ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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大災害『群体』

「どうする。このままだと……」

 

 重力場の異常により近づけない蓮弥。このままあの砲撃が放たれたらまずいというのは誰でもわかるだろう。

 

 こうなったら一か八か重力という概念を破壊するしかないと覚悟を決めたその時、ユナが動いた。

 

『蓮弥……少しだけ無茶をします。耐えてください』

「何をッ、ぐっッッッ!!」

 

 蓮弥の内側から力が溢れだしてくる。だがその力は蓮弥の許容量を少しだけ超えた。電子回路の許容量を超える電気を流せば回路自身に負担がかかるのは当然だ。ユナとて蓮弥を苦しめたくはないが今は仕方がない。

 

聖術(マギア)7章6節(7 : 6)……"銀腕聖裁"

 

 蓮弥の背後より無数の銀の腕が出現し一つに纏まる。それは大きさ約数百メートルのビルのような巨腕に成長し……

 

 レギオンの顎に対し拳を叩きつけ、頭を打ち上げた。その攻撃により戦艦レギオンの頭が上に上がり、その瞬間砲撃は放たれた……上空に。発射された重力球は通過した空間を捻じ曲げ、削り取りながら空の彼方に消えていく。そして直後、歪んだ空間が元に戻る衝撃が世界を襲う。

 削り取られた空間を修正するために世界に空振が走る。それはここから数百㎞離れているフューレンまで届き、結界に負荷をかけるほどの規模。

 余波だけでこの威力。もし直撃していたらと思うと蓮弥は冷や汗をぬぐい切れない。

 

「クソッ、こいつ……」

「中々やるわね。あれが地上に放たれたら国の一つや二つ一発で消し飛ぶでしょうね」

 

 蓮弥が忌々しそうに、フレイヤが楽しそうにする。

 

『……れ……んや……蓮……や……蓮弥! 無事か!!』

「ッ、ハジメ! ああ、なんとかな。そっちの状況は?」

『流石に肝が冷えたけどな。王都は無事だ』

『あの砲撃は超重力を極限まで圧縮した力の塊ね。巻き込まれたら何もかも消滅するわ。だから撃たせないで……といいたいんだけど……』

 

 真央がヘファイストスのコンソールを叩きながらその解析結果に顔をしかめる。

 

『藤澤君、よく聞いて。次のコア……最後のサブコアのことなんだけど……たった今場所がわかったわ』

「おい吉野……まさか……」

 

 真央の声を聞いて嫌な予感がする蓮弥。そしてしばらく沈黙が続き、その内容が語られた。

 

『最後のコアの位置は…………口の中よ』

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 最後のコアを破壊するため、蓮弥は行動を開始した。

 

「行くぞッ!」

 

 まずは戦艦レギオンの口らしきところを神滅剣、聖術で攻撃する。現在主砲を放った戦艦レギオンの口は閉ざされている。口の中にコアがあるというのなら、もう一度開かせなくてはならない。

 

 

 だが……

 

『駄目ですね。そうやすやすと突破できるわけではないようです』

 

 そう。ユナが言うように蓮弥が攻撃するものの、レギオンの口は開かない。破壊を上回る勢いで再生するため、一向に攻略が進まない。蓮弥の中で焦りだけが募っていく。

 

『やはりレギオンが口を開く瞬間を狙うのが一番効果的かと思います。ですが……』

「そのためにはもう一度奴に主砲を撃たせなくちゃいけないということか……」

 

 現状を一番シンプルに解決する方法であり、同時に一番危険が伴う行動だった。なぜならその場合、取れる行動は二つ。主砲のチャージ中に横入りするか、主砲を真正面から打ち破るか。どちらを選ぶにしろ、危険であることに変わりはない。

 

「……いいわ。なら私がやってあげる」

「フレイヤ?」

「むかつくのよ。こいつ……私を無視して王都の方を攻撃した。しかもその行動で弱点がむき出しになるんでしょ。つまり……こいつは私を()()()()()()()()()

 

 フレイヤは怒りを隠さずそう吐き捨てるように言う。確かに、一見すると蓮弥やフレイヤを無視して攻撃したようにも見える。たかが魔物の集合体に舐められる。それはフレイヤの渇望的に我慢がならないこと。

 

「だがお前。それはかなり危険がッ!?」

 

 蓮弥がフレイヤにその言葉を向けた瞬間、フレイヤの剣が蓮弥を襲った。蓮弥は虚を突かれつつも神滅剣にて防ぐ。

 

