至高のレビュアーズ   作:エンピII

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R18タグ要らない気がしてきました。


ニンフ専門店 マママニア

『ゆえに!この魔導軽視の状況に歯止めをかけるべく!我は再び立ち上がったのである!どうか、この魔王デスアビスに!血塗られし一票をー!』

 

 なにか、この世界特有の魔法だろうか。巨大な3Dホログラムの様な技術で、角の生えたきわどい格好の少女が自身の姿を空に晒している。魔王と名乗る少女をモモンガは見上げつつ、隣にいる弐式炎雷に声を掛けた。

 

「どう思いますか、弐式さん?」

 

「んー、覚醒した神人。もしくは真なる竜王級……かな?流石にワールドエネミークラスの強さは無いと思うけど……魔王ねぇ」

 

 腕を組んで推測を口にする弐式炎雷に頷く。

 神人や竜王クラスであれば対応は問題無い。だが万一にもこの魔王を名乗る少女がワールドエネミーと同等の力を持っているのならば、この世界の危険度は一気に増す。

 

「この世界の魔王。七大罪クラスを想定したほうがいいでしょうか?」

 

「ユグドラシル時代と違って今はナザリックを戦力として使えるから、例えワールドエネミー相手でも対応できないわけじゃ無いけどね。でも、一番の対策はやっぱ触らぬ魔王に祟り無しじゃない?」

 

「それが一番でしょうね。……この場にペロロンさんが居なくてよかったかもしれません」

 

「……だね。居たら絶対飛び上がってちょっかい掛けてただろうしね」

 

 モモンガと弐式炎雷は二人で安心した様にため息をつく。

 魔王と名乗る少女は、モモンガから見てもとても可愛らしい姿をしている。それでいてマイクロビキニとでも言うのだろうか、非常に際どい姿だ。ペロロンチーノならば、危険を承知で接触を図ろうとするだろう。

 

「しっかし、こっちは選挙なんてあるんだね。そこらへんは俺らも参考にするべきかな?」

 

「どうでしょう?アルベドやデミウルゴスは反対しそうですが……」

 

「それかまた深読みしてきて賛成するパターンか。……やっぱこっちも面白いよな。水晶に動画を保存する技術なんてのもあるし。文明レベルからしたら、完全にオーバーテクノロジーって奴じゃないの?」

 

「私たちが転移した世界にも、蛇口なんてものもありますけどね。水道管も無いのに」

 

「口だけの賢者だっけ?……あっちでさ、居たことは確実だけど、その後の消息が不明ってプレイヤーらしき奴いるじゃん。そういう奴等って案外こっちに来てるんじゃない?俺達と同じでサキュバス店にハマって帰る気無くなったみたいな」

 

「……ありえそうで怖いですね。――あ、二人が戻ってきましたね」

 

 モモンガが手を上げて二人に場所を示す。二人はすぐ気づいたようで、こちらに向けゆっくりと歩いて来た。

 蔓で構成された体を揺らし、両脇になにやら紙袋を大量に抱えている。ヴァイン・デスと呼ばれる種族。その彼はギルドアインズ・ウール・ゴウンの諸葛孔明と呼ばれる男。PK&PKK担当軍師のぷにっと萌えである。

 そしてその後ろを歩くのはギルド最年長で、リアルでは大学教授をしていた死獣天朱雀。彼もまた両脇に大量の紙袋を抱えていた。

 

「お二人とも、お待たせしました。無事に換金もできましたよ」

 

 両脇に抱える荷物を見れば一目瞭然だ。今回は街までの道中に遭遇したモンスターから得た素材のほかに、ヴァイン・デスのぷにっと萌えが自身の種族特性を活かし、いくつか植物系の素材を採取していたのだ。

 ぷにっと萌え自身は指揮官系のクラスを中心にとっているために、植物の採取スキルはあくまでも種族特性にくっついてきたオマケの様なものだが、それでも量を集めればそれなりの金額にはなったようだ。

 

「ぷにっとさん、大量に買い込んだね。それサキュバスムービー?」

 

「……そんな訳ないでしょう。こちらの本ですよ。主に戦記や戦史、そういったものをかき集めてきました」

 

「流石ぷにっとさん。こちらでも策士っぷりを発揮するつもりですか。朱雀さんも荷物は本ですか?朱雀さんは郷土史とか集めてそうですね」

 

 大学教授であった彼が大学でどういった事をしていたのかは、小卒のモモンガはあまり知らない。一度死獣天朱雀がやまいこ等を交え難しい話をしている場に参加したことがあるのだが、正直半分も理解できなかった。

