ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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第五章エピローグです。

長かったエピソードもついに終わり。本当に強敵でした。

そして章末ということで恒例の振り返りと今後のことについてのあとがきがありますので最後まで読むことをお勧めします。


己の祈り

 ──あなたは物語が好きかしら? 

 

 ──ファンタジー、SF、ミステリー。またはコメディや恋愛。様々なジャンルが存在する人類だけが生み出せる文化の一つ。

 

 ──私はもちろん好きよ。英雄譚は単純にワクワクするし、悲劇は悲劇で後に残るものを噛み締めて楽しむのもありだと思う。

 

 ──だけど、だけど私は……

 

 ──だからこそあなたには期待しているのよ。

 

 ──だから

 

 ──あなたが■■■■を完遂するのよ。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……またこのパターンか」

 

 蓮弥は目を覚ました。何か重要な夢を見ていたはずなのにその中身を覚えていない。夢なのだから当たり前なのだがこのパターンを何度か体験しているといい加減対策を立てたくなってくる。ある意味夢の専門家である雫に相談してみようかと考えた矢先、蓮弥の手を握り締めて雫が眠っていることに気づく。

 

「雫……」

 

 ピッタリと蓮弥のベッドに引っ付けたベッドの上で蓮弥と手を繋ぎながら眠っている雫。

 雫の体質は蓮弥も聞いている。連続した明晰夢を見続けるが故に、意識が常に覚醒し続けているという特異体質。つまり雫は今も寝ているように見えて夢の世界で活動しているということらしい。

 そんなことを考えていると雫がいきなり目を覚まして蓮弥の方を見る。

 

「…………おはよう」

「…………おはようじゃないわよ、バカぁ!」

 

 雫はしばらく蓮弥の顔を見て異常がないことを確認した後、蓮弥のベッドに入り込んでくる。

 

「中々起きない上にユナも出てこないしッ、蓮弥の夢に潜っても今の私が届かないところに気配を感じるしッ、だから私達ずっと……」

「ずっと……蓮弥が目覚めるのを待っていました」

 

 蓮弥が雫とは逆側の方を見るとユナが光と共に形成され現れる。

 

「ユナ……あれからどれくらい経った? レギオンは?」

「あれから三日です。レギオンは私が滅ぼしました。それで蓮弥は魂の休眠のために倒れてしまいまして。だから蓮弥が目覚めるのを雫と夢の世界で待っていたところでした」

 

 さらに詳しく聞くと、どうやら蓮弥が倒れてしまったせいでユナも現世に干渉できなくなってしまったという。レギオンがどうなったのかも気になるが、何より蓮弥とユナを心配した雫が蓮弥の内界に邯鄲の夢を使って潜航し救助を試みるが、蓮弥は現在の雫が行ける場所よりさらに深いところに存在していたので、仕方なく聖遺物に眠るユナに対して同じ要領でアクセスしてレギオン討伐をユナから確認した後、二人で蓮弥の気配に変化がないか逐次確認しつつ蓮弥に一番近い夢界の階層で蓮弥の目が覚めるのをずっと待っていたらしい。

 

「そうか……悪いな、心配かけて」

「全くよ」

「全くです」

 

 そう言って蓮弥の腕に引っ付いて離れない二人。散々心配をかけたのだから、これくらい許容するべきかもしれないが、話の流れからハジメ達はレギオンについての情報を知らない可能性もある。だからいい加減に行動を起こさなければならないような気がした蓮弥は遠慮がちに二人に声をかけることにした。

 

「なあ、二人とも……そろそろ離れないか」

「嫌よ(です)」

 

 ユナと雫は蓮弥の言葉に反発するかのようにさらに強く蓮弥に身を寄せる。二人とも遠慮なく豊満な胸を蓮弥の身体に押し付けてくるので大変心地が良い。

 

「蓮弥……」

 

 横になっている蓮弥の身体にしなだれかかりながら蓮弥の目を覗き込む二人の目は、心なしか情熱が籠っているような気がする。それを受けた蓮弥は正直流されてもいいかなと思い始めた。正直に言えば身体に当たる柔らかい感触と寝起きという事実。そして二人から漂ういい匂いにつられて色々男としてアレなことになってしまっている。聖約の縛りも今はないし遠慮なんかする必要がない。ここは不安にさせてしまった二人に対して男としての甲斐性を見せる時なのではないかと思わなくもない。

 

 

 だが蓮弥の中の冷静な部分が察していた。こういう時には邪魔が入るのがお約束なのだと。

 

「雫ちゃんッ、目を覚まし……ごめんねッ、お邪魔しました!」

 

 そしてお約束通り、蓮弥の意識が覚醒したことに気付いた香織が部屋に入ろうとするものの、部屋の中の事に及ぶ十秒前くらいの状態を前に顔を赤くし、外へ出ようとする。

 

「待て待て香織。おい、蓮弥。盛るのは後にしろ。俺達はレギオンがどうなったのか全く把握してねぇんだから盛るのはそれを話してからにしやがれ」

 

 盛るとかユエと年中盛ってるお前には言われたくない。蓮弥はそう思いつつも、香織と共に部屋に入ってきたハジメに対応するため、名残惜しいがユナと雫を離して事情を説明することにした。

 

 ~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「うん。私が見た限り異常はないみたいだね。全く雫ちゃんてば、藤澤君が起きるまで自分も起きないとか言って本当にずっと眠ってるんだもん。雫ちゃんの健康にも気を使っている私の身にもなってほしいと思う」

「ごめんなさい、香織。もう勝手にこんなことはしないわ」

 

