INFINITE Be The One!!!   作:テントウムシ!!!

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第28話:ラブコメは唐突に、続

虚Side

只今、絶賛混乱中の布仏虚です。

何故此処に兎野君がいるのでしょうか。

昨日、ダリルと話している内に身体が熱くなってきて、視界が徐々にボヤけていき・・・。

目が覚めた時にはベッドで寝ていました。

起き上がろうとしたのですが、頭がズキっとし、起き上がることが出来ず、頭がグラグラとしていました。

間違いなく風邪をひいていたようです。

問題はその次です。

何故か私の隣で兎野君が椅子に座って寝ていたのです。

 

「ん?なんで、そんな不思議そうな顔してるんだ?」

 

「え、えっと、なぜ、いるのですか?」

 

そう問いかけると、兎野君は呆れたような顔をしていました。

 

「お前が風邪ひいたのに黙って授業なんか受けれるか」

 

少し顔を赤くしながら私に言ってきました。

直ぐに申し訳なさそうな表情を浮かべ、

 

「何時も迷惑掛けてるし、原因は俺にあるかもしれないしな。せめてこういう時位は俺を頼ってくれ」

 

申し訳なさそうに、それでいて、とても優しい表情を浮かべながら、私の頭を、そっと撫でてくれました。

男の子に頭を優しく撫でられるなど初めてで、正直とても恥ずかしくなってしまいましたが、同時に兎野君は私のことを本気で心配してくれていることに、昨夜と同じく心がポカポカと暖かくなりました。

私自身、体調管理を多少怠っていたということもあるので、この様な失態を犯してしまいました。

更識家のメイドとしては失格です。

 

「そんなこと、ありません。寧ろ頼っているのは、私のほうです。迷惑などと思っていませんよ」

 

「それでもだ。前に俺が倒れた時も、何時も近くに布仏がいてくれたからな。弱ってる時に誰かが近くにいてくれると安心するだろ。まぁ、だから今度は俺の番だ」

 

誰でもいい訳ではありません。大切な人が近くにいてくれることに安心するのですね。

そんなことを言われたら、ドキドキしてしまいます。

今の私の顔はきっと真っ赤になっているでしょうね。

そう思うと、気恥ずかしく感じてきました。

私は不意に兎野君から目を逸らし、ベッドに潜るように顔を隠しました。

 

「そう、ですか。ありがとう、ございます」

 

「とりあえず、もう少し寝てろ」

 

「はい、おやすみ、なさい」

 

「あぁ、おやすみ、『虚』」

 

目を閉じ、薄れゆく意識の中で、私の心臓はひたすら速く鼓動を打っていました。

この感情に名前があるのであれば、誰か私に教えてください。

虚Sideout

 

春万Side

昨夜に遡る。

布仏達を見送った後、心のざわつきを振り払うように、一人で新たにフルボトルの作成に没頭していた。

ダリルとの模擬戦に向けて、新たなフルボトルを使うことを決めていた。

ダリルは俺のビルドをよく知っており、更には今回から専用機ということでもあり、ダリルには大きなアドバンテージがある。

今回は盗まれることが無いよう、クローズドラゴンを待機させて、その上ロックも更に厳重にしてある為、盗まれる心配はないだろう。念には念を入れて隠しカメラも用意してある。

その為、今は安心してダリルとの模擬戦に使用するフルボトルと戦術を練りつつ、新たなフルボトルとの出会いにワクワクしていた。

そんな中、突如開発室の扉が開いた。

 

「は、春万!!!虚が、虚が」

 

扉を開けたのはダリルであった。だが、その表情は穏やかではなかった。

 

「どうした、布仏に何かあったのか?もしかしてスマッシュか!いやだが、アラートは鳴っていないし」

 

「いや、スマッシュじゃない。けど、虚が倒れたんだよ!!!」

 

布仏が、倒れた?

そう言われた瞬間、俺は急いで布仏の元へ走った。

 

 

 

部屋に着くと、ダリルが運んだのか、布仏はベッドに寝ていたのだが明らかに辛そうな表情をしていた。

頭の額を触ってみると、明らかに常時よりも熱くなっていた。

 

「熱だな。でもこの時間じゃ、ファルティナ先生も居ないだろうな。明日までどうしようもないな」

 

「オレ、風邪ひいたことないからこういうの分からないんだよ」

 

「記憶喪失の俺にそれを言うか」

 

「え?お前、記憶喪失なの?マジか!!!」

 

そういえば、ダリルにはは俺の記憶が無いことを言った覚えがなかった。

やってしまったと思ったが、今はそれどころではない。

 

「その話はまた今度な。とりあえず、額冷やさないと。氷水と濡れタオルを用意してくれるか?」

 

「お、おう。分かった」

 

