あとこのシリーズは、比較的穏健に世界征服が行われているので、死んでる人も平気で出てくる恐れがあります。
「んじゃさ。本物の女騎士さんが働く『くっ、ころ店』とかどう?レメディオスさんだっけ? あの人にお願いしてさ」
ナザリックのモモンガの自室で、テーブルを挟み弐式炎雷が広げた用紙に何かを書き込みながら提案する。その提案を聞いたモモンガは苦々しく首を振る。
「あれは『くっ、殺せ』ではなく、『くっ、殺す』だと思います……」
「……ああ、それっぽい。……モモンガさんは何かアイディアはある?」
弐式炎雷に問われ、モモンガは考え込む。
直前の会話にレメディオスが出ていた為に、聖王国が思い出された。あの国が性王国だったらなんの問題も無かったのだがという馬鹿な考えが浮かぶほどに熟考してから、モモンガは一つのアイディアを提案してみる。
「本物に拘るなら、本物の姫や女王を集めたお店はどうでしょうか?」
そのモモンガの提案に、弐式炎雷は腕を組んで考え込んだ後、ゆっくりと首を振った。
「相手がいる人もいるだろうし、それは不味くない? ……というか俺達がいくらここでアイディアだしたって、意味ないか」
そう言って弐式炎雷はテーブルに広げた用紙をクシャクシャに丸め、宙に放り投げる。丸めた用紙が落下を始める前に一瞬炎に包まれ、灰も残さず燃え尽きた。弐式炎雷は体術重視の為あまり使用しないが、忍術が使えない訳ではない。何かしらの術を使用したのだろう。
「……そうですね。こちらとあちらでは前提条件が違いすぎます」
モモンガ達が支配するこの世界も多種多様の種族が住まう。だがあちらの様に十世代も遡ればサキュバスの血が混じってるなどという事は当然ない。混血などほとんどないのだ。
モモンガと弐式炎雷が頭を抱えているのはそこだ。お店のアイディア云々では無く、そういうお店で働ける人材が居ない。勿論人材確保だけならば、容易い。一言命じればいい。それだけで済む。
だがそれをする訳には行かない。したら最後、ツアレ以上の悲劇のオンパレードだ。そんな事を仲間達が許すはずもないし、モモンガ自身もするつもりは無い。
「やっぱあっちの世界のサキュバス店は凄いよ。サキュ嬢とはいえ、働いている女の子たちがあんなに笑顔なんだもん」
弐式炎雷の言葉に、モモンガは頷く。あの世界のサキュバス店には、モモンガ達が知る限りだが、悲劇や悲哀はない。だからこそ自分達は気兼ねなく、仲間達と楽しめるのだ。
「……やはり、次にあちらの世界に赴いた際に、私から謝っておきます」
頭を悩ませる原因はモモンガが吐いた嘘、見栄だ。スタンク達の盛り上がりに冷や水を掛けるようで悪いが、正直に伝え謝るしかないだろう。
「――いや」
俯くモモンガに弐式炎雷は首を振る。
「やっぱ負けっぱなしは、俺も性に合わない。作ろうぜ、こっちでも。健全で、誰も悲しまない、女の子が心から笑ってられる、そんなお店をさ」
「……難しそうですね。世界征服よりもずっと」
「うん。まあでも、スタンク達もしばらくは扉を通る方法を見つけられないだろうし、見つけたとしても毒がーって言い訳もできるし。焦らず行こうよ」
弐式炎雷の言葉にモモンガは頷く。自分達は異形種だ。幸いと言うべきか、時間はたっぷりとあるのだ。
「とりあえず他の連中にも声掛けて、相談しよう。後はやっぱこっちの風俗に詳しい人に協力して貰いたいよ。誰か――」
そこまで言って、弐式炎雷の言葉が止まる。その事を疑問に思い、モモンガは首を傾げる。彼が頭巾の下で驚いたような顔をしていると思ったからだ。
「誰か心当たりはあるか、フラットさん?」
その名に、モモンガは驚いて振り返る。振り返ると確かにそこにフラットフットが立っていた。モモンガの真後ろに立っているが、今の今までまったく気づかなかった。
