至高のレビュアーズ   作:エンピII

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正月の夜に何書いてるんだろうと、ふと思った。


低級淫魔の詰め合わせ部屋 淫魔の狂喜乱舞

「はっはははははは!いいぞ!かかってこい!」

 

 武人建御雷は挑発するように手を動かし、敵を招く。

 眼前に立ちふさがるは無数の敵。そのすべてが自分と同等か、それ以上の力を持っている事だろう。勝てるはずの無い無謀な勝負。自殺行為に近い。

 それを理解しながらも、建御雷は口元に獰猛な笑みを浮かべる。

 そうだ、俺がしたかったのはこういう戦いだと、求めていた戦場(いくさば)は此処だと、そう言わんばかりの笑みだ。

 

 思えばナザリックが転移した世界でも数々の戦いがあった。プレイヤーの血を引く神人、始原の魔法を使う真なる竜王、そのすべてがあちらの世界では強敵ではあった。

 だが建御雷には、その全ての戦いが物足りなかった。

 ナザリックには、アインズ・ウール・ゴウン魔導国には、様々な智者がいる。万全に準備を重ね、確実に勝てる戦力を用意し、無数の策すら張り巡らせた。

 それはナザリックを、NPC達を守るためには仕方の無い事だと建御雷は理解している。犠牲がゼロでなければならない。そうしなければ、今の形での世界征服は出来なかった。

 

 それでも、それでもと思う。

 ナインズ・オウン・ゴールは馬鹿の集まりだった。

 それを知っている、ずっと仲間達と共に馬鹿をやってきた身には、それは本当に物足りないのだ。

 

「さあ、やろうぜ!また俺達で!最高の馬鹿をな!」

 

 建御雷が吠える。求めていたものが此処にある。最高に馬鹿な真似が、最高の仲間達と、再び出来る。

 半魔巨人の醜悪な顔を獰猛な笑みで歪め、建御雷は自身の大太刀を構え、歓喜と共に無数の敵にと駆けて行った。

 

 

 

 

 

「いいですか?この部屋に入ったら、向こう側から解放されない限り、出してはもらえません」

 

 悪魔の血が混じっているのか、今まで見てきた獣人種とは違いが見える受付の説明を、モモンガ達は受けていた。二人は、そのうち一人は頭巾で顔を隠しているが、困惑や恐れ、そういった負の感情を浮かべ、もう二人はこれから起こる戦いにワクワクした様な笑みを浮かべていた。

 

「……なあ。本当に行くのかよ?」

 

「私も弐式さんに同意です。ここのゼルさんレビューでの評価は、お二人も目を通しているでしょう?」

 

 負の感情を浮かべているのは、モモンガに弐式炎雷だ。

 

「ああ、大マジだ。面白いじゃないか。俺はこういう馬鹿な真似がしたかったんだわ」

 

「それで全滅したら本当に馬鹿だろう……」

 

「しねえよ、全滅なんて。俺達はいつだって馬鹿な真似をしてきた。だが最後は何とかしてきた。俺達には仲間がいたからな。そうだろう、ペロロンさん?」

 

「建御雷さんの言う通りですね。俺たちはそういう馬鹿をしてきたから、ナザリックの一発攻略も出来たし、ギルド連合との戦いも勝つことが出来たんです」

 

「良い事言うじゃないか、ペロロンさん。そうだ、俺達だからやってこれたんだ。つーかあのレビュー最高。こんな面白そうなサキュバス店紹介してくれてるんだからな」

 

 笑う建御雷に、弐式炎雷が再び説得を試みる様に声を上げる。

 

「あのなー」

 

「わかりました。行きましょう」

 

「はあ?モモンガさんまでどうしたんだよ」

 

 弐式炎雷の言葉をモモンガは遮る。モモンガは少しだけ、付き合いの長いギルドメンバーにだけ伝わる様な困り顔で、弐式炎雷を見た。

 

「ナザリックが転移した世界では、建御雷さんも意に沿わない戦いがあったはずです。それでも建御雷さんは、いつも先頭に立って何も言わず付き合ってくれた。だから今度は、私が付き合うべきなんです。それに、こうなった建御雷さんが譲らないのは、弐式さんが一番良く理解しているでしょう?」

