今回はグリューエン大迷宮の攻略です。とはいっても蓮弥達はおまけで試練と言う意味では三人だけが対象です。
グリューエン大火山。
それは、アンカジ公国より北方に進んだ先、約百キロメートルの位置に存在している。見た目は、直径約五キロメートル、標高千メートル程の巨石だ。普通の成層火山のような円錐状の山ではなく、いわゆる溶岩円頂丘のように平べったい形をしており、山というより巨大な丘と表現するほうが相応しい。
だがそれがどうしたと言うのだろう。ハジメパーティーにとっては既に通過した大迷宮がある場所であり、アンカジの風土病も特効薬が開発された今、静因石を過剰に取る必要がなくなった為、今後ますます需要が少なくなるであろう場所である。
だがそれもハジメパーティーに限る。途中でハジメ達と別れ、魂魄魔法の入手を優先した蓮弥達にとっては未だ未知の大迷宮と言えるだろう。
とはいえ、蓮弥達にとっても実はそれほど重要な大迷宮ではない。元々工程を飛ばして概念魔法の領域に足を踏み入れている蓮弥とユナにとって必ずしも攻略する必要がある大迷宮でない。しかもユナはユエとの修行により空間魔法を学習しているため、なおさら必要がない。
よってこれから行われるのは登竜門。未だこの世界の常識でとどまっている者達が、限界を一つ突破するための試練となる。
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蓮弥は王都の広場にて空間転移の準備を行っていた。転移先はアンカジ公国。グリューエン大火山の麓にある大国である。
ここで彼らがなぜ急にこのような行動を取ったのかというと、転移先のアンカジ公国の領主からある通信を受け取ったことに端を発する。
『グリューエン大火山の活動が沈静化した』
グリューエン大火山は、ハジメ達が攻略を行った際に遭遇したフリードにより、溶岩の噴火を抑える要石を破壊されたことで火山活動が活発化して大迷宮に入れなくなっていた。ハジメの予想では大迷宮には修復機能があり、いずれ攻略できるようになるだろうとの見込みだったが、どうやら想像していたより復活が早かったらしい。
ハジメの準備が整うのにまだ時間を要するということで、ハジメを待つ間、グリューエン大迷宮の攻略を行ってはどうかという話になり、蓮弥がせっかくだからとその意見に乗ったのが始まりだった。
「さて、これでいつでも行けるようになったわけだが……」
蓮弥は周りを見渡し、一緒に行くメンバーを確認する。
「ユナ、今回も頼りにしてるぞ」
「はい、任せてください」
まずはユナ。彼女は蓮弥と一心同体の存在に近しい間柄であり、彼女無しの活動など蓮弥にとってあり得ないと言ってもいい。加えて彼女の固有能力は大迷宮攻略に極めて役に立つ。今回もきっと大活躍してくれるに違いない。
「雫、準備はできてるか?」
「大丈夫よ。香織から話を聞いて予習してきたし、問題ないわ」
次に雫。彼女もまた蓮弥の相棒であり、この世界でもトップクラスの戦力と言えるだろう。雫と空間魔法の相性は未知数だが、ユナ曰く低くはないとのことなので習得して損はないだろう。
「案内は妾に任せよ。以前空間魔法を習得し損ねたからの。今度はしっかり習得して帰るのじゃ」
そしてティオ。前回グリューエン大迷宮の攻略一歩手前まで行き、おそらく攻略資格を持っていたが、諸々の事情で空間魔法を習得できなかったのだ。グリューエン大迷宮を一度攻略した上に、この大迷宮と相性がいいこともあり、攻略のための非常に有用な戦力だと言える。
そして……ここからのメンバーが真の大迷宮の初チャレンジとなる者達だ。
「優花……今から行く場所はオルクス大迷宮の表層とは難易度が違うわ。覚悟はできてる?」
「任せてよ。何のために雫と夢の中でまで修行してたと思ってるのよ。特訓の成果を試すいいチャンスだわ」
園部優花。今回真の大迷宮初チャレンジとなる彼女は雫に対して意気込んで見せた。王都でのレギオン襲撃の際に優花は雫の眷属となり、雫と共に邯鄲で修行していたと蓮弥は聞いていた。雫と夢の中で修行という慣れないことをしているからか、昼間は逆に眠そうにしている姿──雫から聞いたが、昼うたた寝をしても夢界で目覚めるだけらしい──を目撃している。そしてユナから見ても空間魔法の適正は高いとお墨付きをもらっており、本人もやる気十分だ。