「なんの心当たりだよ。さっぱりわからん」
そういって笑うフラットフットに、弐式炎雷は悔しさを滲ませて肩を落とす。
「くっそ。影から出てくるまで全然気づかなかった。油断してたわけじゃ無いのに」
「忍者の本気警戒網掻い潜るゲーム楽しかったです。まあ、気にするなって。俺だって弐式が本気で隠れたら探知出来ないし」
そう言って暗殺者フラットフットが笑う。
「……驚きました。でもフラットさん。わざわざどうしたんですか?」
モモンガがそう訊ねると、フラットフットは笑みを強めて頷く。
「今日扉使ったグループが帰って来たんだ。残りの時間は自由に使って構わないって」
「まだ昼前なのに、もう帰って来たんですか?」
「早朝割引き使ったみたいよ。まあ、それは兎も角さ。せっかくだから俺達もあっちに遊びに行かない?」
扉の使用は基本一回に付き二十四時間だ。それを超えればペナルティが発生するが、早まる場合は問題ない。次のグループが使用する時間まではフリーになるので、むしろ歓迎される。
「行くか」
「行きましょう」
そしてそれは早い者順だ。
モモンガと弐式炎雷の決断は、それはもう早かったのである。
◆
「はい、お待たせしました、スタンクさん。野菜とお豆のごろごろスープです」
「お、待ってました」
食酒亭のテーブルで注文をクリムから受け取ったスタンクは、腰に下げた革袋から乾燥した草を取り出し、それをスープの上で手で細かく刻みスプーンでよくかき混ぜる。
そのスタンクの行動に疑問を覚えたのだろう、クリムが首を傾げながら問いかけた。
「香草ですか?」
「いや、毒草」
「死んじゃいますよ!?」
毒草入りのスープを笑顔で口にするスタンクに、クリムが悲鳴のような叫び声をあげる。
「くっぐぐぐぐ……。この舌先から痺れていく感覚、すぐに広がる全身の倦怠感に熱っぽさ。流石ゼルが選んだ毒草だ。良い具合に責めてきやがる……」
「何やってるんですか!? 早く吐き出して下さい!」
「……大丈夫だ、死なない程度に量は調整してある」
そう言ってスタンクは勢いよくスープを掻き込み、口を押さえながら一気に飲み干す。その姿を少し離れた所からメイドリーがものすごく冷たい目で見ているが、スタンクは敢えてその視線には気付かないフリをする。少しでも気持ちが折れたら、毒に負けてしまいそうだからである。
「ククク……こ、これでまた一歩、異世界に近づいたぞ」
そういってスタンクが少し虚ろな目で口元を袖で拭う。スタンクとて意味もなくこんな事をしている訳では無い。毒に対する耐性を高めて、モモンガ達の住まう異世界に繋がる扉、スタンクには見えないが、その先に広がるという毒の効果に耐えるために、こうして体の内側から鍛えているのだ。
「……モモンガさん達の言うブラッド・オブ・ヨルムンガルドですよね? もしかしてそれに耐える為ですか?」
クリムの指摘にスタンクは頷く。そう言えばと、目の前の天使は毒も石化も効かないんだよなとスタンクは思い出す。
「クリムは良いよな。天使は毒が無効なんだろう?」
「……どうでしょう? モモンガさん達の毒ですから、ちょっと自信ありません。スタンクさんなら余計でしょう?」
人間ならばもっと耐えられるはずが無い。そう暗に伝えてくるクリムにスタンクは笑う。
「いいかい、クリム。男には決して引いてはいけない時がある。モモンガの言う至高の美と快楽が待っているんだ、君ならわかるね?」
「わかりますが、手段はもう少し考えた方が良いと思います」
そう指摘するクリムに何か続けようとしたスタンクが、急に自身の腹を両腕で抱えた。
「ぐお! もう腹に来た! 駄目だ! まだ出すな俺の肉体! もっとギリギリまで耐えて、耐性を身に付けるんだ俺!」
異様な音を奏でる腹を抱え、スタンクが叫ぶ。クリムは片手でトレイを胸に抱きながら、残った手でスタンクの背中を優しく擦る。
