今回は正直難産でした。ああでもないこうでもないとこねくり回し、書いては消し、書いては消しを繰り返し、どうしようか迷いましたが、このまま押し通すことにします。
第六章ボス戦決着です。
葉が生い茂り、その力を取り戻していく、神樹『ウーア・アルト』。否、大災害『樹樹』は世界を侵略するための準備を始めていた。
天を衝くようなその巨体に掛けられていた迷彩が解け、周囲にその偉容を見せる。
フェアベルゲンに在住している亜人族は突如起こったその現象に言葉を無くしていた。
死した世界樹が息を吹き返すということが何を意味しているのか。
偉容を称えながらも、その身に邪悪な気配を漂わせているのはなぜなのか。
世界を覆い尽くさんと生い茂り、広がり続ける黒葉は最終的にどこを目指しているのか。
その問いに答えられるものは現在存在しなかった。
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「キヒヒ、ヒーハッハッハッハッハ──ッ! さあ、お祭りの始まりだ。さあ君達、生い茂る葉を良く視てごらんよ」
悪魔の笑い声が響く中、ハジメ達は頭上に広がっていく黒葉を見てみる。
炭のように黒く染め上げられた葉は一枚一枚が家一軒分を超える大きさを誇り、その葉が現在数億、数十億枚単位で増えていく。だが、ハジメ達はその生い茂る黒葉に、なにやら白い物がぶら下がっていることに気付く。
「あれは……繭?」
ハジメの言う通り、一部の黒葉には白い繭がぶら下がっていた。遠目から見てもわかるくらいには大きいのがわかる。
「そう、アレは”樹樹”の眷属達さ。君達がここの試練の最後に戦った巨大蟲の兄弟だと思ってくれたらいい。その眷属が宿った繭が現在……約百万個創られている」
「ひゃくッ!?」
悪魔が齎した情報は中々刺激的なものだった。この大迷宮の最期の試練。ハジメ達はゴキブリの巨大蟲と相対したわけだが、その生理的嫌悪感を齎す姿とは裏腹に、その力は今のハジメ達でも油断できないほど強力だったのだ。
ハジメ達は知る由もないことだが、この大迷宮の最期の試練はどの蟲であっても分解、無限の魔力、超速移動が共通して備えられており、それはかつて解放者が戦った強敵である神の使徒をモデルに作られていた。むしろ相手のレベルに合わせて複数人で立ち向かわないと勝てないレベルで出現するという仕様上、本来の神の使徒より強かった可能性すらある。
その強敵が約百万体出現する。それはすなわち……
「繭から孵った彼らはすぐに森を飛び出し世界各地を飛び回るんだ……『人類を捕食しろ』という命令を受けてね。しかもこれで終わりじゃない。第二波はその十倍、第三波はさらにそれの十倍という具合にどんどん増えていく仕様だから、きっと世界中が楽しんでくれるよ。阿鼻叫喚を響かせながらね。キーハッハッハッハッハ──ッ! そして僕の仕事は巨大蟲に抗う人類を煽って、堕落させて、絶望させることなのさ」
このままでは人類は外側を巨大蟲に蹂躙され、内側を悪魔に壊されるという悪夢に包まれる。否、それ以前に、現在の疲弊した世界で、第一波を生き残れる人類が果たしてどれだけいるのか。
大災害が動くということは世界の危機ということ。つまりこのまま放置すれば遠くない未来この世界の知的生命体はフェアベルゲンの亜人以外全て滅び去る。
『きゃはは、いい気味、いい気味ィ!』
『殺せ、いっぱい殺せ!』
『ざまぁみろ。死ぬ瞬間まで後悔して絶望しながら死ぬがいい!!』
再び空間に声が木霊する。それは亜人族の怨念。彼らは今喜んでいる。
もうすぐ彼らの悲願が成されるから。