 

「はっは!流石モモンガさん。俺の事良く理解してくれてるじゃねーか!」

 

 モモンガ、建御雷、弐式炎雷は、ギルドアインズ・ウール・ゴウンの中でも、最初の九人と呼ばれる最初期のメンバーだ。それだけ付き合いが長い。だがその中にあっても、この二人の付き合いはさらに長い。ユグドラシルが始まるもっと前から、建御雷と弐式炎雷の付き合いは始まっていると、かつて聞いたことが有った。

 

「マジかよ。……ハイハイ、わかりました。付き合いますよ、チクショウ」

 

 諦めた弐式炎雷が呆れたように頭を振る。全員の同意を得られたことで中断していたお店のシステムの説明、いや警告か、その続きを聞くためにモモンガ達は受付に向き直る。

 

「話はまとまりましたか?それではみなさん、もう一度確認します。この淫魔の部屋に入ったら絞りきられるまで出してもらえません。泣いても喚いても、叫んでも漏らしてもです。絶対途中で解放してもらえませんし、私も助けに行けません」

 

 受付の言葉と共にモモンガ達は、部屋の中が見えるガラスのような素材の壁に向き直る。

 

「途中、やり過ぎで死ぬようなことになっても、当店は一切責任を持ちません」

 

 獲物を待ち望む目でこちらを見つめる低級淫魔の群れに。

 

「ふっふ、これは一気に経験値が稼げそうですね!ロリな子は任せてください!」

 

「頼りにしてるぜ、ペロロンさん!モモンガさん!いつものを頼む!」

 

「了解です!<上位全能力向上(グレーターフルポテンシャル)><自由(フリーダム)><上位抵抗力強化(グレーター・レジスタンス)><不屈(インドミタビリティ)><竜の力(ドラゴニック・パワー)><上位硬化(グレーターハードニング)><吸収(アブソーブション)><超常直感(パラノーマル・イントウィション)><抵抗突破力上昇(ベネトレート・アップ)><混沌の外衣(マント・オブ・カオス)>―――」

 

 モモンガは立て続けに魔法を発動し、仲間達を強化していく。

 

「ああ、もう!やけくそだ!ユグドラシルプレイヤーチームの力、アインズ・ウール・ゴウンの力、こっちの世界に見せつけてやる!」

 

 弐式炎雷が自らを鼓舞するかのように、そう叫ぶ。

 

「さぁ、行くぞ!」

 

 魔法強化を終えた建御雷の言葉に「おう!」と一斉に、威勢の良い返事でモモンガ達は応える。

 その返事に建御雷は笑い、大鎧を脱ぎ捨てた。

 こうしてギルドアインズ・ウール・ゴウンの、ナザリック攻略、ギルド連合との戦い、その二つの激戦に並ぶであろう最大クラスの挑戦が、今始まった。

 

 

 

 

 

 

『低級淫魔の詰め合わせ部屋 淫魔の狂喜乱舞』

 

◇オーバーロード モモンガ

 

 ゼルさんレビューで圧倒的低評価だったサキュバス店ですね。あまりの地雷店っぷりのレビューに、記憶に残ってる方も多いかと思います。

 最初に書いてしまうと、威勢よく乗り込んだのは良いんですが、私と弐式さんは速攻で追い出されました。低級淫魔の方々には、アレの無い私たちは用無しだったようです。

 その後受付のお姉さん、豹型の獣魔さんらしいですね、を交えてお喋りをしていました。色々興味深い事を聞けたので、私はこの評価です。

 どうも低級淫魔はサキュバスと違い、相手から直接精気を吸い取る事しか出来ない様で(白いアレや唾液だったりですね)、そう言ったものを分泌出来ない私たちは、そもそも彼女達のエサにならないそうです。

 これがサキュバスになると、私なら魔力だったり、弐式さんだったら得意のオモチャを使った攻めでしょうか、そういった相手から得られる快感を精気に変換し、それを摂取することで自身を満たすことも出来るそうです。だからサキュバス相手なら私も弐式さんも摂取対象になり得ると。

 これはユグドラシルのサキュバスも、そうなんでしょうか?色々気になるけど、デミウルゴスの配下のサキュバスに聞くのも、アルベドなら余計に聞けませんね。そんな事を聞いたら最後、私はどうなるかわかりません。

 まあ、そんな感じでお喋りをして、途中からは三人でUNOをして遊んでいました。

 UNO、楽しかったです!

