元ニートは生殺与奪すら奪われる 作:shion
こんな場所にも関わらず澄んでいるその青い瞳が。
「ま、まってくれ…」
呼び止められる声に反射的に立ち止まる。
聞こえた方を見る…するとそこには頭から血を流している額に傷のある男が、爆発で崩れたであろう物の下敷きになっていた。
「頼む…あのこ、を…」
震える手で一枚のカードキーを差し出すその男は「助けてやってくれ」と、息も絶え絶えに言う。
ふと、思い出すのは先程の開かなかった部屋。まさかこのカードキーがあの部屋を開ける…そう結論つけるより早く体はカードキーを男から受け取っていた。
「あり…がとう」
カードキーを受け取ったのを確認した男は安心したのか…満足そうな顔を浮かべ眠るように目を閉じ息を引き取る。
カードキーを見ると【N-027】と書かれている。
間違いない。
あの部屋の鍵だ。
来た道を急いで戻る。火の手が回っており、先程よりも人の気配も争っている音も聞こえないのを見るにあらかた片付いたのだろう。
火の手が回りきる前にここを出なければここからの脱出が困難になる…急いであの部屋の前に戻りカードキーでドアを力任せに開ける。
──そこはあの時と同じ真っ白な狭い部屋だった。
外は火事や煙で視界が悪いにも関わらず、部屋の中はそこだけ時が止まったようにあの時と同じだった。
「…っ!見つけた!」
簡素なベッドの影にあの子はいた。
真っ白な頭と体を体を更に小さく丸め、人形を抱き締め泣きながら震えていた。
時間が無い。
急いでその子を抱え走り出す。
抱える際、その子が思った以上に体が軽く違和感を感じる…けれど、それが必要最低限の食事しか与えられていないという事に気がつく。
「クソッ」
目が溶けそうなほど涙を浮かべる青い瞳を思い出し、思わず悪態をついてしまう。けれど、その子の咳き込み苦しがるような音に現実に戻される。どうやら煙を吸ってしまったらしい。
直ぐさま煙をこれ以上吸わないように抱き抱え直す。
体が小さかった事が幸いか…特に走りに支障は出ず先程よりもスピード上げ急いで走る。
予想よりも火の手が回るのが早い。
「ぅ…」
焦りを感じ取り不安に思ったのか、抱えているその子は服を掴んだ手を強く握りこみ不安そうなうなり声を小さく上げる。
──大丈夫、これ以上怖いことはもう無いよ。
そう言い聞かせる代わりに、抱えている手で一定のリズムを刻み背中をポンポンと叩く。すると安心したのか、強張って震えていた小さな体の力が抜けていくのが分かる。
「大丈夫、絶対に助けるから」
そう小さく呟き、出口に向かい走った。