詰め込んででもゼロ話にしたかったからです。

   【零話】      【新ルート】
―――――――――一日目―――――――――
(朝)      ハクタイ空港
(昼) ハクタイの森 | ポケモンセンター
(夕)  森の洋館  | ポケモンセンター
(夜)  森の洋館  | ポケモンセンター
―――――――――二日目―――――――――
(朝)   ぬるぽ  |   地下通路
(昼)   ぬるぽ  |   地下通路
(夕)   ハクタイシティ(石像前)
(夜)   ???  |   ???
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