 

 

◇ハーフゴーレム 弐式炎雷

 

 速攻で追い出された。

 まあ追い出された後は、色々興味深い話を獣魔のお姉さんから聞けたし収穫はあったかな?

 最初の一時間は、友人が出演しているバスツアー的なエロ動画を見てる感じでまあまあ楽しめる。

 二時間を超える頃には、建やんとペロロンさんが居るであろう場所に低級淫魔のサキュ嬢さん達が群がってるだけで、ガラスっぽい壁越しだと何してるのかさっぱり分からない。ペロロンさんの悲鳴は、ちょくちょく聞こえるんだけどね。

 三時間を超えるともう偶にサキュ嬢さんの声に混じって「うっ」とか微かに聞こえるだけ。その頃は三人でUNOに夢中だったから、よく覚えてないや。

 四時間か五時間たった頃かな?ゴブリンの一族さんが総出で来店してきた。まあ、こういう人たちには需要があるみたい。お客さんが来たことで受付のお姉さんも忙しくなって、そこでUNOを中断した。んで、用無しとばかりに放り出された建やんとペロロンさん回収して、ナザリックに帰ってきました。

 帰り際受付の獣魔のお姉さんに挨拶すると、このお店の低級淫魔さん達を全員一人で満足させた人が、過去にいたと教えてくれた。……すげえ、こっちの世界のワールドチャンピオンかよ。

 まあ最後に。このお店はユグドラシルのワールドチャンピオンに何度負けても挑み続ける男の心を、たった一日でへし折ったとだけ書いておく。

 

 

◇半魔巨人 武人建御雷

 

 しばらく女の人とかいいです。

 

 

◇バードマン ペロロンチーノ

 判定無

 出して!ココから出してよ!もうヌルヌルは嫌だ!ヌルヌルは嫌なんだ!

 助けて!助けてよ!!助けてよ!モモンガさん!弐式さん!建御雷さーん!!

 い、いやぁ!おっぱいがぁ!おっぱいがぁ来るよ!おっぱいが一杯来る!来ないでくれよ!

 嫌だ!もうイヤだ!

 助けて!助けて姉ちゃん!助けてよ、姉ちゃん!怖いんだ!ヌルヌルが!ヌルヌルが!お願いだから助けてよぉ、姉ちゃ――――――――ん!!

 

(うなされるペロロンチーノの寝言から 代筆モモンガ)

 

 

 

 

 

 

「――はい。アインズ様達は突然私の感知範囲内に転移されてきたと思います。それまでは一切気配はしませんでしたし。これはマーレの魔法でも確認済みです」

 

 第九階層「ロイヤルスイート」。その中の至高の四十一人の私室で跪くアウラとマーレの報告に、三つの異形が頷く。

 粘液盾 ぶくぶく茶釜。

 脳筋女教師 やまいこ。

 そしてアインズ・ウール・ゴウンで、三人しか居ない女性メンバー最後の一人、餡ころもっちもちである。

 

「……宝物殿に直接転移?それも物置部屋に?そんな事が出来ると思う、かぜっち?」

 

 やまいこの問い掛けに、ぶくぶく茶釜が粘体のピンク色の肉棒を振動させて応える。本人としては首を振っているつもりなのだろうが、傍からは卑猥な振動にしか見えない。

 

「出来ない。宝物殿は他のエリアから独立しているから、ギルドの指輪なしでは侵入出来ないようになっている。……いや、ギルドの指輪を使っても、転移先は決まっているし……。あそこは世界級アイテムの防壁も厚い。絶対にそんな事出来ない筈だけど、アウラがそう感知したなら間違いない。……どういう事だ?」

 

 考え込むぶくぶく茶釜に、餡ころもっちもちがちっちっちと、異形の指を振りながら口を開く。

 

「いやいや、かぜっち。一つ見落としてるよ。あそこには一つだけそのルールを破れるアイテムが置いてある」

 

