少女金銭   作:杜甫kuresu

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「あけましておめでとうございました、ちなみにタイトルは変わった。二次創作ではままある事だろう? 慣れろ」
「という訳で俺にお年玉で寄越せ、一口500円にしといてやる」


間話

 俺は何時も考える。世の中に逃げ道など無い。

 

 例えば無職で親の脛を齧るとしてみるか…………其処に有るのは逃げ道ではない。常にカースト下位であるストレス、自らの空虚さを呪うストレス、自らの一食は他者に支配されているストレス、山程ストレスが湧いてくる。

 例えば一般的な人生とやらに洒落込んだとしよう、決して平和ではない。自らの平凡さに辟易とするストレス、上に手を伸ばしても半端で下でも半端な器用貧乏へのストレス、人並みの一般的なストレス、山程ストレスがのしかかってくる。

 例えば異常な金持ちとなったとしよう。それは幸せだろうか、否と俺は答えよう。寄るもの全てが金目当てに見えるストレス、金で全てが買えると事実として理解できるストレス、その金の消費貯蓄を考えて一個の人間として管理しきれなく感じるストレス、山程ストレスが有る。

 

 

 

 だが、金持ちはどうだ? ストレスは有るが、虚無なりに何でも手に出来る。ストレスはモノで埋められる、物欲の解消で生まれたメッキの幸せは駄目ではないと俺は結論づけた。

 どうせ人生は空虚だ、意味など求めるのすら無意味。ならば俺は、世界に存在するモノで俺自身を満たすべきだ。

 

 人間は駄目だ。揺らぐ。

 達成感は駄目だ。刹那過ぎる。

 恋慕は駄目だ。壊れる。

 

 かくして俺は、金に全てを求めることにしたわけだ。換えが効いて、全てを手にできて、一番つまらなくて、人生を嘲る要因ながらも何とか縋れる、それでいて――――――俺を裏切らない、金にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――つまらない話だったな、忘れろ。金は取らないでいてやる。

 さて。

 

「いらっしゃいませ」

「何で指揮官が酒保の店番なんて………………ッ!?」

 

 WA2000は俺を見るなり引きつった顔をした。

 今のくだらない独白は、実は店番中暇だから考えていたりする。尚更金など取れないという訳だ、お前は運が良いらしい。

 

 

 

 

 

「えーっと、アンタ…………何してるのよ」

「見ての通り店番ですが?」

「うわ。敬語やめてよ気持ち悪い」

 

 誰が気持ち悪いだ、侮辱罪で金を取られたいのかこの人形は。

 たかだか酒保の店番ぐらいでごちゃごちゃ言うとは中々いい度胸をしていると言わざるを得ん。

 

 しっかりと店番用の制服も着ている、レジ打ちなど当たり前、商品の在庫数とて概算ながら把握済み。これほどの生粋の店番を見て店番の務めを果たすな等というのはつまり仕事に対する冒涜だ。

 

「いや私はアンタが店番な訳ないって言ってるんじゃないわよ! 何で! アンタが! 店番してるの!?」

「そんな事を言い出すと今日の担当であるドラグノフやトンプソンも相当店番らしくないと思いますが、平等に苦言を呈するということでよろしいでしょうか?」

「「誰が店番らしくないだって?」」

 

 お前達が店番をすると絵面が酒とかヤクの密売所に見える。

 というかコイツラは実際問題、此処では取り扱わないようなやたらと高いはずの酒を格安で仕入れていたりする、物騒だ。金は重要だが、倫理法律治安の類の乱れを良しとするほど頭は腐ってない。

 

 商品を箱で運ぶギャングもどきに口を開けて呆けるWAを、カルカノ姉妹が柔らかく押しのけて商品を目の前に置く。晴れ着に袖を通した姿は一般人は後ろ髪を引かれるさぞ雅、かつ流麗と形容出来るものだが俺には興味がない。

 早速レジに通そうという時に姉の方がニヤニヤとして人差し指を掲げる、何だコイツ。

 

「笑顔ください」

「私の笑顔はハイプライスとなっております、幾らお支払いできるのでしょうか?」

「えー、仕方ないですね…………少し妹にも出してもらえば大体これぐらいは」

 

 指で示された額は全く足りん。出直せという他ない。

 俺がレジに通す前に問答無用で札を置くカルカノ姉、明らかに商品の値段を越えている。

 

 何だお前は、さっきから気色悪いにも程がある。俺の笑顔ごときに一体何を執着しているんだ。

 

「そこを何とか」

「お話になりません。お釣りになります」

 

 俺はあくまで在庫把握、ついでにどんな気分のやつがどんなものを買うのか感覚で掴む一環でやっているだけだ。仕事は仕事だからそれなりにはするが、俺に笑顔を強要する部下に応えるには少し給料が足りていない。

