INFINITE Be The One!!! 作:テントウムシ!!!
春万Side
あれから、ずっといじけているのか、考え込んでいるのか分からないが、部屋の隅でじっとしている甲斐の姿があった。
妹である明香里さんがスマッシュとされ、助けることも叶わず、目の前で消えてしまった事実は正直辛すぎる。
だが、それを乗り越えなければ、甲斐は一向に前に進むことは出来ないだろう。
今は悲しみに心沈めていてもいい。
だが、いずれ甲斐自身が立ち上がってくれることを、俺は信じることにした。
そして俺は回収したボトルを再度確認し、一刻も早くこのボトルを浄化しなければいけないと思うのだった。
一応年が明け、新年あけましておめでとうと言うのが礼儀なのだが、この状況ではどうもやる気が起きない。
そんなとき、空気をぶち壊すかのように楯無が勢い良く入って来た。
「あけまして、おめでとー!!!ことよろってやつね!!!っていつまで辛気臭い顔してるのよアンタは」
「あぁ?今はそんな気分じゃねぇんだよ。一人にしてくれ」
「ハァ、そんな時だからこそ1人でなんか居させないわよ。男の癖に何時までもいじけちゃって、ダッサーい」
「・・・別にいじけてなんかいねぇ。・・・少し考えてたんだ。どうして俺の家族がこんな目にあわなきゃいけなかったのか」
「それで、答えは出たの?」
「それは・・・・・・」
「それを知るために、俺達が居るんだろうが。何一人で考え込んでるんだか。お前のチンパンジー並の足りない脳みそじゃ永久に答えは出ないっての」
「んだと!!!俺はチンパンジーじゃねぇ!!!」
甲斐は頭から煙を炊かせながらキーキーと足踏みし始めた。
そんなことをするから馬鹿なんだと俺は思うのだが、間違っているだろうか?
「あら?チンパンジーじゃないの?」
「あぁ?うるせぇ、性悪女」
「カッチーン」
楯無は煽るように甲斐に言い放つと、甲斐も対抗して悪口を言い放った。
それから2人はひたすら口汚く罵りあい、まるで何かのナワバリ争いでもしているかのように、お互い目をバチバチと睨み合っていた。
この二人は相性が悪いのだろうか。
そんな痴話喧嘩をしていている二人を見て、俺はクシャっと笑い続けていた。
「「何笑ってんだよ(のよ)」」
「クク、息ピッタリだなお前ら。案外ベストマッチなのかもな!」
「「それは無い!!!」」
「えー、似合うと思うけどな〜」
「「絶対無い。此奴だけは無い!!!」」
そんな感じに平和に過ごしているのであった。
春万Sideout
その頃、IS学園にて。
開発室に不穏な影が一つあった。
その影は何かを探すかのように、春万の机や器具等をひっくり返し、目当てのものを見つける為にひたすら開発室を荒らしていた。
「無いねぇ〜。ハァ、やっぱりどっかに隠しちゃったか〜。多分ここには無いんだろうなぁ〜。春万くんは一体何処にやっちゃったのかな〜パンドラパネルちゃ〜ん?」
その人物が探していたのはパンドラパネルであった。
しかし、このような窃盗犯を想定し大事な物は全て保管していた為に事なきを得た。
だが、ここで気づいて欲しい。
1度大切なボトルを盗まれて以降、開発室のロックは強化してあるため、そう簡単に部外者が入ることは出来ないはずなのだ。
しかしその人物は、手に開発室の鍵を持って侵入していたのである。
そして・・・。
「まぁいいや〜。どうせ最後は私の手元に戻ってくるんだし。それはそうと・・おっ!みっけ〜。これこれ〜、ん?パスワードか〜。フッフフ〜ン、カチコチカチッと・・・はい、コピー完了〜!!!さぁてと、送っとこっと」
怪しげな人物は春万の研究データをコピーし、ある人物に転送されるのであった。
やることを終えたのか、そのまま開発室を出て職員室へと向かうのであった。
そう、春万の予想していたスパイとは学園内にいる人物であることに間違いなかった。
そして、開発室の扉の鍵を持つ人間はこの学園の中でも限られた人間のみであり、証拠は残っている可能性が高かった。
さて、研究データを奪ったスパイとは一体誰なのか。
○○○Side
「ん?おーきたきた〜!!!これがビルドのデータかー。流石ハルくん、本当に面白いねぇ〜。まるで彼奴の研究にそっくりだよ」
パソコンに向かい春万のデータを見ながら、不気味な笑みを浮かべるウサミミがトレードマークの不思議の国のアリスのコスプレをしている美女。
データの送信先はかの天災、常に裏で暗躍せし、篠ノ之束であった。
篠ノ之束、いえ、"束様"は私に兎野春万との接触及び、信頼の獲得を命令されていました。
何故そのような面倒な事を私に命令したのかを問うと、
「クーちゃん、それは勿論ハルくんのハザードレベルを上げるために重要だからだよ。感情の高ぶりによって強くなるライダーシステムは、感情を持つ人間の特権、◾️っくんには感情が無いから出来ないんだよ〜。それにね、彼らの成長は『PROJECT・BUILD』には絶対必須だしね〜」
「・・・彼、"ら"?兎野春万だけではないのですか?」
「あぁ〜、そういえばクーちゃんには言っていなかったね。それじゃあ教えてあげる。この計画のもう一人の要『甲斐龍斗』の存在を」
私はその時、束様の考えていた計画の全貌を知るのであった。
しかし、束様の口振りからして、『PROJECT・BUILD』という計画は束様自身が考えた計画では無いようです。
一体誰がこのような計画を考えたのでしょうか。
「それで、計画は進んでいるのでしょうか?」