「もう、ここで出さないで下さいよ? ゼルさーん! スタンクさんに回復まほ――あれ?」
呼んでからクリムがお目当てのエルフの姿が見えない事に気付き、探す様に辺りを見渡す。そんなクリムにスタンクがお腹を押さえ、呻きながら答える。
「ぐぬぬぬ……。ぜ、ゼルなら俺達を嵌めた魔法使いの調査に向かってるぞ。あああ! あ――――! た、耐えろ俺! こ、この苦しみの先に至高の快楽が―」
「お願いですから、トイレに行って下さい。……スタンクさんはゼルさんと一緒に行かなかったんですか?」
席を立とうとしないスタンクに呆れながら、諦めたようにクリムは尋ねる。ゼルが調査に向かっているのに、同じチームを組むスタンクが一人ここに居る事を疑問に思ったからだ。
「お、俺は荒事になるまで待機。魔法使い相手の調査だと、魔力の残滓がわからないと役に立たないからな」
なるほどと頷きながら、クリムはスタンクの背中をトントンと叩く。痛みというか波が引いたのか、少し落ち着いたようにスタンクは額に浮かんだ脂汗を袖口で拭う。
「そういや今日はモモンガ達は来たのか?」
「ボクはまだ会ってませんけど。あ、噂をすればですね」
そういってクリムがふよふよと浮きながら入口に向かう。スタンクはそのクリムの背中を視線で追っていき、扉から姿を見せた三人組に向け手を上げる。
「よお、モモンガ、弐式」
「こんにちは、皆さん。今日はフラットフットさんと一緒なんですね」
挨拶に応えながら、モモンガ達がスタンクが居るテーブルの席に座る。
「そっちは新顔か?」
スタンクがクリムからフラットフットと呼ばれた異形に視線を向けた。不躾な視線を向けられた異形は気にもせず、恐らく笑顔だろう、それをスタンクに向けてくる。
「うお、マジで生スタンクだ。すげえ! 俺はフラットフットって言います!」
「おう、よろしくな」
差し出された異形の手をスタンクは迷いなく握る。
「そのユグドラシルで有名実況配信者に出会いました的な反応止めてくれ。俺らの方が恥ずかしい。今日はゼル達は?」
弐式の質問に、スタンクは先ほどクリムにした説明を再度異形の三人組にするが、その事にはあまり反応が無かった。恐らくモモンガ達にとっては、誰かから狙われる事等日常茶飯事なのだろう。
「所でスタンクさん、これから少し時間はありますか?」
モモンガの質問に、スタンクの股間の羅針盤がピクリと反応する。
それにしてもモモンガも面白い男だ。尊大な、支配者然とした態度をスタンクやクリム達にする事も有れば、こうして丁寧な口調で話しかけてくることもある。まあ色々あるのだろうと、そこにはあまり触れず、股間の羅針盤が反応した話の続きを促す。
「ちょっと行ってみたいお店があってさ、良ければ一緒に行かない? 人数は多い方が面白そうなお店なんだよね」
「ほう?」
フラットフットがテーブルに身を乗り出して言う。スタンクは懐から煙草を取り出し、口に咥えた。火をつけ、煙をゆっくりと吸い込み、毒で弱った身体に馴染ませる。こういう誘いを受けたスタンクの答えは、明らかなハズレ店と分かっていれば別だが、一つだ。
「よし、行くか」
◆
「それでフラットさん。お目当てのお店ってのは?」
サキュバス街を三体の異形と一人の人間が連れ立って歩く。きょろきょろとお店を探しながら歩くフラット達は、客引きからすればいいカモだ。しきりに客引きが寄ってくるが、それはスタンクが上手くあしらっていた。
ギルドアインズ・ウール・ゴウンの面々も怖気ずにサキュバス街を歩けるようになる程度には成長したが、やはりスタンクとはサキュ街の経験値が圧倒的に違う。一行にスタンクが同行するのは、お子様カモ達の中に、親カモが交じっているような安心感がある。
