INFINITE Be The One!!!   作:テントウムシ!!!

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第35話:新年は更識家にて?!

春万Side

 

「どうして、こうなった?」

 

『グワァ〜〜〜!!!』

 

俺はそう吐露しながら、まるで漫画にあるような大きな日本屋敷に来ていた。

クローズドラゴンも、まるで俺を嘲笑っているように俺の真上を飛び回っていた。

そして、俺の目の前の家の門には『更識』とだけ書かれていた。

 

「何をしているんですか?早く入って下さい。お嬢様がお待ちですから」

 

『グワァ〜、グワァ!!!』

 

「お、おう、了解です」

 

何故俺が更識家にいるのかは昨日を遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日、

クリスマス会も終わり冬休みに突入し、IS学園の生徒達は次々と帰省を始めていた。

留学生も、学年末のリーグマッチに備え、専用ISを調整しに戻ったり、最後の調整として訓練を行う為に帰国していた。

そのためダリルも帰国していた。

夏休みとは違い、冬休み期間は食堂で働くおばちゃん達も仕事納めの為、食堂は開いていないため、帰省する生徒が殆どであった。

そこで俺は困り果てていた。

元々住む場所もこのIS学園内の開発室以外はない為、態々ご飯を食べるには外に行かねばならなかった。

行く宛もない為、開発室で一人、途方に暮れていたのであった。

 

「あぁー、いっそカップ麺で暮らすか?いや、毎日カップ麺とか飽きるな。それに体に悪いだろうし・・・。それに食費も馬鹿にならないし。どうしようか?料理するか〜?」

 

俺は新たな金色のフルボトルを一本持ちながら頭を抱えていた。

このフルボトルは《ロックフルボトル》。

クリスマス会が終わり、開発室に帰ってきた時に出来上がっていたフルボトルだ。

今回は一本しか出来なかったため、ベストマッチを探すために既存のフルボトルだけで探していたのだが、それも先程終わったところである。

結果、ベストマッチは見つからなかった。

そのため、気分も少し落ち込んでおり、加えて先程までの問題が頭に浮かんでしまったため、どうしようもなく空気が沈んでいた。

 

「はぁ〜、お先真っ暗だな。最っ悪だ」

 

そんな時、開発室の扉が開き、いつも通り虚が来た。

だがその姿は、いつもの制服ではなく私服であった。

 

「おはようございます春万君、って空気が沈んでいませんか?どうかしましたか?」

 

「おはよう、いやなに、食費だとかを考えてたらお先真っ暗状態でな。ちょっと憂鬱になってた。それはそうと、今日はどっか行くのか?」

 

「はい、これから実家に帰省しようと、それで春万君に・・・」

 

「なんだよ、一々報告しに来なくても大丈夫だぞ。メールで教えてくれれば大丈夫だし」

 

そう言うと、虚は何故か不満そうな顔をしていた。

そして次の言葉に俺は唖然としてしまったのだった。

 

「違いますよ、一緒に来ませんかと言いに来たんです」

 

「・・・・・・は?」

 

「は?じゃないです。どうせこのままここに居ても不健康な生活を送るだけでしょう。それに・・・。いえ、取り敢えず行きますよ。準備して下さい!!!」

 

「え、いや、ちょっと!いきなり強引過ぎないか?」

 

「私としては、一緒に着いてきて欲しいのですが・・・。ダメ、でしたか?」

 

「ヴェ///わ、分かったよ、仕方ないな・・・」

 

何故か虚の上目遣いには適わなかった。

心臓がバクバクと音を立てて収まらなかった。

それを見て、虚は嬉しそうにしながら用意を始めていた。

 

「フフ、ありがとうございます。早く用意しましょうね。車は既に校門に来ていますから」

 

「え?車?まぁいいけど・・・」

 

そうして用意を済ませ、校門へ向かうと萌え袖というものをした、何処かのほほんとした少女がいた。

その少女はこちらに気づくと両手を大きく振りながら飛び跳ねていた。

 

「あ!お姉ちゃーん!!!こっちこっち!!!」

 

お姉ちゃん?!