 蓮弥ではなく雫が香織の健康診断を受けていた。どうやら本当に蓮弥が目覚めるまで一緒に寝ていたらしい。そして異常がないことを確認した香織がホッと安堵のため息をつく。

 

 そして蓮弥達は形成できるようになったユナから大災害レギオンの最期を聞くことになった。

 

「あれは負の魂の塊でした。残念ですが、あそこまで壊れてしまった魂は私でも浄化することはできません。私にできたことはレギオンを丸ごと焼き尽くすことだけでした」

「そっか……」

 

 ユナ曰く、レギオンとは世界に溜まっていく負の魂、龍脈の澱みであり、どんな世界でも大なり小なり発生するものであるという。それは地球にだって存在し、地域によっては龍脈を浄化するために儀式などを行う地域もユナの時代では存在したそうだ。

 

「おそらくですが、太古の時代のレギオンはあそこまで強大ではなかったはずです。なのにあそこまで強力になったのは……」

「神エヒトが齎した悲劇のせいってわけか」

「はい、レギオンは基本的になくなることのない不滅の現象です。しかし世界の秩序が保たれていればそれほど恐れる現象ではないのも事実です。ですので根本的な対処を行うにはエヒトを倒すことから始めないといけません」

 

 この世界の神を名乗るエヒトが積極的に世界を混沌にしているのなら、それを何とかしない限り再びレギオンは姿を現すのだと言う。

 光輝などはそれを聞いて義憤に駆られているようだったが、ハジメは興味がなさそうに聞いている。

 

「まあ、俺にとってこの世界がどうなろうと関係ないけどな。だから俺達の準備が終わり次第、すぐにでも大幅に遅れてる大迷宮攻略の旅を再開したい」

 

 本来は魂魄魔法を習得できた時点で王都には用なんてなかったハジメ一行だったが、大災害の襲撃のせいで思わぬ足止めを受けてしまっていた。

 

「俺達の目的はあくまで帰還方法の習得……つまり概念魔法を手に入れることにある。そのためには俺とユエが七つの神代魔法を習得しなくちゃならねぇ。そうだな、蓮弥」

「ああ、残念だが俺じゃ地球帰還のための概念を生み出せない。概念魔法を動かすには魂の力に分類される魔力が必要だが、それを使うには渇望、つまり決して揺るがない意志が必要になる。つまりお前しかいないんだよ。奈落の底で故郷に帰りたいと強く願うに至ったお前しか」

 

 蓮弥は地球帰還のための概念はハジメにしか生み出せないと考えていた。渇望とは融通の利くものではない。一部例外こそあるが、基本的に一人の人間につき、一つの渇望しか抱けない。二つの渇望を持つということはそれだけ意志の力が分散されてしまうということになるからだ。揺るがぬ思いとは、決してよそ見をしていて得られるものではない。

 ただし、それは蓮弥のエイヴィヒカイトを用いた場合の理屈であり、概念魔法でも同じ理屈が通るとは限らない。

 実はレギオンの最期を報告する際にミレディに連絡をとった蓮弥はミレディの無事を確認しつつ、ミレディ達解放者の概念魔法についての話を聞いていた。

 ミレディは、もうバレてるなら仕方ないと話してくれたが、ミレディ達は概念魔法と呼べるものを三つ作っていたのだと言う。だが、それは蓮弥やフレイヤのように一人の渇望で世界を歪める神秘というものではなく七人の神代魔法の使い手が祈りを紡ぐことで生み出されたものらしい。中にはやけ酒したらできたなんてものもある辺り本当に極限の意志というふわふわしたもので出来ているのだろう。だからこそ今思えば、自分達は真の意味で到達者という領域には達していなかったのではないかとミレディは言っていた。

 

 

 ミレディの言葉でわかることはどうやら複数の祈りを束ねても概念魔法を生み出せるということだ。だからこそ、ユナの試算ではハジメを軸として魔法の才能があるユエが支えれば帰還のための概念魔法を生み出せる可能性は十分あるということらしい。

 

「じゃあ……南雲は本当に神エヒトを放置するつもりなのかッ? 神をどうにかしないと、これからも人々が弄ばれるんだぞ! 放っておけるのか!」

 

 光輝がこの世界を長年苦しめているエヒトを無視するような発言に口調を強めるが、ハジメはどこ吹く風だ。

 

「顔も知らない誰かのために振える力は持ち合わせちゃいないな……」

「なんで……なんでだよっ! お前は、俺より強いし、すごいものを作れるじゃないか! それだけのッ、それだけの力があれば何だって出来るだろ! 力があるならッッ、正しいことのために使うべきじゃないか!」

 

 光輝がハジメに向かって吠えるがハジメは揺らぐことなく冷静に言い返す。

 

「あのなぁ、俺はお前が言うほど強くはねーよ。今回の大災害レギオンだって蓮弥とそこの堕天使と到達者の遺物がなきゃ完璧に終わってただろ。正直俺は俺の大切なものを守るので精一杯だからこの世界の面倒を見る余裕なんかねぇ。だから他を当たるんだな」

 

 ハジメとて今回の戦いで力不足を痛感させられているのだろう。もちろんこのままで終わるつもりはないのだろうが、蓮弥の見立てでは蓮弥達の領域にハジメ達が追い付くにはやはり概念魔法の習得が必要になる。

 つまりハジメの中では相変わらずトータスの未来の優先順位は低いままだ。

 

「なら藤澤は!? まさかお前までこの世界を救わないつもりなのか!?」

 