「もう少し先のはずだけど、こういう場所ってどうしても目が泳いじゃって目印を見落としちゃうんだよな……」
弐式炎雷に尋ねられたフラットフットが、様々なサキュバス街に興味を引かれたように、視線を彷徨わせていた。その初心者丸出しの姿に、スタンクは甘噛みした煙草をひょこひょこと動かしながら、眺めていた。
「まあ俺も気付いたらお目当てじゃない店に入ってて、戻ってから気づくなんて事もあるぞ。言ってみりゃ、これは男の冒険だ。まるで違う場所に辿り着く時もあるさ」
スタンクの言葉に、異形の三人組が感心した様に頷いている。一人一人があり得ないほどの強さを誇る三人組のこういう姿に、スタンクはこいつらの股間の羅針盤を俺が鍛えてやるかとにやりと笑う。股間に羅針盤があるのかどうかは分からないが。
「あ、一番の目印が見えてきた」
そういってフラットが一つの店を腕で示す。スタンクもその先を視線で追えば、まだ日は高いというのに、その目印は日光よりも強い光で建物が発光していた。
「なんだ、フラット。お前ウィスプの店に来たかったのか?」
ウィルオーウィスプ専門店、『は』が落ちて『なぞの光』になっている看板を眺めながらスタンクは、そういやこの店に興味津々な奴がいると弐式が言っていたなと思い出し、フラットフットに尋ねる。尋ねられたフラットフットは首を振って否定する。
「いや、ここじゃなくて、裏手の店。前に偵察に来た時に見つけたんだ」
「裏手?」
裏に店なんてあったかと疑問に思いながら、フラットフットを先頭に全員で裏手に回る。
そして気付いた。
確かに裏手にもサキュバス店がある。光の精霊が放つ圧倒的な光によって生まれた深い影に隠れて、ぱっと見では気づきそうにない。暗がりというよりも、光によって生まれた濃い闇の中に佇むその店の看板にはこうあった。
『
「なげぇ店の名だな……」
感じるキワモノ臭にスタンクの股間の羅針盤が、しおしおと萎えていく。だがスタンクとは違いフラットフットが興奮した様に躊躇わずに入店していく。それにモモンガ達も続いて行った。
スタンクは怖気づく事無く未知に飛び込んでいく彼らの姿に、サキュバス店レビュー向いてるなこいつらと思う。
「ウヒッ!? お、お客さん!?」
店の受付、闇の精霊だろう、がスタンク達に驚いたように声を上げる。
「ウヒヒ……、う、嬉しいな! お久しぶりのお客さんだぁ……。お、表の店と間違えて無いよね? 間違えて無いよね?」
普段喋る事の無いキャラが、突然饒舌になって語りだしたような口調の受付に、スタンクはドン引く。
レベル自体は高い。闇の精霊らしく腰元まで届く長い黒髪に、それとは対照的な白い肌をしている。その対比が素晴らしいし、長い前髪で顔を半分隠しているが、精霊らしく非常に整った顔立ちをしている。ただし、胸は全くない。すとーんといった、なだらかどころでは無い、ほぼ完全な絶壁だった。ただし全裸。
スタンクの股間の羅針盤がむくりと反応するが、いまいち弱い。光の精霊と同じく受付から全裸でお迎えしてくれているが、肝心な部分が黒塗り規制されている為に、まったく見えないからだ。
「肝心なところは黒塗り規制かよ……」
「ご、ごめんね。ヒヒ……ごめんね! こ、この黒塗り私たちじゃ、けけけ消したりででで出来ないんだぁ」
アソコどころか乳首も見えない。光の精霊に対比する闇の精霊だけあって、その辺は同じかと思う。
だが、そんなスタンクの感想とは余所に、フラットフットが突然倒れ込んだ。
「フラットさん!?」
慌ててモモンガが駆け寄り、フラットフットの身体を起こす。弱弱しく差し出されたフラットフットの手をモモンガが掴み、声を掛けた。
「大丈夫ですか!? しっかりして下さい!」