 

「いや、私はサキュバスムービーの方だよ」

 

 笑いながら答える死獣天朱雀に、モモンガは弐式炎雷と共に笑う。こういう冗談も言える人なのだ。

 

「モモンガさんに弐式さん、ちょっと壁になってもらえますか?……荷物をしまったら早速行きましょうか」

 

 ぷにっと萌えの指示に従い、二人で壁になる。そのモモンガと弐式炎雷の影に隠れ、二人が抱えた大量の紙袋を虚空に開いたアイテムボックスに収納していく。

 ……正直この世界ではアイテムボックスに収納する姿を見られても、「へー、あんな事出来る種族もいるんだー」で済みそうであるが。

 

「早速行くって、お店の目星はついてるの?」

 

 弐式炎雷が壁になりながら、ぷにっと萌えに尋ねる。ぷにっと萌えはその質問に頷いた。

 

「……これでよしっと。そうそう。お店ですが、ここまでの道中で面白そうなところを見つけましてね」

 

「面白そうなところ?」

 

 紙袋を仕舞い終えたぷにっと萌え達に向き直る。今回モモンガと弐式炎雷は、サキュバス店選びをこちらに初めて来たぷにっと萌えと死獣天朱雀に一任していた。

 

「うん、ニンフ専門店を見つけたんだ」

 

 答えたのは死獣天朱雀だ。そしてその答えにモモンガと弐式炎雷は思わず気後れしたように後ずさる。そもそも死獣天朱雀がサキュバス店巡りに付き合う事も驚きだったが、その店のチョイスにも驚かされる。

 

「……いやー、俺は流石に妊婦は無理だよ。……うん、無いわ」

 

「……私もちょっと抵抗感が……」

 

「いやいや、妊婦じゃなくてニンフですよ。ニンフ、ニュンペー。ユグドラシルでも居たはずですよ」

 

「あ、思い出した。確か精霊系のモンスターだよね」

 

 弐式炎雷の答えに、生徒の答えを聞いた教師の様な笑みを死獣天朱雀は浮かべる。

 

「そう、正解だよ。……歩きながら話そうか。ニュンペーは元々ギリシャ神話に登場する下級女神、精霊でね。住居によって様々な種別に分かれている精霊だよ。ふふ、面白いと思わないかい?」

 

 死獣天朱雀にそう問い掛けられるが、何が面白いのかモモンガと弐式炎雷は分からずに、揃って疑問符を浮かべる。

 

「ギリシャ神話に登場する精霊が、この世界で当たり前のように種族として存在している事がですよ」

 

 疑問に答えたのはぷにっと萌えだった。その答えに再び死獣天朱雀は破顔する。

 

「そう、そうなんだよ。私たちに働く自動翻訳が、彼女達を判りやすい存在としてニンフと翻訳しているのか。それとも本当に、彼女達はギリシャ神話のニンフとして存在しているのか。はたまた私たちのリアル世界におけるニンフこそが、この世界における彼女達の存在を指し示していたのか。……非常に興味深いと思わないかい?」

 

 死獣天朱雀の言葉に、弐式炎雷とモモンガはただ驚くばかりだった。正直、そんなことを考えても居なかった。確かにモモンガも最初はこの世界のオムレツなどの翻訳に興味を覚えていたが、サキュバス店に赴いてからは。そんな事はすっかり頭から消え去っていた。今だって「今日はどんなお店に行くのかな、ドキドキ」くらいしか考えていなかった。それは弐式炎雷も一緒だろう。

 モモンガと弐式炎雷の思考を読んだのか、死獣天朱雀が柔和な笑みを浮かべる。

 

「まあ、若いうちはそんな事を気にせず、ただ溺れるだけで十分だと思うよ。……さあ、丁度着いたみたいだ。ここだよ」

 

 言葉に顔を上げた。そして懐からマジックアイテムを取り出して、看板を見上げる。

 看板には裸エプロンの可愛らしい女性のイラストと共にこう書かれていた。

 『ニンフ専門店 マママニア』と。

 

 

 

 

 

 

 モモンガはキョロキョロと辺りを見渡す。案内されたプレイルームは、どうも見覚えが有る。ただの既視感だろうかと思うが、どうにもそわそわする。それでいて妙な安心感、懐かしさがあるのだ。そもそもここは本当にサキュバス店のプレイルームなのだろうか?リアルの、現実世界の一般家庭の間取りに酷似していた。