「世界級アイテムの防壁を破れるのは、世界級アイテムだけでしょう?物置部屋には世界級アイテムは無いし。あの四人だって、モモンガ玉以外はその時持っていない筈だよ」

 

 餡ころもっちもちの言葉に、やまいこは首を傾げる。だがそのやり取りで何かに気付いたぶくぶく茶釜が、答えを口にする。

 

「そうか、『新たな扉』だ。あれはユグドラシルのルールから外れたアイテムだから、世界級アイテムの防壁も飛び越える」

 

「正解!……まあ、あれはコラボアイテムだからってだけだし。効果もコラボした相手先のフィールドに突入するってだけだしね。それも設定だけの」

 

「それなら余計におかしいよ。この世界でコラボアイテムの効果が発動する訳ないし。そもそも最初にかぜっちが物置部屋に様子を見に行った時は、いつもと違う所はなかったんでしょう?」

 

「うん。……でもその時に、あの扉は無かったと思う。確実に置いてあるはずなのに。ねえ、アウラにマーレ。他に何かあの四人の様子にいつもと違う所はあった?」

 

 うーんと双子は考え込み始めた。その様子を見ていた餡ころもっちもちが、明るい声でぶくぶく茶釜に話しかける。

 

「かぜっちの考えすぎじゃない?宝物殿の転移はよく分からないけどさ、ペロンの奴の様子がおかしいなんて、いつもの事じゃん。というかあたしはペロンの様子がまともだったら、逆に不安になるけどねー」

 

 餡ころもっちもちが自身と同じ、アインズ・ウール・ゴウン最年少組の片割れの名を呼び、ケラケラと笑いながらそう評する。

 

「ちょっと、あんちゃん。そういう事言っちゃダメだよ。それに弟君も、たまーにだけど、凄い良い所を見せる事もあるんだよ。たまーにだけど」

 

「うん、やまちゃん。それあんまフォローになってない。まあうちのバカ弟の評価はそれでいいとして、確かに私の考えすぎだったかな?」

 

 ギルドメンバー女性陣がそう納得し始めたころ、何かを思い出したようにマーレが口を開いた。

 

「そ、そういえばお姉ちゃん。アインズ様と弐式炎雷様はオキニって仰ってたよね?」

 

「ああ、そう!意味は教えて下さらなかったけど……」

 

『オキニ?』

 

 ギルド女性陣の声が重なる。

 

「オキニってお気に入りって事だよね?」

 

「だと思うけど、物置部屋になんかあの四人が気に入るアイテムあったけ?」

 

 やまいこと餡ころもっちもちはそう疑問を口にしあうが、ぶくぶく茶釜だけはひとり深く考え込み始めた。

 

「アウラ、マーレ。他に何か無い?どんな細かい事でもいい、思い出せるかな?」

 

 双子に問い掛ける声に、微かに震えがあった。まるでぶくぶく茶釜だけ、何か気付き始めたように。

 

「……そういえばアインズ様と弐式炎雷様。私たちの事褒めて頭を撫でて下さったんですけど、お召し物に少しだけ香水みたいな匂いが残ってました」

 

『香水?』

 

 再び女性陣の疑問気な声が重なる。だがその声の重なりに、ぶくぶく茶釜の声だけは無い。何かを確信した様に、双子に問い掛ける。

 

「……その香水の匂い。もしかしてモモンガさんと弐式さんの二人、別々の香水だった?」

 

「そうです!その通りです、ぶくぶく茶釜様!流石ですね!たったこれだけで、そこまでお分かりになるだなんて!」

 

 双子がキラキラと尊敬の眼差しを、自らの創造主に向ける。だがぶくぶく茶釜はその視線に気付かず、別の言葉を絞り出す。

 

「……マジかよ……。アイツら、マジで何やってるんだ……。どっかでそんな事してきて、ナザリックにどうにかして帰ってきたって事か、もしかして……」

 

 そう微かに震えたぶくぶく茶釜の言葉に、オキニと香水の繋がりが理解出来無い残りの四人は、揃って疑問の目を彼女に向けて、首を傾げるのだった。

 




最初のほうで建やんが構えてた大太刀というのは、まあ、アレです。

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