憎き人族は喰いつくされ、恨み積もる魔人族は踏みにじられ、同じ亜人の癖に人族に媚びを売って例外扱いされている海人族は海の藻屑と消える。
「……ふざけんな……ですぅ」
その言葉を聞いてシアが再起動する。彼女は先ほどから木霊する亜人族の祖先の言葉にいい加減我慢できなくなっていた。
「さっきから勝手なことばかり言って。誰よりも迫害されてきた? だからみんな死ねですって。甘えるのもいい加減にするですぅ! 確かにどうしようもない人達もいました! 私だって人間の全てを許しているわけじゃありません! だけど、だけど中には、素晴らしい人だっていたんです! それも含めて全部丸ごと滅ぼすなんて……あなた達にそんな権利はありません!!」
それはシアが森の外で旅して得た教訓。確かに中には亜人である自分を奴隷にしようとするものもいた。自分をいくらで売ろうと交渉しようとする人や、問答無用で奴隷にするような奴らもいただろう。だが、中には亜人であるシアに敬意を持って接してくれる人や、優しい人だっていたのだ。それは森の中という狭い世界に生きていたシアでは永遠にわからなかったであろう。シアが聞いた限り、この森に木霊する怨念は、視野狭窄に陥っているとしか思えなかった。
「あれ~。君がそれを言っちゃうのかぁ。けどさ……君だって、僕と似たようなものだろう?」
だが当然、悪魔は黙ってはいない。大災害『樹樹』の再起までは些か時間がかかる。その間彼は彼の存在意義を果たすためにシアに迫ることにした。
「シア・ハウリア。君は僕と同じだ。悪魔の成り立ちを説明するとね。僕は核となる怨念が宿った魂という依代がないとこの地に顕現できないんだ」
現在進行形でハジメ達はもちろん休まずに攻撃している。魂魄魔法に類する力で悪魔の核とやらを直接攻撃しようと模索したりもしているが、いまいち効果がない。本当に霞みを殴って斬っている感覚。
「だからこそ、僕という存在は彼らに影響されてしまう。さて、そういう君はどうだ? 亜人族の中に稀に生まれてくる魔力持ちの禁忌の子供。今までのフェアベルゲンの歴史上、何人かは生まれて、そして君以外は皆幼くして消えていったわけなんだけど……」
雫が解法を纏った斬撃で少しダメージを与えるがあたりまえのように再生する。悪魔が雫の攻撃を気にせずシアに言葉をかけるのが余裕の証だ。真央もなんとか核について解析を進めようとするが、核が単一の魂ではなく複数の魂の集合体であることも災いして中々進めることができないでいた。
「一体、何が、言いたいんですかぁぁ!!」
いい加減鬱陶しくなった細胞極化状態のシアが全力の拳圧にて悪魔を攻撃する。その攻撃はすり抜けるかと思いきや、真正面から受けて悪魔が盛大に吹き飛んだ。
もちろんすぐに吹き飛ばされた先で悪魔はあっさり復活したが、悪魔がそのシアの力を褒め称えながら嘲笑する。
「そうこれだよ。この異常な力だ。自覚しろよ、君はおかしいと。確かに今まで君と同じ魔力持ちは亜人の中でも生まれていたが、はたして彼らは君ほど異常な力を持って生まれていたのか。いや、そんなことはないはずだ。僕の中の彼らがそう言っている。なら君は何なのか。言っただろう。僕と君は同じなのだと」
再びシアの拳圧を喰らい、汚物をまき散らしながら吹き飛ぶ悪魔だが今度は毒蟲の汚染濃度を濃くしてシアを襲う。それの脅威にさらされたシアは震脚の要領で地面を踏み鳴らし、発生した衝撃でその穢れをまとめて吹き飛ばした後、瞬間移動にも等しい高速移動で悪魔の上空に出現し、蹴りを叩き込むことで悪魔を地面に叩き落した。その一連のやり取りを見てみれば、なぜかシアだけがいかなる攻撃もすり抜ける悪魔との真っ当な戦いが成立している。
