至高のレビュアーズ   作:エンピII

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最初は『かぐ〇様は告らせたい』のアニメを見て、幻視してしまったネタを入れてしまっています。このシリーズでしか再現できないと思ったので。
まあ、いつものパクリです。オバロ、レビュアーズ双方に関係ないネタでごめんなさい。
どうしてもやりたかった。

そして今回のネタは、わりとシリーズ始めた当初から思いついてたネタなのですが、超えちゃいけない一線を越えてる気がして、やらなかったものです。
先に謝ります。ごめんなさい。



ドール・パペット・ゴーレム 性のマリオネット

「モモンガさん、この前メコンさん達がアマゾネスさんのお店に行ったレビュー読みました?」

 

 円卓に腰掛けるヘロヘロが、対面に座るモモンガに笑いをこらえる様にしながら問いかけてくる。何が面白いのだろうかとモモンガは思いつつも、ヘロヘロの問いかけに頷く。

 

「ええ、勿論読みましたよ。なんでもアマゾネスと戦って勝てば料金がタダになるというお店でしたね」

 

「そうです、その通りです。メンバーも戦い大好きな人達で行ったみたいですね。まあ、それはいいんですけど……うふふふ」

 

 もはや笑いが隠せていないヘロヘロが楽しそうに続ける。

 

「今はそうでも無いらしいんですけど、アマゾネスの人達って戦闘時に弓を引きやすいように、おっぱいを斬り落としたりするんですって。ほら、大きいと弓の弦が当たっちゃうじゃないですか」

 

 その話の何が面白いのだろうかと、モモンガは若干引く。だが、ヘロヘロの笑みの正体はそれではないらしい。

 

「その話を聞いて、私茶釜さんがめちゃめちゃアマゾネス向きだなーって。ぷーー、くすす。そ、そう思っちゃったんです」

 

 モモンガは吹き出すヘロヘロの後ろに、いつの間にか円卓に現れたピンク色の肉棒が近寄って来ていることに気付く。

 

「だって、茶釜さんのおっぱいサイズなら何の心配もないじゃないですか。こんなんですし、あ、もちろんリアルの方の茶釜さんの話ですよ」

 

「…………………………」

 

 胸がありそうな場所を、笑いながらスカッスカッスカッスカッと粘体の触腕を振るヘロヘロを、ぶくぶく茶釜が背後から無言で覗き込んでいる。

 

(ヘロヘロさ―――ん!)

 

 ブレーキを踏めと心の中で叫ぶモモンガの思いは、ヘロヘロには届かない。

 

「逆にやまいこさんは向いて無いですね。だってあの人こんなんですもん、こんなん!」

 

「…………………………」

 

 触腕でボインボインと、大きな胸を持ち上げる様なアピールをするヘロヘロを、こちらもまたいつの間にか円卓に現れたやまいこが無言で見つめていた。

 

「あの巨乳に弓の弦がビシバシあたって大変な事になりますからね。あ、もちろんリアルのほうですけど――」

 

 やまいこが無言で女教師怒りの鉄拳を拳に嵌めて、一度感触を確かめる様に打ち合わせる。そのガツンという大きな音に、ヘロヘロがようやく何かに気付いたようで背後を振り返った。

 そして気付くと同時に――

 

「ごめんなばぁぃ!!」

 

 謝罪を口にする黒いフルーチェが鉄拳制裁を受け、モモンガの頬を掠めてものすごい勢いで壁面に激突し、べちゃっという音を立てる。

 モモンガは恐る恐る振り返り壁の染みになった友人を眺め、すぐに視線を円卓の自身の席に腰掛けたぶくぶく茶釜に向けた。怖かったからだ。

 

「私達を気にする必要無くなったからってさ。いくら何でも油断しすぎじゃない、ヘロヘロさん?」

 

 壁の染みがドロドロと壁面を伝わって床に落下し、顔を起こす。

 

「も、申し訳ありません」

 

「これで聞いてたのがソリュシャンだったらどうするのよ。NPCにバレないようにって、みんなでルール作ったんでしょう?」

 

「め、面目ありません。以後気を付けますので……」

 

「……まあ、いいけどさ」

 

 目は無いがジト目でヘロヘロを見つめるぶくぶく茶釜が、ため息をついたようだ。

 

「そ、それでお二人はどうしたんですか? 餡ころさんは?」

 