そして……
「谷口……覚悟はいいか?」
「大丈夫だよ、藤澤君。私……絶対に神代魔法を手に入れて見せる!」
ある意味一番意気込みを見せている少女。谷口鈴が最後のメンバーとなる。彼女はこのグリューエン大迷宮攻略が決まった時、蓮弥にどうしても連れて行ってほしいと志願していた。
『私はもう一度恵里と話がしたい。だけど今の私じゃ恵里と顔を合わせることもできないッ。お願い、私にチャンスをください!』
その目に魂の祈りを見つけた蓮弥は悩みつつもその願いを聞き届けることにする。一応ハジメのフォローも受けられる他の大迷宮でもいいんじゃないかと聞いてみたが、鈴はどうやら以前フレイヤに空間魔法の適正があると言われて、ずっと手に入れたいと思っていたらしい。一応ユナにも確認してみたが、確かに鈴は空間魔法の適正が非常に高く、その資質は空間魔法に限るなら魔法の天才ユエを上回るとまで言っていた。同時に雫も……
『私の理屈で言えば、創法・界に特化してる珍しいタイプね。たぶん空間魔法を習得して極めれば、異界の創造とかもできるようになるんじゃないかしら』
などと一部蓮弥の領域すら侵しかねない、すさまじい才能持ちであることが発覚した。どうやら一分野に限るならユエを超える才能持ちもいることがわかり、ユエが「地球人……チートすぎる」とぼやいていたのが印象的だった。
「なあ、藤澤……やっぱり俺も、俺も連れて行ってほしい!」
そして間際になっても参加表明をし続けている男、天之河光輝の参加を蓮弥は認めなかった。
「だから何度も言ってるだろ天之河……お前、聖剣は直ったのか?」
「それは……だけどこの剣でも俺は十分戦えるはずだ。この世界で邪神と戦うためには神代魔法の力が必要なんだ。だから絶対に神代魔法を手に入れて見せる!」
光輝は以前檜山との戦いで聖剣を折られている。一度蓮弥に破壊された聖剣はなんとか修復できたものの、二度目の破損は流石に簡単には修復できなかった。正確には国家錬成師の手に負えないと断られたのだ。現状、聖剣を直せるのはただ一人。規格外の錬成師であるハジメだけである。
当然ハジメに直してもらうよう光輝は頼んだ。そして光輝の苦虫を噛み潰したような顔を少しだけ覗かせるような要請に対して、意外にも直すこと自体には積極的な意思を見せたハジメだったが……
『正直聖剣の仕組みには以前から興味があったから、直すこと自体はいずれやってやる。だけどな……お前、俺が今いくつの案件を抱えてると思ってんだ? フェルニルの開発に新兵器の開発。それに吉野と相談しながら王都の大結界の構造の改善。おまけに錬成師達の手伝いで王都の建物の修繕までやってんだぞ。聖剣の修理なんてやってる暇があるか! お前、まさか王都の大結界や建物の修繕より自分の聖剣を優先しろと言うんじゃないだろうな?』
という光輝が絶対にすぐに直せとは言えない理論武装をしたハジメに断られた。だからこそ今の光輝は、仕方なく以前ハジメに渡されたそれなりに強力な剣を使ってる。
「確かにお前も頑張ってるのは認めるけどな。今から行くのはオルクス大迷宮の表層とは難易度が違う大迷宮だ。この世界がゲームの世界で、勇者が教会で何度でも蘇生できるなら連れて行ってやってもいいが、死んだら終わりの世界で現状最強装備を失っている奴を連れて行っても、命の保証が出来ないし責任もとれない」
この世界がゲームの世界なら連れて行ってもいいがここは死んだら終わりの厳しい世界だ。香織の蘇生にも限度はあるし、蓮弥は大迷宮を甘く見ていない。仮に本来より大幅に攻撃力がダウンした光輝を庇いながら大迷宮攻略を行った場合、蓮弥達も思わぬ苦戦を強いられる危険がある上に、光輝は肝心の神代魔法を手にできない可能性が高い。だから光輝が何と言っても連れていくつもりはなかった。
一方、鈴がいるなら一緒に行きたいと言いそうな龍太郎は、ユナから空間魔法の適正がないと聞いて思ってたよりあっさり王都に残ることを決めていた。