 光輝が今度は蓮弥に問いを投げる。その言葉にリリアーナを中心としてトータスの住人が傾聴するのがわかった。

 ハジメも確かにすごいが、やはり戦闘力という意味では蓮弥が頭一つ抜きん出ている。今回の大災害襲撃も蓮弥がいなければ間違いなく世界が終わっていた。だからこそ、もし蓮弥がこの世界を見捨てるということは、すなわちこの世界の命運が尽きるということでもある。

 

「……前に姫さんには伝えたと思うが、俺は個人的な理由と俺達のためにもエヒトを殺すべきだと考えている。だがこの世界を救うつもりはない。本来俺達はこの世界にとっては部外者だからな。この世界のことはこの世界の住人が何とかするのが筋だと思ってる」

 

 光輝が世界を救うつもりがないという部分を聞き、顔を歪める。おそらく光輝の期待した言葉とは違ったのだろう。だが蓮弥の言葉に思うところがあるのは光輝だけじゃない。

 

「蓮弥……俺達のためってどういうことだ?」

 

 ハジメはそこの部分が気になったのだろう。蓮弥は前から思っていたことと確認するべきことのために口を開く。

 

「忘れたのか? ハジメ。奴には異世界から俺達を召喚した概念魔法があるってことを。もし奴が生きてたらまた呼び出されるかもしれない。いつまたトータスに召喚されるのか不安になりながら過ごしたくはない。それにハジメ……お前にはおそらく、神エヒトと戦う理由がある」

「あん?」

 

 蓮弥の言葉に一理あるという顔をしておそらく転移妨害の対策でも考えていたハジメに言ってやることにする。既にハジメとエヒトには因縁が生まれていることに。そのために確認することがあるので壁に寄りかかって暇そうにしていたフレイヤに声をかける。

 

「フレイヤ。聞きたいことがある。これはユナの仮説なんだが、俺も信憑性があると思ってる。だからお前が答えてくれなくてもそれを前提で行動するつもりだが、確信が欲しい。だから教えろ。神エヒトは……現世に干渉するための肉体がないんだな?」

「……へぇ。聞かせてくれるかしら? どうしてそう思ったの?」

 

 フレイヤは蓮弥の確信を持った言葉に感心したのか楽しそうにその結論に至った理由を聞いてくる。そしてその答えをユナが蓮弥に変わり引き継いだ。

 

「……ずっとおかしいとは思っていたのです。この世界の神を名乗るエヒトは、どうして間接的にしか攻撃してこないのかと。まずはあなたが最初に襲い掛かった後、蓮弥は未完成の創造で力を示しました。おそらくそれがきっかけで蓮弥を警戒したからこそ、あなた以外の神の使徒を集めていたのでしょう。ですが、それは直接自分が出て蓮弥を倒せば済む話だったのでは?」

 

 蓮弥が初めて疑似創造を用いた時、蓮弥は神エヒトから警戒されて殲滅対象となっていた。それは以前倒した神の使徒の魂の記憶を見たことでわかったことだ。だが、仮にもこの世界で神を名乗るなら、自分が出て始末すればいいだけの話だと蓮弥も思っていたのだ。最初は侮っているのかと思っていたが、もし他に理由があったのだとしたら。

 

「そしてあなたの存在と王都襲撃での神の使徒がユエを攫おうとしたことで、ある仮説が生まれました。それが……神エヒトが肉体のない魂だけの存在ではないかということです。魂だけでは直接現世に干渉はできない。それは身をもって知っています」

「ちょっと待ってユナッ。……それってつまり……」

 

 ユエが声を震わせながらユナに問いかける。おそらく気付いたのだろう。それが、自分にも大きくかかわることであることに。

 

「……ユエは憑依共感体質です。そしてその体質は精霊を憑依させて自分の力に変えることができるほど強力です。つまりエヒトは三百年前……ユエを依代に現世に復活するつもりだった。だけどユエが封印されたことで憑依に失敗したからこそ、ユエを元にあなたを作り上げた。……もっともあなたに憑依転生を行っていないということはその体質をあなたは持っていないようですが」

 

 ユエが思わずハジメの手を取り寄り添う。そしてフレイヤはその言葉に顔に笑みを浮かべ周りに、特にユエに聞かせるように語り始める。

 

「そうね。大体合ってるわ。エヒトは昔あることをきっかけに肉体を失った。だから今、あいつは自身が作り上げた神域内でしか自由に行動できない。だから長年自分の器になれる存在を探していたわけなんだけど……三百年前についに理想的な依代を見つけたのよ」

「それが……ユエってわけか」

 

 ハジメが震えるユエの手を握り返しながらフレイヤに確認する。その目には今までにない色が含まれていた。

 

「そうよ。だからこそ依代の消失はエヒトにとっても大誤算だった。怒りのあまり復活後の活動拠点とするはずだった吸血鬼の王国を勢いで滅ぼしたくらいだし。つまりそこの吸血姫は……エヒトの肉体、つまり人柱であり、そのためだけに育てられて、そのためだけに生涯を終えるはずだったのよ」

「そんな……」

「ひどい……」

「……下衆が」

 

 シア、香織、ティオがフレイヤの言葉に反応する。特に一族を反逆者に仕立て上げられ、国を滅ぼされたティオの言葉は驚くほど冷たい。

 

「ということだハジメ。ユエは明確にエヒトに狙われてる。もし仮にユエを伴って地球に帰還しても諦めないかもしれない。お前はそれでも……奴を放置するのか?」

 

 蓮弥がハジメに問いかけるが、ハジメの答えなど決まっているのだ。

 

