ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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ようやくハジメが蓮弥がやらかしたことを知ったようです。というわけでハジメのガチギレによる戦争勃発です。


ハジメての大喧嘩

「てめぇぇぇぇぇぇ──ッ、蓮弥ぁぁぁぁ──ッッ!! 表に出ろ戦争だぁぁぁぁ──ッッ!! ぶっ殺してやるぅぅぅぅ──ッッ!!!!」

 

 帝国滞在二日目の昼時。それは唐突に起こった。

 

 帝城にて用意された昼食に舌鼓を打っていた蓮弥達のところへ威圧をまき散らしながらハジメが爆走してきたのだ。

 

「ああ、これは……どうやらとうとうバレたらしいな」

 

 蓮弥が言うバレたとは、先日の帝都で起こった仮面野郎の珍事件に関してである。

 

 そして帝城に威圧をバラ巻き、無駄な混乱を起こしながら食堂の大扉が粉みじんに吹き飛んだ。そこで現れるのはこれ以上ないくらい目が吊り上がった修羅の表情をしたハジメの姿。歓迎するのは蓮弥と雫。ユナは食事に夢中だ。

 

「よう、おはよう、ハジメ(First)

「おはよう南雲(SouthCloud)君。ここは食堂よ。いくら帝国が蛮族の国だからと言って、食事中くらいは静かにするべきだと思うわ」

「副音声丸聞こえだぞ、てめぇらぁぁ!! なぁぁぁにぃぃがぁぁぁ──ッッ!! サウスクラウドだ!! なぁぁぁにぃぃがぁぁぁ──ッッ!! ファーストだぁぁぁ!! てめぇらのせいで帝都中にサウスクラウドのファーストが変態だって噂が広まってるじゃねぇかぁぁぁぁ──ッッ!!!!」

 

 あの日、蓮弥達は派手に暴れた。

 

 

 暴れて暴れて、散々暴れて……帝国中を騒がせた後に司令官ブラックが告げたのがこれだ。

 

『覚えておくがいい。我らは……”SouthCloud(南雲)”、そして私は……”First(ハジメ)”だ!!』

 

 そう、告げて去っていったのだ。

 

 

 その結果、朝の帝都ギルドにて

 

 

『今帝都で一番の話題? はっ、お兄さんもぐりか。そんなの決まってる。”SouthCloud(南雲)”の”First(ハジメ)”だよ』

『”SouthCloud(南雲)”の”First(ハジメ)”は無駄のない無駄な動きをする無駄に速い変態だZE♪』

『ああ、”First(ハジメ)”は間違いなくド変態だったな。あの変態機動は恥を捨ててなきゃできないぜ。HAHAHAHA──ッッ♪』

『”SouthCloud(南雲)”の”First(ハジメ)”……正直何をやりたいのか意味わからなくてきもすぎワロタww』

『そういえば”SouthCloud”ってどういう意味なんだ? ”First”って言葉も聞いたことないし』

『噂だとその謎を解き明かしたら”First”の正体がわかるらしいぞ』

『マジかよ。誰か特定よろ──』

『ま、あれだけ帝国をおちょくったんだ。しばらく帝都の話題は独占だろうから地道に特定作業していくかww』

『俺、”First(ハジメ)”が起こしたらしい珍事件の情報入手した』

『マジかww 詳しくww』

『wwww』

 

 この通り、ギルドはおろか、帝都中で帝国を騒がしたド級の変質者SouthCloud(南雲)の”First(ハジメ)”は話題の人物であった。

 

