INFINITE Be The One!!! 作:テントウムシ!!!
春万Side
「それでは、お世話になりました」
「うむ、また何時でも来なさい。歓迎しよう」
「ありがとうございます。仁さんもまた」
「えぇ、今回は仕事でバタバタしていてちゃんと話せていなかったね。今度は2人でゆっくりと」
そうして仁さんはそっと俺に近づいて耳打ちしてきた。
「娘のことを宜しくね。色々な意味で」
「は、はい。アハハハ」
仁さんは含みのある言い方で俺に言ってきた。
仁さんは一体俺に何を期待しているのだろうか?
俺は苦笑いしか出てこなかった。
「春万君、お父さんと何を話していたのですか?」
「い、いやなんでもねぇよ」
「へぇ〜、そうですか。ならいいです」
虚が疑いの眼差しを向けてきたが、俺はなんとなく目を合わせまいと視線を外した。
俺は明後日から授業が始まるため、IS学園に戻ろうとしていた。
虚は珍しく未だ溜めていた仕事を完遂し切っていないらしいため、明日IS学園に戻ってくるそうだ。
俺は一足早く戻り、研究を再開したかった。
この冬休みだけで色々とやることが増えてしまったからだ。
年明けからは生徒会長にもなるため、頭が既に痛い。
そうして"俺達"はIS学園へと戻ってきたのだった。
ん?"俺達"?あぁ、もう一人は此奴だ。
「で、なんで俺までここに来なきゃ行けなかったんだ?説明しろ春万!!!」
この頭が残念なくらいおバカな甲斐龍斗だ。
連れてきたのには理由がある。
「あのなぁ、何時までも更識家に置いておく訳にはいかないんだからしょうがないでしょ。仮にもお前は人体実験されてもスマッシュになってない特殊な人間、つまりは重要人物なんだからな。取り敢えず学園長に相談するのが先決なんだよ」
「さっぱり意味分からん」
「それにだ。お前はあの亡国機業に追われてる身だ。何時までも更識家に隠していたら、逆に彼処に危険が及ぶでしょうが。スマッシュの対応するにも出来るだけ応援と防衛設備が充分なIS学園の方が安全なんだよ」
「ほぅ、さっぱり分からん」
「ハァ、ダメだ、馬鹿にはなんも通じない」
「お前、またバカって。せめて筋肉付けろ、筋肉を!!!」
「はいはい、それとお前、チャック空いてるぞ」
「ファ!!!おま、それを先言えよな!!!」
こいつと話していると馬鹿になっていくのは俺だけか?
それはそうと、甲斐には自分で自分を守るだけの力がない。
それについてをずっと考えていたんだが、クローズドラゴンがひたすらこの浄化前のボトルが鍵であると言いたげに俺に進めてきたのだ。
もし、このボトルが甲斐に何らかの力を与えるのだとしたら、それはきっと・・・・・。
だから俺は甲斐を一緒に連れてきたのだ。
正直、甲斐のハザードレベルがどの位なのかは分からないが、きっと此奴は大きな可能性を秘めていると俺は確信している。
それに、甲斐の両親が何故殺されなければならなかったのか。
まだまだ此奴への謎が多い。
その為にも先ずは、
「という訳で甲斐龍斗をIS学園に入学させてください」
「えぇ、却下です」
俺達は早々に学園長室に行き、学園長に直々に頼み込んでみたのだが、あまり良くない反応をしていた。
学園長も若干呆れ顔で俺を見てくるのが辛い。
というか今この人、拒否した?
