INFINITE Be The One!!!   作:テントウムシ!!!

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第30話:永久に突き進みし反逆者

春万Side

 

【定刻の反逆者=海賊レッシャー】

 

俺は新フォーム、海賊レッシャーフォームにビルドアップし、ダリルのヘル・ハウンドを見つめていた。

 

「海賊?新しいヤツか。やっぱりあるだろうなって虚が言ってたな。だけど、寄りにもよってベストマッチかよ」

 

ダリルは俺の新たなフォームに驚きつつも、想定の範囲内と捉えているようだ。

それから、ダリルの『ヘル・ハウンド』をもう一度よく観察し始めた。

能力的には第2世代を圧倒的に凌駕しているが、その分の莫大なエネルギーを補うのは現技術では、長時間運用は難しいだろう。

その為、そろそろガス欠になりかねない状態だろう。

燃費を抑えた戦いをさせないように、虚が考える様な戦術を想定し、それの裏をかくために、対策を重点的に置いてきそうなベストマッチはあえて避けた。

ダリルと正面から真っ向勝負するには、どうしてもパワーが足りない。ゴリラモンドは完璧に対策されているだろうから使えなかった。

今回の海賊レッシャーフォームがダリルに有効かは未だ分からないが、やってみる価値はある。その為の秘策も用意している。

 

「それじゃあ、行くぞ!!!」

 

俺は拡張領域からドリルクラッシャーを取り出し、ガンモードへ変え、両肩に付いている特殊武装を狙い撃つ。

ダリルは咄嗟にそれを最低限の出力で避け、カウンターとしてヘル・ファイアを撃ってきた。

お互いに撃ち合う射撃を避け続けること、約10分、その時が来た。

ダリルの両肩の砲門から火球が放出しなくなった。

火を生成するエネルギー尽きたようだ。

 

「ちっ、エネルギーが尽きたか」

 

「やはりな、最初から飛ばしすぎなんだよ。これで見えたぞ」

 

俺はいつもの様に勝利を確信し、左手を左目になぞるようにモーションを行った。

 

「勝利の法則は決まった!!!」

 

しかし、ダリルの顔はそれすらも想定内の様な顔をしていた。

虚がその事を想定していないはずはないか。

しかし、特殊武装が使えなくなったこの状況で、ダリルに残されるのは、その腕っ節のパワーだ。ナイフ戦闘も視野に入れるが、接近戦を許さなければ、確実に勝てる。

 

「来い、『海賊ハッシャー』」

 

ドリルクラッシャーを拡張領域に戻し、掛け声と共に拡張領域から水色の弓型の武装を取り出した。

 

「なんだそれ?弓か?」

 

「新開発した最強武器だ。まぁ、その威力は身をもって味わっていけ」

 

そう宣言し、海賊ハッシャーに備え付けてある電車型の攻撃ユニット『ビルドアロー号』を射撃攻撃時件、エネルギー供給用のレール『トレインホームチャージ』になぞるように引き、攻撃モーションをとる。

軽くエネルギーが溜まった所で、ビルドアロー号から手を離す。

すると、ビルドアロー号がエネルギー体となりダリルに向かって、矢の如く放たれた。

ダリルはそれを簡単に避けたが、俺は追撃を行い4発目でダリルに直撃させた。

 

「グワッ。な、なんだこの威力。ガトリングの十発分かよ」

 

「驚くのはまだ早い」

 

更に俺はビルドアロー号を引き、今度はエネルギーを溜める。

 

【各駅電車】

 

そう鳴った所でビルドアロー号から手を離し、もう一度ダリルに向けて放つ。

 

【各駅電車=出発!!!】

 

「危ねぇ、そう簡単に当たってたまるか!!!」

 

先程よりもエネルギーが溜め込まれたチャージショットを行った。

ダリルは避けようとしたが、海賊ハッシャーのグリップ部分である『ブレイグリップ』には動作感知システムが搭載されており、敵の挙動や使用者の癖等を記録、分析し常に最適の攻撃を行うことができるようになっている。

ダリルの機動は既に記録されているので、最早ダリルに俺の攻撃を避けることは出来ない。

しかし、まだ各駅電車のスピードはチャージショットの中でも最も遅い。ダリルが避けている内に、もう一度ビルドアロー号を引っ張り、エネルギーを再チャージする。

 

【各駅電車】【急行電車】【快速電車】

 

【快速電車=出発!!!】

 

「ちっ!こいつ」

 

先程の各駅電車よりも速く威力の重い快速電車でダリルの致命的なダメージを与える。

それからトドメの一撃として、ビルドアロー号を引き再々チャージを行う。

狙いは完全に修正を終え、確実に当てる自信がある。

 