「君は僕と同じ”悪魔”なんだよ。だからこそ、この中で唯一僕とまともに戦えているんだ。この世界の底辺、畜生と同列だとされている尤も卑しい生物である亜人族の中でも、さらに同族にすら蔑まれて生きてきた、兎人族という種族が生み出した怒りの結晶だ。君は全てを滅茶苦茶にするために、何もかも踏みにじり、蹂躙し、支配する獣の王になるために生まれてきたんだ。今はまだ真っ当な精神しているようだけどね。忠告するよ。このままだといずれ君は獣の衝動に取り込まれ、好き勝手暴れまわって全てを破壊する獣王として世界に君臨することになる」
「勝手なことをッッ!!」
シアは悪魔のいうことを戯言だと切って捨てる。
「力の使い方は私が決めますッ。勝手に私の未来を決めないでくださいッ!!」
「へぇ~。そこまで言うなら……試してみようか」
シアに向かって悪魔が毒蟲を撃ち放つが、幾度も繰り返してきたのと同じように、シアが拳圧で吹き飛ばす。だが……その陰で。
「ッ!?」
シアがとっさに腕を振るうと、そこにいたのは一匹の蚊だった。それがシアの剥き出しの肌に引っ付いていたのだ。
「効果が出るまで少し時間はかかるが……その時、どうなるのか楽しみだ。キーハッハッハッハッハ-ッ!」
「このぉぉぉぉぉぉ──ッッ!!」
「がぺぇッッッ!!」
再び悪魔がシアによって粉々にされるが、すぐに再生されてしまう。戦いにはなっているが現状弱攻撃でじわじわダメージを与えていっているに等しいので不死身の悪魔がどれほど堪えているのか全く判別ができない。
「このままじゃ……」
雫が解法を凝らして悪魔を観察し、何か役に立つ情報がないか探っているがいまいちわからない。核があるのはわかる。それが亜人族の恨みや憎しみによるものであることもわかる。だが……本当にそれだけなのか、雫は考える。
なんとなくだが、なんとなくだが雫はこの悪魔に違和感を覚えていた。今までの悪魔のセリフを振り返って、どこかに
雫の中に流れる石神の血が直感する。それこそが、悪魔攻略のための重要な情報だと。
「あなた言ったわね。自分は核がないとこの世界にいられないって。ならもし私達が、あなたの核をどうにかできればあなたはここからいなくなるということよね」
シアの方を向いていた悪魔が雫に向かって笑顔を向ける。
「これはこれは、ある意味召喚主の一人というところかな、雫ちゃん。君のいうことはあっている。主に、悪魔を退ける方法は二つある」
余裕ぶった態度で悪魔が話に乗ってくる。雫としては少しでも時間が欲しくてこっちに興味を向けた形になるのでこのまま引き付けておきたいところだ。
「一つは人以上の超常存在の力を借りること。基本悪魔は人の想像の上に成り立っている。その都合上、人である限り僕達を倒すのは不可能だ。だからこそ、上位存在の力を借りることで僕達を追い払うことができるわけだけど……完成した君ならともかく、今の君達にそれを実践することはまず無理だと言いたい」
親切丁寧に説明してくれるのは誠意か。何やら良心が芽生え、彼らに生きるチャンスを与えているのか。
否、それはあり得ない。悪魔という存在は人を徹頭徹尾堕落させ絶望させるためにある。故に、
ならばその言葉の意図するところは、雫達を絶望させるものに違いない。
「二つ目は僕の核をどうにかすることだけど……いっちゃあ何だがこれはものすごいぜ。数千年分の亜人族という亜人族の怒り、憎悪、嫉妬、その他モロモロの悪感情の集合体だ。だからこそ、こんな中途半端な召喚でも僕がある程度行動可能なわけなんだけど。君達にやれるのか。この怨念の塊を救うことができると言うのかい。できるなら是非やってみてほしいな。キーハッハッハッハッハ──ッッ!!」