 

「お帰り、悟くん。――学校はどうだった?楽しかった?」

 

 奥から黒髪の女性が姿を見せ、モモンガはこの既視感の、妙な安心感の理由に気付く。

 

(……信じられない。ここは……俺の家だ。それも母さんと二人で住んでいた……幼いころの家)

 

「どうしたの?ビックリした顔して。ほら、今日は悟くんの好物を作っておいたのよ」

 

 優しく話しかけられて、思わずモモンガは自身の頬を骨の手で打つ。勿論そんな事で目に映る姿が、風景が、母の姿が消えるわけがない。

 

(……確かに楽しむ為にパッシブスキルの殆どは切っているが、ここまで見事に幻術に嵌るものなのか?)

 

 幻術、この世界の魔法だろう。恐らくこのランパスという冥精のニンフの仕業だ。

 世界を平定したアインズ・ウール・ゴウン魔導王としては、油断していたとはいえこうも鮮やかにアインズに幻術に嵌める術に警戒をしている。

 ユグドラシルプレイヤーモモンガは、この自身の知らない未知の術にわくわくしている。

 そして。

 僅かに残った人間の残滓。鈴木悟はこの目の前の光景に、懐かしさ、安心感を覚えている。忘れかけていた母の姿に。

 

「……ううん、何でもない。何でも無いんだ。……母さん」

 

 そしてアインズは、モモンガは、今この場だけ、オーバーロードの姿のまま、鈴木悟に戻る選択をした。

 

 

 

『ニンフ専門店 マママニア』

 

◇オーバーロード モモンガ

 10

 最高でした。この一言に尽きます。

 お相手してくれたのは、ランパスという種族のニンフさんでした。冥精と呼ばれる彼女と、オーバーロードの私の魔力の波長が合ったのか、普段ではありえないほどのイメージプレイが出来たとはプレイ後の彼女の談です。(普段はあそこまで精巧な幻術は出来ないそうです)

 幻術ですが、本当に、幼いころの自分に戻って、思いっきり甘えることが出来ました。人間の感情は残滓と表現していましたが、それでも母親の記憶は奥底でしっかり残っているんですね……。

 私と同じ境遇の方は多いでしょうし、純粋にサキュバス店で遊ぶのとはまた違った楽しみ方が出来ると思いますよ。

 勿論サキュバス店としても一級品です。

 精霊の一種ですので魔力操作もお手の物。しっかり甘えさせてもらった後は、しっかりと魔力で気持ちよくさせて貰えました!

 

 

◇ハーフゴーレム 弐式炎雷

 

 ニンフ専門店。まあ、イメージプレイのお店だね。なんでママなのか分からないけど。

 どうも母親とするってプレイがしっくりこなかったから、受付で少し相談したところ同級生の母親に悪戯する悪ガキプレイなら可との事。そういうのはアリです。

 同級生の家に入り浸って、人の家庭で悪戯三昧の悪ガキになりきった訳だけど、臨場感が少し足りない。結局のところ俺とサキュ嬢さんしか部屋に居ないからね。そこで閃きました。居ないなら、俺が増えればいいじゃんと。

 スキルの分身を呼び出して、悪戯されるサキュママ嬢さん、悪ガキ(俺)、何も知らない同級生(俺)、同じく何も知らない親父(俺)。そして悪ガキに同調する悪ガキ2(俺)、悪ガキ3(俺)という複数人プレイ!俺一人五役!さすが忍者!この調子ならそのうち『ナーベ大好き弐式くんのHなイタズラ』プレイが出来るようになるかも!

 あ、ちなみに別人だと人数分の料金かかるらしいよ。俺の分身みたいに同一個体ならOKみたい。そこは気を付けよう!

 あとニンフって言われても、俺にはエルフっぽい人間にしか見えなかった。

 

 

◇ギルド最年長 死獣天朱雀

 10

 ニンフのイメージプレイが楽しめるお店だね。マママニアという名前なのは、ギリシア語でニュンペーが「花嫁」や「新婦」という意味があるからかな?でもそれなら花嫁プレイじゃないかなと、そう素直に聞いてみたらオーナーの趣味という答え。実に興味深い。

 そもそも彼女達にギリシャ神話の知識は無いようだった。これは混血の進むこの世界で本来はあった伝承が途絶えたのか。それもとも元より違う種族だからなのか。本当に興味深いね。