「そうか。なるほどな……じゃあ殺すわー」

「軽ッ!」

 

 思ったより軽いハジメの言葉に鈴がツッコミを入れる。そしてその言葉を聞いたユエは目をキョトンとさせてハジメを見る。

 

「俺の目的は変わらねぇ。生きて故郷に帰る。それが俺の願いだ。だけどユエの身体目当ての引きこもり変態ストーカー野郎を放置する理由もねぇ。ま、故郷に帰るついでにちょっとだけ寄り道して変態ストーカーを一匹潰すだけだ。俺のユエに手を出した。だから死ぬ。当然の方程式だな。あっ、でもエヒトが筋肉漢女になって出てきても困るから半端なことをせずに徹底的に魂ごと磨り潰さねーとな」

「ハジメ……」

 

 必ず何とかするから安心しろと言わんばかりにユエの肩を強く抱きしめ、ギラギラした野生的な眼差しをしながら神殺しを宣言する。わざと暗い雰囲気にならないように配慮しているのはわかるが、どうやらハジメにとってこの世界の神もユエをナンパするチャラ男と大差ないらしい。その言葉に今のハジメらしさを感じ、ハジメパーティーの空気も軽くなる。

 

「それに今のユエは必ずしも神の器として相応しいわけではありません。以前ならともかく、ユエは神ノ律法(デウス・マギア)を習得しました。意図してなかったとはいえ、これを習得したということはすなわち、魂の憑依に対して耐性ができたことを示しています。それに加えて、憑依対策の術式を組めば、早々身体を奪われることなんてありません」

 

 ユナもユエの不安を取り除くようにそう補足する。その言葉でユエの顔色もよくなった。

 

「だけどやることは変わらない。帰還方法を得るにしてもエヒトを倒すにしてもどの道概念魔法の習得は必須だ。だからこれまで通り旅は続ける。もしユエを狙ってくるようならその都度迎撃して潰していけばいい」

「当然ですぅ。ユエさんを狙う奴が現れたらドリュッケンの錆にしてやりますぅ」

 

 蓮弥の言葉を受けてシアが気合十分に返事を行う。それを見たユエが笑顔を浮かべる。

 

 みんながいれば大丈夫だと確信を持って。

 

 

「さて、もう用はないし、そろそろ私はここから退散しましょうか。もう契約は終わったのよね」

「ああ、そうだな」

 

 フレイヤの言葉を受けた蓮弥が聖約書を出すと、レギオン問題が解決したとみなされ契約が終了し、聖約書が消滅する。これでフレイヤを縛るものは何もない。今なら自由に戦闘することすら可能だ。

 

「じゃあ、私はこれで引き上げさせてもらうわ。まあ、一緒に戦うのもそこそこ面白かったけど……次に会うなら、やっぱり敵同士がいいわね」

「冗談じゃない。お前みたいなめんどくさいやつとは極力関わりたくない。だからもう出てこなくてもいいぞ」

「あら、それは無理よ。だって私とあなたの決着はついてないもの。また会うわ。必ずね」

 

 そう言い残し、フレイヤは転移術式を使い消えた。正直聞きたいことが他にないこともなかったのだがこれ以上関わると藪蛇になりかねないと自重した。随分あっさりした別れだが、蓮弥とフレイヤの関係ならこんなものだろう。

 

「さて、じゃあ今日はもうこれで終わりでいいな。新しい移動手段の確保の件もあるし、変態ストーカー野郎を潰すならそれ相応の武器を用意しないと……」

「あのー、ついでに建物の修繕や防衛設備の強化をやっていただけるとありがたいのですが……」

 

 リリアーナが遠慮がちにハジメに提案する。現在、王都はとにかく人材も物資も足りない。今の話を聞いてハジメ達を無理やり王都に引きとどめるわけにはいかないことはわかったが、リリアーナもこの王国の王女としてこの国を守らなければならない。せめて建物の修復と防衛設備の強化をやって貰えないか交渉する。

 

「いいぞ」

「そうですよね。いいですよね。だけど今王国は財政難でして……今は無理でもいつか必ずお礼を……へっ? 今なんて言いました?」

「だからいいぞって言ったんだよ」

 

 聞き間違えたのかと思ったリリアーナは思わずハジメに聞き返す。周りを見るとクラスメイトの半数以上が意外なものを見たという顔をしている。

 

「えっと、一体どうして?」

「ここの王国の錬成師達には封印作成の時に世話になったからな。現在進行形でフェルニル建造の手伝いもしてもらっていることもある。優れた仕事には優れた報酬を。だから錬成師達が喜びそうで過剰すぎない技術の提供とか、逆に仕事の手伝いとかはやるつもりだ」

 

 どうやらハジメはここの錬成師とは封印作成の際にずいぶん打ち解けたらしい。そして封印作成の際のハード面の作成依頼は自分が出したのだからそれに応えてくれた職人には相応の報酬を払わなくてはならないと考えているらしい。

 

「なんだ、あんた? 俺を何だと思っていやがんだ。別に姫さんがいらないなら手伝わ……」

「是非お願いしますッッ!! こうなると国家錬成師の方達にも特別手当を出さなければいけませんね」

 

 若干食い気味にリリアーナがお願いしたことでこの話は終わる。

 

 

 そして一旦解散の流れになったこと際に、ユナが最後に蓮弥とハジメに声をかける。

 

「蓮弥、それとハジメ。少し聞きたいことがあります」

「どうしたユナ?」

「蓮弥達は、あの神父についてどう思いますか?」

「神父?」

 