「……どういうつもりだ。それに……どうやって聖約を……」

「決まってるじゃない。()()()()()()()()()()()()()。さっきの言葉は、私への侮辱と取るわ」

 

 フレイヤがルシフェリアを操作して周りの雑魚を蹴散らしながら蓮弥と顔を合わせる。

 

「言ったわよね。私は、私を舐める奴を許さない。……今の言葉は何、藤澤蓮弥。私はあなたの仲間? それとも恋人? いいえ、違うわよね。たかが少し共闘したくらいであなたと私の関係は変わらない。あなただって神の力を使って理不尽を振りまく私を許せないでしょ。向かい合ったら私が死ぬか、あなたが死ぬか。それが基本的な私達の関係。だから心配なんて筋違いなのよ。不愉快だわ」

「…………」

 

 確かに、フレイヤがエヒトを裏切ったことにより付いた神の叛逆者という属性によって、蓮弥は多少フレイヤの存在を許容可能になっていた。少なくともこうやって利害が一致すれば共闘することも可能なのは今証明されている。だが、だからといって完全に受け止められるわけではない。蓮弥にとって、神の力を使うもので明確に例外なのはユナただ一人なのだ。フレイヤの言う通り、蓮弥とフレイヤはどこまで行っても敵同士でしかない。ある意味、それも一つの絆だと言うのかもしれないが。

 

「……わかった。だが、そんな大言を言う以上、必ず成功させろ。俺の敵を名乗るなら、それくらいやって貰わなければ役者不足だ」

「いいわ。それなら、名女優っぷりを見せつけてやらないといけないわねッ!」

 

 フレイヤが背後に天使を携えて戦艦レギオンの眼前まで浮かぶ。

 

「さあ、掛かってきなさい。それとも、その強力な主砲は雑魚にしか使えないのかしらぁ」

 

 フレイヤが魔力を高める。かつて蓮弥と最後の一撃を競った時レベルまで。

 

 これは挑発だ。戦艦レギオンに感情があるかはわからないが、少なくとも敵に対応する学習能力があるのは確認済みである。だからこそフレイヤは全力で戦艦レギオンに訴えかけている。

 

 自分を倒したければ、そちらも全力で来ることだと……

 

「■■■■■■■■■■!!」

 

 そしてその行動は実を結ぶ。フレイヤの挑発に乗ったのか。それとも滅ぼし損ねた王都を再度狙うためかはわからないが、再び戦艦レギオンは口を開き超重力を集め始めた。

 

「ハジメッ、口が開いたぞ。コアはどこにあるッ?」

『少しだけ待ってろ……見つけた。口の中央部分だ。画像を送る』

 

 蓮弥の前に空中に飛ばしていたオルニスの一体が接近し、モニターを表示する。そこにはレギオンの内部を表示しており、コアの位置が見える。

 

「ユナ……今からここを狙えるか?」

『…………正直難しいと思います。目の前の重力球のせいであらゆる攻撃は吸い込まれてしまうので。狙うなら……攻撃直後を狙うしか……』

 

 そう言っている間にフレイヤと戦艦レギオンの準備が完了する。周辺環境は重力異常を起こすほどの歪みを発しているが、今のフレイヤは落ち着いたものだ。

 

「さあ、来なさい。格の違いというやつを教えてあげる」

 

 

 そして両者は向かい合い、今激突する。

 

「■■■■■■■■■■!!」

堕落せし至上の大天使の制裁(プリームス・ルシフェリア・シュトラーフェ)ッ!! 

 

 放たれる重力球。

 

 そしてそれを迎撃するために砲撃を放つ大天使。

 

 両者の攻撃が衝突し、世界に亀裂を入れる。概念を狂わせるほどの衝撃が周囲を襲い、異常を世界に伝えていく。

 

「あああああああああああああああ──ッッ!!」

(私を舐めるんじゃないわよッ!)