「……も、モモンガさん。俺……この世界に転移して来れて本当に良かったよ……。またこうして皆や、動いているナザリックのNPCにも会えて……。それだけじゃない、このお店とも出会う事が出来た」
「……私も転移して来れて本当に良かったです。皆さんと再会出来て、こうして一緒にサキュバス街巡りが出来るんですから……」
「ああ、俺達は幸せだよ。ナイス。ナイスちっぱい。ナイスつるりんぺたん!」
フラットフットが横になりながらモモンガに握られていない手でサムズアップしていた。
「いや、俺達が転移して来た世界はこっちじゃねーし。……でもいいのかよ、これ。入口からしてすでに全裸じゃん……」
弐式炎雷が頭巾の上から手で自身の目を隠すようにしながら言う。そういやクリムもやっていたなとスタンクは思う。勿論弐式炎雷も手で目を隠すのはポーズだけで、指の間が広がっている。しっかりと闇の精霊を見ているのだが。
「お、お客さん?」
「す、すごい。四人も、四人も来てくれてる。ウヒヒヒヒ」
「い、いらっしゃいませ。よ、ようこそ闇の精霊店に、入って入って。いいい、いっぱいサービスするから」
闇の精霊たちが集まって来て、入り口から奥にと手を引かれていく。入口から入ってすぐに薄暗い空間が広がっており、スタンクは口に咥えた煙草から吸い込んだ煙をくゆらせた。
「システムは表の店のパクリか……」
「ぱ、パクリじゃないもん! 私達が元祖だもん!」
「本家ともいう。ひ、光の連中がパクってる」
「そう、料金だって表の四分の一だよ? お、お得だもん」
「うんうんうん、それなのに私たちがモテないのは絶対におかしい!」
闇の精霊がドンドン集まって来て、辺りの闇が深くなる。深すぎて、もはやスタンクには声が聞こえてくるだけだ。
光の精霊たちは、明るすぎて個室だと見えなくなるからああいうシステムだった。しかし闇の精霊だと闇が深くなる一方で、この乱交スタイルは完全に向いていない。
「闇が深すぎて何も見えねぇ……。ちなみに表の店とこっちはどっちが先に出来た店なんだ?」
「向こうだよ?」
「やっぱパクリじゃねえか……」
スタンクは呆れて項垂れる。この暗闇の中では何も見えないし、乱交スタイルでも恥ずかしさが無く問題ないかもしれないが、長所も完全に潰している。闇の精霊の口ぶりからして流行って居なさそうだし、客も自分達以外に居ない。
何も見えない乱交店など、そもそもなんの意味も無い。
だが一緒に訪れた異形組は違うらしい。
「すげえ! 見渡す限りのつるりんぺたん! 俺の理想郷は此処にあったんだ!」
「それナザリックでは絶対に言うなよ? いやでも、すごいね。自分多数の乱交はよくやってるけど、こんな大人数の女の子に囲まれるのは初めてだ。マイコニドのお店と違って、こっちは完全別人だし」
「これで料金が光の精霊と比べて四分の一なら、どうして流行らないんでしょうか?」
興奮した様な声がスタンクに届く。もはや闇に包まれて、一緒に訪れた三人組の姿も見えないが、向こうはしっかりと見えているらしい。
「モモンガ達は見えているのか?」
「ああ、スタンクには見えてないのか。モモンガさん頼める?」
「ええ――<魔法距離延長化・完全視覚>」
モモンガの声と共に、スタンクの視界に変化が起きた。
「おおお? ……おおおお! すげえ! これがモモンガの魔法か!」
視界が急にクリアになり、闇を見通せるようになる。広がった視界では多数の闇の精霊がスタンク達を歓迎するように集まっている。
「ほ、ほかにお客さんも居ないし、全員でお相手するから、楽しんで行ってね?」
「おっほー!」
おっぱいは無いが、多数の可愛い子に囲まれて、スタンクの股間の羅針盤の反応が強くなっていく。これなら独占できる分、お店には悪いが、人気が無い方が客としては楽しめて良い。料金だって表の四分の一なら、長時間居ても大した金額にはならない。
8、いや9か?