 その事実をようやく認識したハジメが、周囲を威圧で昏倒させながら呑気に昼食を食べている蓮弥のところへ全力ダッシュして今に至る。

 

 ~~~~~~~~~~

 

「あの……正直私はハジメさんが何であんなに怒ってるのかわからないんですが……」

 

 シアが猛然と蓮弥に怒気をまき散らしながら迫るハジメを横目に、雫にハジメが怒っている原因について聞く。見ればユエやティオなどの異世界組はみんなわかっていないらしい。

 

「そうね……その前にちょっと質問なんだけど、あなた達”SouthCloud”と”First”って言葉を聞いてどう思う?」

「ん……聞いたことない言葉?」

「妾も聞いたことがないのじゃ……もしやそちらの世界の言葉かの?」

「うーん。そうね……私達の国とは違う国の言葉でアレを私達の言葉にすると南雲君の名前になるってやつなんだけど……そういえば今気になったんだけど、みんなって当たり前のように言葉が通じてるけど、どんな言語で喋っているの?」

 

 どうやら英語が伝わっていないらしいと気づき、雫がこの世界の言語に興味を持つ。雫達地球人は、『言語理解』の技能のおかげでこの世界の言葉は自動的に母国語である日本語に変換されて聞こえるわけだが、『言語理解』を持っていないユエ達は生まれた時代も種族も違うのにあたりまえのように会話をしている。種族ごとに言葉が違っても不思議ではないにも関わらずだ。

 

「そうじゃの。昔は違う言語で喋っていた時代もあったそうじゃが、エヒト教が勢力を広げた段階で言語は統一されとるよ。それは人族と魔人族も変わらぬ。もっとも地域によって独自の訛りのようなものはあるし、新古の概念は当然あるんじゃが……現に妾の言葉には少し古語が混じっておるしの」

 

 一応賢者であるティオが言語体系について説明してくれる。どうやらティオの言葉が雫達にとって古めかしく感じるのにも意味があったらしい。おそらく言語理解がある限り縁の無い話なのだろうが、考古学が好きな蓮弥なら古い言葉なんかにも反応するかもしれない。

 

「そういえば言語理解で読めない本があったわね。エヒトに与えられた技能ならエヒト教以降の言葉しかわからないということかしら」

 

 雫はダニエル神父が持っていた本を思い出す。今思い返せばなぜそんなものを読める人が普通の神父だと思っていたのか。

 

 そしてそうこうしている内に話は佳境に入ったらしい。

 

「おい、ハジメ。そもそもあのダサい仮面を押し付けたのはお前だろ? それなのにジョークもわからないのか? 大体お前の恥ずかしい過去に比べたらあってないみたいなもんだろ。軽く聞き流すぐらいしたらどうだ?」

「ああ? 物には限度っていうものがあるだろ。それとさっきからてめぇいつまで上からもの言ってんだ。俺がいつまでもお前の後塵に拝してるとでも思ってるのか? お前みたいな女顔の女々しい奴なんてとっくに越えてるわボケッ!」

「あ? 顔と強さは関係ないだろ、ダサい眼帯付けた厨二野郎。相変わらず『俺は魔王より強い(キリッ)』とか俺TUEEE主人公みたいなこと言ってんのか?」

「あ?」

「あ?」

 

 蓮弥とハジメがお互い威嚇し合う。それだけで溢れ出す魔力が帝城に広がっており、何事かと帝国兵が集まってくるが威圧で近づくこともできない。

 

「おい、お前ら……一体何の騒ぎだ?」

「へ、陛下。それが……食堂で例の奴らが……」

「ああ、道理で感じたこともないでかい魔力だと思ったぜ。おい! お前ら!! 喧嘩するなら闘技場でやれや! ここは帝国。問題が起これば決闘で解決するのがルールだ」

「ちょ……陛下! 今は闘技場は例の魔人族騒ぎで運営していませんが……」

「構わねぇよ。あいつらの力を見るいい機会だ。ガンガンやらせろや」

 

 皇帝ガハルドが豪快に笑って闘技場の使用許可を出す。

 

「おい、ハジメ。どうやらお前の死に場所が決まったらしいぞ」

「上等だ。一応聞いてやるが一対一の決闘で、まさかとは思うがユナを連れてこないだろうな? 女々しい女顔の蓮弥ちゃん?」

「はっ、お前程度捻り潰すのにユナの助けなんているか。せいぜい沈む前に黒歴史抹消だけはやっとけよ、破軍の奇禍(カオス・ディザスター)(笑)」

 

 

 死闘が……今始まる。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ヘルシャー帝国が誇る大陸最大規模の闘技場は、普段は年に何度も種類の違う催しがなされており、大いに盛り上がっている。

 

 だがその常に活気であふれている闘技場は今、異様な雰囲気に包まれていた。

 

 対峙するのは二人。片方は武装親衛隊に似た軍服を着た黒髪の少年。片方は黒いインナーに黒コートという黒ずくめの白髪眼帯の少年。

 

 闘技場に通うようになるにはいささか若すぎる年齢の二人だが、その場に相応しくないかと言えばそうではない。それは二人が向け合っている威圧が物語っている。二人の威圧がぶつかり、この世界を一種の異界に変えるようだった。

 

 現在闘技場には一般の観客はいない。いるのはハジメパーティー、蓮弥パーティー、そして観測機を持ち出している吉野真央、そしてこの国の皇帝ガハルド・D・ヘルシャーだ。光輝達にはまだこの異界は早いと外で観戦して貰っている。

 

「真央は大丈夫なの? 隣の皇帝(コレ)は正直どうなってもいいけど、非戦闘要員である真央には厳しいんじゃ……」

「ご心配なく、これでもそこそこの修羅場は超えてるし、この程度の威圧なら慣れてるから。それに南雲に観測を依頼されたしね」

 

 何気に皇帝が雫にdisられているがどうやら雫は先日のやり取りでよっぽど皇帝が嫌いになったらしい。幼馴染がこれほど他人を嫌いになるのなんて珍しいと香織は少し驚いているくらいだ。

 

「つれねぇじゃねーか、雫。こういうのはもっと楽しんで観戦しなきゃ損だぜ」

 

 そう言ってガハルドは雫の肩に手を伸ばそうとするが、手首辺りがヒヤリとしたので引っ込める。

 

「言っておくけど……もし私に指一本でも触れたら、触れた手を斬り落とすから」

「わかったわかった。たく、マジで殺気だけでこれか……雫も以前戦った時とは別人だな」

「雫、始まります」

 

 雫の隣に座っているユナがそろそろ戦いが始まりそうだと雫に伝える。

 

 この闘技場には鐘が備えられており、試合開始になると鳴る仕組みになっている。後時計の針が一周するころには死闘が始まる。

 

「どっちが勝つと思います? ユエさん」

「残念ながら蓮弥……と言いたいけどユナは此処にいるから……ハジメが勝つ可能性はあるかも」

「それにご主人様も少し衣装を変えたのかの。もしかしたら何か秘策があるのかもしれぬな」

「それにジャバウォックの魔力を手に入れてハジメ君の基礎能力も上がってるしね」

 

 ユエ達が伝え聞いているのは、蓮弥はユナがいないと無尽蔵の魔力供給を受けられず、創造……ユエ達でいう概念魔法が使えなくなるということだ。その条件ならハジメでも勝ち目があるように思えてくる。

 

「あなた達、始まるわよ」

 

 真央が観測機を動かし、固唾を飲んで見守る。

 

 そして、鐘の音が鳴り響く瞬間。

 

 

 ハジメが動いた。

 

 目にも止まらぬ速さでドンナー・シュラークを抜き、両銃を連射した。

 

 

 電磁加速された銃弾が爆音を響かせながら蓮弥に迫る。もちろん全ての弾丸は『霊的装甲貫通弾(ソウルアーマーピアス)』という特殊弾頭だ。これで蓮弥の霊的装甲にも対応できる。

 

 だが蓮弥は、音速の三倍の速度で迫る無数の弾丸を全て躱す。

 

 

 霊的装甲対策ができたくらいで攻略できるほど聖遺物の使徒は甘くない。速さに特化した使徒なら活動(レベル1)第二宇宙速度(マッハ32.6)を超える速度を出せるのが彼らであり、速度に特化していない蓮弥でも、音速の十倍以上の速度で動くことは十分可能である。

 それに対応できる超感覚も備えているため、電磁加速弾も視認してから避けられる。

 

 ハジメも連射を行い追従するが掠りもしていない。そしてついに蓮弥の姿が消え、ハジメの背後に現れる。

 

 見える人にはハジメが巨大な”手”で掴まれようとしているのがわかるだろう。このまま”手”に掴まるかと見える人は思ったが……今度はハジメが消え、蓮弥の横に現れる。

 

 どうやら少し動揺を見せた蓮弥の隙を付くようにハジメが蓮弥のこめかみに当てたドンナーをゼロ距離でぶっ放す。それを無理な体勢で避けながら一瞬で数十メートル後方に跳んだ蓮弥だったが、ピッタリ追い付くハジメ。

 

 ハジメの服をよく見ると服の一部に赤い線が走っている。その状態でハジメが黒く変色した右拳を握りしめ……蓮弥に拳を思いっきりたたきつけた。

 

 そのまま蓮弥は闘技場の壁を突き破り、市街地の方まで建物を巻き込みながら亜音速の速度で吹っ飛んでいく。

 

「どうやらファーストアタックを決めたのは南雲みたいね」

「えっ、今、ハジメさん。もしかして”限界突破”を使いました?」

 

 シアが疑問に思っているのは蓮弥の”手”を避けた辺りだ。シアの認識ではハジメの身体能力であの速度を出すには限界突破が必要だったはずだ。だが何か知っているらしき真央は不敵に笑う。

 

「いいえ、使ってないわ。だけどもちろん種も仕掛けもある。秘策があるかですって? そんなもの……もちろんあるに決まってるじゃない。よく見ておきなさい。これから先の戦いを生き抜くために考案した南雲ハジメの……新しい戦闘スタイルを!」

 

 真央の言葉に引き続き一同は既に闘技場を飛び出したハジメを観測アーティファクトで観戦し始める。

 

 どうやら一波乱あると期待を胸にして。

 

 

