INFINITE Be The One!!!   作:テントウムシ!!!

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第48話:学年別トーナメント開催!!!

春万Side

フルボトルを取り返してから数日、予定していた通りに学年別トーナメントが開催された。

俺は生徒会長として開会の宣言をし終えると、そのまま会場の警備係と連絡を取りながら、甲斐と二人で警備についていた。

 

「なぁ、なんでお前は出ねぇんだ?」

 

「あのなぁ、ISの大会なのにライダーシステムを使える訳ないだろ。それに俺がこの学園に居れるのも、こうやって学園の安全を守るという理由があるからなんだよ。前にも話したと思うが?」

 

「…そうだったか?ってことは俺が入学してもこういうイベントには参加出来ねぇってことだよな?」

 

「まぁな。とりあえず辺りをしっかりと見ておけよ。今回は要人も来てるんだからな。警備設備の強化を行ったからって油断は出来ないからな」

 

「おう」

 

俺達は警備をしながらも行われている大会の結果が気になって仕方なかっただけ言っておこう。

春万Sideout

 

ダリルSide

一回戦目は大したことの無い奴で、正直不完全燃焼で終わってしまった。

女尊男卑思考が強い奴で、オレが春万達に関わっていることが気に食わなかったそうだが、口でどうこう言う前に実力つけて出直して来いと言ってやった。

 

この学年末の学年別トーナメントでは学年別上位4人決まるまで予選として行い、4人決まり次第、全学年合同のトーナメント戦となる。

いわば、上位まで残った真の強者だけが他学年と戦わせて貰えるってことだ。

会場を分けて全学年同時に行っているため、試合が終わった後は他学年の試合を見ることも出来る。

オレは勿論、今年のIS学園不動の最強を誇るスカイナ・セタンスの試合を見ていた。

奴は他の奴らとは一線を引く強さを持っている。

この学園で唯一あの春万、ビルドにISで勝ったのだから。

でなければ、『ブリュンヒルデの再来』とは呼ばれないだろう。

他にも生徒会メンバーは目が外せないだろう。

今からでもオレは武者震いがしていた。

強い奴と戦うことがどれほど楽しいかをオレは知っている。

戦っている時だけは任務のことを考えずに済む。

 

「ダリル、お疲れ様。瞬殺だったわね」

 

「サンキュー虚。相手が弱すぎだっただけだけどな。それはそうと次は誰とだ?」

 

「ちょっと待って・・・次はシェリアさんね。フランス代表候補生ね。2回戦で厳しい相手と当たったわね」

 

虚がタブレット端末から更新された情報を提示してくれた。

『シェリア・ジュベーネ』、今年の夏過ぎにフランスから転入してきたフランス代表候補生で使用ISはラファール・リヴァイブ。

ただ戦闘スタイルが独特で、片手に銃を持ち、もう片方は剣を持つというスタイルを取り、瞬時加速の起動速度は現在のフランス代表候補生の中でもトップクラス。

加えて、代表候補生の中でも唯一の高等テクニックである『稲妻軌道』が出来る人間だ。

はっきり言ってかなり強い相手である。

だからといって負けるつもりは毛頭ないが。

 

「おっし、代表候補生か。アメリカとフランス、どっちが強いか勝負と言ったところか。今からでも滾ってきたなぁ!」

 

「ヘル・ハウンドの調子も良さそうでしたね。機動力が今までの倍近くにまで上がってたわ。悔しいけど、やはり春万君は天才ね」

 

「なぁに言ってんだよ、充分虚も天才だろうが。コンマ1のズレすらも許さないあのストイックで完璧な整備はお前しか出来ないだろ」

 

「褒められてるのか貶されてるのか分からないのだけれど・・・」

 

「褒めてる褒めてる。それじゃ次も整備頼むわ」

 

「任せてちょうだい。最高の状態で届けるから。……はぁ、春万君が居ればもっと早く進むのだけれど」

 

「ヘヘ、本当に虚は春万が好きだなぁ〜」

 

「な、何を言ってるんですかダリル///そういうのではなくて……」

 

虚は顔を真っ赤にしながら春万との関係を否定しようとしていたが、傍から見れば既にカップル同然なのである。

いい加減、自分の気持ちに気づいて欲しいのだが、二人とも。

オレは虚を軽くからかってから別れると、叔母さんから連絡が来た。

オレは溜息につきながら連絡に応じた。

 

「なんだよ」

 