『今の俺がついて行っても正直、谷口を守ってやれる余裕がなさそうだしな。それに……もう少しで壁を超えそうな気がするんだ。だから俺は王都で訓練を続ける!』
だからこっそり蓮弥に鈴を頼むと言い残し、龍太郎は厳しい訓練に戻っていった。どうやら何かを掴みかけているらしい。彼が前線で戦えるようになる日はもしかしたら遠くないかもしれない。
結局最後まで渋る光輝から離れるために、一同はアンカジ公国まで転移を行った。
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そして現在蓮弥達は、グリューエン大火山の前まで来ていた。
「……まるでラピュ○だな」
「ちょうどご主人様も蓮弥と同じことを言っておったぞ」
グリューエン大火山は、かの天空の城を包み込む巨大積乱雲のように、巨大な渦巻く砂嵐に包まれているのだ。その規模は、火山をすっぽりと覆って完全に姿を隠すほどで、砂嵐の竜巻というより流動する壁と行ったほうがしっくりくる。
しかもハジメ曰く、砂嵐の中にはサンドワームや他の魔物も多数潜んでおり、視界すら確保が難しい中で容赦なく奇襲を仕掛けてくるというのだ。
「以前はご主人様のアーティファクトがあったから楽に移動できたがの……蓮弥よ、どう乗り越えるつもりじゃ?」
以前ハジメ達が攻略する際には四輪車であるブリーゼにて突破したが、蓮弥は所有していない。二輪であるヴァナルガンドでは攻略が難しいしこのメンバーを連れていけない。だが、蓮弥には蓮弥のやり方がある。
「問題ない。ユナ……」
ユナを聖遺物に戻し創造を発動。神滅剣を砂嵐の手前に突き刺し、その力を行使する。
「──『砂嵐』を破壊する──」
蓮弥がその力を行使した瞬間、砂嵐は痕跡一つ残すことなく消滅し、雲一つない青空が大火山周辺に広がった。
「最近概念破壊が効かないやつらばっかりだったからな。まともに通じて良かった」
大災害という規格外を相手にし続けた蓮弥もこの結果には満足だ。本来概念破壊能力は破格の能力なのを思い出させてくれる。
「だけどここからは同じことはできない。概念を破壊した結果、どうなるのか想像できないことはあまりしたくはないからな。火山熱は自力で何とかするしかないと思ってくれ」
「あんまり蓮弥に頼りすぎても意味ないしね。みんな、気合を入れて行きましょうか!」
「そうね!」
「頑張るよ!」
蓮弥の忠告を聞きながら雫、優花、鈴がすっかり見通しの良くなった山道をまるでピクニックに挑むように軽快に歩み始める。
「…………」
ティオだけが、その光景を少しだけ複雑そうに見ていた。
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「聖絶・纏」
「これは……涼しい」
「へぇ~、鈴。いつの間こんなに便利な結界を……すごいじゃない!」
結界を各人に纏わせた鈴に対して、優花と雫が賞賛する。
「素晴らしいですね。結界を必要最小限に展開することで魔力消費を削減。さらに耐熱、耐寒、耐物理、耐魔力まで備えているとは。才能もそうですが、すさまじい努力が垣間見えます。いささか強度が物足りませんが、魔力操作を始めとした訓練を日々行えばどんどん成長していくでしょう」
「えへへ。そうかな~」
「油断するなよ、谷口。魔力消費量を抑えているとはいえ、長時間展開は辛いだろう。魔力ならいくらでも分けられるけど集中力を始めとした精神力の方はそうはいかない。この試練は集中力が課題らしいから頑張れよ」
「…………」
グリューエン大迷宮のコンセプトの一つは熱に耐えることだと考えていた。そう思うほどこの大火山の熱は厳しい。竜人族であるがゆえに熱に耐性があるティオはそうでもないが、ハジメ達は熱対策をありったけ行っても中々厳しい状態であり、相当苦労していた。
もう一度言おう。相当苦労していたのだ。
「鈴の結界のおかげで快適ですね。あっ、雫。そこからマグマが噴き出すので止まってください。優花は右斜め二時の方角から出現するコウモリを撃ち落としてください」
「了解よ」