 

 根がお人よしなのだろう。フレイヤは藤澤蓮弥のことをそう評する。もちろん彼とて本気でフレイヤに気を許しているわけではないだろう。だが、その一方どこかで気を許している部分があるのだということは伝わってくる。だがフレイヤはそれが気に入らない。なぜなら神の力を許さない藤澤蓮弥がフレイヤを受け入れるということは、それは神の叛逆者であるユナに通じるところがあると思っているかもしれないから。

 

 フレイヤはそれを許さない。だからこそ見せつけてやらなければならない。自分達の関係はそんな甘ったるいものではないということを……

 

「……化物の分際で……私に逆らってるんじゃないわよッ、おとなしく……撃ち落とされろ!!」

 

 大天使が血の涙を流し羽が黒く染まる。血の叫びを上げながら堕天使と化したルシフェリアが砲撃の出力を上げる。

 

 拮抗していた攻撃はフレイヤに傾き、重力球を破壊した。

 

『蓮弥ッ、今です!』

「ああッ!」

 

 蓮弥はここがチャンスだと言わんばかりに突きを放つ体勢になる。戦艦レギオンは口をすぐに閉じようとするも、ユナの聖術による銀腕に阻まれ、閉じることができない。

 

「はぁぁぁぁぁぁ──ッッ!!」

 

 蓮弥が光を纏った神滅剣を突きだし、それによって放たれた光の槍がレギオンの口を真っすぐ進み、第三のコアを破壊した。

 

『よし、最後のコアが破壊された。これで中央のコアに攻撃が通るようになったはずだ。蓮弥ッ、決めろ!』

『こちらも最後の支援砲撃を行うわ。だから藤澤君。止めを』

 

 空から光の柱が落ちてきて、周囲のレギオンを一掃する。そしてその間に、蓮弥は準備を行う。蓮弥が剣を掲げ、光が収束していく。それは全長千メートルを超える戦艦レギオンを容易に切断できる、かつて神山をも裁断した神滅の剣。

 

「さて、ここらでこの戦いも終幕だ。だからいい加減……落ちろ!」

王ノ聖神滅剣(バシレウス・グラディトロア)ッ!

 

 真っすぐ振り下ろされた光の刃は今、この世界を危険に晒し続けた戦艦を……一刀にて両断した。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「魔力反応消滅を確認……ふぅ……どうやら、何とかなったみてぇだな」

 

 ハジメの言葉と共に、SFルームに歓声が響き渡る。その声をBGMにハジメも自身で作成したキャスター付きの椅子に深く腰掛ける。

 

 流石のハジメも今回の戦いでは肝を冷やした。ほとんどいきなり現れたみたいなもので碌に準備をする時間もなかった。敵の破壊能力が想定以上だったこともあり、ほとんど蓮弥達に任せることになってしまったことはハジメにとって悔いが残るところだろう。

 正直に言って蓮弥とフレイヤという規格外がいなければ完全に終わっていたとわかる。

 

「ハジメ……大丈夫?」

「ユエ……ああ、平気だ。あいつが頑張った分、俺には俺のできることをしないとな」

 

 だからと言ってハジメは腐ったりなどしない。元より自分は錬成師が天職なのだ。よって自分の真価は戦うものではなく創る者。

 今回戦艦レギオンの討伐は蓮弥にしかできないことだったが、同時にハジメにはハジメにしかできないことがある。すなわち封印の完成である。

 

「確かに今回は助かりました。……ですが今回のようなことが何度もあっては世界が持ちません。南雲さん、封印の方はどうなっているのでしょうか?」

 

 リリアーナが封印のことについて聞いてくる。既にハイリヒ王国には少なくない被害が出ている。今回とて王都の南側の被害はどれほどか想像できない。だからこそ、根本的な対策ができる男に聞くのは自然な流れと言えるだろう。

 

「そうだな。もうすでに九割完成してる。職人達が頑張ってくれたおかげだな」

 

 レギオン氾濫まで残り三日とヘファイストスは計算している。だがハジメは万が一のことを考えて期間に余裕を持ってスケジュールを組んでいた。結果的にてこずると思っていたハード面での作業が、国家錬成師の職人たちの手によって大幅に短縮できたおかげで余裕をもって完成するだろう。

 

「具体的に後、どんな作業が残ってるの? 私が聞いてもわからないかもしれないけど」

 

 雫がハジメにそう言う。今回、王都南でレギオン討伐を続けていた雫だったが、本音では蓮弥についていきたかったのだろう。だけど自分の実力では邪魔にしかならないと堪えたのだ。少しでも蓮弥の負担を減らしてあげたい。そのために封印を完成させるための援助は惜しみなく行うと伝わってきた。

 

「そうだな。今回俺が作っている封印って言うのが、端的に言うと疑似トータスの創造でな」

「……はい?」

 

 ハジメが世界の創造という言葉を使ったあたりで雫が疑問を浮かべる。見れば他の人もハジメの言葉に注目しているようだ。そこで今回の封印がどういうものなのか説明することにする。

 