「もっちろん!!!この束さんにかかれば、人の運命なんて束さんのシナリオ通りに動く人形だも〜ん」
全ての人間を嘲笑うかのように放った言葉は、篠ノ之束にとっては造作もない出来事であり、それを本当に行っていることに、私は何時も恐怖を覚えます。
「それにね、プロローグはもう終わりだよ。さぁ第一章の開幕だよ。精々楽しませてよね、ハルくん、りゅーくん」
束様は本のページをめくるようにシナリオを次に進め、手の平で世界を、運命を転がしているのであった。
話が一区切りつき、虚さんに習ったお茶を束様に出し、先程のシナリオのもうひとつの疑問を問いました。
「あの、束様。何故、亡国企業にトランスチームガンを渡してしまったのですか?あの様な死に体の組織に何か利用価値でもあるのでしょうか?」
「ん?あぁー、アレも束さん達のシナリオに含まれた道化たちだよ。まぁ束さんはアイツらなんかよりもあの子に興味を持ったからトランスチームガンを与えたんだ〜。いずれあの子も仮面ライダーになるし、その為の経験を積ませるためだよ。それにアイツらに貸したことで、アイツらは束さんの手足となって動いてくれるし、一石二鳥だよね〜」
笑いながら答える篠ノ之束という人間はやはり有象無象の人間などに興味を持たずゴミのように無関心を貫き、自分の気に入った者のみをいじめ殺すという狂気の超人なのだろう。
しかし、それでも私を救ってくれた束様に、私は忠誠を続けよう。
クロエSideout
ダリルSide
オレはこの冬休み中に、ヘル・ハウンドの調整を行うためアメリカに戻って来た。
研究所でヘル・ハウンドを渡すと、研究員から何故か色々と言われる羽目になった。
ヘル・ハウンドを改造されたのが気に食わないようだが、実際自分たちが制作した時よりも性能が大幅に上昇していたから、文句を言うしか無かったみたいだ。
オレにとっては誰が作ったかなんてどうでもいいし、専用機を手に入れられたら任務完了のはずだったんだが、叔母さんは何処までオレを働かそうとしているのだか分からない。
そうして所長さんの小言祭りから解放され外に出て、スマホを取り出すと連絡が入っていた。
ホテルの場所だけが書いてあり、その場所に行き部屋に入って行った。
そこには、ナニをやり終えて下着姿となっていた金髪の妙齢な美女:スコール・ミューゼルと完全に昇天していたオータムがいた。
「ハァ、それでわざわざアメリカに来た理由はなんだ?」
「なぁに、久しぶりに貴方に会いに来たのよ『レイン』。もっと何かあるでしょう?」
スコールはオレの本名:レイン・ミューゼルと呼び、オレに冗談を噛ましてきた。
此奴はオレの叔母さんではあるが、一度たりとも可愛がられたことなど無い。
むしろオレに嫌がらせして来るようなやつだ。正直あまり会いたくはなかった。
しかし、これでも亡国企業の実働部隊隊長。一応、オレの上司だから、仕方なくだが従うしかない。
「無いな。アンタはオレに会いたいなんてこと一度としてあるわけねぇだろ。それで、アイツは?」
「そろそろ戻ってくるわよ」
「あっそ。なら要件をさっさと言ってくれ。オレはアイツと会いたくねぇから」
「今日は任務としてここに来ただけよ。レインも報告の為に戻ってくる予定だったでしょう。その為よ。貴方にはこれまで通り、アメリカの代表候補生としてIS学園に引き続き潜入してくれと命令されたわ。ただ、貴方にも人体実験を受けるようにも命令されたわ。漸く亡国企業が本格的に動き出して行くわ」
「あの『ドライバー』か。まぁ、春万のボトルを奪うにはそれくらいしねぇとな」
「そのことで、あの篠ノ之博士が協力してくれることになったわ。これで亡国企業がこの世界に変革をもたらす第1歩となるわ」
スコールは野心を剥き出しにした笑みを浮かべながら、その拳を強く握り締めていた。
オレにとっても、この世界は余りにも腐っている。
オレが亡国企業に入ったのは、この世界を根底からひっくり返そうとしている亡国企業に関心を持ったからだ。
すると、扉が開き、そこには織斑千冬と同じ顔をした少女:Mが任務を終えて帰ってきた。
その手には、あの変身装置『トランスチームガン』が握られていた。
「レイン、くれぐれも深入りしないようにね。更識が前よりも我々を追ってる。貴方のお友達にもいたわね、『布仏虚』が。私としてはさっさと消しておいて欲しいんだけど。下手に手を汚すと足が着くから上司として辞めておきなさい」
「・・・・・・あっそ。オレはオレのやりたいようにやる。オレはあんたみてぇに裏から笑ってるだけのヤツはホントに嫌いだ」
「そう、褒め言葉として受け取っておくわ。そうそう、私達も近日中に日本に入ることになるわ」
「分かったよ・・・。んじゃあな」
俺はホテルをさっさと飛びだし、一人、頭を悩ませていた。
オレは本当にここにいてもいいのだろうか。
叔母さんに、亡国企業に利用されるだけでいいのだろうか。
未だオレは、答えを見つけられないでいた。
本当に、春万が羨ましい。
戦う意味を明確に持つ彼奴が羨ましい。
そんな彼奴を全力で支える虚が羨ましい。
オレには何も無いから。
守るものも、守りたいものも、支えたいと想う人も、支えてくれる人も、オレは何も持っていない。
オレはアイツらを嫉妬しているんだろうな。
オレに優しくないこの世界を呪うことでしか、オレはオレの存在を証明できないでいた。
仮面ライダーになれば、オレも変わるのだろうか。
変われるといいな。