「え?今なんて?」
「ですから、却下です」
「何故?」
「あのですね兎野君。これ以上学園に面倒事を持ってこられても、学園としては困るのですよ。彼の境遇は分かりました、同情もしましょう。ですが、それでもわざわざ学園で受け持つ必要はありませんよね?」
「うっ・・・。それは、その・・・・・・・」
学園長は当たり前のことを告げてきた。
正直、これまでトラブル続きであり、これ以上トラブルを抱えたくないというのが本音だろう。
スマッシュによって鬱状態になってしまった生徒などもいた為、そんな奴らに狙われている甲斐を学園に入れたら、より生徒に危害が及ぶと考えるのは当然だろう。
「・・・それはそうと、彼には君と同じように仮面ライダーになることが可能なのですか?可能でしたら来年度の男子枠で学園長推薦として入学を許可しますが、その様子から察してなれないのですね」
「え?なれる可能性は高いと思いますけど。まぁ、それは甲斐次第ですが」
「そう、ですか。・・・・・・・・・仕方ありませんね。これまでのキミに免じて、三月になるまで待ちましょう。それまでに彼を仮面ライダーになれるようにしてください。君と同じ力を持つものならば、学園の守りもより強くなるでしょう。それまでは貴方が彼にちゃんと教育を施してくださいね。但し、出来なかった時は、分かってますね?次期生徒会長さん?」
「・・・・・・・・・・は、はぃ・・・・」
学園長の目は完全にオモチャを見るような目であった。
流石学園長、情報が早い。仕事が早い。恐い。
にしても学園長はかなり厳しい条件を突きつけてきたな。
この短い期間で仮面ライダーにしろって言われても、そもそもそんな簡単になれるもんじゃない。
最低でもハザードレベルを3.0以上にしなければ、このビルドドライバーを使えないのだから。
そんな焦りを感じている俺とは対称的に、甲斐の頭はお気楽な単細胞で出来ていたようだ。
「お?なんだよ俺もお前みたいなあれになればいいのかよ。それならちょっと貸してみろよ!」
馬鹿なことに甲斐は俺のビルドドライバーを腰に巻き、ラビットとタンクのフルボトルを挿し込んだ。
「あ!お前、待て!こんな所で!!!」
【Are you ready?】
「へんしん!・・・・ぐわぁぁぁぁぁぁあ!」
調子よく変身ポーズをとり、変身に失敗した。
甲斐は盛大にのたうち回って、ごろごろと転がりながら倒れ込むのであった。
「はぁ、あのなぁ、これはな、誰でも使える代物じゃないんだよ」
俺は転がっていたビルドドライバーを拾い上げ、甲斐を見下ろしていた。
学園長もかなり冷ややかな目で俺らの茶番を見ているのだった。
いや、本当にご迷惑ばっかかけて申し訳ございません。
そんな学園長はというと・・・。
(生徒会の仕事、増やしますね)
学園長は俺と目が合うと笑顔になり、分かってるよな?と言いたげなオーラを出していた。
その後、生徒会の仕事が今までの倍になり、虚の殺気を俺は一身に受けることになるのだった。
学園長をもう二度と怒らせないようにしようと誓う俺なのであった。
春万Sideout
虚Side
春万君達を送り出し、私は残っている仕事を片付け、学園に戻る準備をしていました。
報告ですが、お嬢様がついこの間、ロシアの国家代表となりました。
その際、現在お嬢様の使用している専用機『モスクワの深い霧(グストーイ・トゥマン・モスクヴェ)』の改造(設計資料など作成等)を手伝ってくれないかと言われ、つい熱が入ってしまい、仕事を疎かにしてしまったのは一生の不覚です。
幸い、雑務だけでしたから良かったですが。
準備も終わり、お嬢様の元へ戻ろうとした時、偶々、本音が簪お嬢様と何かしているのを見てしまいました。
その何かと言うのが・・・。
「変身!!!」
「わぁ、似てる似てる〜!!!」
春万君の真似でした。
お仕えしているお嬢様の妹君と自分の妹が、同級生のモノマネをしている状況とは一体何なんでしょうね?
しかし、ただモノマネをしているという事ではないようでした。
「ハァ、春万さん、カッコよかったなぁ〜。やっぱり本物の仮面騎士様はカッコよすぎだよ〜////」
「カンちゃん顔真っ赤っかだよ〜」
「だ、だって〜。まさか家に来たのが、あの仮面騎士様だなんて思わないじゃん。ハァ、虚さんが羨ましいなぁ」
ん?私が羨ましい?何故でしょうか?
簪お嬢様は春万君に夢を見ているようですが・・・、あの春万君ですよ?
一に研究、二に研究、三四も研究で、頭は研究のことばっかの春万君ですよ?
まぁ、良いところはいっぱいありますが、それでもかなりの変人さんですよ。
「そうだねぇ〜。お姉ちゃん達、ちょーラブラブだったもんね〜」
「うんうん、完全にあれは恋人と言うよりも夫婦だよね、本音」
「そだね〜」
私はその場で盛大にズッコケてしまいました。
貴方達2人は一体何を言っているのでしょうか?
春万君と私が、夫婦?
