檜山「オレはようやく上り始めたばかりだからな。この果てしなく遠い、小物界の頂点への道をよ」
頂点にはキランと輝くスマイルを浮かべて立ちはだかるシュピーネさんの姿が。
香織と合流したハジメは周囲の状況を観察する。聖棺に入っているメルド、側で見守るクラスメイト。壁に叩きつけられた痕があるも、体勢を立て直しつつある龍太郎。折れた聖剣を持って立ちすくむ光輝。そして半身を吹き飛ばされた檜山らしき人物。そしてここに迫りつつある魔人族の魔物たち。
「シア、ティオ。とりあえずお前達は他の奴らのフォローをして魔物を倒してくれ」
「はいですぅ」
「了解じゃ」
一緒についてきたシアとティオはクラスメイトの護衛に付く。これで万一にも邪魔になることはないはずだ。
ドンナーを構えつつハジメは油断なく檜山を観察する。今までの勘から檜山がまだ死んでないことを察したのだ。
「ハジメ君、気を付けて。明らかに檜山君おかしくなってるから。具体的にはステータスは一万を超えてると思う。後は異常な再生力とメルド団長の傷口に微生物みたいなものが付着してたの」
「あん? そりゃ一体どういう意味……」
言葉を口にする前に檜山が起き上がる。半身を失った檜山はハジメを見て狂相を益々歪めていく。
「南雲……なぐもなぐもなぐもなぐもなぁぐぅもぉおおおー!!」
ボコボコという音と共に檜山が再生する。
「ひっ!」
この場にいた誰かが短い悲鳴をあげる。そうせざるを得ないほど、目の前の存在は醜悪だった。
肥大化した筋肉は皮膚を突き破り赤黒い肉をむき出しにしている。その筋肉がビクビク動く様は見ているだけで正気度を奪ってくる代物だった。
「微生物がどうこうってそういうことか。しばらく見ない間に随分素敵な身体になったじゃねーか、檜山。……誰が関わってるのか気になるが、俺に敵対するならクラスメイトだろうが殺す!」
「いづまでもちちちちょうしししに乗ってるんじゃねぇぇえぞぉぉ!!」
飛び掛かってくる檜山に対してドンナー・シュラークを連射するハジメ。全弾命中し肉が弾け飛ぶも、その動きを止めることはできない。仕方なく香織を抱きかかえて跳躍する。
「てめえぇええ、ふれてんじゃぁぁぁねええ、カオリはおでのだぁぁぁぁあ」
「やれやれ、ここまでくると大した執着だな」
「冗談よしてよハジメ君。……正直気持ち悪い。ああいうのストーカーっていうんだよね」
「ああ、それはもっともだが、それを香織が言うのか……まあ、いい。下がっててくれ、もうちょっとでかい銃器を試す」
ハジメは香織をシアたちのところまで下ろすとメツェライを取り出し、檜山に対してぶっ放した。
独特の回転音と射撃音を響かせながら、破壊の権化が咆哮をあげる。毎分12000発の破壊の牙は残らず檜山に吸い込まれる。だが、檜山とてもう普通ではない。
「なぐぅもおぉぉぉぉぉぉーーッッ!!」
命中しているにも関わらず、明らかに密度と強度を増した檜山の筋肉を破壊しきることができないでいた。さらに損壊してすぐに超回復されてしまう。万軍を引き裂いた牙も異常な進化を遂げた檜山を討ち取ることができない。
「マジか。あいつあの見た目でどんな質量してんだよ。益々生物兵器を相手にしてる気分だな」
ハジメは就任初日で生物災害に巻き込まれたなけるぜが口癖の新米警官やバイクが趣味の女子大生の気持ちが少しわかった気がした。
ハジメはメツェライでは効果が薄いと考え、オルカンにて攻撃する。放たれた多数のミサイルが爆音を響かせ、夜の王都を明るく照らす。檜山は火に包まれ炎上して肉が焼ける嫌な臭いが漂ってくるが、それでも檜山は倒れない。
「なぁぐぅもぉおおおおおおおー!!」
「あれでも死なねぇのかよ。となるともうロッズ・フロム・ゴッドやヒュベリオンを使うしか」
