時は来たれり。
冬木の儀式を参考にして、私が独自の改良を加えたクリスマス聖杯。
私はこのクリスマス聖杯の力を持って、この世からクリスマスを消滅させる!
憎悪が憎悪を生み、憎しみが循環するこの悪しき風習を……国土から一切の痕跡を残さず消滅させる。
そう、あれは去年のクリスマスだった。
私は、同じく魔術師である家系から、妻を娶るハズだった。
妻はとても美しく、聡明で、私の事を愛していてくれた……はずだった。
それを! あのどこからともなく現れた馬の骨が掻っ攫っていった!
あの日、私は妻をデートに誘い、待ち合わせをしていた。だが、妻は待ち合わせ場所に来なかった。1時間、2時間と待っている内は、何か事件に巻き込まれたのかと心配が勝っていた。しかし、連絡もつかず、私には待つことしかできなかった。
しかし、4時間、5時間と過ぎるうちに、嫌な予感が沸々と湧いてきた。いや、そもそもが4時間、5時間とその場から動かなかったことが今となっては不可解だ。
午後九時、私はようやくその場を離れることを決意した。
広場の一際多きなクリスマスツリー。なぜそこへ向かったのかは覚えていない。
そこで見たのは、絶望だった。
見間違うハズもない、あれは妻だった。
妻が、見知らぬ男と口付けを交わしていた。
怒りと、悲しみと、悔しさが私の中に流れ込んだ。
口から怒声が飛び出そうとしたその時、見知らぬ男がこちらへと手を翳し――次の瞬間、私の意識は刈り取られ地に付していた。
わからないことだらけだ。なぜ妻は私を裏切ったのか。あの男は誰なのか。
わかったことは、あの男は魔術師であり、妻はそれにかどわかされたのだと。
妻はそれから、私の元へと帰ってこなかった。
妻は聡明な女性であった、であれば駆け落ちなんで馬鹿なことはしない。そんなことをすれば、彼女の家柄が地に落ちることはわかりきっている。
であれば、何かが妻を惑わしたに違いない。
その何かに思い至るまでそう時間はかからなかった。
クリスマスだ。クリスマスが、妻を惑わせた。
なれば、私はこの世からクリスマスを消す。もう二度と、私と同じ目に合う男性が居なくなるように。
それこそが我が悲願、それこそが我が使命。
呼び出す英霊は二基、根源へと人が至るにはもちろん足りないが、一瞬でも外側へと繋がればあふれ出た魔力で日本からクリスマスを消し去ることは可能だ。
そして、態々争いを起こしてサーヴァントを座に返さずとも、25日の朝を迎えた時点でサーヴァントを強制送還するようにしてある。
よって、どこの誰がサーヴァントを呼び出したとしても、私はここで待っていれば自動的に勝利する。
そう、このビルひとつ借り切った完璧な工房で座しているだけでな!
結界24層、魔力炉3基、猟犬代わりの悪霊、魍魎数十体、無数のトラップ、廊下の一部は異界化させている空間もある、どんなに優れた魔術師でも、1日で攻略することは不可能だ!
もはや私の勝利は揺るぎない……24日のサーヴァント召喚、そして25日をもって、日本からクリスマスは消滅する!