ないない。えぇ、有り得ませんとも。そうです、有り得ません。
だって私の好みとは全っぜん違いますもの。えぇ、そうですとも。
・・・私達が夫婦、ですか・・・・・。
何故か私は頭の中で、お腹を少し大きくしながら、キッチンに立って春万君の為に愛情込めてご飯を作り、玄関へ向かい彼に行ってきますのキスを・・・。
その姿はまるで主婦そのもの・・・。
「はぅ///ち、ちがいます!!!」
私はなんてものを想像しているのでしょうか。
い、いけません、このような破廉恥な妄想など、布仏家の長女としてあるまじき考えです。
それに、春万君と私の関係はそんなものではありません。
もっと清く・・・・・・今思えば、徹夜しながら研究する私達って全然清く正しくありませんね。
私と春万君の関係はそうですね、大切な研究仲間ということですね。
きっとそうです。
私としては誰かの為に全力で守る頼れるヒーローでもありますが、それは彼にはナイショですよ。
きっとこの関係は変わることはないでしょうね。
きっと・・・。
虚Sideout
春万Side
学園長への説明取り敢えずどうにかなった?ため、俺達はいつも通り開発室へ着いたのだが・・・。
「なんだよこれ、お前の部屋、汚すぎだろ」
「・・・・・・・・マジか、最悪だ」
開発室にまたしても何者かの侵入を許してしまったのだった。
俺は急いで何か盗まれていないかを確認した。
幸い、パンドラパネルはクローズドラゴンに備えてある拡張領域に入れていたため難を逃れた。
フルボトルも盗まれる心配は一切ない。
フルボトル生成機も壊されず、盗まれてもいなかった、
そう考えると、盗まれるものは残り一つ。
俺はパソコンを開くと、そこにはビルドの詳細なデータが開きっぱなしであった。
そして、そのデータをコピーされた後も残っていた。
「やってくれた。ビルドの戦闘データ達がコピーされたな。多分これでクローズドラゴンの中にパンドラパネルがあることもバレたな」
クローズドラゴンは元々、フルボトルやパンドラパネル等の大切な物を守る役目として作ったものだ。
研究者がこのデータを見れば、どんな役割を持つかなど簡単に分かるだろう。
取り敢えず、部屋に散らかっていた書類等を丁寧に拾い集め、新たなフルボトルの生成に取り組むことにした。
クロエさんの持っていたバングルのデータにより、フルボトル生成機の性能も格段に上がっているため、多分今回のボトルも直ぐに出来上がるだろう。
それまではゆっくりと待つとしようか。
甲斐?彼奴はIS学園を回ってくるとか言って出て行った。
この女尊男卑の浮き彫りなIS学園でチョロチョロと動けばどうなるのか分からないのだろうか。
やっぱり彼奴は馬鹿だな。
それから数時間後、
俺はフルボトルが出来上がるのを待ち、椅子に座りながら眠っていた。
そんな中、甲斐が血相を変えて帰った来たようだ。
寝ているから気づかなかったが。
「ハァハァ、なんだよここ。女、怖すぎだろ。お前よくこんなところで生活出来たな!!!」
「Zzz・・・・・・・・・」
「ん?って寝てんのかよ!!!」
そう甲斐が声をあげた瞬間、フルボトル生成機からレンジの音のような、完成音が鳴り響いた。
俺は一瞬で目を覚まし、頭に寝癖を立てるのであった。
「お!できたできた!!!えっとこれはなんだろ・・・・ドラゴン?」
俺は出来上がったフルボトルを取り出すと、そこには燃えるような青い龍の形をしたフルボトルがあり、握ると同時に体の内から力が溢れるような感覚をフルボトルから感じた。
『グワァ!!!グワァ!!!』
クローズドラゴンが俺に近寄って来て、このフルボトルを待っていたかのように喜びだした。
このフルボトルは彼女の、明香里さんの最後の魂が込められているのだろう。
それだけ大きな力を、このフルボトルから感じた。
俺は徐ろにそのフルボトルを握り締め、甲斐に向かって投げ渡した。
「ん?おっとっと。な、なんだよ」
「それはお前に返す。お前の妹さんの、明香里さんの最後の魂が込められたフルボトルだ。それは俺じゃなくて、お前が持ってろ。その方がきっと明香里さんも喜ぶ」
「明香里の、魂。・・・・・・・ありがとな、お前のおかげでどうにか立ち直れそうだ」
「礼はお前を完全に自由にするまで取っておけ。さてと、それはそうとお前には教育を施さないといけないんだったな。これから入学まで、みっちりとやって行くからな。次いでにフルボトルのことについてもかな。取り敢えず、覚悟しておけよ!!!」
「え?嘘だろ、マジで勉強すんのかよ!!!勘弁してくれ〜!!!」
こうして、彼女の命の灯火は龍の魂へと受け継がれるのであった。
俺達の運命も少しづつ、だが、確実に動いていくのであった。