しかしここで使うと王都に被害が出る。それに距離の問題もある。あれらの兵器は基本的に近距離では威力が高すぎて使えない。近距離でそんなものを使うのはウルトラバカだけだ。だからこそ距離を取るためにあいつをぶっ飛ばす必要があるがとハジメが考えている間、全身火だるまになりつつも檜山が飛び掛かってくる。
その速度はその推定質量からしたら中々脅威的だった。どうやらステータスが一万を超えてるのは間違いないようだと再確認したハジメは空中に浮かぶことで対処する。
「がぁぁぁぁぁぁぁあああああああ」
「うわぁ、気持ちわりぃ」
思わずハジメはそう言葉にする。叫び声を上げた檜山から触手が解き放たれる。ぬらぬら光るグロテスクな肉塊は気味が悪いことこの上ない。
「だけど……動きが鈍ぇ。そんなんじゃ俺は捕らえられねぇぞ」
空中で避けつつ迫る触手に銃弾を叩きこむハジメ。触手は潰れるがすぐに再生してハジメに襲い掛かってくる。だが、まともに考える頭がないのか動きが滅茶苦茶だ。見当違いのところを攻撃している時もあり、ハジメに命中しそうなものだけ冷静に対処すれば怖いものではなかった。
「がぁぁぁぁぁぁぁぐぞがぁぁぁあぁあああ!!」
ハジメと檜山の勝負は硬直状態に陥りつつあった。ハジメは檜山に攻撃するも、再生力が高すぎて効いていない。だからこそ超兵器を使う隙を伺っている。檜山のタフネスは脅威だが、筋肉が無駄に肥大化しすぎたため、速度を犠牲にしすぎた。それではいかに強力でも攻撃は当たらない。
だからこの均衡を崩すのは……第三者の介入が必要だった。
ドクン
脳内に響く声を聞き、檜山大介の動きが止まった。
『確かにあなたの肉体は強化されています、ですがそれはあくまで
「くくく……」
「あん?」
ハジメが警戒するように檜山を見る。見るとその肥大化していた筋肉は右腕を残して収まっている。
「ああ、そうだったよな。俺にはまだこれがあったんだ。くひひ、さあてここからが本番だぁなぁぐもぉぉぉ」
「──
右腕の筋肉が膨らみコブとなり、まるで膿汁が弾けるように中から一本の剣が文字通り生えてくる。
「
ハジメは檜山大介がその身から剣から背筋が凍るような気配を感じていた。
一見ただの西洋剣。それなりに名刀だとわかるがそれでも光輝が所有する聖剣には遠く及ばない代物だったのだろう。だが、今その
その剣に纏うは呪い。歴史を積み重ね、想念を吸い上げた特定の器物だけが放つあらゆる生物を殺す呪詛の猛毒。
ハジメはその気配を知っていた。
(これは……蓮弥と同じ……)
正確に言えば蓮弥よりかは気配がかなり薄いがおそらく同種。
蓮弥が”聖遺物”と呼ぶものの気配に他ならない。
「てめぇ、それをどこで手に入れた? いや、そもそもどうやって使ってる?」
ユナが倒れる前、ハジメは蓮弥の聖遺物『
その当時はユナとその十字剣をアーティファクトの一種だと思っていたハジメは、蓮弥とユナに鑑定させてほしいと依頼したのだ。蓮弥はハジメの依頼に対し最初は散々渋ったものの、最終的に慎重に表層だけ、危ないと思ったら即引き返すことを条件に鑑定を行った。
ハジメはなぜそんなに蓮弥が警戒するのかわからなかったが、ほんの少し蓮弥の十字架を鑑定しただけで理由はすぐにわかった。その聖遺物が発する桁違いの情報がハジメの脳を破壊しようと襲いかかってきたのだ。
まるで底なしの歴史の闇を覗くような、聖十字架が関わる全ての宗教の血と断末魔を取り込んでいるような。桁違いの信仰と、桁違いの呪いをドロドロに煮込んだような異常な気配。それにほんの少し触れただけで、あのハジメが顔面を蒼白にして過呼吸を起こし、しばらく動けなくなった。
蓮弥曰く、制御にエイヴィヒカイトという魔術を使っているらしいが、例えその魔術を使えてもハジメは聖遺物を使いたいとは思わないだろう。
そしてそんな蓮弥の聖遺物ほどの濃い気配は感じないとはいえ、檜山の持つものもそれ相応の呪いを帯びているのがわかる。普通なら手にしただけで発狂物のやばい代物を……