 

「本音、迎えありがとね」

 

「ん〜ん。お嬢様がお姉ちゃん迎えに行ってあげてって言われたから〜。お嬢様、ちょっとだけ忙しそうだったんだ〜。それに私も早くお姉ちゃんに会いたかったからラッキ〜!!!」

 

そう言って虚に抱きついていた。

姉妹中はとても良いようだ。

虚自身も、久しぶりに会えて嬉しそうだ。

ただ、性格があまり似ていないな。

しっかり者の下は大抵だらっとしてしまうのだろうか。

 

「そう、ありがとう。簪お嬢様の方は元気だった?」

 

「うん、元気だよ。あ!えっと〜、後ろにいるのはお姉ちゃんの彼氏?」

 

「ち、違うわ!!!へ、変な勘違いしないの!!!」

 

「そうなの〜、てっきり・・・」

 

「俺は兎野春万だ。えっと虚とはクラスメイトで研究仲間、だよな?」

 

「わ、私に質問されても・・・。まぁ、認識としては正しいと思いますよ。ほら本音も挨拶」

 

「は〜い!布仏本音です!IS学園中等部二年生でーす。ヨロシクね〜!!!」

 

袖に若干隠れた小さな手を出てきた。

その顔もとてもニコニコしていて、春でも無いのに場がとても和やかになっていくようだった。

彼女の笑顔からはふわふわとした優しさが滲み出ていた。

 

「あぁ、よろしくね」

 

「私のことは本音で良いよ〜!!!それにお兄さんはと〜っても優しそうだよね〜。う〜ん、そうだ!お兄さんのことは『ウサのん』って呼んでいい?」

 

「ちょっと本音、仮にも、一応年上よ」

 

「ウサのんって・・・・何か面白いな!!!良いぞ!!!ったく本音ちゃんは可愛いな」

 

「えへへっ、ヤッタ〜!」

 

見ていて和む。

居るだけで和む。

この子がいれば世界は平和になるのではないか?

そんなくだらないことを考えながら、本音ちゃんの頭を撫でていると、虚からの視線を感じ取った。

ちらっと見ると、ジトっとした目で俺達を見ていた。

 

「本音、そんな自意識過剰な自称天才物理学者(笑)なんかに、直ぐに心を許さないの。それよりも早く行かないとお嬢様に怒られます」

 

「ちょっと虚さん?なんか(笑)って何?ってアツ!やめろクローズドラゴン」

 

『グワァ〜!!!』

 

クローズドラゴンは俺に向かって軽く火を吐きながら、虚の周りを軽く飛び回っていた。

クローズドラゴンは虚のことをかなり気に入っているみたいだ。

 

「うわぁ凄い!!!何これ、ドラゴン?」

 

『グワァ〜〜〜!!!』

 

本音ちゃんもクローズドラゴンに興味津々であった。

今日は開発室に何も置いてきていないため、クローズドラゴンも一緒に連れて来たのだ。

クローズドラゴンも外に出ることが好きな様で、結構はしゃいでいた。

 

「ほら行きますよ!!!」

 

「はーい。それじゃあ乗って乗って!!!出発進行〜!!!」

 

「無視、無視ですか〜。酷い・・・」

 

「ほら早く乗ってください。それと・・・」

 

本音ちゃんはそそくさと女子席に乗ってしまった。

虚は俺に急かしてきた。

ドアを開けて乗り込むと、隣に乗ってきた虚がそっと耳打ちしてきた。

 

「それと、本音に手を出したら、キザみますからね・・・」

 

凍えるような殺気を放ちながら俺に言ってきた。

恐怖を感じ固まってマトモに虚を見れなかった。

丁度、俺が虚の方を見ていない時、虚は頬を小さく膨らませていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在、