スタンクは闇の精霊に身を任せ、外套を脱ぎ捨てながら今回の評価を始めていく。いやいや、まだ始まったばかり。ここはしっかりプレイに集中しないと、女の子に失礼だなと全裸になったスタンクは鼻の下を伸ばす。
「ぐへへへ、それじゃあ――うん?」
背後から聞こえた黄色い声、と言う程には高くないのだが、闇の精霊たちの歓声にスタンクは振り返る。魔法でいつもより開けた視界の先に、モモンガが数体の闇の精霊に囲まれていた。声をあげていたのは、彼女達だろう。
「ほ、本当に大丈夫なんですか?」
「う、うん、もう一回さっきのやって」
「では……
そう言いながらモモンガが闇の精霊に触れた瞬間、女の子は身を仰け反っていた。まるでそれだけで絶頂したかのような感じだ。
「す、すごい! お、お兄さん、もっとやってもっとやって。すっごい気持ちいいから」
「ほ、ほかには無いの? もっと闇の属性は無いの?」
「色々ありますが……。苦しかったりしたら言って下さいね? スキル発動<絶望のオーラⅠ>」
「あ、あああああ! こ、これすごい! き、気持ちいいぃよぉ」
モモンガの身体から、何かオーラの様なものが吹き上がる。その効果内なのだろうか、周囲の闇の精霊が快感に仰け反りながら歓声をあげていた。
「あいつ何やってるんだ?」
スタンクでは理解できない何かをモモンガがしている。そしてそれはどうやら闇の精霊には大好評らしい。
「じゃあこれはどうですか? スキル<絶望のオーラⅡ>」
「い、いいよぉ、お兄さん……。もっと……もっと浴びさせてぇ」
すっごいメロメロにさせてる。そしてスタンクの隣からごくりと生唾を飲み込むような音が聞こえた。
「ご、ごめんね、人間のお兄さん。す、すぐ戻るから」
「はあ? ちょっと――」
スタンクの伸ばした手が空を切る。スタンクの相手をしてくれていた女の子が、モモンガの方に駆け寄って行った。
「ふふ、楽しくなってきた。じゃあ次はこれです。スキル<絶望のオーラⅣ>!」
さらに深いオーラがモモンガの身体から吹き上がる。オーラを浴びた闇の精霊たちはさらに大きな歓声を上げて、身を悶えさせていた。モモンガの身体から噴き出たオーラがスタンクの近くまで伸びてきたので、興味本位で手を伸ばしてみる。
「それ不味い奴だから」
声と共に肩を引かれる。オーラに触れる寸でのところで止められた。スタンクを止めたのは弐式炎雷だろう。頭巾を脱いだ姿を初めて見た為に疑問形になるが、その弐式に肩を掴まれていた。
「そんなにヤバいのか?」
尋ねると弐式炎雷はそののっぺりとした顔を、恐らくだが、苦々しく歪める。
「相当不味い。永続効果のあるバッドステータス。あの子達は平気みたいだけど」
「あああー。女の子全部モモンガさんに持っていかれてたー」
スタンクと同じく相手が居なくなったのだろう。フラットフットもスタンクの方に歩いてくる。
「皆さん、即死耐性はありますか? これより凄いのもありますよ?」
「うんうんうんうん! やってやって! 私たちは大丈夫だから、くぅぅぅぅぅ! む、夢中になっちゃう!」
気を良くしたモモンガはさらに濃いオーラを吹き出し、そのオーラを闇の精霊たちが残らず吸い取っていく。