とりあえず病人への対処法は考えれば大体わかる。

汗をかかせて、体に溜まった熱を出させる。

ただ、汗をかいたままにしては風邪を悪化させるだけなので、適度に拭かなければならない。

 

「体はダリルに拭かせるか。後は経過を見守るだけだな」

 

「ほい、これでいいのか?」

 

「あぁ、助かる」

 

それから俺は付きっきりで布仏の看病をしながら、一夜を明かした。

 

早朝、

今日は未だ平日であるため授業もあるのだが、布仏がこんな状態では授業なんか集中出来ないだろうと思い、ダリルに休むことを伝えた。

 

「それじゃ、行ってくるわ。一応、本宮先生には言っとくが、それが通るかは分からないぞ」

 

「後で補習なりなんなり受けると言っておけば、なんとかなるだろ。とりあえず頼むわ」

 

「はいよー(たく、こいつら早くくっつけ!!!)」

 

ダリルは何故か俺に対して生暖かい視線を送りながら部屋を出ていった。

それからは布仏をちょくちょく経過観察しながら、うとうとしていた。途中、

 

(布仏が眼鏡を外した顔見たこと無かったな。眼鏡を外しても美人なことに変わりないな)

 

などと考えていたのは内緒だ。

そんな時、布仏が目を覚まし、此方を見て目を見開いていた。

それから少し話しをして、

 

「ーーーおやすみ、なさい」

 

少し安心したのだろうか、いつもと違い、とても柔らかな笑顔をしながら目を閉じた。

俺もそれに返すように、

 

「あぁ、おやすみ、『虚』」

 

そう、自然に口から漏れた。

布仏には聞こえなかったようだが、そう言った俺は少し気恥ずかしくなっていたが、とてもしっくりときていた。

 

それから昼過ぎ頃にお粥を作っていると、ファルティナ先生が部屋を訪ねてきた。

ファルティナ先生に布仏の体調を診てもらった所、やはり疲れによって風邪を拗らせてしまったようだ。

 

「でも、対応が早かったみたいだね〜。これなら今夜中には熱は引くと思うよ〜。春万くんはグッジョブだね〜」

 

「いや、原因は俺にあると思うので。本当はこんなことにならないように、少し休んで欲しかったんですけどね」

 

「虚ちゃんは君の為に頑張りたかったんだと思うし、そんなふうに思い込むこともないと思うよ〜。ちょっと頑張り過ぎちゃっただけだし」

 

俺の為に。

そう思うと、余計に申し訳なくなってしまった。

実際、何時も無理やり付き合わせてしまっているので、やるせない。

そんなふうに思っていると、

 

「君も、虚ちゃんの為に頑張ってるでしょ〜。お互い様。持ちつ持たれつの良い関係だね」

 

「・・・そう、ですかね。うん、そうですね」

 

「うんうん、素直でよろしい。それじゃあ後は私が看てるから、戻ってもいいよ〜。あと、明日はちゃんと登校すること」

 

ファルティナ先生には本当に何時も助けられる。

何だかんだで俺達のことを何時も見守っていてくれる。

本当に有難い存在だ。

 

「分かりました。あ!さっきお粥作ってみたので、布仏が起きたら食べさせてあげて下さい。味は安心していいですから」

 

「了解〜!!!それじゃ、お疲れ様」

 

「布仏をお願いします。それでは」

 

布仏をファルティナ先生に任せて、俺は部屋を後にした。

 

 

 

翌日、

登校する前に織斑先生に呼ばれた。

案の定、放課後に昨日の補習を行うことを言われ、ダリルとの模擬戦は延期になってしまった。

 

(後でダリルに謝っとこ)

 

そうして教室に入ると、クラスメイト達全員が俺の事を見ていた。

 

「ん?な、なんだ?」

 

中には顔を抑えながら、チラチラ俺を見ていた。

そんな中、俺の後に布仏が教室に入ってきた。

 

「あ、兎野君。おはようございます。昨日は、ありがとうございました」

 

すると、布仏は頬を赤らめながら、昨日のことに対しての感謝を述べると、そそくさと自分の席に着いてしまった。

俺も追うように席に着いた。

 

「おはよう。体調はもう大丈夫か?」

 

「はい、お陰様で。治りも良かったので」

 

「そいつは良かった」

 

そんなふうに話していると、本宮先生が教室へ入ってきた。

 

「おはようございます。お、今日はちゃんと来てるね。フフ、授業休んでまで看病しちゃうなんて、本当に仲がいいね」

 

するとクラス全員が俺達を生暖かい視線を送ってきた。

隣の布仏も不思議そうな顔をしていた。

みんななんかあったのかな?

 

 

何処までも鈍感な二人であった。

 

 

 

 


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