俺の目の前には大きな屋敷が聳えていた。

俺は緊張しつつ、虚と本音ちゃんについて行きながら更識家の屋敷へと入っていった。

玄関には、水色のショートヘアの少女、更識楯無が仁王立ちしながら、待ってましたとばかりの表情をしていた。

 

「やっと来たわね。おかえり、虚ちゃん、本音ちゃん。そして、いらっしゃい、春万君?」

 

「お邪魔します・・・」

 

「只今戻りました、お嬢様」

 

「うんうん、春万君は緊張してて可愛いわね。それじゃあ、上がって。お父さんが待ってるわ」

 

そうして釣られるがままに、居間へと足を運んだ。

そこには如何にも威厳の有りそうな袴を着た男性が座っていた。

 

「おかえり、虚、本音。そして君が、兎野春万君だね」

 

「は、はい。兎野春万、です」

 

「「只今戻りました、旦那様」」

 

虚も本音ちゃんも、頭をサッと下げて敬意を表していた。

というか、旦那様って何なんだ?

取り敢えず、俺も虚達に合わせるように頭を下げた。

 

「私は16代目更識家当主、更識刀夜だ。君を歓迎しよう」

 

「よろしくお願いします。えっと、刀夜さん」

 

「あぁ、よろしく。楯無、後は頼むぞ。私は未だ仕事が残っているからな。春万君、後でゆっくり話そう」

 

「私達も仕事があるので、失礼しますね。行くわよ本音」

 

「は〜い、ウサのん、後でね〜」

 

刀夜さんはそう言うと、すっと立ち上がり仕事へ向かっていった。

虚達も用があるようで、続いて退出して行った。

楯無は、刀夜さん達が完全に退出したことを確認してから、こちらへ向き座り直し、俺に説明を始めた。

 

「さてと、春万君も取り敢えず座って。今日、貴方に何故ここに来てもらったかをこれから説明するから」

 

「あぁ分かった」

 

「さてと、貴方をここに連れて来た、と言うよりは保護したって方が正確にはが正しいわね。まぁその理由はね、IS委員会にあるのよ」

 

「は?保護?それに何でIS委員会なんだ?俺、関係無くない?」

 

「大アリよ。これまで貴方は男でありながらIS学園に通っていた。これが大問題なのよ。IS委員会はこのことに対してIS学園に苦言を申してきたの。男は即刻退学させろって」

 

「だがそれは、男でも整備や開発技術がある人間をIS学園でこれから取り入れていくための前段階として入学を許可するって学園長が言っていたよな?」

 

「えぇ、だからその文句を弾く為に我々更識家の人間がお目付け役として近くに常にいたでしょう?」

 

「・・・・あ、虚のこと?」

 

「そうよ。だけど、問題は仮面ライダーに関してなの。なにせIS以上の戦闘力を誇る武力を持っているのよ。委員会の人間が動かない訳ないわ。今の貴方はね、現状、篠ノ之博士と同じレベルで危険人物とされているのよ」

 

「・・・・マジ?」

 

少し考えれば簡単に思い浮かんだことである。

ISという、現状最強の兵器を超える力を持ったビルドに対して、ISを神聖視している人間達からすれば邪魔でしか無かった。

 

「今回の冬季休業を期に、貴方を拘束して色々と調べるつもりだったらしいわ。でも、それは私達更識家が困るのよ」

 

「怖っ!ってか何でそこで更識家が困るんだ?」

 

「貴方が亡国機業に対抗出来る唯一の存在だからよ」

 

「なるほど、亡国機業か」

 

「そう。私達更識家は現在、亡国機業について調査してるのよ。勿論、このことは郊外厳禁よ。それでここ最近、貴方がIS学園に通いだした頃だったわね。亡国機業にある動きがあったの。これを見て貰える?」

 