 

「うーん、交渉失敗みたいですね! 店番頑張ってください、指揮官」

「お客様に心配されずとも私はしっかりと目的意識を持ってこの仕事を遂行しているので問題ございません」

「つれないですね…………まあ仕方ないか」

 

 やっと帰った。長居するな、回転率に響く。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「指揮官、あけましておめでとうございます!」

「…………アケオメコトヨロ。何故適当に教えた文化が此処まで広がっている」

 

 一〇〇式の輝く笑顔は俺に対して猛毒だった、思わず手で払いのける。

 カルカノ姉の差金で各地の人形が着替えては浮かれている。年末からゴタゴタとしているとは見ていたが、まさかこんな事をしているとはな。俺までアイツの作った服に着替えさせられている。

 大体サイズは何処で知った。俺は秘匿している。

 

――年玉も聖夜の臨時給金もくれてやったのは事実だが、とはいえ此処まで浮かれるか。

 

「指揮官もそうですが、私達は催事に事欠きますからね。スポンジみたいに吸いますよ、皆で楽しめる事なら」

「全く予想外だ」

 

 嘘だ。金を落とすと最初から思っていた。

 

 俺は人形に給金をくれてやっている。G&K社はしないと言うから、俺が個人的に資産を管理して勝手に給金という体系にしたと言えば良いか。

 結果として、一部の娯楽用の金は基地の設備拡張に常に充てられているわけだが、人形の士気はむしろ上がったと言ってもいい。ついでに言えば、酒保の売上は上がったしむしろ基地本体の資金は潤った。それも人形用の資金を以てして、だ。

 

 何故か?

 

「指揮官もスプリングフィールドさんの作った「オセチ」、食べませんか?」

「お前らで食え。俺は関与していない」

「…………そ、そうですか。指揮官がそう言うなら、一〇〇式は無理強いできませんが…………」

 

 頼んで貰い受ける金ではないからだ。お願いして、書類を出して、まるで「会社から」出しているように見せればそりゃあ誰だって躊躇いが出る。

 同じ働いた報酬でも、誰が管理するかで使い方に違いが出ることを分かっていないのがG&K社の弱さだろう。

 

 使う側は消費に精彩を欠き、此方は出し渋りに困る。それぐらいなら、いっそ「お前の金だ、お前が管理しろ、お前が消費しろ、お前だけの金だ」と言ったほうがどちらも楽だ。

 

 さて。

 

「さて。正月は面白いか」

「お、面白くはないですけど…………生活にハリが出ますよね」

 

 丁度いい台詞だ一〇〇式、まるでご都合主義だな。

 

 そう。金もハリが要る。

 G&K社のどこまでセーフラインかもわからない気色悪い資金より、自分が管理し自分しか使えない金の方がメリハリを付いているし、付けられる。今のはそういう話だ、同じ金でも本人の気の持ちようという奴が別物というわけだ。

 

 にしてもコイツは何時まで肩に力を入れている。長い、俺は上司でも何でも無く「管理者」だ。敬意は必要ないと何度も言ったはずだが。

 

「敬語を辞めろ。鬱陶しい」

「いえ、上官は上官ですから! 別に誰というわけでもなく一〇〇式はこういう喋り方ですし…………」

「あのイカレドイツライフルを見習え、慇懃無礼かつ愚かだぞ。アレが大先輩だと言うのにお前と来たら「呼びましたか!?」呼んでない帰れ帰らないなら窓から落とす」

 

 いつの間に居たんだお前。

 当然のように俺の椅子の手すりに腰を下ろすカラビーナ。中身の読めない柔らかい笑顔に思わず舌打ちが溢れた。

 

「カラビーナ、お前は素晴らしい」

「し、指揮官さん…………ッ!? ついにわたくしの魅力に「俺に金銭を超えた「苛立ち」というものを常に提供できるそのネガティブなサーヴィス方式は最早億千万の紙束では償えない罪を背負っている。一周回って画期的なビジネスと言ってやる、誰の差金だソイツを始末してやろう」

 

 お前が居ると俺は長台詞になって大変文字圧が高くなる。そういったメタ的な点でも早急にお帰り願いたい、殺したくなる。

 

 金を積んでも帰らないのがコイツの厄介なところだ。この前は一人形には馬鹿馬鹿しい金額を寄越して今後俺に業務的な会話以外するなと言ったのだが、

 

『それで』

 

 と言って金だけ受け取ってコイツは喋り始めた。あの日ほど金にならない感情で女を殴りかけた日はない。そしてコイツがマトモに金を使ったのを見たことがない、一体どこで使っているんだ。まさか俺の誕生日を勝手に決めつけてパーティーを開いたアレとかに使っているのかもしれないが、だとしても俺はコイツへの好感度など一ミリも上昇しないし、嫌いなのでむしろイライラとする。せめて俺以外に金を使え、ムシャクシャする。