『あら、せっかく初戦突破おめでとうと言ってあげるつもりだったのに酷い反応ね?』

 

「アンタに言われても全然嬉しくないんだが。それで一体何の用だ」

 

『この学園の地下にある物があるそうよ。それを回収して頂戴』

 

「はぁ?未だ試合があるのに出来るわけねぇだろ!!!他当たれ」

 

『こんなお遊びにお熱な事ね。仕方ないわね、他に頼むわ』

 

そう言って無理な要件を突っ撥ねると、あっさりと受け入れて電話を切ってしまった。

他に宛があるのならばオレじゃなくて最初からそっちに頼めばいいものを、本当にあの人はよく分からない。

それはそうと、この学園に地下などあっただろうか。

そんな話は一度も聞いたことがないが、そこにある物とは一体なんの事なのだろうか。

この学園にも、俺達生徒には言えないような内容があるのだろうが、もしかしたら生徒会長の春万ならば地下について知っているかもしれない。

オレ自身が気になるから、後でこっそり調べてみるとしよう。

オレは一旦その事を忘れて、試合を見ることにした。

 

一試合目から一時間後、二回戦が始まり、オレは三戦目に出場するため整備室に向かいISを取りに行った。

整備室に着くと、整備科とその手伝いに来ている開発部の連中がごった返していた。

かなりの汗臭さと油臭さが出ているが、それはそれで仕事人っぽくてカッコ良かった。

整備されているISの中から自身のISを見つけると、そこには新品のようにピカピカに完全整備されたオレのヘル・ハウンドver2.0があった。

 

「やぁやぁダリルちゃん。ヘル・ハウンドを取りに来たのかい?整備は完璧に終わってるよ〜。いつでも行けるからね!!!」

 

「ん?ナツ先輩!アザース!!!それじゃ行ってきますわ!!!」

 

「行ってらっしゃい!良いデータが取れることを期待しておくよ!私の新たな武器作りへの可能性を広げるために!!!」

 

「お、おぅ」

 

「蒲田先輩!こっち手伝ってください!!!」

 

「ごめんよぉー虚ちゃ〜ん。今行くね〜」

 

本当に開発部のメンツはぶっ飛んでる奴が多いな。

虚以外まともな奴いるのか心配になってきたな。

思えば春万も相当ぶっ飛んでる気が……。

 

ISを受け取りそのままピットへ行くと、織斑先生が仁王立ちしながら生徒達を見守っていた。

オレがピットに着いたことに気づいたのか、こちらを向いて不敵な笑いをしていた。

 

「フッ、次は一回戦とは違って充分強いぞ。全力で行ってこい」

 

「……センセがオレに激励してくれるなんてビックリなんだが」

 

「別にケイシーを贔屓している訳では無い。ただ、ルールを守って存分に戦って欲しいだけだ。私は生徒達が活き活きとしながら戦っている姿を観るのが好ましいと思っているだけだ。熱い試合を観れば私自身も滾るからな」

 

そこに立っていたのはIS学園の教員:織斑千冬先生ではなく、ブリュンヒルデと言われた最強のIS乗り:織斑千冬だった。

まるでその言動からはかかって来いと言わんばかりの闘気を感じた。

 

「なんスか、優勝したら戦ってくれるんすか?」

 

「…………フッ、さぁな」

 

もしかしたら、このブリュンヒルデと戦えるチャンスが巡ってくるというのだろうか。

そんなこと匂わせれば、滾らないわけがなかった。

今のオレは相当にクシャッとした顔をしているだろう。

だがそれは嬉しさからだ、あのブリュンヒルデと戦えるかもしれないということがどれほどの意味を持つか、IS乗りとして最高に光栄なことだろう。

なお一層負ける訳には行かなくなってしまったようだ。

 

「ククク、面白くなってきやがった」

 

二戦目が終わり、三戦目が始まろうとしていた。

オレはISを展開し、アリーナ内へと飛んでいくのだった。

少し遅れてジュベーネがラファールを纏ってオレの正面に現れた。

 

「ヨロシクねケイシーさん。最初に言っておくけど、私はかなり強いわよ?」

 

「はっ、その方が張合いがあるってもんだ。相手にとって不足無し。……心の火、心火だ。心火を燃やして、ぶっ潰す!!!」

 

「いいワ、受けて立ちましょう!!!」

 

「行くぞゴラァ!!!」

 