「ぎひひひ、知らねーよそんなことよぉぉぉ。それに……今からお前はあああ、こいつに切り刻まれることになるんだからなぁぁぁぁ!!」
檜山が剣を構えて、突撃してくる。どうやら今度は筋肉を圧縮することで素早さを上げているらしい。その動きをハジメは大げさに避けるも、無駄な行動の隙をつかれて檜山を振り払えない。
ハジメは檜山大介の警戒レベルを最大まで上げていた。今までとは違う、自分を殺しうるかもしれない武器に加え、その不死身の再生力とその力。
ハジメは瞬光を使いながらメツェライとオルカンによる攻撃を確実に当てていく。ハジメにとって幸運だったのは檜山が蓮弥の纏っているような霊的装甲を持っていないことがわかったことだろう。もし蓮弥と同じ無敵の鎧があるなら現状のハジメの手に負える相手ではなかった。
そのことからどうやら蓮弥と同じエイヴィヒカイトとやらで動かしているわけではないのだと推測するハジメ。錬成師の勘というべきか。蓮弥の使うエイヴィヒカイトが超一流の鍛冶師が純度の高い金属を鍛えて生み出した業物だとするなら、檜山のそれは不純物まみれの金属を素人が滅茶苦茶に扱って形だけ整えた鈍刀くらいの差をハジメは感じていた。
つまり現状ハジメの課題は相手の攻撃を喰らわず、いかに相手の不死身を突破するかが焦点になる。
「ぎゃははははははは、どうじだなぐもぉぉぉ、逃げてばっかりかああああ、そうだぁぁ、てめぇはそんなふうにていへんで這い蹲ってりゃいいんだよぉぉぉ!!」
高笑いを浮かべながら檜山が馬鹿正直真っすぐ突っ込んでくる。ハジメは振り下ろしてくる刃をしっかり見据えて確実な回避行動を取ろうとして……
「ッハジメさん!」
クラスメイトと共に周りにいる魔物を倒しながら冒険者達を守っていたシアが声を張り上げる。
ブチ
そんな音がハジメの左肩辺りで発生する。
見れば不自然に変形した剣がハジメの肩に喰らい付き、肩の肉をごっそり抉っていた。
「キヒッ」
「ぐぅ、がぁぁッ!」
激痛。肩を抉られただけでは説明がつかない痛みが体中に広がる。そしてその痛みと共に身体の中に聖遺物の宿す呪詛という名の毒素が侵入する。それはハジメの毒耐性でも防げない致命の一撃になろうとして……
「”絶象”!!」
「”限界突破”!!」
香織の絶象により傷を再生させ、ハジメが限界突破を使用したことで増大した魔力で強引に呪詛を排出する。
「きひひひひひひ、ひっしだなぁああなぐぅもおおぉぉぉ!」
「ちぃ、調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
檜山がぐにゃぐにゃまるで生物のように動く剣を繰り出す。躱したと思った一撃をハジメが喰らったのはこういう仕掛けらしい。今度はしっかり避けたハジメが今後の方針を固める。
ハジメは限界突破を使用したことで精度が高まった瞬光による加速した思考能力で檜山への対策を立てる。相手の攻撃をこれ以上喰らうのはまずい。先ほどは限界突破で増幅した魔力の勢いで押し流したが、今後同じ手は使えない。加えて限界突破を使用した以上、時間制限がついてしまった。限界突破の反動で動けなくなると最悪殺される危険性がある。そして相手は尋常ではない再生力を持っているので容易に倒すことができない。ならハジメが行うことは、檜山の攻撃を完璧に躱しつつ、時間制限以内に檜山を行動不能にする。いざとなったらシア達に手伝ってもらうという手もあるが……
「それは流石にダサすぎだろ」
その案を振り払い、ハジメの方針は固まった。
檜山が剣を振るう。その鞭のような動きは剣筋が読みにくいが、限界突破によってステータスが向上したハジメを捉えられるものではない。