 蓮弥とハジメの脳裏に過るのは大災害レギオンの情報を持ってきた神父のことだ。

 

「神父さんか……頼りない人だけど割と良い人なんじゃないか」

「あの幸薄そうな人か。よくわからねぇけど敵じゃないだろ、どう見ても戦闘とか無縁で貧弱そうだし」

「…………」

 

 ユナは蓮弥とハジメの答えに対して無言の反応を示す。その反応に疑問を浮かべる蓮弥。

 

「どうしたんだユナ?」

「蓮弥、ハジメも。少し頭下げてもらってもいいですか?」

「?」

 

 よくわからないが蓮弥とハジメはユナに従い、軽く頭を下げた。そしてユナが二人の頭に手を乗せる。

 

「少し痛いかもしれません。我慢してください」

「一体何をッ!?」

 

 突如蓮弥の頭に鋭い痛みが走る。その痛みは一瞬だったが、どうやらハジメも同じらしい。頭を抱えていた。

 

「二人とも、もう一度聞きます」

 

 

 

「あの神父のことを……どう思いますか?」

 

 もう一度ユナに問われ、蓮弥は応えようとする。

 

「いや、さっきも言っただろ。あの人は……」

「……あ?」

 

 蓮弥の言葉が途切れ、ハジメが首をかしげる。

 

「おい……なんだ、コレ」

「……気持ち悪ぃ」

 

 ようやくなぜユナがこの話を持ち出したのか理解できた。今になってようやくわかった違和感。

 

(どうして……俺はたかが数回助けられたくらいであの人を信用できるだなんて思っていたんだ!?)

 

 確かに。確かに蓮弥はかつてバーン大迷宮攻略の際にダニエル神父には世話になった。通行手形を特別に発行してもらったおかげで教会との無用なトラブルを避けることができた。

 今回に至ってはヘファイストスの存在がなければ大災害レギオンを蓮弥は取り込むことができず、世界は滅亡へと向かっていただろう。

 

 だが、()()()()()()()()()()()()()()

 

 幾度か助けられたからと言って、その相手に全幅の信頼を寄せる。そんなことは不自然だろう。増してや蓮弥は最初、ダニエル神父を警戒していたはずではなかったのか。

 

「おそらく極めて巧妙な暗示の類でしょう。魂魄魔法の一種なのか、それとも単なる技術なのかは今のところ不明ですが、私以外の人間には同様の処置が行われていると言っていいかもしれません」

「……じゃあ、あの神父は一体何者なんだ? 何が目的でこんなことをしやがった」

 

 ハジメの疑問に蓮弥ははっきり答えることができない。

 

「わからないな。エヒトの手先なのか。それともフレイヤの関係者か。あるいは違う勢力なのか。考えられることはたくさんあるが、一つだけわかることがある。次に会う時は、おそらく敵だ」

 

 蓮弥の勘は、ただあの神父の危険度だけを正確に告げていた。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「そろそろ、私の正体について疑問を持つころでしょうか。やれやれ。自業自得とはいえ、今度会った時は仲良くしてくれそうにもありませんねぇ」

 

 神父、ダニエル=アルベルトは現在洞窟の中にいた。

 

 

 この場所はかつて悪食の封印があった場所と同じように、その場所があるとわかっていなければ入れない空間の一つである。この世界にはいくつかそういう空間が存在しているが、それらに対して共通していることが一つある。

 それはそれらが光の使徒と呼ばれた到達者に関連するものであるということだ。

 

 

 神父は洞窟の奥に入っていく。もし、神父の読み通りだとすればここにいるはずなのだが。

 

「ああ、やっと見つけましたよエーアスト。どうやら随分派手にやられたようですねぇ」

 

 その洞窟の奥。それなりに広い空間になっているところに一人の使徒が満身創痍で横たわっていた。

 

 彼女の名はエーアスト。いまやただ一人残った量産型ではない神の使徒である。そしてそのエーアストは光に包まれていた。彼女の頭上には掌サイズの光る石があり、それが豊潤な魔力を放っているのがわかる。

 

「この場所はどうやら一種の魔力溜まりになっているようですね。そしてそれは神結晶でしょうか。まさかまだ現存しているとは。この分だと探せば他にもあるかもしれませんね」

 

 返事はない。だが手負いの使徒は神父の存在を認識した直後、神父に向かって光の槍を撃ち込んだ。

 

 分解能力を備えた光の槍はそれだけであらゆる物体を粒子に変えることのできる必殺の槍。だがその必殺性とは裏腹に神父は傷一つ負うことなく光の中から現れる。

 

「おや。いきなりなんとも手荒な歓迎だ。それにその身体で無茶はしないほうがいい。いくら神結晶でもフレイヤの概念魔法のダメージはそう簡単に癒せないでしょう」

「何をぬけぬけと……この裏切り者が」

 

 魔力的なものか。それともアーティファクトか。何らかの要因で一切ダメージを負っていない神父は、エーアストの攻撃に対して気にした素振りもなく逆に彼女を心配するが、エーアストは憎悪を込めた目で神父を見る。

 

「裏切り? はて、一体何のことやら」

「とぼけないでください。使徒フレイヤを操っているのはあなたでしょう。あと少しで主の器を手にできたのに……この落とし前はどうつけるつもりですか。主はあなたを許しませんよ」

 

 その言葉を受け、ふむと考えるそぶりを見せる神父。だがそれも少しだけで、いつものように笑みを浮かべてエーアストに親愛を込めて話しかける。

 