 

 というより俺が暴力的行動に打って出そうになるのは人生でも数少ない。俺は乏しい経験をこの歳になっても経験できていることに関して、アレは実は授業料として受け取られた可能性すら考えている。要するに死ね。要さなくても死ね。

 

 俺の片手をゆうゆうと揺らして遊ぶカラビーナを存在しない扱いとすることにして、一〇〇式からの情報搾取に努めるとしよう。

 さて。

 

「さて。一〇〇式」

「指揮官さ~ん」

「え!? あ、何でしょうか…………」

「指揮官さんってば~」

「ところでお前はあの給金を何に使った」

「襲っちゃいますよ?」

 

 取り敢えず細い腕を捻じりながら窓に向かって全力で投げた。精々療養生活に涙を流すことだなクソッタレ。

 お前の人工処女なぞ三文の得にもならん。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「心配性も程々にしないと、本性がバレてしまいますね?」

「何故ピンピンしている」

 

 俺の執務室は中々の高度の筈だが、例え雪が積もっているとしても普通こうニコニコと当然のようについてこられるものか。以前からコイツは俺の想像だにしない妙な性能を見せつけてくる。

 

「心配性? 俺は金の出所について考えていただけだ。出費が増えればこの基地に還元される、それだけの目的のインタビューの一環だ」

「まあ、そういう事にしてあげても構いませんが?」

「あ”あ”?」

 

 何を知ったように笑っているこのクソッタレ。

 

 舌打ちが止まらん。さっきからコイツが喋るたびに舌打ちしてる、文章的に気持ち悪いからカットしていたがな。

――安心しろ、この程度で金は取らん。サービスだ、ただより高いものはないとも言うが。

 

 この馬鹿はさておき、俺が向かうのは食堂だ。持っている紙束が嵩んで敵わんな。

 

「わざわざ別口で指揮官さんがお年玉をあげる必要って、わたくしは無いと感じますが」

「お前は知っているはずだ、俺はこの基地に個人的に投資を行っている」

「それで?」

「一環でしかない、人形は単純だからな。お前は自身が至って善良ぶっているから俺まで勝手に善人だと思いこんでいる」

 

 これで金を落とす、ヤツラは勝手に満足感を得る。互いにウィンウィンというやつだ、ビジネスライクの極みだな。

 また何か察したように口元に手を当てて笑うカラビーナ。そろそろ本気で死にたいらしい。

 

 俺が嫌いなことは行動の解釈を俺に押し付けてくる人種だ。何せそういう奴らは知ったかぶり、俺を面白がり、何か聖人か何かと勘違いする。

 最高効率を求めれば必ず善人にならざるを得ないことが分かっていない。俺は俺に対する解釈に自由公平を保証するが、それを俺に一々押し付ける輩は嫌いだ。お前に俺の何が分かる。

 

「ふーん? そうですかそうですか、まあわたくしは指揮官さんが善人だとかどうだとかそんなお話はしていないのですけれどね?」

「どうせ考えていただろう、馬鹿は治らん」

「そうですね。わたくしも物好きが極まってきているとは最近自覚しています――――――ふふっ」

 

 きもっ。吐くなヤバイぞ。まじやっべーわ。

 

 今すぐ走って右手をホールドしてる人形を捨て去りたい気持ちを抑えつつ、何とか品位というやつを保ちながら歩いていたのだが――――――ふと通りがかった窓際。外で羽子板をしているカルカノ姉妹が目についた。

 

 否。目をつけられた。

 

「あ、指揮官もします?」

 

 何を笑っているんだコイツ、人をハメておいて。お断りだ。

 

「ことわ」

「あーそれ私も見たいぜボス。やろうぜ?」

 

 トンプソンは恐らく俺が嫌がっていることを察してさっきの仕返しで言っている。

 

「だからことわ」

「指揮官さん。というわけで今回はわたくしに無様に負けた後にオセチを頬張ってもらいましょうか」

「うるせえぶち殺すぞ」

「いやん激しいお人…………そういう所も好きですわ」

「口から出任せを、蜂の巣にするぞ」

 

 ちなみに互角だった。俺達は信じられないくらい墨まみれになった身体で何故かおせち料理まで食う羽目になってしまったのだが、人形が集合していて金を渡すのは楽だったので――――――まあ、結果的には正解、か。

 

 いや正解か、本当に。俺にはそうは思えんが、多分大半はそう言うのだろう。




アケオメコトヨロ。

カラビーナが「読者」に近い立ち位置になってきた所ある。俺はあんまり善悪に関わらない立ち位置のつもりですけど、何だか良い人だって意見の方が多そう。

指揮官がおもしろムーブする時は大抵この女居るな。使いやすい。
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