壁から噴き出てくるマグマは基本ランダムなのだ。ハジメ達はハジメの熱源感知を頼りに恐る恐る進んでいくことで対処していたが、当たり前のようにこの大迷宮のシステムを掌握したユナにとって見えるトラップでしかない。出てくる魔物もタイミングもわかるので、出てきた瞬間優花に撃ち落とされる。ちなみにここに来るまでに現れた牛は蓮弥が一撃で倒した。
「…………」
「どうやらこの大迷宮の製作者は真面目な性格だったようだな。真面目だからこそ構造が丁寧だ。なら……ユナの独壇場だな」
「ええ、変にひねった部分がない分、掌握は割と簡単でした。あっ、雫。そこの壁を斬ってください。ショートカットできそうです」
「わかったわ」
雫が壁をあっさり斬り裂き、そこにできた道を行く一行。
そこで、ティオが限界を迎えた。
「ちょっと待てお主等!」
「ん? どうしたティオ」
「何か気になることでもありますか?」
「いやなんというかお主等。いささかズル過ぎぬか?」
「いや……そんなことを言われても」
ティオとしては一回攻略したこともあり、色々アドバイスしながら進むつもりだったのだ。だが、蓋を開けてみれば熱対策は結界師である鈴の結界で完璧。迷宮の仕組みはユナが掌握済み。空中に出てくる敵は優花が撃ち落とし、地上の敵は蓮弥と雫が一撃で倒す。
はっきり言うならティオは今のところ何もしていない。放置プレイは喜ぶべきところだが……放置プレイに喜んでいては攻略したことにならないかもしれない。
「いや、ティオさん。私は結構辛いんだけど」
「私はまだ大丈夫かな。適当に魔物を撃ち落としてるだけだし」
ユナの指示で七耀を放って魔物を撃ち落としているだけの優花はともかく、結界を維持するのに精神をすり減らしている鈴はもっともなことを言う。コンセプト的に集中力を保つのも試練の一つなのでこれも立派な戦いだ。だからこそ鈴は油断なく結界を維持し続けているが……いささか大迷宮に慣れ始めている蓮弥とユナ、雫は余裕が見えるような気がする。
「あー。それはな。多分この感じだとグリューエン大迷宮は他の大迷宮より難易度が低い。だから高難易度ダンジョンを先に攻略したせいで楽になっている感じだな。ハジメ達だって今この大迷宮に挑戦したらもっと楽に突破できるんじゃないか」
大迷宮の難易度で言えばおそらくこのグリューエン大迷宮は低い部類に入るだろう。途中までとはいえ真の大迷宮に入って生還することができる冒険者がそれなりにいるのが証拠だ。他の大迷宮だと真の大迷宮に入ることすら出来ないか、入れても攻略できなければ出てこれないパターンが多い。
ハジメ達が苦戦したのは当時のレベルが低かったからとしか言いようがない。今なら話は違うはずだ。今のハジメならもっと熱に有効なアーティファクトを作れるだろうし、ユエは炎の魂殻霊装を身に纏えば熱に対する完全耐性を得られるし、シアも蓮華を纏えば平気だろう。
(どうやら思ったより簡単に攻略できそうだな)
だからこそ蓮弥はこの大迷宮が初チャレンジの優花と鈴に気をかけることにする。蓮弥達にとって大したことではなくても二人にとって高難易度であることは間違いないのだ。何かあった時対処できるようにしなくてはならない。
油断は禁物。この世界は、何が起きるか分からないのだから。
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蓮弥達がいるグリューエン大火山の深淵。
かつてハジメ達が攻略した解放者の住処でもある最後の試練がある場所よりもなお深い場所。
おそらく解放者達ですら把握していないであろう深淵でそれは目覚めた。
それは遥かな太古から眠り続けていた。特に意味はない。単にやることがなかったがゆえに少々居眠りをしていただけなのだ。
だがそれでも数万年以上眠り続けていたそれが目覚めたのには理由がある。
少し前から色々な意味で鈍いそれが感知できるほどの超魔力の激突が世界規模で繰り返されたからだ。
『ふむ。いったいどれほど我は眠っておったのか。……ほう、いささか地上の様子は様変わりしたらしい』