オレは炎の家系と言われるミューゼル家の家訓を、ルーティンとして言い、戦いへの覚悟を決めて開幕から瞬時加速をしていった。

両手にはアサルトカノン《ガルム・ディスペンサー》を持ち、ラファールの胸と足を狙いに行った。

ジュベーネは横回転しながらオレの攻撃を避けつつ、左手に持っているアサルトカノン《ガルム》でヘル・ハウンドの右肩を狙ってきた。

身体を半身にしながら銃弾を避け、再度右手に持った《ガルム・ディスペンサー》で反撃。

一進一退の銃撃戦はお互いの銃弾が尽きるまで行われた。

 

銃撃戦でお互いに相手との距離感を掴むと、ジュベーネは先ず右手に持つ近接ブレード《ブレッド・スライサー》で一気に瞬時加速で間合いを詰めて斬りかかって来た。

オレは両肩の犬頭から《ヘル・バーン》で牽制しながら向かってきたジュベーネに拳で対応する。

拳と剣による鍔迫り合いが起きるが、ジュベーネは表情は真剣ではあるが力があまり入っていないように感じた。

性能差でパワーに差があるのだろう。

 

「フフ、やるじゃない。でもこれならどうかしら?」

 

するとジュベーネは一旦後方へ下がりオレとの距離を取り直すと、そのまま左右ジグザグに動き回る『稲妻軌道』をしながらオレに接近してきた。

《ヘル・バーン》で撃ち落とそうとするも稲妻軌道に翻弄され全て避けられてしまった。

ジュベーネのラファールはこの時、稼働率74%という数字をたたき出していた。

ジュベーネはオレの背後を取ると、すかさず《ブレッド・スライサー》で斬りつけてきた。

落下するように地面に不時着し機体状況を確認すると、背部にあるメインスラスターは軽度の損害であったが、無理に瞬時加速を行えば使えなくなってしまう状態であった。

 

「やってくれるじゃねぇかよ。でもまだまだ終わらねぇぞ!!!」

 

「そう来なくては面白くありませんわ!!!お互いの全力を持って最高のショーにしましょう」

 

「いくぞゴラァー!!!」

 

オレはラファールの各部にターゲット絞って《ヘル・バーン》を放ちながら、近接ブレード《デモリション・ブラック》を取り出しスラスターを二度吹かせながら、瞬時加速よりは遅いが充分なスピードを出して距離を詰めに行った。

ジュベーネも左手に持つ《ガルム》の弾を再装填し、オレの頭目掛けて撃ってきた。

 

「瞬時加速は使わないのかしら?その程度のスピードでは、私を捕えられませんわよ?」

 

「んなこと分かってるっての!!!戦い方ってのはただ単純に突っ込むだけじゃねぇんだよ!!!」

 

ビルドとの戦いはオレにとっても特別な体験であるのだ。

常にフォームを変えてくるビルドとの戦いで、オレはいかに弱点を早く見つけるかに全てをかけていた。

その戦い方が身についているオレにとって、戦い方が変わることの無いISとの戦いで相手の弱点見つけることは容易だった。

勿論機体の弱点だけではなく、ジュベーネ本人の弱点を見つけ悟らせぬようにそこを突くことが勝利への道である。

 

ジュベーネは機動力に自信があり、加えてライフル等の遠距離攻撃はほぼ完璧に見切り防ぐことが出来るが、唯一近接格闘戦は弱い。

特に鍔迫り合いには、滅法弱いのだ。

ジュベーネは近接ブレードでの攻撃を行うが、それは何時でも稲妻軌道を発動させれるようにし、背後を取ってから斬り裂くことが得意なのであって、パワー勝負が弱点であった。

パワー勝負に持ち込んで一気に片をつける。

 

「シッ!!!」

 

「なっ!」

 

強弱をつけた加速で少しづつジュベーネとの距離を詰めていき、パワー勝負に持ち込むための最後の追い込みとして、ギリギリのところで瞬時加速を行った。

メインスラスターがギシギシと嫌な音を立てているが、この瞬時加速にジュベーネは驚き、直ぐに対応しようとするが一歩遅い。

右手に持った《デモリション・ブラック》で斬りかかり、その攻撃を防ごうと《ブレッド・スライサー》で受け止め鍔迫り合いとなるが、瞬時加速の勢いの上に、このヘル・ハウンド自体のパワーも相まって一気に地面まで追い詰めた。

地面にラファールの足が着くと、この攻撃からなんとか逃れようと必死に押し返してくるが、空中からスラスターを全開で吹かせながら両手で押し潰そうとしているオレの方が圧倒的に有利であった。