「それは誤解というものですよ。私は主を裏切ってなどいない。あくまで私の行動は主の復活のためにある」

「ならなぜ邪魔をしたのですッ!」

「決まっているじゃないですか。私は主の味方ではありますが、あなたの味方ではない」

「なっ!?」

「主は復活する。だがそれは……私の手で成されなければならない」

 

 その言葉に虚を突かれたのか、それとも傷が響いて喋れなくなったのか。エーアストは口籠る。

 

「エーアスト。私がなぜあなただけを生かしているのかわかりますか? もちろん神域に入るための案内人として神の使徒を残す必要があったのも事実。だが、それなら他の使徒でも良かった」

「…………何が言いたい?」

 

 絞り出すような声に対して他の使徒には決して浮かべることのなかった感情の籠った笑みを浮かべる神父。

 

「あなたがまだ生きている理由。それはあなたが他の使徒とは違うからですよ。エーアスト、ファースト、初号機、プロトタイプ。呼び方は様々かもしれませんが、あなたは最初に生まれた神の使徒だ。だからこそツヴァイト以降は持っていない感情がある」

「ッ!」

「それにいささか興味がありましてね。あなたの感情の源泉は何なのか。なぜ盲目的に神に仕えるのか。それはあなたが神エヒトに仕込まれた単なるプログラムでしかないのか。それとも……」

 

 

「フレイヤ以外の全ての神の使徒の素体とも言える……()()()()()の感情に引きずられているのか」

 

 その言葉を告げた時、部屋がエーアストの殺気で満ちた。即座に分解砲撃を神父に向けて放つ。

 

 そしてそれをまともに受けたにも関わらず無事な神父。エーアストはそれでも殺気を止めない。

 

「貴様……彼女のことをどこで知った!?」

「私は職業上、この世界の歴史に触れる機会が多数ありましてね。七人の光の使徒について調べているのですよ。そしてどうやらからかいすぎたようだ。安心してください。神エヒトは蘇りますよ。私にも望みがある。そのためには神の復活が必要不可欠なので」

 

 エーアストに近づき頭を撫でるように触れるとエーアストの意識にアクセスし、眠りへといざなう。他の使徒は感情がないのでつまらないが、彼女は別だ。実に弄りがいがある。神父はそう考えながら本格的な治療術式を彼女に施す。神父の計算では神結晶の魔力があれば数日で動けるようになる見込みだ。

 

「さて、エーアストの言葉にも一理ある。このまま神域に赴いても我が主は許してはくださらないでしょう。……帰るなら、それなりの手土産を持って帰らねば」

 

 神父は進化の壁にぶつかりつつある黒騎士を思う。あれがもう一歩進むためにはもう少し刺激を与えてやらなければならない。となると次の舞台は……

 

 

 神父は行動する。己の望みを叶えるために。

 

 黒い騎士を連れて。

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 ──殺せ──

 

 

 ドクン

 

 

 ──全てを滅ぼせ──

 

 

 ドクン

 

 

 ──奴の■■は一つ残らず消し去らなければならない──

 

 

 ドクン

 

 

 ──許さない。よくも、よくもやってくれたな!! ──

 

 

 ドクン

 

 ──躊躇う必要はない。奴の宇宙は存在していてはならない。さぁ、己の祈りを思いのまま()()()()──

 

 

ドクン

 

 

 

さぁ、全てを破壊しよう

 

 

 

 

「ッ! はぁ、はぁ、はぁ」

 

 そして、蓮弥は目を覚ました。

 

「ここは……ユナの教会?」

 

 蓮弥は少しずつ思い出していく。レギオン討伐の話を行い。思わぬユエの秘密を知った後、現状と今後のことだけを話し合い解散したが、妙な眠気に襲われて蓮弥は王宮の自室にて眠りについたのだ。

 

 となるとこの世界は蓮弥とユナの内界である教会の一室ということになる。

 

「俺は……ぐぅッ」

 

 思い出す記憶。

 

 大災害レギオンに取り込まれる寸前に行われた干渉。

 

 笑う女神。

 

 そして()()()()のままに広がろうとした感覚。

 

 全てを、全てを滅ぼせと血涙を流しながら己の内で叫ぶ■■■■。

 

 だがそれすらも……すべてあの女の掌の上にあり……

 

「ッッッ……ふざけやがってッ!」

 

 思い出した記憶は、屈辱の極みだった。それを受ける蓮弥の心は様々な感情で入り乱れていた。

 

 よりによって、あの女神の介入で救われたという事実からくる憎悪。己の無力さからくる悲憤。そして何よりも──

 

 

 己の渇望の果てに待つものの片鱗を知ったが故の……絶望。

 

 

「俺は……」

 

 どうすればいいのだろうか。

 

 流出位階の正体は知っていたが、それは知っているだけだ。知識で知っているのと体感するのでは天と地の差がある。そんなことはわかっていたはずなのに、ほんの刹那体感したそれは言葉にできない感覚だった。

 

 身体が震える。いや、この世界が内界なのだとしたら震えているのは魂だろう。

 

 己の運命が恐ろしかった。もし、あんなものを流出させるために呼び出されたのだとしたら。

 

 これ以上、この世界に存在してはならないのかもしれない。

 

「ユナ……雫……」

 

 愛しい二人の少女のことを思う。離れたくないし離したくない。だけど自分の側にいると傷つけるかもしれなくて。

 

「俺は……君たちの側にいていいのだろうか?」

 

 

 

「あたりまえじゃない」

「例え何が起きようとも、私達はずっと蓮弥の側にいます」

 

 ふと蓮弥は顔を上げる。そこには先ほどまで考えていた二人の少女。ユナと雫が立っていた。

 