 モモンガは話題をなんとか変えようと、二人に無理やり明るく訊ねる。

 

「ああ、うん。あんちゃんは今、弟の羽を毟ってる。もう少ししたら落ち着くと思うけど、モモンガさんも気を付けてね? 流石にそこらへんの分別はあるだろうけど」

 

「……ええぇー?」

 

 餡ころもっちもちがペロロンチーノの羽を毟る意味も分からないし、モモンガが気を付ける理由も分からない。

 

「はいこれ、モモンガさん」

 

 分からないが、理由を尋ねるより先にやまいこがモモンガに近寄り、一枚の書類を差し出してくる。

 疑問気に受け取ると、それは異世界に繋がる扉の使用申請書だ。ペロロンチーノから教えて貰ったのだろう。

 そしてその書類には、ぶくぶく茶釜、やまいこ、餡ころもっちもち、ペロロンチーノの名前があった。

 

「これは?」

 

「ああ、うん。私達も一回その異世界に遊びに行ってみようかなーって」

 

 少し驚いたモモンガの問いかけに、ぶくぶく茶釜がそう言う。そのぶくぶく茶釜の言葉に、ヘロヘロがぴょこぴょこと跳ねて自分の席に腰掛け彼女に尋ねる。

 

「え? 茶釜さん達あっちでインボーを利用するんですか?」

 

「いんぼー?」

 

「ええ、インキュバスボーイの略なんですけ――」

 

「はーい、ヘロヘロさん。少し黙ってましょうかー」

 

 再び妙な事を言い出しそうなヘロヘロを、モモンガは手で制す。本当この人タフだなと呆れつつ。

 

「……ああ、察しがついた。そういうのじゃないから」

 

 ぶくぶく茶釜が呆れたようにピンク色の触腕を振る。

 

「あっちってさ、普通のお店も色々あるんでしょう?」

 

「え!? え、ええ」

 

 ぶくぶく茶釜の問いかけにモモンガは頷く。文明レベルとでも言うのか、そういうのにそこまでの開きは無いはずだが、何処か妙にレベルが高かったりするのがあちらの世界だ。

 

「おまけに私達がこの姿でうろついても、悪目立ちしないらしいし。ちょっと普通に楽しんできたいなーって」

 

「ああ、そういう事ですか」

 

 息抜きという事だろうと、モモンガは頷く。

 確かに、向こうではモモンガ達は支配者でもなく、NPC達の目も無い。人の姿をしていなくても悪目立ちもしない。良い事づくめだ。

 サキュバス店以外の理由であちらを訪れるグループもいるのだから、当然だろう。むしろサキュバス店ばかりに目が行って、女性陣にひた隠しにしていた事を申し訳なく思う。

 

「ええ、楽しんで来て下さい。扉は何時利用されますか? 茶釜さん達は初めてですから、最優先で利用できますよ」

 

「ありがとう。まあでも、普通に順番どおりでいいよ。あんちゃんまだ落ち着かないし。もう少し弟でストレス発散させるつもり」

 

「そ、そうですか?」

 

「弟君、ちょっと可哀想だけどね」

 

「平気平気、アイツはあれくらいじゃ凹みもしないから」

 

 微塵の疑いもなく断言するぶくぶく茶釜に、モモンガは姉の弟に対する信頼を見る。いや、これ信頼か? という考えも過るが、それは捨てておく。

 美談にしておけば、薄情者と叫びながら引きずられていった親友に対して罪悪感を抱かずに済むからだ。

 

「わかりました。あちらのお金は心配しないで下さいね。私が用意しておきます」

 

「ああー、助かる。あんがとね、モモンガさん」

 

「いえいえ」

 

 ぶくぶく茶釜の礼に、モモンガは何でもないと笑って頷く。せめてこれぐらいはしないと、女性陣に申し訳ない。

 

「ところでモモンガさん達は、これからあっちに行くの?」

 

「あ……あー。はい……」

 

 やまいこの問いかけに、モモンガは思わず口ごもる。もうバレてしまったとはいえ、女性にそういう事を訊ねられるのは、やはり困る。

 

「ええ、今向こうに行っているグループが戻って来たら、遊びに行ってきます」

 

 まるで気にする素振りも無いヘロヘロの言葉に、すごいなーとモモンガは感心する。そうなりたいとは思っていないが。

 

「へぇ? 遊びに行くお店ってどういう所?」

 