雫達には数千年の怨念がどうやったら鎮まるかなんて検討も付かない。それはそうだろう。彼女達の大多数が基本的に亜人族の今の現状とは無関係なのだ。迫害される苦しみがわかる者といえば、今もなお、拳やドリュッケンを振るうシアと、周囲の蟲群を竜化にて焼き払い続けているティオくらいであろう。
今回の敵は力による解決が通用しない。唯一それが可能であった蓮弥は現在ドーム状の闇に封印されている。そして彼が脱出するころには、大災害『樹樹』は完全に満開となり、世界に厄災をばら撒いてしまうだろう。
つまり打つ手なし。仮にこの中でおそらく亜人族の怨霊に一番恨まれているであろうガハルドを生贄に差し出したとしても止まるものではないのは明らかだ。彼らは人類全てを恨んでいる。
「だけどいい加減鬱陶しいな。その程度では死なないとはいえ、かゆいものはかゆい。えーと、これでいいかな……急段・顕象ぉぉ」
「ッ! ああああああああああ!!」
やる気なさげの声から発せられた急段の声に身構えるも遅く。シアは全身から血を吹き出し倒れる。
「とまあ、それっぽく仕上げてみましたァァ! 僕は悪魔だから本当は力を使うのに協力強制なんて必要ないんだけどさ。今回君達が痛ーい目を見た彼の技にならって、『敵意や悪意を持って攻撃してきた相手にそっくりそのまま攻撃をはね返す』っていう能力にしてみたよ。どうだい? 自分の攻撃が跳ね返ってきた感想は?」
「がぁぁ、あがぁぁ」
「シア! ”絶象”」
一瞬で今までの自分の攻撃が跳ね返り、全身青痣と血まみれになったシアを香織が再生魔法によって回復させる。幸い、逆十字の急段とは違い、常駐しているタイプではなく使い切りタイプだったようでシアはすぐに回復する。だが奪われた体力と受けた痛みまでは元に戻らず、シアは細胞極化状態を強制解除され、苦しそうに喘ぐ。
「はい。これで君達は僕に攻撃することもできなくなりましたぁぁぁぁ。攻撃した瞬間、今まで僕に与えてきたダメージが全部自分に跳ね返るから気を付けようねぇぇぇ!! いい加減諦めてこの世界の人類の終焉を観察しちゃおうぜ。いいじゃないか。君達の大多数はこの世界の住人じゃないか、彼らと同じ悲惨な目にあった亜人だ。もしかしたらそこの皇帝以外は見逃してもらえるかもしれないよ。そしたらこの世界の住人達の阿鼻叫喚なんて全部無視して最後の大迷宮を攻略してしまえばいい。神エヒトだって亜人に恨まれてるから無事じゃいられないし。その隙に概念魔法を作って地球へ逃げちゃえばいいさ。ねぇ、南雲君、君だって最初はそのつもりだっただろう?」
悪魔は提案してくる。この世界の住人が蟲群に襲われ地獄絵図を描く中、自分達だけ元の世界に帰ればいいと。
「なんなら君のお気に入りの海人族二人も連れてっちゃえばいい。神エヒトもこの世界が崩壊すれば異世界侵略どころの騒ぎじゃなくなるし。あれっ、これって案外いい考えなんじゃないかな。ねぇねぇどう思う?」
「…………そうだな。俺達だけ考えれば、それもありかもな」
「南雲ッ!?」
ハジメの言葉になんてことをと言いかけた光輝が止まる。なぜなら光輝は見たからだ。ハジメの目に宿る光を。
「だがな……俺達には教師の鑑みたいな人がいてな。その人が言ってたんだよ。『自分と大切な人以外の全てを切り捨てる『寂しい生き方』をしないでほしい』てな。だからあの人の生徒として、俺はこの世界を見捨てない。それに……お前シアを、俺の仲間をボロボロにしておいて、タダで済むと思うなよ!」
「ハジメさん……」