「ん?これは・・・」

 

楯無が写真を一枚出してきた。

そこに映っていたのは、ナイトローグであった。そしてそのナイトローグの手には、未だシルバーカラーをしていたプロトタイプ型のビルドドライバーであった。

 

「何でナイトローグがビルドドライバーを持ってるんだ?でも見た限り、未だプロトタイプだ。何処でこれを?」

 

「ここは亡国機業の元アジト。今は変わっちゃってるみたい。でも貴方の使っているドライバーがこれと同じ種類で、しかも完成された状態で使われていた。それを見たら普通、怪しむわよ。だから貴方を監視していたの。亡国機業と関わりがあるんじゃないかってね」

 

「そう、だったのか。でも俺は記憶がなかったからな」

 

「それでも、もしもを考えてね。でもこの半年貴方を見て、一応大丈夫だろうという結論に至ったのよ。まぁ一応だからね」

 

「何で知らない奴らのせいで疑われなきゃいけないんだよ。というか、ナイトローグは敵だぞ!!!」

 

「えぇ、その件もあるからこそよ。ナイトローグが亡国機業と繋がっていたら、亡国機業は今、IS以上の戦力を有している可能性が高いのよ。だからこそ、こんな所で頭の固いお偉いさん達に貴方を渡す訳にはいかないのよ。だから、貴方を更識家が保護して、次いでに更識家に取り込もうってことになったのよ。亡国機業の対抗手段として、ね?」

 

まさか亡国機業とナイトローグが手を組んでいるとは思わなかった。

だが、奴らの手にプロトタイプのビルドドライバーを持っていることに疑問を持つ。

あのビルドドライバーは俺しか作り方が分からないはずだ。

それはそうと、亡国機業と全面的に戦えば、間違いなくライダーシステムは兵器として投入されかねない。

それだけは絶対に駄目だ。

 

「・・・・・保護ってのは分かったが、それを期に俺が、いや、ライダーシステムが兵器として使われるのなら、俺はその話には乗れない」

 

「私達は何も戦争しようとしてるわけじゃない。むしろ、その戦争を未然に防ぐ為の手段として、貴方に助力を願いたいの。今直ぐに決めなくてもいいわ。でもね、亡国機業は動き出してる。グズグズしてる訳にはこっちもいかないの。出来れば、ここにいる間に決めて欲しいのよ」

 

「分かった」

 

「それじゃあ、湿っぽいのは一旦終わり。これから冬季休業が終わるまで、ゆっくりしていってね。それはそうと、ライダーシステムについて教えてくれると嬉しいなー」

 

「見るのは構わないが、解体するなよ」

 

「えー、ケチな人」

 

文句を垂れながらも俺のビルドドライバーを観察していた。

ビルドドライバーとフルボトルに興味を持ってくれることは俺にとって嬉しい。

それから楯無は俺に質問しながら、ビルドに関して聞き入れていた。

そんな時に、居間の襖が開き、虚が立っていた。

 

「お嬢様、春万君、お昼の用意が出来ました」

 

「ん?虚ちゃん、いつの間に名前呼びになってたのね。なになに、何かあったの〜?」

 

「お嬢様のお昼はなしということですね。言っておきます」

 

「あ、ダメ!ちょっと意地悪しただけじゃない〜。ご飯食べる、食べます〜」

 

『グワァ〜』

 

なんとも微笑ましい光景であった。

クローズドラゴンは先程まで大人しくしていたが、虚が来てからまた飛び出した。

俺達は慌ただしく、ご飯を食べるのであった。

春万Sideout

 

???Side

 

「ハァハァ、何だよ彼奴は!くっそぉ!明香里は何処だ!!!」

 

ボロボロになり、被験者が着る白い服を血で汚しながら、下水道を只管走っていた。

妹の行方を探しながら、自分を追ってくる化け物から逃げていた。

光のある方向へ只管走り続けていた。


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