 突っ込んでくるやまいこもすごいなーと、アインズはこちらにも感心する。

 

「クリエイターチームがこの間行って来て満点評価だったお店ですね。あ、その時のレビュー読みますか?」

 

 そう言ってヘロヘロが差し出したレビューにはこう書かれていた。

 

『ドール・パペット・ゴーレム 性のマリオネット』

 

 と。

 

 

 

 

 

 

「むふっ。むふふふふふふふ」

 

 異世界を訪れ、お目当てのお店に向かうヘロヘロは非常に上機嫌だった。モモンガはその楽しそうなヘロヘロに嬉しくなる。

 リアルでは死にそうなブラック企業勤めだったらしいが、サキュバス店巡りをするようになってからヘロヘロは非常に楽しそうだ。

 それもこれも、こちらの世界のおかげかとモモンガは感謝しそうになるが、ヘロヘロに関してはモモンガに遅れる形で転移してからも割と楽しんでいたなと、世界征服完了までに彼が引き起こした数々の事件を思い出して頭を振る。

 この人は、こちらあちらの世界関係なしに、こういう人だったと。

 そのヘロヘロに今回の同行者の一人、ぷにっと萌えが声を掛ける。

 

「楽しそうですねー、ヘロヘロさん」

 

「わかりますか、ぷにっとさん。ほらこれ見てください」

 

 ヘロヘロがそう言ってぷにっと萌えに一枚の紙を見せる。モモンガも覗き込んでみると、それにはイラストが描かれていた。モモンガは知らないキャラクターだったが、黒衣の胸が大きな女性で、網タイツをしっかりと履いている。

 

「ああ、ヘロヘロさんも描いて貰ったんですね。実は私もなんですよ」

 

 そう言ってぷにっと萌えからも一枚のイラストを見せられた。

 

「ほら、織田信長です」

 

 ぷにっと萌えが嬉しそうに掲げるイラストに、モモンガは首を捻る。

 小卒のモモンガでも織田信長くらいわかるが、あの人物は女性だっただろうかと。

 実際ぷにっと萌えから見せられた織田信長は黒衣の軍服に帽子、それにマントを羽織った女性で、モモンガが知るそれとはかけ離れている。

 

「ああ、ノブですか。ぷにっとさんも描いて貰ったんですね」

 

「ええ。ユグドラシルでもそうですが、こうしてデザインを起こしてもらえるのは非常に助かりますね。なぜか胸が増量されてますけど」

 

 確認するように今回一緒に扉を通ったメンバー、モモンガ、ヘロヘロ、ぷにっと萌えが最後の一人に振り返る。

 

「出来ればメイドキャラを依頼されたかったけどね。後は胸は趣味。シャルティアにパッド設定つけてでも貧乳にしたペロロンさん程のこだわりは無いでしょう、ぷにっとさんは」

 

 あの設定画でよくやったよと呟く異形種。

 それが「メイド服は俺の全て(ジャスティス)」、ホワイトブリムだ。

 

「私達がナザリックのNPC達を創造出来たのは、ホワイトブリムさん達クリエイターチームが優秀だったからですしね」

 

 そういうモモンガの言葉に、ホワイトブリムが嬉しそうに頷く。

 

「ゲーム性は勿論だけど、ユグドラシルの自由度と再現性が俺達にはたまらなかったし。あっちの世界でもメイドはいるけど、やっぱ俺達の創造したあの子達とは比較にもならない。あの様々に装飾されたメイド服は最高だと思わない?」

 

 そう問われ、モモンガはええと自信をもって答える。彼女達の魅力に、見栄えという力に、どれほど救われたか。

 

「素晴らしいですね」

 

「でしょう? まあ、帝国とかのシンプルなメイド服も悪くないけど。つまりはメイド服は何をしても最高だということ。メイド服こそ人類史上最高の発明だ。ビバ、メイド服」

 

 胸を張って語るホワイトブリムに、モモンガは思わず苦笑いを浮かべる。変わらないなと。

 どうせなら自分も、ユグドラシルのキャラクターかなにかのデザイン画をホワイトブリムに依頼しとけば良かったかと思ったが、まあ何とかなるだろうと、モモンガは諦める。

 なぜならもうお目当てのサキュバス店に到着したからだ。

 

「いらっしゃーい。お? ホワイトブリムさん、いつもお世話になってまーす」

 