 ~~~~~~~~~~

 

(良しッ、まずは決まったな)

 

 ハジメは準備を進めつつ先ほどまでのやり取りを振り返る。

 

 試合開始直後、ハジメがドンナー・シュラークを抜いて連射したのが開戦の狼煙だった。奈落の底にいた頃からの相棒であり、数多の敵がその弾速ゆえに何が起こったかもわからず散っていった超高速クイックドローによる電磁加速弾も蓮弥には通用しなかった。

 

 これは想定内だった。そもそも平気で音速の十倍以上で動ける規格外の化物相手にはドンナーではもはや力不足だ。今回の戦いでドンナー・シュラークの役目はもう終わったと思っていい。

 

 その後、ドンナー・シュラークの弾切れの瞬間、蓮弥がハジメの視界から消えた。

 

 背筋に悪寒が走り、自分が危険に晒されているのに気づいた時、ハジメは冷静に今回の戦いの切り札その1を作動させた。

 

()()()()()……思考超加速(ブレインバースト)──開始(スタート)

 

 ハジメの首につけられたチョーカー型アーティファクトが駆動し、視界が超スローになる。瞬光状態より処理能力が上がった脳でもう一つの切り札を駆動し、危機を避ける。

 

「!?」

「舐めんな!」

 

 どうやらここまで簡単に逃げられるとは思われてなかったとわかる反応を返されたので、その代償を払ってもらうつもりでゼロ距離でドンナーを蓮弥のこめかみに打ち込む。

 

 流石の蓮弥もゼロ距離はまずいと思ったのか不自然な体勢で避け、一瞬で距離を取る。

 

(逃がすか!)

 

 ハジメは身体に力を、魔力を籠める。それに応えるようにハジメの衣服の紅い回路のような模様が光る。

 

 身体能力強化アーティファクト『魔人の鎧(フォースアーマー)

 

 以前はハジメが要求するレベルまで出力を上げると、身体の反動が強すぎて使いこなせなかった身体強化系のアーティファクトだったが、ジャバウォックの魔力を取り込んだことで大幅に上がった耐久と技能で耐える。

 

 技能”鋼纏衣”

 

 文字通り皮膚を高密度炭素構造で覆うことで鋼のように硬くする技能。ジャバウォックの頑丈さの秘密だ。

 

 そして拳に魂魄魔法を纏い、蓮弥を吹き飛ばしたのだ。

 

「さて、問題は此処からだ……」

 

 吹き飛ばされた蓮弥を追うハジメだがいきなり巨大な魔力が崩壊した市街地から発せられた。

 

 

「──Yetzirah(形成)──」

 

 

 蓮弥の気配が変化する。今までのようなスカスカの気配じゃない。ハジメはようやく蓮弥が本気になったのだと知る。

 

「なら、行くぞ。俺もここからが本番だ!!」

 