【各駅電車】【急行電車】【快速電車】

 

ビルドアロー号にフルチャージを告げる音が鳴る。

 

【海賊電車!!!】

 

ダリルに快速電車の攻撃がヒットし、ダメージによる停止状態中に、ビルドアロー号から手を離し、海賊ハッシャーの最高威力の必殺技を放った。

 

「これでフィニッシュだ」

 

【海賊電車=発射!!!】

 

最高威力を誇る海賊電車は一撃当てるだけでは消えず、何度も何度も追尾し、相手の残りSEを完全に消滅させるまでひたすら攻撃を続ける。

海賊レッシャーフォームは左目の『レフトアイ海賊』によって、視認されているターゲットに対し、敵の攻撃を見極める能力なども備えているため、動きをより理解しやすく、ターゲットを逃すことは無い。

ダリルにひたすら攻撃を続けるビルドアロー号にエネルギー切れのヘル・ハウンドは為す術もなく、SEを完全に削り切った。

絶対防御が発動し、模擬戦は終了となった。

俺は変身を解除し、アリーナで寝転んでいるダリルに歩いて近づいて行った。

 

「今回も俺の勝ちだな、ダリル」

 

「だぁー、くっそ。今回は勝てると思ったんだけどなぁー。毎度毎度チートアイテムばっか出しやがって」

 

「そんな、もっと褒めてくれ。この天っ才物理学者の俺を、この大発明を!!!凄いでしょ!最高でしょ!!天っ才でしょーーー!!!」

 

「Fa○k!!!」

 

ダリルは恨めしそうな顔をしながら、中指を立てて、俺に悪態をついた。

今回の実験は大成功で終わることが出来た。

今回のベストマッチフォームである海賊レッシャーフォームは、今後もかなり有用に使えるだろう。

ホークガトリングフォームは空中からの広範囲攻撃を可能とし、この海賊レッシャーフォームは一点集中型の遠距離攻撃を可能とした。

これならばブラッドスタークやナイトローグにも充分通用するだろう。

加えて、今回、ダリルの使ったヘル・ハウンドからも興味深い能力を見ることが出来た。

ナノマシンの炎を用いた武装。

まだまだ未完成な代物のようだが、ビルドにも充分使える技術である。

せっかくだから開発部全員で取り掛かれば、想定以上のものが出来るだろう。

それにしても、第2.5世代型がこれ程強力であれば、第3世代機はかなり未知なる技術に溢れているのではないだろうか。

その技術をビルドに活かすことが出来れば・・・。

 

(ISにも興味が出て来たな)

 

後に、俺はこの学園でISにより積極的に触っていくのであった。

 

 

 

アリーナから出て、現在食堂で虚と夕飯を食べていた。

ダリルは眠いらしく、早めに部屋で休んでいる。

それにしても、先程まで戦っていたからだろうか、体が少し重く感じた。

しかし、疲れを感じている暇などない。開発室に戻ったら、今回の戦闘データを取り出し、ビルドドライバーと海賊ハッシャーのメンテナンスを行わなければならない。

加えて明日から12月であるため、生徒会で何か会議を行うらしい。

 

「春万君、どうしました?先程からボーッとしていますが。どこか体調が優れないのですか?」

 

「いや、明日の会議のことを考えると憂鬱に感じてな」

 

「そうでしたか。明日は月一の先生を含めた会議でしたね。それでしたら、ドライバーのメンテナンスも今日の内にやっておかないといけませんね」

 

「そうそう。研究したいな〜」

 

「フフ、仕方ありませんよ。明日はなるべく早く終わらせられるように頑張りましょう。メンテナンスは私も手伝いますから」

 

「別にいいぞ?病み上がりだろうし」

 

「お構いなく。2人でやれば直ぐに終わるでしょう。早く終わらせて体を休めて下さい」

 

虚は微笑みながら俺にそう言った。

虚と会ってから、最初は余り笑わず仏頂面の多かったのだが、この半年程で笑顔が増えるようになった気がする。

それも、とても可愛らしく年相応の屈託の無い素敵な笑顔だ。

思えば、いつも迷惑をかけて、それに呆れた顔をしながらも最後まで付き合ってもらったり、怪我した時には誰よりも早く、それでいて隣にいてくれている。

本当にいいパートナーだと、俺は切実に感じた。

 

「?」

 

虚は首をコテンとしながら俺を不思議そうに見ていた。

 

「それじゃ、よろしく頼むわ、虚」

 

「っ///はい!!!」

 

俺達はいつもの様に開発室に向かっていくのであった。

 

2人の距離は始まりの時から少しづつ縮まっていっていた。

 

 

 

 

 


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