「どうして……ユナはともかく雫がここに?」

「この世界は夢の世界に通じるところがあるわ。なら私でもアクセスできるわよ。幸い、蓮弥が寝てる間にコツは掴んだから、いつでも蓮弥の夢の中に入れるわ」

 

 どうやら邯鄲の夢とやらを使って蓮弥の内界にアクセスしたらしい。確かに言われてみれば現実の身体が眠っているならこの世界は夢の世界とも言えるだろう。

 

「それにしてもユナの懸念通りだったわね。蓮弥に自覚はなかったかもしれないけど、調子が悪そうだったし」

「蓮弥の魂はまだ消耗していましたし、完全回復にはまだ時間がかかると思います」

 

 どうやらまた心配をかけてしまったらしい。そう感じた蓮弥は申し訳なくなってくる。だがそんな蓮弥のことを気にせずユナと雫は蓮弥に迫る。

 

「ユナ、雫。どうしたんだ?」

「心を楽にしてください」

「私とユナは……蓮弥を慰めにきたのよ」

 

 そう言ってユナは両手で蓮弥の手を握り、背後に回った雫が蓮弥をそっと抱きしめる。

 

「蓮弥……話して」

「私達は、蓮弥の味方です」

 

 暖かい。ユナの手から清浄な気が流れてくるような感覚。そして全身を包まれる感触。

 

 冷え切っていた魂に熱が宿る。だからだろうか、蓮弥はできるなら見せたくなかった弱音を吐く気分にさせられる。

 

「……怖いんだ。俺は、レギオンとの戦いでほんの僅かだけど流出位階に触れた。知らなかったんだ。あんな、あんな恐ろしいものだったなんて」

 

 己が際限なく広がる感覚。同時に世界の全てを飲み込む感覚。

 

「俺の中にはまだ女神に対する怒りがある。憎悪がある。どうしようもない絶望がある。今回それに気づかされた。俺が概念破壊なんて力に目覚めたのもそれが起因なんだと思う。俺は何かを生み出す器じゃない。破壊することしかできない存在だ。だから……そんな奴がもし……」

 

 もし、流れ出してしまったら、何が起きてしまうのか。

 

 それが恐ろしくてたまらない。

 

「蓮弥……あなたの悩みはあなただけのものです。だから私達は真の意味でそれに共感することはできないのかもしれません」

「だけど一つだけわかってることがある。それはね。蓮弥が何も生み出せない破壊者じゃないってこと」

 

 そしてユナと雫は己の想いを語る。

 

「蓮弥が自罰を続ける私を連れ出してくれたから、今の私はあるんです」

「あなたがいたから、私は辛いことも乗り越えられた」

 

 だからどうか。どうか自分が何も生み出せない破壊者などと思わないでほしい。

 

 例え何があろうとも、蓮弥がどこへ行こうとも。自分達はあなたの側にいる。その想いが触れている場所から流れ込んでくる。

 

 この世界は魂の世界。よってそこでの接触は魂の逢瀬にほかならない。蓮弥の魂が二人の熱によって温められていく。

 

 蓮弥は思う。いつも愛しい恋人達は、自分を支えてくれる。

 

 正直恐怖が消えたわけじゃない。

 

 怒りが、憎しみが消えたわけじゃない。表面上に現れていなくても、おそらくその獣性は蓮弥の魂の奥底にいつだって潜んでいる。

 だけど同時に思い出したこともある。蓮弥が初めて創造を使ったあの日。蓮弥の起源から憎悪以外のナニカを感じたことを。

 だからもし、もしどこかで己の祈りを見つめ直す、そんな機会があるとしたら。もう少し自分の奥深くまで触れてみたいと思う。

 

 

 恐れはあるが、蓮弥は二人の少女の支えがあればどんなものにも立ち向かえる。

 

 そしてだからこそ、蓮弥はユナと雫を守ることができる。

 

 それだけは、決して揺るがない事実だと蓮弥は感じていた。

 

 

 

 

 此度の章はこれにて閉幕。

 

 これからはズレた筋書きを正すための舞台が続くがそれもまた一興。

 

 面白ければ何でもいいのだ。だからこそ彼らにはこんなところで潰れてもらっては困る。

 

 御都合主義の女神は、触れ合う三人の様子を伺いながら、次の舞台に想いを馳せる。

 




第五章完結。

長かった。とてつもなく長かった。

第四章の時と違って、原作沿いなんだからどんなに長くても年内には終わるだろうと思っていたのにまさかの連載半年越えという。

その間に無事連載百話と一周年を迎えることができました。改めて皆様の応援に感謝を。

第五章は創造に目覚めた蓮弥が神座らしからぬ無双ゲーを始めないために敵の魔改造がテーマの一つでした。それの代表が大災害。五章内で二体を滅ぼすことに成功しましたが、今後も関わってくる可能性は十分あり得ます。

さて、この大災害ですが本来ならもっとおとなしい奴らになる予定だったのですが途中で事情が変わりました。それは第五章執筆中に正田卿がまさかの復活。黒白のアヴェスターの連載が始まったことです。そこで描かれる私などとは格が違う本家正田卿の神座世界とインフレ。それに負けじと無意識に強化した結果、とんでもないことになってしまいました。途中で気づいて自重しなければ多分トータスは滅びていますね。

他にも恵里や檜山にスポットライトを当ててみたり、神の使徒エーアストにも事情があったり色々今後の仕込みも行っていたりします。もちろん神父の暗躍と黒騎士さんがどうなるのかにもご注目ください。特に黒騎士さんはアヴェスターの黒騎士さんに影響を受けている可能性ががが。