 そう啖呵を切ったハジメは体勢を整えて向かってくる蓮弥を前に、まるで祈るように手を合わせた。

 

 ~~~~~~~~~

 

 ファーストアタックを受けた蓮弥は、即座に傷を治すと魔力を増大させて、位階を『活動』から『形成』に上げる。

 

(以前までのハジメなら活動で十分対応できた)

 

 聖遺物の使徒は位階が上がるごとに大幅に強化されるが、当然下位の位階の力も強化される。強者の『活動(レベル1)』は、弱者の『形成(レベル2)』を圧倒する。その理屈で奈落の底にいた頃より大幅に強化された活動形態なら限界突破未使用のハジメを圧倒できるはずだった。

 

 だが、初戦の小競り合いは蓮弥の負けで終わった。ハジメの能力は蓮弥が思っていた以上に上がっていたのだ。

 

(なら、もう容赦する必要はない!!)

 

 形成によってさらに上がった身体能力で圧倒する。蓮弥はまず相手の出方を見るために真正面から突っ込む。

 

 蓮弥の超高速移動だけで周囲の建物のいくつがが吹き飛ぶが、そんなもの気にせず蓮弥は動きを止めない。

 

 このまま蓮弥がハジメを強襲する。そう思った瞬間、ハジメが手を合わせ……

 

 蓮弥の周りにある建物すべてが武器となり蓮弥を襲い始めた。

 

「!?」

 

 流石に少し驚く。それはハジメとの間に出来た壁であり、建物から生えた石の腕であり、地面から高速で伸びる槍群だった。しかもよく見ればすべて魂魄魔法による補装がされている。

 

 無視するわけにもいかず蓮弥は十字剣にて高速で迫る石腕を斬り落とし、槍を踏み砕き、石の壁を突き抜ける。そして再びハジメを視認した蓮弥だったが、再びハジメが手を合わせると建物から石の鞭が飛び出し蓮弥の足に絡みつく。

 

「くっ、こいつ!」

 

 すぐに切断するが、直後に蓮弥はその場から跳び引く。

 

 すぐそばにハジメの()()()()()()()()()()シュラーゲンによる超電磁加速された弾丸が飛来する。マッハ十以上の速度で迫る弾丸は蓮弥でも簡単に避けられない。

 

「だけど、そいつは連射が効かない!」

 

 蓮弥はギリギリ弾丸を避けた後、すぐに体勢を整え、シュラーゲンを撃って硬直しているであろうハジメを狙おうとして……

 

()()()()()()()()()()()()()()()()メツェライによる集中砲火を受けた。

 

 迫る弾丸の雨を剣で切り払うことで離脱するが流石にとっさの雨は全て躱せない。負ったダメージを再生しつつ蓮弥は考える。

 

(いつの間に武装を切り替えた?)

 

 そう考えている内に今度は左腕の装備がオルカンに代わっており、空中に浮かぶ蓮弥を多種多様な軌道と速度でミサイルが狙い撃つ。

 

 蓮弥がミサイルを撃ち払おうとした瞬間、再び建物一つ分の石腕が蓮弥を襲う。

 

 以前より数十倍速い速度で生成される石腕が蓮弥を掴もうとするので蓮弥は斬り捨てるが、狙ったタイミングで飛来するミサイルに対処できなくなりいくつか被弾する。

 

(錬成速度も規模も桁が違う)

 

 蓮弥は強引に突破することを選ぶ。再びメツェライで攻撃されるが、それを大きく旋回して避ける。そしてすぐに切り替わったオルカンで囲まれるように攻撃され、動きが止まったところをシュラーゲンで狙撃される。

 

 武器の切り替えるタイミングが蓮弥には掴めない。音速領域で戦闘している最中、ハジメの武器が瞬き以下の速度で切り替わるのだ。それぞれの武器で有効な対処方法が異なるために、反応がどうしても遅れてしまう。合間に錬成される構造物も厄介極まりない。

 

(錬成?)

 

 蓮弥は気づく。ハジメの周辺に浮かんでいるクロスビットが何もしていないことを。そして武器が変わるたびに浮いているクロスビットが変わる。

 

(まさか!?)

 

聖術(マギア)4章1節(4 : 1)……"雷光"

 

 蓮弥は雷を放ち、ハジメではなく周囲に浮かぶクロスビットを破壊する。

 

「ッ……」

 

 ハジメが後方に下がるのを蓮弥は見逃さない。今のハジメに距離を取らせては駄目だと気づいた蓮弥はハジメをここで仕留めるつもりで迫る。

 

 ハジメが手を合わせると左腕が変化する。そして……蓮弥の第六感が緊急回避行動を取らせた。

 

 ハジメの左掌が光を放つ。それは文字通り光速で蓮弥の肩を撃ち抜き、同時にその勢いで帝城の上段部を切断する。

 

(光学レーザー兵器!?)

 

 今まで見たこともない武器を使われ、思わず蓮弥は上空に飛び上がる。そして今度は()()()()()()()()()が蓮弥を押しつぶす。

 

(重力!? いや、これは……空気か!?)

 

 それに気づいた時には既に遅く。蓮弥の元にハジメの左腕に装着されたスターズによる焼夷弾が撃ち込まれ……

 

 

()()()()()超高密度の可燃空気が空中で大爆発を起こした。

 

 

 ~~~~~~~~~~

 

 南雲ハジメは気づいていた。今の自分の戦闘スタイルではいずれ限界が来ると。

 

 気付いた要因はいくつかあるが、最も大きな要因は仲間達の劇的なパワーアップにあるだろう。

 

 例えば身体能力。ハジメは魔物喰いという禁忌に手を伸ばすことによりトータス基準で規格外の魔力と身体能力を手に入れたが、インフレの波がハジメの絶対性を無効にした。

 