「滅茶苦茶大雑把に例えれば、宝物庫の超超巨大バージョンという感じか。もちろん機能はそれだけじゃないんだが、とにかく要はレギオンを丸ごと収めて放逐できる異世界があればいいという考えの元、この封印は作られている」

「世界の創造。そんなこと……私達でもできるの?」

「正直見当もつかぬな」

「私の感覚的には、空間魔法の深奥を使わないとそんなことできないと思う」

 

 ユエ、ティオ、香織の疑問は尤もだ。そんなこと神代魔法でもできない。よってこれは神代魔法の領域ではないのだ。

 

「香織の言う通り。これはただの神代魔法ではできない。異界の創造。それは概念魔法の領域に当たるものだ。正直今の俺じゃ何もない状態から封印を作成することはできない。到達者が残した疑似概念魔法再現アーティファクトともいえる『ヘファイストス』と封印の設計図があったからこそ再現できた」

 

 概念魔法を使うにはやはり概念魔法を理解していないといけないのだろう。正直遺憾だが封印の中に機能はわかっても仕組みがわからない魔法式は多数存在していた。現時点ではハジメの技術力では到達者アイザックの領域の足元にも及んでいない証拠でもある。

 

 だがそれはいい。ハジメは蓮弥へ帰還の連絡を入れるためにコンソールへ向き合い……

 

「うん? ……ねぇ南雲……これ……」

 

 ハジメの代わりにずっとコンソールを見ていた真央の言葉につられてハジメがコンソールを覗く。

 

 

 

 

 

「………………は?」

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~

 

『蓮弥……なんだか、嫌な予感を感じます』

「ユナ?」

 

 ユナが南の方を向き何かを警戒する。それにつられて蓮弥もそちらを向き、気づく。

 

「おい、おいおいおい。なんだ……この魔力……」

 

 ユナよりワンテンポ遅れて感じたもの。それはとてつもない巨大な魔力。まるで巨大な海がいきなり現れたような。

 

「ハジメ、何か大峡谷の方角がおかしい。……ハジメ?」

 

 オルニスを通じてハジメに語り掛けるもハジメに返事がない。通信は繋がっているはずなのにこれは一体どういうことなのか。

 

『おい、嘘だろ。何で……まだ時間はあるはずだ……』

「おいッ、ハジメ! 一体何が起きている!?」

 

 ハジメの声が聞こえてきたが、それは蓮弥に対して向けられていなかった。だからこそ強い口調で言い放つ。そこで蓮弥からの通信に気付いたハジメが現状を伝える。

 

『蓮弥……落ちついて聞いてくれ。……オルニスで大峡谷側を監視してたんだが……レギオンが、大峡谷から溢れ始めた』

「は?」

 

 レギオンの氾濫。それは世界最期の日。レギオンが溢れるということはそういうことなのだと彼らの認識は一致していた。

 

「何で……確かまだ期限はあったはずだ!?」

『わからねぇ。あれから何度計算しても誤差はほとんど発生してなかった。なのにここにきていきなり反応が増えた。一体何が起きたらこんなことが起きるんだ!』

 

 ハジメが慌てている声が届く。ハジメはハジメで懸命に解析を進めているとわかった蓮弥は、ミレディに連絡を取ってみることにする。

 

「おい! ミレディ。応答してくれ。そっちはどうなってる?」

『………………練炭?』

「ああ、そうだ。一体何が?」

 

 ミレディと繋がったものの、ミレディの声には苦痛が混じっていた。まるで無理やり何かを押さえつけているかのように。

 

『私からは……よくわからない。けど……いきなりレギオンの容量が数百万単位で増えた気がする。今大峡谷の魔力分解能力を最大にしているのとッ……普段は大迷宮に回している魔力を使った重力魔法で押しとどめてるけど……正直長くはもたないよ』

「一体何でそんなことが」

 

 ハジメの言う通り。定期的にレギオンの状況は確認していたのだ。ヘファイストスの計算も多少の誤差が出るものの。ほとんど同じ結果を示し続けた。もし、もしその計算に狂いが生じるのだとしたら、今までになかった要素が必ずあるはずだ。

 

『蓮弥ッ、原因がわかりました。大峡谷の南から大量の魔物が大峡谷に向けて進んでいます』

 

 ユナの言葉で何が起きているのか悟る。数百万単位で容量が増えているレギオン。それは魔人族が使役していた魔物の数と一致する気がする。

 

