ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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ようやく聖遺物発動です。

注意。
主人公はDies irae本編で出てきた既存の聖遺物を使うわけではありません。よってこの作品独自の設定が多数入ることになりますが、そのことはご了承下さい。


活動位階

 ……なるほど……ようやくですか……

 

 ……少し予定が狂いましたが誤差の範囲でしょう……

 

 ……さて、●●●が好きなフレーズで始めましょうか……

 

 ……もっとも、私に自罰の趣味はありませんが……

 

 ……さあ、今宵の恐怖劇(グランギニョル)を始めよう……

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 小さい蝙蝠が襲いかかり、牙を突き立てようとする光景を見ながら蓮弥は()()()()()()()()()()()

 

 

 蝙蝠の攻撃により失われ、何もないはずのその腕により、地面は爆発したように弾け飛び、蓮弥にまとわりつく泥ごと蓮弥の体を吹き飛ばした。

 

 

 吹き飛んだ先で素早く起き上がり状況を確認する。前方十メートル先くらいに獲物が消えて動揺する蝙蝠を視界に入れる。どうやらこちらを完全に見失っているらしい。

 

 

 その隙に蓮弥は意識を集中する。何かから流れてくる強大な力を形にするために、意思を固める。

 

 

 そして蓮弥は、力のある言葉を口にする。

 

 

「──Assiah(活動)──」

 

 

 蓮弥は無くした右腕から洪水のように何かが溢れ出す感覚を感じた。視線を千切れて無くなったはずの右腕に向ける。

 

 

 そこに、巨大な鉤爪があった。全体的に色は白っぽく手の甲に十字架が埋まっている。形は歪だがどうやらある程度変形させられるらしい。蓮弥は試しに軽く右腕を振るってみると、少し鈍いが思い通りに動くようだった。

 

 

 少し時間が経つうちに、今まで薄ぼんやりとしか見えなかった視界が灯りをつけたようにはっきり見えるようになった。巨大蝙蝠の攻撃で破れた鼓膜も復活したらしい。蓮弥の世界に音が戻ってきた。

 

 

 完全にぶっつけ本番だが、相手がこちらを見失っている好機を逃す手はない。逃げてもどうせ追われるだけだ。ならここでこいつらとの決着をつける。

 

 

 蓮弥は大きく右腕を振り上げる。そして伸ばせるだけ伸ばし、獲物を見失って戸惑っている小さい蝙蝠の一匹に対して、その巨大な右腕を勢いよく叩きつけた。

 

 

 爆音とともに泥が弾け飛ぶ

 

 

 不意をつかれた蝙蝠が降ってくる巨腕の攻撃を避けることも出来ず、その巨大な右腕の質量を利用した攻撃の前に潰れ、肉片を撒き散らしながら絶命した。

 

 

 そこでようやく攻撃されていると気づいた巨大蝙蝠が警戒態勢に入るが、小さい方はまだ動いていない。

 

 

 その隙を逃さず蓮弥は今度は鉤爪を立てる。

 

 

 まだ蓮弥に気づいていないもう一匹の小さい蝙蝠目掛けて右腕を振るう。

 

 

 空気を切り裂く。音速に達しているのかもしれないその攻撃を当然小蝙蝠は避けられるはずもなく、その身を巨大な鉤爪にて掻き潰された。

 

 

 立て続けの攻撃で子供? を潰された巨大蝙蝠が蓮弥目掛けて真っ直ぐ突進してくる。

 

 

 最初出会った時から目で追えなかったその動きも今ならハッキリと把握することができる。突進による攻撃を受ける前に再び右腕を地面に叩きつけることで飛び跳ねて避ける。

 

「おおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」

 

 振り返りざま隙を晒している巨大蝙蝠に対して右腕を振るった。

 

 

 おそらく視認できていないはずの蓮弥の右腕の攻撃だったが、相手はもともと視覚に頼る生物ではないためか、当たる寸前にその攻撃を察知し、天井まで飛んで避けられた。

 

 

 蓮弥は相手の動向を注視する。この攻防でおそらくこちらの危険度が想像以上に危険なものだと判断されたに違いない。この魔物は勝てない敵には慎重に行動する性質がある。場合によっては逃げられるかもしれない。

 

 

 その選択肢を蓮弥は取らせるつもりがなかった。今後この魔物に不意打ちを狙われたら確実にやられる。何が何でもこいつはここで倒す。

 

 

 そして蝙蝠が口を開いたことに気づいた蓮弥は右腕を再び叩きつけ、その反動を利用して横に跳ねた。

 

 

 一瞬遅れて蓮弥のいたところが爆音と共に弾け飛ぶ。

 おそらく例の指向性の超音波攻撃だろう。見えないというのは厄介だ。

 どうやら敵はこのホームグラウンドで蓮弥を仕留めるつもりのようだ。目から敵意が消えていない、徹底抗戦の構えだった。

 

(このままじゃジリ貧だな……)

 

 蓮弥は己の不利を悟る。

 この空間の天井は二十メートル以上あり、魔物はそこに逆さ吊りになりながら蓮弥目掛けて超音波攻撃を乱射してくる。

 

 