 純粋な身体能力数値で近似値を取られると今度は技術的な面での戦いになる。例えば一度ハジメは雫と稽古をしたことがあるが、素手での戦いだと何もわからないままくるくる回されているだけの結果に終わった。

 既にバグウサギを超えたバグウサギになりつつあるシアなどはもはや限界突破を使わなければ追い付けない。

 最近ではめきめき成長を続ける龍太郎も侮れなくなってきた。

 

 つまりハジメの身体能力は後付けで手に入れたものでリードしていたに過ぎず、雫達と違って、生来の南雲ハジメが持っている格闘センスも身体的素質も大したことがないことを自覚せざる得なかった。

 

 なら主武装として使用している銃火器はどうかと言われれば、今度は園部優花が立ちはだかる。

 

 王都にいた頃にハジメのアーティファクトを他人が使った際のデータを取るという目的で優花にドンナーを始めとした各種銃火器を試してもらったのだが……

 

 ドンナー・シュラーク──纏雷の代わりに魔力操作による初級雷魔法を代用、纏雷の代用としては十分だった──を身体の一部のように巧みに操る優花が放った弾丸は、音速の三倍を維持しながら空中で自由自在に曲がり……

 

 シュラーゲンでの狙撃ならハジメですら当てるのが難しい超長距離にある的のど真ん中を絶対に外さない。

 

 天職:投術師の優花の持つ天性の空間認識能力は七耀以外でも有効だった。つまり銃火器を使わせればハジメより優花の方が上手く使えることが証明されたわけである。もっとも弓兵ではない優花はナイフの方が肌に合ったらしいが。

 

 そもそもここでハジメは致命的な弱点に気が付く。武器を取り出す際に優花に遅いと指摘されたことだ。試しに優花に宝物庫を使わせると武器が手元に一瞬で現れる。試しに空間魔法に高い適正があると言われた鈴にもやらせたが同様の結果になる。ハジメだと数秒掛かってしまうのに。音速戦闘を平然と行う連中を相手にして数秒も無防備になれば百回は殺されるだろう。

 

 基本的に自分用のアーティファクトを自分でしか使わないからこそ気づかなかった欠点。七耀の時点で気づくべきだったのだ。ハジメが作るアーティファクトをハジメ以上に使いこなせる人間はそれなりに存在するということを。

 

 総論すると南雲ハジメには基本的に戦闘者としての才能がないのだ。それは技能というステータスプレートに乗っているものではなくセンスという意味で。

 つまり今の戦闘スタイルを続けたらどこかで頭打ちが来る。今となっては大したことがない魔力量でごり押ししてもそれに特化したスペシャリストには敵わない。

 

 だからハジメは発想を変えたのだ。

 

 自分には戦闘の才能がない。そしてアーティファクト使いとしての才能もない。であれば……

 

 

 南雲ハジメが誰にも負けない特技を戦闘に活かせばいいのだと。

 

 

 ~~~~~~~~~

 

 爆炎に包まれる蓮弥を見ながら、油断なく警戒しつつ、宝物庫を一瞬だけ開きアーティファクトの材料となるクロスビットを取り出す。

 

(エリクシルは上手く稼働してる。ただ無から有は作れない。どうしても材料を出す手間が発生するのと生成魔法を毎度使う都合上、普通に作るより魔力消費が激しいのが今後の課題か)

 

 そう、今までの蓮弥との攻防時、ハジメは()()()()()()()()()()()()()()()()()戦っていた。

 

 ハジメは気づいたのだ。空間魔法に適正がない自分が宝物庫から取り出すくらいなら、その場で直接アーティファクトを錬成した方が圧倒的に速いと。

 

 だがそれは今まで不可能だとハジメ自身が判断しており、そもそも錬成魔法を戦闘に活かすと言うこと自体が無理だと思っていた。

 無理だと考えた理由は錬成魔法が土術などと比べて複雑な造形が可能な分、必要とする魔法式が膨大になるという点である。

 

 試しにドンナーを瞬間錬成するためにパーツ単位で組み立てるのではなく、素粒子単位で瞬時に組み立てる魔法式をヘファイストスで算出してみたが、その魔法式は直径数十メートルサイズになってしまった。魔法式には魔石を使うというこの世界の常識で例えるとハジメはドンナーを瞬間錬成するために巨大な魔石を背負って戦わなければならないことになる。

 

 そこでハジメは考えた。要は膨大な魔法式を記録する媒体があればいいのだと。そこで思い出したのが先日の真央とのやり取りだった。そこで出てきたBBの言葉。

 

 フォトニック純結晶体*1製記憶媒体。

 

 元々地球でもフォトニック結晶を利用した量子コンピュータは研究されている。だからこの魔法世界でそれを再現できないかということである。ハジメは素粒子単位の錬成式を作れるヘファイストスと錬成魔法があれば再現は可能だと判断した。

 

 後は流石に素材も無しに一からフォトニック結晶を作るのは時間がかかりすぎるので天然のフォトニック結晶であるオパールでも落ちてないかと探していたところで思わぬ発見をすることになった。

 

(まさか、おれが奈落の底に落ちるキッカケになったグランツ鉱石が天然のフォトニック結晶だったとはな)

 

 しかも天然ではありえないはずのフォトニック()結晶。この世界の住人は単なる装飾品扱いしている鉱石だがとんでもない代物だった。つまりグランツ鉱石は上手く使えば魔石とは文字通り桁違いの容量の魔法式を記録できる媒体になり得るということなのだから。

 

 

 そしてヘファイストスと真央の協力により作成を開始、その際、容量の問題は解決したが、外からアクセスしたのであれば錬成速度が遅くなるという真央の意見から直接頭と接続したらいいんじゃないかというギリギリの発想を閃いたハジメが魂魄魔法を利用し、ハジメの脳内にある錬成派生技能『想像構成』で生まれた錬成演算領域と接続する機能を搭載した。

 

 そして試行錯誤の末、ついに誕生したのが、錬成師ハジメ専用アーティファクト『賢者の石(エリクシル)

 

 見た目は宝石付きのチョーカーであり、ハジメの周囲に浮くだけしか機能がないクロスビットの形をした材料の塊を使うことで、記録されたアーティファクトの瞬間錬成を実現する。それだけではなく、副次効果としてハジメの脳に負荷を掛けずに瞬光以上の思考加速を可能にし、それによって魔人の鎧(フォースアーマー)との組み合わせによる音速戦闘への対応や錬成派生技能『集束錬成』により土術師顔負けの地形錬成や風術師唖然の大気錬成も可能になったのだ。

 