「フレイヤッ。これは……エヒトの指示だと思うか?」

「ないわね。今のあいつは下界で好き勝手出来るほど余裕がない。確かに魔人族の側にもあいつの眷属は存在するけど……以前にも言ったと思うけどエヒトにとっても大災害は禁じ手なの。()()()()()()()()、今トータスが滅びるのはあいつにとっても困るはず」

「だったら……」

「はっ、決まってるじゃない。大方、レギオンが北ばかりを攻めるからアレがアルヴ神による人族への天罰にでも見えたんじゃない? だからそれに殉ずるために魔人族は谷底に魔物を投げ捨ててるのよ。アホらし。大災害が人族と魔人族の区別をつけているわけないじゃない。仮に先に人族領域を喰いつくしたとしても、次は自分達の番ってだけの話なのにね」

 

 蓮弥もハジメも、この世界の狂信者の本当の怖さについて認識が不足していた。正気ならレギオンの発する気配が自分達にとってもやばいものであることに気付くだろう。だが狂信者には、神に仕える愚者どもにはそんな思考回路が存在しないのだ。

 

『これ……大峡谷から戦艦レギオンと同じ反応が次々産まれてる。数は、十……二十……三十。いえ、もっと!』

 

 真央の報告、それは絶望の始まりだった。戦艦レギオン一体だけであれほど苦戦したのだ。それが三十体以上。しかも増え続けているというのなら世界なんて一日も持たない。ヘファイストスはレギオンが氾濫したら約三時間でトータス全てを覆い尽くすという計算結果を出していたが、ここまでくるとそれが正しかったのだと否応なくわかってしまう。

 

『観測された大峡谷のレギオンのコア数は、18億5731万4832個』

 

 

 世界を覆い尽くす黒い大波。

 

 質ではない……それは数の圧制。

 

 圧倒的な数による世界の侵食。

 

 これこそが、世界に七大災害として聖典に記されている。

 

 

 大災害『群体』……その真の姿である。

 

 ~~~~~~~~~~~

 

 

「ミレディ……レギオンが世界中に広がらないように押しとどめていると言っていたが、後どれくらい持つ?」

『正直しんどい。例え練炭からもらった神結晶の魔力を全部使ったとしても一時間が限界』

 

 ミレディの声から必死さが伝わってくる。神を滅ぼすのと同じくらいトータスの平和も願っているのだ。彼ら解放者の希望の大地を奪わせないように必死に努力している。

 

「そうか……ならハジメ。封印完成まではどれくらいかかる?」

『……俺がいまから限界突破・覇潰をリスクを考えずに使い続けたとしても……最短十時間以上はかかる』

 

 ミレディが大災害レギオン本体を抑えていられる時間は最大一時間。そしてハジメが封印完成までにかかる時間は最短で十時間以上。そしてレギオンが氾濫した場合、世界を滅ぼすのにかかる時間は約三時間。後はだれでもわかる算数の問題だ。

 今この瞬間を持って、()()()()()()での世界救済は不可能だと決定された。

 

 

 

 

 だからこそ……蓮弥は覚悟を決めた。

 

「ハジメ……お前のことだ……当然、もう一つのプランを実行できるところまでは完成してるんだろ?」

『…………ああ』

「ならもうそれしかない」

 

 

 蓮弥は心を鎮める。なぜならこれは、全て自分に掛かっているのだから。

 

『だけどそれはッ! ……私はやっぱり反対です。だって、それはあまりにも蓮弥の負担がッ!』

「ユナ……心配してくれているのはわかる。だけどこれしかないだろ」

 

 ユナの悲痛な声が蓮弥に届く。このプランを立てた時、ユナは最後まで反対していたのだ。なぜならそれは……蓮弥が地獄を見ることになるから。

 

『待って。ねぇ、待ってッッ。蓮弥、何の話をしているの!? もう一つのプランって何!?』

 

 インカムから雫の叫びが聞こえてくる。

 

 そう、このプランは雫にも伝えていなかった。伝えたら反対されるのが目に見えていたからだ。

 

『南雲君!!』

『…………現状封印で出来てねぇ機能は封印を維持するための機能だ。魔法は使う時間が長ければ長いほど使用魔力が大きくなる。だからそれを解決するために一種の魔力炉を魔法式に組み込む必要があるわけなんだが、それが一番難しいのはあらかじめわかっていた。そのシステムが完成していない今、封印を使用しても約三十分で封印は壊れちまう。だから……』

 

 

 

「封印という形で圧縮されているレギオンを……封印が壊れる前に俺が喰い尽くす!!」

 

 

 

 

 世界終了まで残り……四時間




次回、大災害レギオン編決着!

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