それは少しだけ目を開けて”外”を覗き見る。寝ぼけ眼でいささか曇っていようとも自分がいる場所から半径数百㎞くらいならいつでも見ることは可能だ。そしてその結果、外の様子がそれの知っている様と随分変わっていることを知り、どうやら自分が相当長い年月眠っていたことに気付く。
それはただ目を開けたに過ぎない。長い間眠っていた存在が眠りから覚めて行う当然の動作。
だが、そのわずかな動作で……
西の大陸に地震が発生した。
震度で言えば大したことはないだろう。地震大国日本に暮らしてるなら、無視してもおかしくない程度の代物。
だから問題は、これが
目覚めた存在。一言でいうなら……それは龍だった。
大きさはわからない。だが開いた目だけで空を覆い尽くすであろう巨体であるのは間違いない。
その龍の目覚めにより、それの”心臓”も動き出す。
ドクン、ドクン、ドクン。
その動きと共に生成される無限を思わせる魔力。ほとんどは龍の体内に巡ることになるが、そのほんの一部は外部に漏れ出ることになる。
たった、たったそれだけで……大迷宮に存在する全ての魔物が恐怖を覚えた。
それが存在していた時代から生きているものなどいないが、それは受け継がれた魂に刻み込まれている原初の記憶。
『何やら騒がせてしもうたか。やれやれ、我が動くだけでこれとは情けない。どうやらいささか寝すぎたらしい。……うん?』
それが何かを見つけた。自分がいる場所から少し上の部分に自身に連なる何かの気配を感知した。
『ほう、これは…………
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かつて、エヒト神の創世神話において、大災害を含めた様々な困難を解決してきた様子が描かれているが、ただ一つのエピソードにおいて、明確にエヒトが敗走したことを伝えているものがある。
いや正確に言えば敗走したわけではない。エヒトはその存在を見て戦わずに逃げ出したのだ。もちろん逃げ出したなどという書き方をされているわけではないが、深く読み解くならそれに近い状況であったとわかるだろう。
エヒトはそれと相対した時、こう思った。
これはどうにもならない。そもそも戦うという発想がズレていると。
故にその龍が深き眠りについた時、その上に大火山を生み出し蓋をしたのだと言う。決して眠りが不快にならないように穏やかで暖かい豊潤な魔力を流し、眠りを促した。できれば二度と目覚めぬようにと。
七大災害中、純粋な戦闘力で競うなら、間違いなくこいつこそが最強であろう。
悪食のような再生力や大洪水の権能、獄蛇のような魔素を喰らい成長する能力。そして群体のような不滅の概念などの際立った特別な能力を持っているわけではないが、この龍は……ただ質量の桁が違うというだけで最強の座に位置している。
火山の奥深くに生息し、眠り続ける太古の魔龍。
名付けられた名は大災害『紅蓮』
古代の竜の民からは龍神と祀られ、エヒト教では魔龍とされている。
ありとあらゆる生物の頂点に位置する、この世界最強の生物である。
紅蓮 イメージCV:ピーター(DODのアンヘルとかニーアのシロ)
七大災害に数えられる巨大な龍。かつて存在した竜の民からは龍神として祀られていたが現在では滅びていると伝えられている存在。
こいつの戦闘力は戦神館でいうなら百鬼空亡と互角。最新の神座設定でいうなら星霊に近い存在でカイホスルーとかマシュヤーナクラスの化物だと思ってください。現状の蓮弥達では戦闘になったら即ゲームオーバー。幸いなことに七大災害中こいつだけが知性と理性を持ってる上に比較的温厚で対話が可能であると言うところか。
紅蓮『ふわー良く寝た。さて外の様子はどうなっておるのかの』
魔物A『ぎゃああああああ!! 龍神が目を覚ましたぁぁぁ!!』
魔物B『やめろぉぉ。勝てるわけがないぃぃ。あいつは伝説の龍神なんだぞ』
トータス『もう駄目だぁ……おしまいだぁ……(ガクガク)』
紅蓮『……そんなに怯えずともよかろう(´·ω·`)』
紅蓮『む、何やら親戚の孫が遊びに来ておるようじゃな。どれ久しぶりに老骨の話相手でもしてもらおうかの』
暴れ始めたら即世界終了。
次回、世界の命運はティオの手に。