 右腕はある程度大きくなり、長さも伸ばせるようだがそれでも最大十メートル強。相手を攻撃するためにはどうしても飛び上がり近づかなくではならない。

 

 

 だが飛び上がれば相手にとっていい的でしかないし、相手は空を自由に動ける。空中戦は分が悪いとしか言えない。

 

(せめてこちらにも遠距離攻撃があれば)

 

 最悪石でもぶつけようかと思っていた矢先、蓮弥の右腕に変化が起きる。

 

 

 蓮弥の意思に反応したのか、蓮弥の不定形の右腕がぐにゃぐにゃ変形し始める。

 

 

 それは細長い筒だった。大きさはコンパクトになったがその分重量感が増したように思う。使い方がなんとなくわかる。これは……大砲だ。

 

 

 天井に張り付く蝙蝠に照準を合わせる。相手に動きがないのが幸いした。未だ使い慣れていない武器を使うのに、動き回る的ほどやっかいなものはない。

 

 

 銃口にエネルギーが溜まっていくのを感じる。一撃で撃ち落とすつもりで勝負する。そのまま攻撃しても空気の振動で避けられるかもしれない。つまり狙うのは攻撃する直前。

 

「くらいやがれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 音で敵を察知する蝙蝠にわざと位置を知らせるように叫び、意識をこちらに誘導する。敵が攻撃のために貯めを行うが、こちらはとっくに準備ができている。

 

 

 攻撃の予備動作のために動けない相手に向けてエネルギーの砲弾を叩き込んだ。

 

「キィィィィィ!?」

 

 不可視かつ無音の砲弾が直撃する。

 

 流石にこれは堪らなかったのか、巨大蝙蝠が天井から地面に落ちてくる。

 

 その隙を逃さない。

 

 蓮弥は腕を鉤爪に戻し、落ちてくる相手に向けて振るう。

 

 

 落ちてきた巨大蝙蝠は抵抗することも出来ず、その巨腕に巻き込こまれ、その身を引き裂かれた。

 

 

 蓮弥は右腕を引き戻し、相手を観察する。相手は全身血まみれで虫の息だった。このままほっといても死ぬかもしれないが……

 

「悪く思うなよ……俺は生きたいから……お前を殺す」

 

 右腕で、蝙蝠を握りしめる。そして確実にトドメを刺すためにその体を握り潰した。

 

 

 肉が弾ける感覚と共に、このフロアの支配者であった闇の狩人はその命を終わらせた。

 

「ハァ……ハァ……ハァ」

 

 肩で息をする蓮弥。周りを警戒し、他にも同族ないし異種族の魔物がいないか確認する。もしここで襲われたら正直まずいとわかっていたからだ。

 

 

 しばらく周辺を警戒し、どうやらここにはこの蝙蝠の魔物以外いないと認識した途端、緊張が解け、蓮弥の意識は闇に落ちていった。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 蓮弥はどこかの丘の十字架に磔にされていた。

 

「……ここは?」

 

 横を見ると同じような十字架が並んでいる。体を揺すってみるが動かない。

 

 

 突然の光景に蓮弥が混乱しつつも、自分の足元を確認する。そこには複数の人が立ち尽くしていた。皆こちらに批難の眼差しを向けているような気がする。

 

「なんだ……これ?」

 

 これは夢なのか、だが夢にしてはリアルだと感じた。乾いた風の匂いも、手足の痛みも現実と同じ感覚を蓮弥に与えていた。

 

 

 そのうち下で集まっている人達に変化が起きる。一人の人が石の槍を取り出したのだ。

 

「おいおい……嘘だろ!?」

 

 蓮弥は抵抗するもののまるで体が動かせない。このままでは殺される。だが蓮弥の抵抗虚しく、その槍は脇腹目掛けて突き出される。

 

 

 その槍が届く直前。丘の下の離れた場所に、腰まで届く綺麗な銀髪をなびかせた女の子がこちらをじっと見ていたのが印象に残った。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 そして蓮弥は意識を覚醒させる。一体どれくらいの時間が流れたのか。蓮弥の体はほとんど液状化した土に埋まっていた。

 

 

 蓮弥は体を揺すり、なんとか体を起こす。

 

 

 そしてその勢いで右腕を確認する。他の傷は治っていたが、右腕はやはりなかった……いや、あった。

 

 

 意識を集中すると巨腕の鉤爪はそのままあることがわかった。自分の意思で動かすことはできるが、この形状では細かい作業はできないだろう。

 

「これは……永劫破壊(エイヴィヒカイト)を習得したということで……いいんだよな」

 

 そこで、自分の状態を確認できる便利な物があったことを思い出した。

 

 蓮弥は左手でステータスプレートを取り出し、確認してみる。

 

 ======================

 藤澤蓮弥 17歳 男 レベル:??? 