 

「くっ、ぐっ、うぅぅ」

 

「最大、強大、極限、これがオレの力だァー!!!!!!!!!」

 

「きゃぁぁぁぁー!!!」

 

オレの最大威力で斬り裂き、ジュベーネを壁際まで吹き飛ばした。

煙を上げながら勝利コールが流れるのを待った。

しかし、いつまで経っても勝利コールは流れず、ハイパーセンサーで確認すると、突如上空にジュベーネが飛び上がった。

 

「ハァハァハァ、危なかったわ。ハァハァ、まさか単純に突っ込むんじゃなくて強弱をつけてゆっくりと距離を詰めてくるなんて、いやらしいじゃない。さっきの攻撃は正直やられたって思ったわ。でも、次は通用しないわよ。一気に終わらせてもらいますわ!」

 

「ちっ!そう何度もやらせるか!!!」

 

ジュベーネはもう一度稲妻軌道をしながら接近してきたため、《ヘル・バーン》から《ヘル・ハウリング》へと切り替え、超音波による攻撃で機動力を殺しに行った。

超音波の爆音による攻撃でジュベーネは稲妻軌道を途中で止めてしまった。

その隙を逃すことなく、もう一度瞬時加速で今度こそ落とそうとしたのだが、先程でメインスラスターが故障してしまい瞬時加速が出来なくなっていた。

 

「しまった!」

 

「くっ、チャンス、ですわ!!!」

 

瞬時加速が出来ないことに戸惑ってしまい、《ヘル・ハウリング》を止めてしまった為、再度ジュベーネは稲妻軌道を開始し、今度は稲妻軌道を行いながら《ガルム》をばら撒き、オレの行動を完全に封じこんできた。

 

「くっそ、これじゃあ不味いな。仕方ない、あれを使うしかねぇか」

 

「フッ、何をしてもスラスターがやられた時点で終わりですわ!!!コレでフィニッシュ!!!」

 

そう言うとジュベーネは両手に持っている武装を瞬時に入れ替え、新たに多連装導弾《大蛇》を両手に持って撃ってきた。

 

「なっ!ミサイルだと!!!ぐわぁぁ!!!」

 

「……フゥ、やり、ましたわ」

 

ジュベーネはやり切ったような表情しながら煙が晴れるのをじっと待っていた。

しかし、煙が晴れた時、ヘル・ハウンドからは炎が溢れ出ていた。

オレはミサイルを全て喰らったのだが、この炎で全て防ぎきったのだった。

 

「嘘……」

 

「まさか土壇場で『高速切替』なんか使いやがって…。此奴は決勝まで残してたかったんだけどな」

 

「なんですかそれは?炎を纏ってる?」

 

「此奴は《ヘル・ウォール》。炎の壁によってあらゆる攻撃を防ぐことが出来るヘル・ハウンドの第四の特殊武装だ」

 

《ヘル・ウォール》は両肩から全身を纏うように炎を放ち、敵の遠近関わらず攻撃をシャットアウトする炎の壁である。

この特殊武装には、ビルドのフェニックスロボフォームの技術を応用され、遠距離攻撃を全て無効にし、近接時は炎によってダメージを負わせることも可能な防御壁として再現した。

ただ、燃費があまり宜しくないため、使える回数は3回が限界というのが唯一のデメリットである。

 

「お前も稲妻軌道し過ぎてスラスターが酷いことになってるんじゃないか?」

 

「フッ、よくお分かりのようで」

 

「それじゃあ、遠慮なくやらせてもらうぜ!!!」

 

稲妻軌道はスラスターを酷使する為、訓練用のラファールでの一試合の使用頻度は二回が限界である。

ジュベーネは既に二回行ってしまったため、これ以上行うことは出来ず、瞬時加速を行ってもスラスターが破壊してしまう恐れがあるため機動力に大きな制限がついてしまっていた。

 

オレはジュベーネの機動を完璧に把握したため、最後の攻撃として《ヘル・ウォール》を解き、ラファールへとターゲットを確りと定めた。

 

「ヘル・ファイア!!!」

 

今持てる最大威力の《ヘル・ファイア》をジュベーネに浴びせ、漸くラファールのSEが0になった。

二戦目にしてここまでの死闘をさせられるハメになるとは思わなかったが、オレは勝利への喜びを確りと噛み締めるのだった。


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