倒れた身体を起こしながらハジメが宣言する。先生との約束も大事だが、何よりも、大切な仲間を傷つけた奴は許さない。ハジメの目に宿る光がそう言っていた。
「先生の言葉ねぇ。学校にいるときは学校の先生の言葉なんて碌に聞きもせず、どうせくだらないと内心見下してた癖に……ま、いっか。それでそれで。一体どうするのどーするのぉぉ? 口だけなら誰でも言えるよねぇ。ねぇねぇ、ここから君に何ができるの? いままで暴力で全部解決してきたハジメ君に何かできることが残ってるのかな? 大きな声で言ってみなよ。勇ましく宣言したからには何か手があるんだろう?」
「はっ、決まってるだろ。こういう時は、助けを呼ぶんだよ」
ハジメは攻撃しつつも頭をフル回転させながらある一つの仮説を立てていた。そしてそれをどう実行するかと思った際に、
起死回生の切り札になるかもしれない。彼らを……
「頼む、俺の誇れる部下達よ──オレを助けてくれってな!」
「了解───!」
そして、その高らかに謳い上げる威勢のいい声と共に、四方八方から出現した謎の影は器用に蟲群を躱し、悪魔に無数の刃を振るう。
「ぎぃぃぃぃぁああああああ!!」
シアの時と同じような状態に陥った悪魔は苦し気に悶える。
「えっ」
「嘘……」
「なんで?」
光輝達やハジメパーティー達、特にシアが唖然とする中、彼らは堂々と名乗りを上げる。
「我は卿らに問う。卿らはなんぞや」
「「「「我ら、フェアベルゲンの悪鬼なり!!」」」」
一人が空中を舞い、再生中の悪魔の実体を切りつつ患部を蹴り飛ばすという方法で再生を阻害させる。
「我は卿らに問う。我らの武器はなんぞや」
「「「「我らの武器は、盟主より承った
一人の恋する乙女が、完璧な気配遮断により悪魔の死角を攻撃し、首を跳ね飛ばす。
「我は卿らに問う。卿らが剣を取る理由はなんぞや」
「「「「我らの剣は、盟主『
そして各人集まり、なんちゃら特戦隊のような香ばしいポーズを各自決め始める。どうやら彼らのノリは今そういう感じらしいとハジメは頭を抱えていた。
「「「「我らの名は、
一人一人決まったというような顔で満足げにしている人物達。それは言われるまでもなく、ハウリア族その人らであった。
「父様……一体どうしてッ!? いや、そもそも、ここって大迷宮の深奥ですよッ!? どうやってここまで来たんですかぁ!?」
「覚えておきなさい、シア。気合と根性があれば、できないことなどないのだと!!」
ポーズを取りながら言うのはもちろんシアの父親、カム・ハウリアだった。
この大迷宮に都合のいいショートカットはないので、カム達は真っ当に攻略してここまで来たことになる。確かに強くなったとはいえ、まだ真の大迷宮突破は無理なレベルではあるはずなのだが、彼らは気合と根性で突破してきたと言っている。
「もはや……なんでもありね。シアの家族は」
雫が何とも言い難い顔で言うとシアは思いっきり恥ずかしそうに顔を隠し、ウサミミをパタパタしていた。
「だがよく来てくれたな、お前ら。俺の考えた通りだ。どうやらあいつには
ハジメは攻撃しつつもずっと観察を怠っていなかった。どういう攻撃が通じて、どういう攻撃が通じないのかと。物理攻撃はどうか、魔法攻撃はどうか。魂魄魔法を使えばどうだ。他の神代魔法を組み合わせればどうだ。まるで地道な科学実験のような工程を得て、結局悪魔に真っ当に攻撃が通じたのは二種類。
一つは蓮弥の創造による攻撃。これは概念魔法の領域にある力だからとハジメは推測する。そしてもう一つが悪魔本人が言っていた通り、シアの攻撃。