 ~~~~~~~~

 

 爆炎を切り払い、蓮弥が現れたと同時にハジメは両手を合わせ錬成魔法を行使、即座に地形を作り変え、巨大な腕や槍、剣、もしくは大砲で集中攻撃を行う。

 

 もちろんハジメはその間に新しいアーティファクトを瞬間錬成。生み出したアーティファクトはかつてフレイヤに破壊されたパイルバンカーの進化系。

 

 新パイルバンカー型アーティファクト『グングニル』

 

 かつてより大幅に貫通力を上げたそれを空中で足止めされている蓮弥に放とうとして……

 

 

 ハジメの本能が全力で警鐘を鳴らした。

 

 

 ハジメは錬成したアーティファクトを破棄し、手を合わせて壁を錬成し、さらに壁から自分の方向に棒を錬成し、突き出すことで自身の身体を吹き飛ばす。不格好だが構わない。なりふり構わず全力で後退し、それに加えハジメは瞬間錬成を行使し、巨大盾型アーティファクト『アイギス』を錬成し構えた。

 

 ハジメは察していた。全力で防御しなければやばい攻撃が来ると。

 

 

 そしてハジメの懸念通り、詠唱を終え、蓮弥の聖術が今、発動する。

 

 

聖術(マギア)10章4節(10 : 4)……"空滅黄龍"

 

 

 展開されるは龍の力。蓮弥はその巨大地震の力を十字剣に纏わせ、回転斬りを放った。

 

 

 そして……それは起こる。

 

 

 蓮弥を中心に全方位に放たれる龍の咆哮。聖術にて禁術とされているそれを用いて放たれた超巨大震動波が、帝都の街並みを丸ごと押し潰し、押し流していく。放射状に広がる絶大な空震が容赦なく帝都の町を襲う光景は、まるで神が地上のテクスチャを無理やり引き剥がすかのようだった。

 

 そして当然、現在戦っているハジメも例外なく影響を受けることになる。

 

 

『アイギス』は魔法的、物理的双方の観点において、現在ハジメが展開できる最大の防御力を誇るアーティファクトでもある。そのアーティファクトが瞬時に幾重にもハジメの前方に魔法障壁と物理障壁を連鎖展開する。

 

 合計十層に及ぶ盾群が、空間振動の直撃を受け、瞬時に六層が消し飛ぶ。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ──ッッ、がぁぁ──ッ!!」

 

 まるで生身で核兵器を受け止めているかのような感覚。ハジメは残りのアイギスに全力で魔力を注ぐ。ほとんどの魔力を使ってしまうことになるがここで防げなければアウトだ。

 

 そしてハジメの努力は実り、後方に吹き飛ばされながらも、最後の一枚の防壁がハジメを守護する。

 

 そして前方に広がる光景は……

 

「……錬成を封じるには錬成する物がなければいいってか」

 

 ハジメが両手を合わせながら思わず呟く。そう言わざるを得ないほど、目の前の光景は圧倒的だった。

 

 まるで圧倒的なパワーがあれば小技は不要とでも言わんばかりに、雑多な印象を持った帝都の街並みが綺麗さっぱりなくなっている。それは半端な意味ではなく文字通り、蓮弥を中心に半径数km圏内は真っ平な地面以外残っていない。

 

 まさに核兵器の爆心地と言っていい光景。

 

 そしてその惨状を起こした張本人は上空に浮かんで体勢を整えていた。

 

「いいぜ、ここからは真っ向勝負だ!」

 

 相手が空中にいる以上、地上で錬成を行使しても届かない。大気を錬成しようにも空間振動の余震のせいで上手くいかない。つまりここからは正面からの激突になる。

 

「ありったけくれてやる」

 

 ハジメは即座にメツェライを蓮弥に向けてありったけぶち込む。当然蓮弥は避けるが、避けた方向には既にオルカンによる変幻自在のミサイル群、メツェライの弾幕、そして光学レーザー式アーティファクト『バルドル』による光速攻撃。

 

 ただし、蓮弥も同じ手は喰わない。メツェライの弾丸を”聖壁”で防ぎ、バルドルの光速レーザーを斬り裂き、返す刃の一振りでミサイルを全て撃墜する。

 

 だがハジメもそれは想定内。撃ち落とされるのを想定して、ミサイルの中身はチャフ、閃光、音響、或いはただの煙幕と感覚を狂わせるものを揃えた。

 

「”限界突破”!!」

 

 僅か一秒。稼げる時間をその程度だと計算したハジメは限界突破で増大した魔力のほとんどとその一秒、そして賢者の石(エリクシル)の機能と”瞬光”を全力で使い、超兵器を瞬間錬成する。

 

「喰らいやがれぇぇ──ッッ!! ロッズ・フロム・ゴッドぉぉぉ──ッッ!!」

 