 おっと、これではお店のレビューになってないね。

 ニンフらしく海精ネーレーイス、水精ナーイアス、木精ドリュアス、山精オレイアス、森精アルセイス、谷精ナパイアー、冥精ランパスと種類も豊富だ。自らの種族と照らし合わせ、相性の良さそうな子を選ぶといい。きっと漠然と選ぶより楽しめるはずだよ。

 それと我々は、異形種という様々なメリットとデメリットを抱えている。種族的に薬物に耐性のある者や、食事効果バフの恩恵を得られない者も多いと思う。その場合、ぷにっと君の指揮官スキルの恩恵にあやかるといい。色々と捗ると思うよ。そう、色々とね。

 

 

◇ヴァイン・デス ぷにっと萌え

 

 お店の特色や、在籍するサキュ嬢の特徴については、他の方が言及している事を期待します。

 私と相性の良さそうなドリュアスを選択。イメージプレイも個人的には嫌いじゃないんですが……言っておきますが、私の指揮範囲に入って恩恵を受けるって事は、状況が私にも伝わるって事ですからね!?

 知りたくなかった!聞きたくなかった!見たくなかったですよ!

 あの朱雀さんが、見た感じ完全年下のニンフさんにバブみを感じてオギャる様子なんて!あの人プレイ中は全然違う人でしたからね!?私そんな姿を脳内で再生されつつプレイしてるんですよ!楽しめるわけないじゃないですか!

 完全頭おかしいわあの人!確実に頭おかしいわ!朱雀さん絶対わかってて私の指揮範囲に入ってますからね!?

 ……という訳で、まったく楽しめませんでした。しばらくは桜花聖域に籠ってますので、放っておいて下さい。

 

 

 

 

 

 

「……嘘だろう?あの朱雀さんに限って……」

 

「いやでも、ぷにっとさんが嘘つくメリット無いし。……実際あの人桜花聖域に籠ってるし」

 

 ナザリックの円卓に戻ってきたモモンガ達は、今回のレビューを他のギルドメンバーに披露していた。

 あの異世界に繋がる扉にはいくつかルールが、制約があることが発覚している。

 一度に通れるのは四人まで。そして誰かが異世界に赴いている間は、扉は消えるのだ。

 そのためギルドメンバーで

 

1、赴く四人が決まったら、扉の使用を申請する事!

2、異世界の滞在時間は二十四時間まで。超えたらペナルティ!

3、NPCや女性メンバーにバレないようにする事!

4、サキュバス店では紳士に。異世界では無闇に暴れない事!

5、戻ったらレビューを書いて、情報の共有をする事!

 

 という基本の五か条を定めた。そしてその五つ目の条項、これが一番大事だが、それはギルドメンバーに自らの性癖を暴露するようなもの。

 

「……でも俺、オーレオールに見られながらスるのは興味がある……」

 

「フラットフットォォォォォ!お前何言ってるんだ!?」

 

「いや、俺だってぷにっとさんには見られたくないけどさ。……オーレオールにならアリじゃない?」

 

「いやお前、つるりんぺたんだろう!?どんな性癖も暴露してるんだ!?そもそもそれルール違反だろう!」

 

「ごめん、皆!俺、自分の気持ちには嘘を吐けない!」

 

 そう言ってフラットフットが自身の影に消えていく。

 

「影に逃げ込んだぞ!だれかぬーぼーさんを呼んできてくれ!あの人じゃなければ捕捉出来ない!」

 

「いや、その前に桜花聖域を物理的に閉鎖するのが先だ!」

 

「影だ!影を潰せ!影さえ潰せばアイツは出てこれない!」

 

 あわただしく動き出したギルドメンバーを横目で見送りつつ、モモンガと弐式炎雷はサキュバスレビューを円卓に広げていた。

 

「……見られたがりな暗殺者かよ。そんな趣味もってたんだな、あの人。俺ら結構長い付き合いだけど、未だに新しい発見があるな」

 

「ユグドラシルでは十八禁行為は処罰がありましたしね……。自然その手の話題は少なかったですし。……正直知らないままの方が良かった気もしますけど」

 

「な。……あれさ、朱雀さん。本当にあの大量の荷物がサキュバスムービーだったのかな?」

 

「本当だったかもしれませんね。ちょっと引きます。……あ、弐式さん。次はこのお店でどうですか?私今回でイメージプレイの楽しさを知りました」

 

 ちょっと引きますと言いながらモモンガは、満面の笑みで一枚のレビューを掲げて見せるのだった。

 




次回からはぼちぼちNPCも出していきたい。
レビューはさせないけど!

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