オルカンによる攻撃を続けるが、爆炎をまともに受けてもたいして堪えている様子はない。どうやら相当熱に強くなっているらしい。ならこのままオルカンによる攻撃を続けることは効果が薄いと判断。となると……
ハジメはオルカンを収納し、多弾頭搭載型グレネードランチャー『スターズ』を取り出す。
先端に取り付けられた魔法陣がその場で弾頭を作成する。今回搭載するのは……
「これならどうだ?」
ハジメが弾頭を檜山に向けて発射し、檜山に命中する。避けるまでもないと思ったのかもしれないがそれが命取りだとハジメはにやりと笑う。
檜山に着弾し、周りに吹き出すのは爆炎ではなく冷気。それをまともに喰らった檜山。現れたその姿は……
「ああ、なんだごで? おで、何でうごげねぇ……」
「知ってるか? この世界でも空気の成分は俺達の故郷と同じなんだ。だったら空気中に腐るほどある窒素から液体窒素を錬成し放題だろ」
衝撃にも熱にも強いなら冷気で。魔法の才能がないハジメが作った液体窒素という名の化学薬品による属性攻撃。-196℃の圧縮液体窒素が容赦なく檜山の身体を凍らせていく。
「が、が、が」
無限の再生力を誇ろうとも細胞ごと凍らせられたら身動きがとれなくなる。
「正直少し焦った。だからお前に一切手加減なんてしねぇ。このまま凍らせてから確実に止めを刺してやる!」
その言葉通り、檜山の周囲を旋回しながらスターズによる冷凍弾を乱射する。空間魔法により見た目以上の量の液体窒素が搭載されているとはいえ、冷凍弾一発では心もとない。全身氷漬けになるまで容赦なく撃ち込み続ける。
「ぐぞぉぉ、でめぇええ!!」
檜山は抵抗するが、冷凍弾が命中するたびに動きが鈍くなっていく。対し限界突破で音速領域に突入するハジメ。どちらが有利かは考えるまでもない。檜山は為す術もなく徐々に身体の芯まで氷漬けにされていく。
「がぁ……あ……あ」
数十発撃ち込むころには完全に氷像と化した檜山が大広場の中央に存在するだけだった。
決着はついた。後はこの氷像をどこか遠くに配置し、跡形もなくヒュベリオンで消し去るだけだとハジメは檜山に対して警戒しつつも近づいていく。
「まて、南雲。まさか檜山を殺すつもりじゃないだろうな」
「まさかも何もその通りだよ。お前まさかこんな変わり果てた檜山まで庇うつもりじゃないだろうな」
光輝の言葉にめんどくさそうに答えるハジメ。
「うっ、それは……そうだ、檜山をこんな姿にした奴がいるかもしれない。その人物のことを聞き出さなくていいのか?」
「ふむ、お前にしては一理あると言えるな。だけどな、どう考えてもこいつは真っ当な思考回路してなかったし、俺がこいつをこんな姿にした下手人だったらこいつに余計な情報なんて渡さねぇ。やるとすれば秘密保持のために跡形もなく証拠隠滅する仕掛けを準備するか、あるいは……」
そこではっと何かに気付いたハジメだったが遅い。ハジメが想像した通り、貴重なサンプルを回収するための仕掛けであろう魔法陣が檜山の足元に展開された。
「クソッ!」
ハジメが魔法陣を魔眼で見てその核を破壊しようとドンナーを向けるが、ハジメが対処する前に魔法陣は発動し、檜山は姿を消したのだった。
「ちっ、逃がしちまったか。どうやら結構厄介な奴があいつの背後にいるらしいな」
それが神エヒトの手先かどうかはわからないが、むしろハジメからしたら檜山本人よりもそちらの方を警戒するべきだと本能で感じていた。聖遺物らしきものを使ってきたこともあり、後で蓮弥と相談しなければならない。
「ハジメ君!」
香織がハジメの元まで駆け寄ると、すぐに聖棺を発動してハジメを収納してしまう。
「お、おい」
「待ってて、すぐに検査するから。何か変な病原菌でも貰ってないか心配だし」
その鬼気迫る香織の雰囲気に何も言えなくなるハジメ。確かに檜山の様子から何らかのウィルス的なものに感染してないか不安ではあるが、いきなり箱に詰められると少し動揺してしまう。