 木目のマリオネット人形のような受付が、そう言ってモモンガ達を出迎える。

 既に一回訪れているホワイトブリムの事を覚えていたようだが、お世話になっているとはどういう事だろうかと首を捻る。

 

「こんにちは。異形種レビュアーズ名義で予約してるけど、大丈夫かな?」

 

「大丈夫ですよー。あの子達も予約時間に合わせて空くように、調整してあります」

 

「ああ、ありがとうね。じゃあ行こうか」

 

 疑問符を浮かべるモモンガ達を余所に、ホワイトブリムが慣れたように店の奥に進んでいく。

 

「おおお、これはまた凄いですね」

 

「でしょう? これだけのパーツパターンは、ユグドラシルにも負けてないと思う」

 

 ずらりと並んだ各部のパーツに、ぷにっと萌えが感心した様に呟き、その呟きにホワイトブリムが愉快そうに頷く。

 このお店は髪や目や身体のパーツを組み合わせ、自分好みの女の子ゴーレムを組み立てて楽しむお店だとレビューを読んでモモンガ達は知っているが、このパターンの多さにはやはり圧倒される。

 

「ここを教えてくれたゼルさんレビューにはマジ感謝。これだけのパーツパターンがあれば、再現出来無いキャラは居ないよ。俺達にはね」

 

 確かにこれはクリエイターチームに火を付けそうだと、モモンガもまた感心する。

 

「そういえばホワイトブリムさん。さっきの受付さんがお世話になってるって何の話ですか? 他のお客さんも居ないみたいですけど?」

 

 ヘロヘロが先ほどの疑問をホワイトブリムに向けていた。

 

「ああ、貸し切りにしてもらったんだよ。俺達、このお店の売り上げに貢献しているからさ」

 

「売り上げに貢献?」

 

「前来た時にね。まあ見てよ、俺達クリエイターチームの自信作をさ」

 

 そう言うホワイトブリムに、組み立て済みの人形が並べてあるデフォルトコーナーに案内される。

 そのコーナーには、一段高いお立ち台の様な台座がある。

 そしてそこには六体の組み立て済みの人形が、ポーズを取りながら並べられていた。

 それを見た瞬間、ヘロヘロがムンクの叫びの様なポーズで、あらん限りの声で叫ぶ。

 

「そッ、ソリュシャ―――ンッ!!」

 

 殿堂入り。魔改造禁止。

 そんな立て看板と共にお立ち台に並ぶのは、メイド服の違いや装備の違いはあるが、間違いなく六連星(プレアデス)

 その二人いる三女の創造主であるヘロヘロが崩れ落ちた。

 

「あ、あああ……。そ、ソリュシャン……。どうして貴方がっ!」

 

「俺としては外装を再現出来無くて不満だけどねー。俺達がこれ組み立ててから、このお店人気爆発らしいよ?」

 

 胸を張るホワイトブリムにぷにっと萌えが、呆れたようにため息をつく。

 

「まったく。クリエイターチームは何を考えてるんでしょうか? ナザリックの華。顔とも言うべきプレアデスを見た目だけとはいえ、こういう所で再現してしまうなんて」

 

 困ったものです。そうぷにっと萌えが続けるが、モモンガはその間に見つけてしまっていた。

 

「……いえ、ぷにっとさん。六連星(プレアデス)じゃないみたいです……」

 

「へ?」

 

 モモンガの骨の指が向けられた先にぷにっと萌えが視線を移す。

 

七姉妹(プレイアデス)です」

 

「おッ、オーレオ――――ルゥ!!」

 

 一人だけ巫女装束の為に、別物扱いされていたのだろう。

 少し離れた所に置かれたお立ち台に、『本指名No1』の掛け看板を首から掛けられた末妹もそこに居た。本指名ってなんだろうと疑問に思うモモンガの隣で、ぷにっと萌えが膝から崩れ落ちた。

 

「あああああああ!? アナタまでッ!」

 

「どう、ぷにっとさん? 隣にいるウカノミタマとオオトシの再現度も大したものでしょう。まあ、オオトシはショタから男の娘に変更しているけど」

 

 オーレオール人形を挟み込むように、おかっぱでキツネ面を被った少女形態のウカノミタマと、太陽をモチーフにした仮面を被った少年――男の娘に変更されているらしい、オオトシの二体のシモベまで再現されていた。

 モモンガは呆れて、骨の手で自らの顔を覆う。 

 