 天職:超越者

 筋力:1800

 体力:1700

 耐性:1650

 敏捷:1400

 魔力:1800

 魔耐:1800

 技能:永劫破壊[+活動]・魔力操作・剣術・縮地[+爆縮地]・言語理解

 ======================

 

 トータス基準でなかなか非常識な数値になっていた。人類最強格のメルド団長の約五倍以上のパラメータ。これだけで無双できそうだった。レベルが見えなくなったのも、もはやプレートで測りきれなくなったからだろう。

 

 

 見れなかった天職も技能も解放されていた。

 

 

(なんとか活動位階までいけたのか)

 

 

 永劫破壊(エイヴィヒカイト)には四つ位階(レベル)がある。

 

 Assiah(活動)

 Yetzirah(形成)

 Briah(創造)

 Atziluth(流出)

 

 そのうち蓮弥は活動……つまりレベル1である。

 この位階は術者の魂と融合した聖遺物の特性・機能を、限定的に使用できる状態であり、身体能力は常人より遥かに高くなっているものの、聖遺物の力を扱い切れているとは言えず、能力の暴走の危険性が高い。

 

 

 技能には魔力操作が追加されていた。

 もっとも魔力操作は現状この世界の魔法にもスキルにも縁がないため死にスキルだが……ひょっとしたら大砲にした時に撃ち出したエネルギー砲が魔力操作による代物なのかもしれない。

 

 

 天職は……今は考えないようにする。

 考えても答えが出ないだろうし、このまま位階が上がって行けばいずれわかることだろう。

 

(だけど有り難い。これでなんとか乗り切れそうだ)

 

 蓮弥は少し安堵する。なにしろ魑魅魍魎が跋扈するこの奈落の底にて、蓮弥は武器一つ持っていなかったのだ。魔物からしたらいいカモでしかない。それでも蓮弥は奇跡的にここまでこれたが、ここが限界だろう。

 

 

 聖遺物というおそらくこの世界のアーティファクトと比較しても、格が違うマジックウェポンの力を活動位階とはいえ、限定的にでも使えるだけで生存率が変わる。押し付けられた力というのが不気味かつ気に入らないが、ここでは贅沢はいえない。使えるものは使わせてもらおう。

 

 

 だけどこの時、蓮弥は大事なことを忘れていた。最大の危機を乗り越えたことで気が緩んだのは責められないことかもしれないが、それが蓮弥に危機をもたらすことになる。

 

 

 活動位階は暴走の危険が高いこと。そして永劫破壊(エイヴィヒカイト)()()()()()()()()()()()()()()()を完全に失念していたのである。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 ドクン

 

 

 蓮弥は今重大な問題を抱えていた。

 

 

 魔物は問題ない。例の蝙蝠クラスの強敵もいたが、やはり聖遺物の力は強力であり、大抵鉤爪と大砲で倒すことができた。

 

 

 問題は……聖遺物を使うようになって頻繁に感じるような飢餓感である。最初どうしても我慢できず、まずいとわかっていても倒した魔物は残らず食べていた。慣れない内は体にダメージがいって()()()()()()()()()()()()()()()慣れてきたら蓮弥に良くも悪くも何も影響を及ぼさないようになっていた。

 

 

 ドクン……ドクン

 

 

 おそらく熱もあるだろう。意識が朦朧としている。だけど休むわけにはいかない。ここで倒れたら二度と起き上がれなくなる気がする。

 

 

 時々記憶が飛ぶ時があり、その時は周辺の魔物を皆殺しにしていた。魔物の死骸を喰らうが飢餓感は消えない。()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 違う、違う、違う!! 

 欲しいのは■だ。 それも魔物の低品質の■ではない。どこかにないか……この飢えを満たす極上の■は……

 

 

 今までは魔物を片っ端から喰らうことで足りない■の質を数で補ってきたが限界が近い。

 

 

 ドクン……ドクン……ドクン

 

 

 もはや殺した魔物の肉を食うことをやめていた。たいして意味がないことに気づいたのだ。魔物の■を喰らうのみでいい。

 

 

 途中開きっぱなしになっていた巨大な両開きの扉を見つけたが、無視した。ここに飢えを満たす物がなかったからだ。

 

 

 足りない足りない足りない足りない

 

 

 こんなものでは満足できない。もっと生きのいい■を寄越せ。

 

 

 しばらく飢えを凌ぐことしか考えられ無くなっていた■■はそれを見つけた。

 

 

 数は二、サイズは大きいのと小さいのだ。一つは白髪、片方の腕がなかった。もう一つは金髪、どうやら少女のようだ。

 

 

 片方には見覚えがあった。以前から目を付けていた■だった。この奈落で見失っていたが、前よりも一層輝き(旨味)が増していた。

 

 

 片方は見覚えがなかった。こちらも熟成された肉のように芳醇な香りを漂わせていた。

 

 

 見つけた!! 

 

 

 今まで喰らってきたものとは比較にならない極上の餌を……

 

 

 強い意志で支えられている()()()()を……

 

 

 以前から目にかけていた魂が、より洗練された上にデザートまでつけてきたのだ。

 

 

 そんな極上の魂(ごちそう)を前に、■■のなけなしの理性が……弾け飛んだ。




活動位階
右腕から出るエネルギーの塊を自分の意思で操作できる。見た目のイメージはD.Gray-man主人公アレンウォーカーのイノセンス『十字架(クロス)』

主人公が色々アレなので、次回ハジメ視点です。

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