 蓮弥の上空にマッハ二十を超える超速度の金属棒が落ちてくる。その速度は蓮弥の移動速度を超えるがゆえに、避けられないとハジメは確信する。

 

聖術(マギア)1章7節(1 : 7)……"神浄紅炎"

 

 そして蓮弥が選んだのは真っ向勝負だった。その超速度で落ちてくる金属棒にあろうことか圧縮された炎の大剣を掲げ……

 

 剣で弾丸を切るように、金属棒を真っ二つに斬り裂いた。

 

 裂ける金属棒があらぬ方向に飛び散り、離れた位置の着弾地点を木っ端微塵にする。

 

「悪いがハジメ……これで終わりだ!!」

 

 手札は全て尽きた。そう判断した蓮弥がハジメに接近する。ハジメには簡易式霊的装備(ソウルアーマー)があるので聖遺物の呪詛では死なないかもしれないが、単純にその圧倒的な力でねじ伏せられるのは明らかだった。

 

 あと一歩でハジメは切り伏せられる。その段階で……

 

 

 ハジメの用意した最後の仕掛けが作動した。ハジメと蓮弥の間に壁が現れ、それを起点に蓮弥の四方を固めるように壁がせりあがる。

 

「!?」

 

 蓮弥はハジメが錬成する素振りも見せていないにもかかわらず発動した錬成魔法に一瞬思考が走る。ハジメが帝都の惨状を確認している最中に仕掛けた遅延錬成による()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは壁一面に埋め込まれた()()()()()()()()()()()

 

「どうだ? 懐かしいだろ」

 

 ハジメは壁越しに蓮弥と会話する。

 

「……正気か?」

 

 蓮弥の疑問は当然だった。優に千個を超える焼夷手榴弾が至近距離で爆発すればハジメもただでは済まない。

 

「正気でお前と戦えるかよ。さあ、盛大な花火を打ち上げようか!!」

 

 その蓮弥の問いに愚問だと言うように壮絶に笑ったハジメが……焼夷手榴弾千個を同時点火した。

 