「……あのオーラには絶対触れるなよ、スタンク。つーか調子に乗りすぎだろう、モモンガさん」
「あの子達が吸い取ってるから問題無さそうだけど、街中でなんて真似してるんだあの人」
弐式炎雷とフラットフットの反応から、あのオーラはさらにヤバいらしい。
「はっはははは! それでは、私の切り札をお見せしようじゃないか」
普段のモモンガから、たまに見せる支配者然とした口調に変わる。同時にモモンガの背後に十二の時を示す時計が浮かび上がった。それが浮き上がった瞬間、弐式炎雷とフラットフットが驚愕したように叫ぶ。
「ばッ!<
「止めるぞ、弐式! 俺の理想郷を、潰されてたまるか!」
二人の異形が駆けだすころには、スタンクの股間の羅針盤は、すっかりとしおしおになっていた。
『
◇オーバーロード モモンガ
10
ごめんなさい。少し調子に乗りすぎました。
ですが、闇の精霊さんと
<絶望のオーラ>がここまで喜ばれるとは。私の行動一つで女の子が悶える様は快感です。最近は女の子を責める喜びに目覚めましたが、今回も非常に楽しめました。誘ってくれたフラットさんに感謝です。また一緒に行きましょうね!
◇ハーフゴーレム 弐式炎雷
7
女の子のレベルは高い。料金も安い。集団でそういう事するのも俺には合ってる。
もっと高評価でも良いんだけど、やっぱり俺的にもうちょっとおっぱいは欲しい。綺麗な黒髪は好みなんだけどさ。
種族的な特徴なんだろうね。女の子は一杯いるんだけど、みんなそんな感じだったよ。
というかモモンガさん止めるのに疲れたわ。
◇暗殺者 フラットフット
10
ついに辿り着いた俺の理想郷! つるりんぺたん天国!
貧乳が好きであってロリでは無い俺には、ハーフリングの子とかは無理筋なので、シェイドの子達は凄い魅力的。女の子はドストライクだし、周りからプレイを覗かれているって興奮もあって、マジで俺向きの店だと思う。
思うんだけど…………モモンガさんに女の子全部持ってかれたよ……。同道する人は良く選んだ方が良い。自分よりシェイドの子にモテる相手だと、惨めどころか、相手してくれる子も居なくなるよ!
という訳で、俺と一緒にこのお店に付き合ってくれる人募集中です。ただモモンガさんは駄目だぞ!
◇人間 スタンク
5
闇の精霊のお店だな。光の精霊のお店に対抗しているのか、システムはほぼパクり。だがシステムは同じでも、料金設定が向こうより安かったり、闇の精霊の特徴が光の精霊と真逆なので、棲み分けは出来る。
向こうは大部屋でも目が疲れるくらいに眩しいんだが、こっちは逆で集まれば集まるほど闇が深くなる。というか暗すぎて何も見えない。この時点で集団乱交の長所を完全に潰してるな。対策無しでは暗がりでヤッてるだけなので、それ目当てならおすすめできないぞ。
料金は安くて良いし、女の子も貧乳が受け入れられるならレベルは高い。だけど、陰気な女の子が無理やり陽キャを演じてる感はある。根底に精霊らしい抜けてる感じはあるけどな。
人気が無いお店らしいので、自分達だけで女の子を独占出来るのは高評価。ただし連れて行く奴は、良く選んだ方がいい。闇の精霊に特効な奴が居ると、女の子を全部持っていかれる、チクショウ。
偶には原作に無いお店。パクリだけど。