そこでハジメは考えたのだ。なぜシアの攻撃だけ通じるのかということを。もちろんハジメは悪魔の言うシアが悪魔だという話を微塵も信じてはいなかった。なぜなら、今のシアはともかく、出会った当初のシアは本当にポンコツだったのだ。ハジメ達がいなかったら魔物のエサになっていたと確信できるくらいに。他にもライセン大迷宮で粗相をしでかしたことやら、それ以外の残念行動を知っているがゆえに、悪魔説など聞く耳を持たない。
そして、悪魔の今までの言葉を推察した結果出した答えが……
「お前はあくまで人間に対して無敵なだけなんだろ。お前の核が亜人族で構成されている以上、同族にまでその能力は発揮されないわけだ」
つまりそういうこと。これも特殊ではあるが協力強制といえるだろう。人に復讐する悪魔の化身は、憎悪なき同族には危険性を発揮しないと契約が成立しているのだ。もっとも同じ亜人であるユエやティオの攻撃が効いていなかったところを見れば、その無敵の例外足りえるのはフェアベルゲンの亜人限定なのだろうと推測できる。
「いやいや、お見事。正直見くびっていたよ。てっきり僕の煽りを受けて脳みそ沸騰していると思っていたからね。伊達に今まで生き残ってきたわけじゃないわけだ。狙いは悪くない」
悪魔がその言葉と共に再生する。
「だけどその程度で僕を攻略した気になってもらっちゃあ困るなぁ。それに……忘れたわけじゃないだろ」
「ぐぅぅ」
「あぐぅぅ」
「がふぅ」
悪魔の言葉と共に悪魔に攻撃したハウリアが傷を負い始めた。すぐさま対処した香織によって治されたが悪魔の異能は健在だと証明される。
「はい、この通り。彼らも僕の技に簡単に嵌ってくれる。この技はダメージが蓄積すればするほど威力が増していく。僕はダメージを負うとしても微々たるもの、だが君達はこれ以上攻撃しない方がいいんじゃないかなぁ」
悪魔が笑う。お前達の行動は無意味だと。確かに悪魔はその成り立ち上、同族には多少心配りをしなければならないという縛りを設けられている。だがそれは敵対する同族に無条件に負けろという縛りではないのだ。
「なんのこれしき……ボスの攻撃に比べたら生ぬるいわ──ッッ!!」
『然り、然り!!』
だが、ハウリアは折れない。カムの言葉に奮起し、すぐさま悪魔に攻撃を加え、その反動でダメージを負う。
「がふぅ。ふう、流石私、芯に響く素晴らしいパンチだ」
「げほ、げほ。俺達もようやくここまできたんだな」
「おう、もう少し頑張れば。ボスのいる領域まで近づけそうだぜ」
なんて会話を続けながら攻撃の手を止めない。
「ぐぅぅ、……貴様が何なのか……私にも何となくわかる」
同じく受けたダメージを香織によって治療されたカムが悪魔を見据え、その異様な姿にも怯まずに真っ向から向かい合う。
「確かに我々は……多くの者達から虐げられ続けてきた。恨むなとは口が裂けても言えん。私達もまた、そこにいるガハルドの部下のせいで、多くの家族を失った」
カムがガハルドを見て言う。彼の言う通り、彼もまた悪魔の核になっている亜人族達の怨念の一部を共有する者だ。
「そうだ。だから君も恨みなよ。君達にはその権利がある。強くなったんだろ? だったらその力で憎き人間に思い知らせてやればいい。君たちの怒りをねぇぇぇぇ!!」
悪魔がカムを堕落させようと毒を纏った言葉を放つ。
強くなったのなら、仕返しすればいい。
奪われたんなら、奪ってやればいい。
君たちにはその権利があると甘言を囁くのが悪魔なのだ。
だが、カム・ハウリアはそれには乗らない。
「勘違いするなよ。私が怒っているのは……人間だけではない。貴様たち先祖のあまりに情けない姿にも怒りを感じているのだ。人間が憎い。だから滅ぼしてやる。確かに一見すると正当性があるように見えるがな。我々、