「いやー、装備とかの外装はともかくとして、見た目だけなら大したものでしょう? ほら、どの娘も何かしらの人気No1みたいよ」

 

 ホワイトブリムの言葉通り、再現されたプレイアデスには本指名だ念話指名だの、何かしらのNo1を示す看板が掛けられている。

 

「その功績が認められてさ、俺達このお店の永年パス貰ってるんだよね。だから今回の料金は気に――おおぉぅ!!」

 

 台詞は最後まで続かずに、迫った漆黒の粘体で出来た拳を、ホワイトブリムは身を仰け反って何とか回避する。

 ホワイトブリムに攻撃を仕掛けたのは、いつものコアラサイズのヘロヘロでは無く、神話級アイテムすら溶かし尽くす彼の酸性を解き放った真の姿。

 ゴリラの様なサイズにまで肥大化した全力形態のヘロヘロがそこに居た。

 

「……ユリ。……ルプスレギナ。……ナーベラル。……ソリュシャン。……シズ。……エントマ。そして……オーレオール」

 

 ヘロヘロの窪んだ眼窩から流れ落ちた粘液が、ジュッという音と共に床面に穴を穿つ。

 

「貴方達を玩んだこの罪は、やまいこさん、メコンさん、弐式さん、ガーネットさん、源次郎さんに成り代わり、私が贖わせます。……同じ一般メイド三柱のよしみです。せめて苦しませず一気に溶かし尽くしますよ、ホワイトブリムさん……」

 

 モモンガが聞いてきた中でもっとも悲しみと怒りが渦巻いたヘロヘロの声に、あ、これマジだと思う。

 

「まーって! 待て! 待って! お前がその状態で暴れたらこの付近誰も住めない酸の沼地になるぞ! 異世界では無闇に暴れないルールはどうした!?」

 

 自分の命が掛かっているからだろう。ホワイトブリムが必死の説得を試みる。

 

「安心して下さい」

  

 普段の三倍増しに低い声のぷにっと萌えが答える。

 ヴァイン・デスの彼の体から伸びた蔓が、まるで建物を支える様に周囲に這っていた。

 

「このフィールドは私が支配しました。ヘロヘロさん、気にせず全力でやって下さい」

 

「ありがとうございます、ぷにっとさん。さあ、ホワイトブリムさん。何か言い残すことはありますか? ああ、シクスス達の事は心配せずに。これからは私が責任をもって、彼女達も守っていきますから」

 

 微塵も冗談の含まれない声で、ヘロヘロがそう宣言する。

 

「待て! ヘロヘロもぷにっとさんも! これは違うんだ!」

 

「今さら言い訳ですか?」

 

「そうじゃない! ここに居るのは外面だけを再現した紛い物だ! そんなものが俺達の! 俺達が心を籠めて創造したナザリックのNPCとでも言うのか!?」

 

「……む」

 

 必死にホワイトブリムは続ける。

 

「NPC達をNPC足らしめているのは何だ!? その心だろう! 魂だろう! ここに在るのは心持たない空の器だ! ナザリックのNPC達は俺達の設定(ねがい)が! 心があるから、愛おしいんだろう!?」

 

 再現されたユリ人形の首に駆けられた看板に「おススメ性格 ボクっ娘 女教師」とか書かれてるが、ホワイトブリムの身が本当に危なそうなので、モモンガは黙っておくことにした。

 

「そもそもこんな手抜きの量産品メイド服を着せた人形を、プレアデスと呼ぶのはデザイナーの一人として俺が許さん」

 

 まあ、そういうメイド服も趣があるんだけどねとホワイトブリムが続ける。

 その言葉に店に這っていた蔦がぷにっと萌えに戻って行き、ヘロヘロも酸性を抑えるためのいつもの姿に戻る。

 

「……それも、そうですね」

 

「まあ、今回はそういう事にしておきましょう」

 

 少し納得したのか、戦闘態勢が解かれる。その二人に胸を撫でおろすホワイトブリムにモモンガが尋ねた。

 

「さっきの言い訳、ホワイトブリムさんが考えたんですか?」

 

「いや、るし★ふぁー。怒られたらこう言えって」

 

「……ああ、やっぱりあの人絡んでるんですね」

 

「はぁー、まあ一件落着か。ここまで怒られるとは予想外だったけど」

 

 床に安心した様に座り込むホワイトブリムに、ぬっとヘロヘロとぷにっと萌えの二人が見下ろす。ヘロヘロは見上げるだが。

 