そして今回は味方サイドだったフレイヤ。蓮弥とはユナとも雫とも違う絆がある関係。決して甘い雰囲気ではないけれど殺伐としているだけでもないような空気感を目指してみたのですが狙いは上手くいったでしょうか。今後はどうなるのかにもご期待ください。

そして味方サイド。第五章のもう一つのテーマはハジメ達原作主人公の強化でした。以下個別評価。

ハジメ:今回単純な力の強化より錬成師としてのハジメを強化するように心がけました。本来錬成師は正面切ってバトルするような天職ではなく、ある意味戦艦レギオン戦で見せたような後方支援が本職なのかなと思っています。とはいえ力の強化がないとは言っていません。まだ神獣ジャバウォックもむしゃむしゃしてませんし、なによりハジメは原作ではなかった魔導式コンピュータ『ヘファイストス』を手に入れました。言ってみれば手作業でやっていた発明家が高性能なデバイスを手に入れたようなものなのできっと再び最前線で戦えるように色々開発するはず。今後のハジメの新アーティファクトにもご期待ください。

ユエ:強化モデルはネギまのエヴァンジェリンです。魔法使いとしての強化とインパクトと厨二を考えた上で強化した結果、変身できるようになった原作メインヒロインです。神ノ律法はまだまだ応用できますので新しいドレスを着たユエにもご期待ください。

シア:強化モデルは某野菜人。もしくはラーメンの具。肉弾戦を極めた結果、既に原作最終決戦レベルの戦闘力があるシアです。もはや一人だけドラゴンボールの世界にいるみたいな感じですがこれからも進化を続けるはずです。バグウサギの名は伊達じゃない。

香織:テーマは聖女と魔女。強化モデルはペルセフォネ。新しい服装のイメージはFF8のリノアです。
香織は強化を考えていて一番楽しかったかもしれない人物です。第五章前半はその影響でほぼ主役でしたし。特に彼女は連載当初からノイントボディ乗り換えイベントが起きない予定だったので素の肉体で最後までインフレについていくためにはどうすればいいのかと考えた結果、魔境地球の影響を受けてもらうことになりました。後は彼女の新魔法を考えるのはユエの魂殻霊装を考えるのと同じくらい楽しかったので今後も頑張って作っていきたい。

ティオ:真・竜化という技能を手にしたものの他のメンバーと比べたら地味なイメージですがそれもそのはず。実はティオの強化イベントはまだこれからです。彼女が自身の起源に出会う時、大きく変化を遂げることになるはず。それは第六章に行く前の幕間で済ませたいと思っているので近い内に公開できるはず。

他にも強化したキャラはいますが、詳しくは今後書く予定の設定集原作キャラ編をお楽しみに。

さて第六章ですが、ちょっとオリジナル展開に疲れたのとトータスからこのままだと死ぬから休ませてほしいとのクレームが来たので原点回帰という意味で最後以外は原作沿いを意識して書きたいと思います。もちろん細部では変わっていますし、敵も微妙に変わっているかもしれませんが、極力変化は起こさない予定。

ですがその前に例によって5.5章を書く予定です。内容は大災害レギオン戦でわざと開けていた空白期間を埋める話と第五章後での次なる冒険に向けた各キャラの準備など。ドラマCDのノリもやってみたいし、色々頭軽くして書いてみたいものが結構あります。

例によってちょっと連載再開まで期間があるかもしれませんが執筆意欲はありますので気長にお待ちください。

>蓮弥とユナと雫について。
この三人は第五章では絆を深めることをテーマに書いていました。ハジメ達と比べたら成長という意味では地味だったかもしれませんが、以前より親密になったと感じてくれていれば幸いです。

そして以下は今話のおまけです。





 蓮弥はユナと雫に温もりを与えられたからか心が温かくなったように思う。

「ありがとな二人とも、今夜は助かったよ。じゃあ、明日も予定があるし今日はもう寝るか。と言ってもここは夢の世界なわけなんだが」

 蓮弥はここが夢の世界に近い場所であることを思い出す。現実の肉体は寝ているかもしれないがこうして意識がはっきりしていると明日に支障が出るかもしれない。だからこそ休息の提案をした蓮弥だったのだが、なぜかユナと雫に呆れられた。

「蓮弥……もしかして本当にこのまま寝てしまうつもりなんですか?」
「……そうだけど?」
「ユナ。どうやら私達がここに来た意味を蓮弥は理解できてないみたいだから、ここは強引に進めましょう」
「そうですね」

 そう言ってユナと雫はおもむろに……自身の衣服に手をかけ始めた。

「!? ちょっと待て、ユナッ? 雫ッ?」

 蓮弥が突然服を脱ぎ出した二人に動揺するもユナと雫は手を止めない。あっという間に下着だけになってしまう。

 白と黒の下着姿のユナと雫という煽情的な光景に思わず蓮弥は息を飲む。

「言ったでしょ、蓮弥。私とユナは……蓮弥を慰めに来たって」
「蓮弥の魂はまだ安定していません。そしてこういう時、男性を慰めるために女性が取りえる一番の方法は……古来より決まっています。それに……ここなら邪魔は入りません」

 まるで問答無用と言わんばかりに残った下着を脱ぎ捨ててベッドの上に乗りあがった二人は、蓮弥を誘うような蠱惑的な目と表情をしていた。


 そして……



【R-18】ユナ&雫01 二人の淫魔

近日中に公開予定ですので一部の人はお楽しみに。

では

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