「……良かった。どうやら何もないみたい。多分再生魔法と限界突破のおかげで体内にまで侵入できなかったんだね」
ほっと安心する香織。そしてそこに周囲の魔物を狩り尽くしたシアとティオが合流する。
「さて、これからどうするか。やっぱり蓮弥と一度合流して…………どうやらそういうわけにもいかないみたいだな」
ハジメがドンナーとシュラークを構える。その行動を受けてシアたちも臨戦態勢に入る。
「えっ、えっ、どうしたの南雲君?」
ひと段落ついたと思っている鈴は困惑する。
「何かいるぞ。お前達も死にたくなかったら行動しろ。わざわざ守ってやるつもりはねぇ!」
「ッ! わかった」
そこにいた者達はハジメの言葉を聞き、臨戦態勢に入る。
そして、皆が警戒するなか、目を紅く光らせた軍団は現れたのだった。
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王都中央の大広場での戦線戦況
ハジメパーティ&勇者パーティVS檜山大介&魔物群
勝敗:引き分け
檜山大介:再起可能。全身を液体窒素により凍らされるが何者かに回収される。今回ハジメに負傷させる、限界突破を使わせるなど私怨のあるハジメに一矢報いることに成功。聖遺物らしきものを使うことが確認できたが詳細は現状不明。
南雲ハジメ:軽傷。聖遺物による攻撃を喰らったことで呪詛に魂を汚染されかけるが、限界突破による魔力の上昇を利用して強引に呪詛を排出することで事なきを得る。傷自体は香織の絶象により回復済み。
天之河光輝:微傷。一時期壁に叩きつけられるも香織の回復魔法により回復済み。ただし今回の戦いで再び聖剣が破損する。この戦争での戦闘力が低下。
アーカイブ
【多弾頭搭載型グレネードランチャー『スターズ』】
ハジメが悪食戦で使用したガトリンググレネードランチャーの成れの果て。普通に考えてグレネードランチャーに搭載するサイズの弾頭をガトリングガンの要領で撃ち出すと、発射した際の熱で誘爆する可能性があることが発覚。当初ハジメは氷属性の魔法と液体窒素で砲身を冷却すれば問題なく使えると計算していたが、実際はそれでも冷却が追い付かず最終的に砲身が融解したので、仕方なく単発式に切り替える。連射性は落ちたものの、魔法陣によってその場で弾丸を作成して発射できるようになったのでわざわざ弾丸を詰め直す必要がなくなる。
【
むかしむかし、あるところに真面目な青年がおりました。
真面目な青年は剣の腕が立ち、騎士として大変優秀で周りからの信頼も厚い立派な若者でした。
ある日、その青年は偶然出会うことになった隣村一番の美少女に恋をしました。
なんとかその少女と仲良くなりたいと思いましたが、その青年は恥ずかしがりやだったので、彼女を遠くから観察することしかできませんでした。
毎日、毎日、仕事もせずに毎日、毎日観察を続けました。
数年間毎日欠かさず観察を続けていた青年は、ついに彼女と会話することに成功します。
しかし誰よりも何よりも、彼女のことを知っているし見守っていたはずの青年はその少女に罵倒されてしまいました。
わけがわからなくなった青年は父からの形見である剣で少女をめった刺しにして殺してしまいました。以後、彼女の死を認められない青年は、彼女に似ている少女を探し出し観察を行ってから殺すという奇行を元同僚の騎士に討伐されるまで延々と繰り返し続けたという。
──禁忌庫に保管されていたとある剣の武器物語
聖遺物の定義は聖人の遺物という意味ももちろんありますが、それだけではなく某マルチバッドエンドで新宿ENDなRPGの武器物語がついているような物はほぼ全部そうだと思ってください。ちなみに蓮弥が使うのが前者で檜山が使ったのは後者です。
次回もハジメ視点です。
蓮弥視点は少々お待ちを。