カムは悪魔に叩きつける。先祖が持っているその恨み、それに対する瑕を。
「聞いてやるがな。貴様らは抗おうと努力したと言うのか。初めから諦めていたのではないのか。言い訳は許さんぞ。最弱の我らですら帝国という大国の喉元に刃を突きつけることができたのだ。なら……それより恵まれた身体能力があった他の亜人ならそれも容易にできたはずだ。違うか!」
「偉そうなこと言ってるけどさ。それもお前達の力じゃねーだろ。そこにいる南雲ハジメという男が偶々やってきて、偶々厨二病を発揮してお前達に力を与えたからお前らは偉そうなことができるだけだ。そうじゃなかったら今でも虫一匹殺すこともできない最弱種族のままじゃないか……。それで自分が偉くなったつもりならお笑い草だ」
悪魔は言う。それはお前達の力ではないと。それはあくまでよそ者から齎された力であり、ハウリア自身の手で掴み取った力などではないと。
「僕達は運すらなかったと言うのかい? 偶々が訪れた貴様らだけが救われて、僕達は地獄の底で苦しんでいればいいと。一生負け犬に甘んじろと。そういうのかい? それはあまりにも一方的じゃないか。僕達にだって権利くらいあるだろう。だから……」
「違う、そうじゃない!」
カムは悪魔の言葉を遮る。それは至極当然のこと。悪魔が全く見当違いのことを言い始めたのでそれを訂正してやらなければならないという思い。
「運がなかったと貴様は言うがな。そもそもそれが間違いだと知れッ! 私達は運で今ある現状を掴みとったわけではない。そもそもたどればなぜボスが我々に関心を持つようになったのか、そこを理解していれば、おのずと答えた出たであろうに」
カムは叩きつける。自分達がなぜ、今のように強くなれたのかを。それの始まりとは何だったのかを。
「それは何故か。決まっているだろう。我らが……シアという宝を……大事に育ててきたからに他ならない!!」
他のハウリア達も同じなのか皆同時に頷く。
「わかるか。魔力を持って生まれてくる子供達は我らにとって福音だったのだ。我らの反撃の狼煙だったのだ。それもわからず貴様らは自分達とは違うからと排斥し続けてきた。それがいかに愚かな行動だったのか。それすらわからんのか!」
「げばぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その言葉をキッカケに少しづつ情勢が変わり始める。ハウリアの攻撃に対して、反射の夢を使ってくるのは同じだが、受けるダメージの割合が変わってきたのがわかる。
つまり、ハウリア達へのダメージは少なく、悪魔へのダメージが増えていく。
「いい加減聞き飽きたよ。はいはい、君達はそうしてその化物を庇うことで力を手に入れましたと。だけど僕達はそれ以上の力を手に入れたんだ。今からそれを見せてあげるよ」
そしてその状態にまで追い込まれた悪魔は……ついに本気を出すことを決意する。
蟲の濃度が今までにないくらい上がる。それは全てを喰らい尽くす魔群の侵略。その場にある全てを飲み込まんとする暴虐の奔流に流石のハウリアも手を出せない。
ハジメ達も何とか防御しようとするが、おそらく無駄に終わるだろう。それだけ今悪魔が放っている魔力は桁違いなのだ。ユナすらも超えるような魔力が渦巻く中、ずっと悪魔を観察していた雫がそこに光明を見出した。
間違いない。悪魔は何か焦っている。だからこそ、
今までのやり取りを雫は思い出していた。悪魔の行動、仲間達の行動、ハウリアの悪魔への特攻効果。そして悪魔のらしくない言動。
その考察の上で、自身に流れる血が齎す直感を信じ、シアに言葉をかける。