 

 ~~~~~~~~~~

 

 そして、吹き飛ばされた蓮弥は立ち上がる。

 

「げほ、げほ、あいつ……無茶な真似を」

 

 あたりまえのように魂魄魔法付与をされていた炎の大火は帝都を燃やしながら蓮弥を焼き焦がした。

 

 一応回復は行ったが、余裕があるわけではない。ユナがいない以上、蓮弥の魔力は有限だ。帝都を吹き飛ばしたのと、神の杖の対処。そして至近距離の大爆発でほとんど魔力は使い果たしたと言っていい。

 

「自分で仕掛けた以上……無事だとは思うがな」

 

 蓮弥は十字剣を消して、前方を見据える。そして間もなく蓮弥の考えは的中する。

 

 燃え盛る炎が彩る帝都にて、ハジメが真っすぐ歩いてくる。

 

「よく無事だったな」

「大量の窒素と二酸化炭素を圧縮して利用した空気のバリアを挟んだ。熱と衝撃はこれでほとんど防げる」

 

 距離は十メートルほどか、お互い中々ボロボロな姿で対峙する二人の前に風が吹き、燃え盛る炎とは裏腹に、ハジメ達の前から煙が消える。

 

「それで……錬成師ハジメ先生は次はどんな錬成を見せてくれるんだ?」

「はっ、まだまだネタはたっぷりある……と言いてぇが……」

 

 ハジメの首についたチョーカーの宝石は光を失っていた。

 

「あいにく電池切れだ。魔力バッテリーの性能アップは優先課題だな」

「そうか……じゃあ、もう負けを認めるのか?」

「まさか……まだ俺には……これがある」

 

 そう言ってハジメは笑いながら、拳を構える。

 

「まさか……拳によるインファイトか。不良の喧嘩じゃないんだぞ」

「別に決着がつけばなんでもいい。まだ魔人の鎧(フォースアーマー)は生きてるからな。限界突破状態なら十分戦える。それに……お前も見た目ほど無事じゃねーだろ」

「まあな。俺も本気でボロボロだ。ようこそ……魔人の世界へ」

 

 蓮弥は素直に白状する。ここで余裕を見せるのもいいが、ここはハジメを素直に称賛するべきだと思ったのだ。

 

 よくぞ、聖遺物の使徒のいる領域にたどり着いたと。

 

 だから、容赦しない。全身全霊で相手をさせてもらう。そう決意し蓮弥も構える。

 

「それじゃあ……」

「いっちょ……」

 

 

「「勝負しようかぁぁぁぁ──ッッ!!」」

 

 

「限界突破・覇潰ィィィィ──ッッ!!」

「界神昇華ぁぁぁぁ──ッッ!!」

 

 お互い今できる身体強化を行い同時に相手に向かって真っすぐ駆ける。

 

 着弾は同時。

 

 両者の頬に、相手の拳が突き刺さった。

 

「がぁッ!」

「ぐぅぅ!」

 

 膠着は一瞬。そして両者は再び前の敵を見据え、拳の乱打戦を開始した。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────ッッ!!」

「おおおおおおおおおお────ッッ!!」

 

 ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。

 

 お互い拳を突き出し続ける。

 

 防御? なんだそれは? そんなことを考える暇があるなら一発でも多く相手より拳を突き出せ。

 

 そう言わんばかりの技術も何もない不良の喧嘩のような……だが魂が乗った拳を繰り出す。

 

 そして……

 

 

「蓮弥ぁぁぁぁぁぁ──ッッ!!」

「ハジメぇぇぇぇぇ──ッッ!!」

 

 

 相手に渾身の一撃を叩き込もうと拳を振り上げ……

 

 

 

 

「そこまでよ……」

「これ以上は看過できません」

 

 

 

 その熱い戦いを遮るように、高速移動で雫が、空間転移でユナが現れる。

 

 そして雫は蓮弥の、ユナはハジメの腕を取り、その勢いのまま瓦礫の山まで投げ飛ばした。

 

「ちょ!?」

「まっ!?」

 

 その突然のユナ達の出現に対処できず、蓮弥とハジメの戦いは、両者が頭から瓦礫の山に突っ込んだことで終結した。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~

 

「……何するんだ、雫」

 

 いきなり瓦礫の山に投げ出された蓮弥は流石に戦闘態勢を解く。それは反対側の瓦礫から出てきたハジメも同様だ。

 

 だが蓮弥とハジメを見る二人の顔は少し冷ややかだった。

 

「何するんだ? 周りの惨状を見てみなさい。正直……あんた達やりすぎよ!!」

 

 そういわれて蓮弥は帝都の惨状を見てみる。

 

 更地にされた大地、燃え盛る炎。錬成により歪み、崩壊した帝都の街並み。

 

「……地獄絵図だな」

「地獄絵図だな、ではありません! これだけ滅茶苦茶にして……()()()()()()()()()私のことも考えてください!」

 

 そう言ってユナは……自身の”創造”を解除した。

 

 戻ってきたのは帝城。帝城の外はもちろん平和であり、帝都民が思い思い日常を謳歌している。そして内に目を向ければ、外側から蓮弥達の戦いを見たせいで顔を引きつらせている光輝達の姿。

 

 そう、当たり前の話だが、蓮弥達が戦っていたのは現実ではなくユナの創造空間である。そうでなければ今頃帝都は二人の戦いで滅び去っている。そしてユナの創造空間の特性により、蓮弥達の傷は跡形もなく回復する。

 

「蓮弥……これから私とユナの説教の時間よ。少しは見ている人がどれだけ冷や冷やしたのか思い知ってもらうわ」

「いや、お前達だって以前……」

「蓮弥……何か言いましたか?」

「…………いえ」

 

 蓮弥が以前の修羅場のことを言い出そうとするが、ユナの笑顔に封殺された。

 

「ハジメ……お仕置き。心配させた罰を受けるがいい」

「えっ、いや。俺はこれから各アーティファクトの実戦データの検証をだな」

「問答……無用!」

 

 そう言ってユエは『神ノ律法(十七歳モード)』の怪力を使ってハジメを強制的に引きずっていく。

 

「そういうわけだから皇帝陛下。私達はこれで失礼させてもらうわ。もっともあなたがバトルジャンキーよろしく、二人と今すぐ戦いたいと言うなら話は別だけど」

「…………遠慮しておく」

 

 そして雫の言葉に、二人の次元違いの戦いと戦闘の余波で生み出された蓮弥達と敵対した際の帝都の末路を見せつけられたガハルドは内心頭を抱えながら遠慮した。

 

 

 この後蓮弥とハジメは各々恋人にやりすぎたことへの説教を受けたのだが、本当に説教だけで終わったのかどうかは不明である。

*1
光そのものを閉じ込める事が出来る鉱物。光そのものを記録媒体や光子回路として使える




帝都君「ぎゃああああああああああ──ッッ!! ハァ……ハァ……ハァ……なんだ……夢か……良かったぁぁ」


>賢者の石(エリクシル)
南雲ハジメがこれからの戦いを生き抜くために作成した自分専用アーティファクト。他とは違いハジメ以外に使いこなせない。これにより今まで不可能だった戦場でのアーティファクトの瞬間錬成や大規模地形錬成、大規模大気錬成が可能になった。形状のイメージはとあるの一方通行の電極。もしくはアクセルワールドのニューロリンカー。思考加速能力などはニューロリンカーを参考にした部分あり。
弱点は魔力消費量が半端じゃないので魔力電池が切れると使えなくなるところ。魔力電池の強化は必須課題。


>魔人の鎧(フォースアーマー)
ハジメ用身体強化アーティファクト。今まで必要なかったのだがインフレが進む中、今の自分の身体能力でも追い付けない場面が出てきたことにより作ったはいいが、音速戦闘に対応しようとすると反動で身体が壊れると言う問題が発生して保留していた。だがジャバウォックの魔力を手に入れたことによる耐久の上昇とさらに強度を上げる技能、そしてエリクシルを使った思考超加速を組み合わせることにより聖遺物の使徒ともガチバトルが可能になった。


というわけで喧嘩回と同時にハジメのパワーアップのお披露目回。前回はアーティファクトの強化だけであり、ハジメ自身の強化ではなかったので今回で少なくとも形成の蓮弥とガチバトルできるレベルになりました。神座序列で言うなら4位の下位。相手に創造(概念魔法)を使われると負けるくらいのバランス。

ハジメの強化モデルはハガレンのエドとFateの衛宮士郎。
元々原作からしてハガレンのエドがモデルっぽいですが、錬成と義手以外に要素がないのでよりそれらしく戦えるようになりました。これから雑魚相手にするならドンナーをぬくより地形錬成による槍で串刺しの方が速くなります。

今回はハジメに対等に喧嘩できる親友がいるということを書きたかったのと、もっと錬成を駆使した戦いをしてほしいという願望が籠った回になります。
非戦闘職なら非戦闘職なりの戦い方があると思いました(小並感)


次回は姫様のヒロイン回です。もしかしたらここしかヒロイン回がないかもしれないので、できるだけヒロインっぽくしてあげたい。

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