「何言ってるんですか」

 

「この子達は封印処置をとりますよ」

 

「え! だって俺達もう報酬もらってるし!」

 

 そう言って永年パスを掲げて見せるホワイトブリムに、ヘロヘロとぷにっと萌えが意地悪く笑う。

 

「新たに再現すればいいじゃないですか。この子達にも負けない魅力的な子を」

 

「へ?」

 

 

 

『ドール・パペット・ゴーレム 性のマリオネット』

 

 

 

◇オーバーロード モモンガ

 

 色々ありましたが、とりあえずその辺は割愛します。クリエイターチームの身の安全の為に。

 お店のシステム関連は既にクリエイターチームがレビューを上げてますので、そちらを見ていただければと思います。ですので、この辺も割愛します。

 ゴーレムを再現するだけで今回は終わってしまいましたが、わいわいと、あーでもないこーでもないと、皆さんと話し合いながら何かを作るのはやはり楽しいですね。

 ナザリックを攻略した直後を思い出して、私は楽しかったです。

 しかし、ホワイトブリムさんの描くあの細緻な刺繍が施されたメイド服は、目の前で描き起こされても、やはり信じられないと驚愕します。

 絵が描けるというのは、やはり凄いですね。

 

 

◇古き漆黒の粘体 ヘロヘロ

 

 衣装はどうしたって既製品になるのに、イラストに描き起こされたあの刺繍の精密さは常軌を逸してます。

 よく資料もなしに描けるなー。

 技術は心から称賛しますよ。

 とにかく、滞在時間の殆どを使って四人で新しい看板になる子達を作り上げるのに必死でした。

 私としてはAIを組み込んで核も弄りたいんですけど、あれは魔法技術ですからね。どうしようもありません。

 それでもなんとか、時間内で同じ数のデフォルト人形は再現することはできました。

 なんだかんだで、楽しかったな―。

 

 

◇ヴァイン・デス ぷにっと萌え

 

 あの綿密なデザインのメイド服を着せたヒロインの漫画を毎月連載してたって、やっぱあの人頭おかしい。あ、いい意味で、ですよ。

 転移した世界でナザリックを訪れた人々が、感嘆の呻きを上げるのは見ていて誇らしかったですが、やはりクリエイターチームの力が大きかったんだなと、改めて思いました。

 制限時間もあり作業に追われましたが、それでも何とか間に合いましたし。

 やはり何かを創り出すというのは、楽しいですね。

 

 

◇メイド服は俺の全て(ジャスティス) ホワイトブリム

 10

 今回の罰として、俺がリアルで連載していた漫画のヒロインたちをみんなで再現することに。

 とにかく急いで人気のあったキャラクターと、個人的に思い入れがあったキャラクターを描き起こして、それを元にみんなで再現していきました。

 妥協するつもりはないので、事細かく色指定も含めて注文を出したんだけど、やっぱみんなユグドラシル時代にあのNPC達を製作しただけはある。見事に再現してくれた。

 そして再現された彼女達を見て、ちょっと嬉しくて泣きそうになった。

 もし俺の漫画が実写化されてたら、こうなったのかなーって訳も分からない感動に襲われたんだよ。

 うん、この感動は忘れないでおこう。

 受付の子に俺の漫画を渡しておいたら、サムズアップされた。好評らしく、この子達ならいけるってお墨付きも貰えた。やっぱ肯定されると嬉しい。

 そして最後に、この子達がこのお店で看板娘としてお客さんの相手をするんだなーと思うと、これまた訳の分からない感情に襲われた。

 自分の漫画のエロ同人誌を初めて見たあの時の感情に似ている。でもないかな? 立体化されてるし。

 この子達が働いているところを想像すると湧き出るこの感情については、たっちさんとイイ感じに語り合えそうな気がする。

 まあ、なにはともあれ。お疲れさまでした。




見た目だけのゴーレムとはいえ、プレイアデスだしちゃってごめんなさい。
そしてお立ち台に並ぶプレアデスは、書籍八巻のあのイラストを想像して下さい。
そら人気出るだろう!


あと別シリーズでベルリバーさんの創造したNPCを勝手に決めて、今現在痛い目を見てるんですが、今回はぷにっとが創造したNPCを勝手に決めさせてもらいました。
後悔はしても、反省はしないスタイル。

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