「シア! 聞いてッ! 悪魔の核には何か異物が混じっているッ。私には何かわからない。けど、それはきっとあなたに、あなた達ハウリアにとって重要な何か! きっとあなたにはそれがわかるはず! 呼んであげて! 悪魔に囚われてなお抗い。あなた達の幸せを祈って守り続けている誰かを!」
そうでなければ……シアに対して
そうでなければ……大災害が駆動してそれなりの時間が経つのに未だに眷属の羽化が始まらない理由がないのだから。
雫の叫びを聞いて、シアには一人だけ思い浮かぶ人物がいた。
それはシアにとっても、残された家族にとっても極めて重要で大切だった人。その人がいたからこそ、シアが生きられるのだし、その人がいたからこそ、今のハウリアがあるようなそんな人。
そんな、まさか……。シアの思考に動揺が生まれるが、それがもし本当なら……確かに自分にしかわからないだろう。
だからこそ、未だに力が入らないその身を起こし、悪魔に対して呼びかけるのだ。
悪魔の核の中心にて、被害を抑え続けている人のことを。
「………………母様?」
その時、確かに雫は見た。悪魔の核に亀裂が入り、その真実をさらけ出す瞬間を。
「あなたの正体……
雫はずっと悪魔の真実を見破ろうと見続けていた。そのきっかけを中々掴めなかったが、シアの言葉により揺らぎ、真実を周知にした。隠しているものを暴き出す。真実を探る雫の目が、相手の隠している真実を『見斬った』時、両者の間で繋がりが生まれることになる。
「其は数多の刀匠が求める究極の一刀。我が業が求めるは怨恨の清算。──即ち。宿業からの解放なり」
「──急段・顕象──」
「
雫が振るう神剣。それは物質を切断する刃に非ず。
それが斬り裂くのは業であり、縁であり、運命という目には見えないが確かにある不定形の代物。
そして急段成立により発生した光速を超える刃が悪魔を斬り裂いた時、悪魔の核に潜んでいた確かな光ができた傷より解放された。
姿形はない。雫達の目には光としか見えないもの。だが、ハウリア達にはそれが誰なのかはっきりとわかった。
忘れるはずもない。
ハウリア達皆の母であり、癒し支え続けてくれた大切な人。
『あなた達の負けよ。あの子達はとっくに新しい時代を生きようとしている。そんな時に、とっくに終わった存在である私達が邪魔をするわけにはいかないわ。これからの時代はあの子達が切り開いていくのよ』
『ふざけるな。我らの恨みはこのくらいで晴れたりはせぬ。もっとだ。もっと奴らに復讐を……』
『お黙りなさい! 』
悪魔の核がまだこんなものでは救われないと喚き散らそうとするが、光がそれに対して一喝すると核がみるみる萎んでいくのがわかる。
この現象が指し示すのはすなわち、数千年蓄えられていた亜人族の怨念よりも、
『言ったでしょ。私達があの子達の足を引っ張るわけにはいかないって。ならもう逝きましょう。もちろんあなたもよ、神樹様。あなたの下した決断が間違っていると断じるのはまだ早いわ。この世界が真に自由になった時、あなたの理想は叶うと思うから。どうかその怒りを鎮めてもう少しあの子達を見守ってあげてくださいな』
光が闇の塊を抱きしめながら上空に昇っていく。それはまるでこの世の未練が晴れた霊魂が、成仏しようとしている神聖な光景そのもの。
「待ってください、母様! 私、私!」
そんな光に追いすがるようにシアが叫ぶ。
もしあの光がかつて死に別れた愛する母親なのだとしたら、シアには母に言いたいことがいっぱいあるから。
『そう。あなたにも大切な人がたくさんできたのね。元々あなたならきっと上手くいくと信じていたけれど、元気に成長できたあなたを一目見れただけで良かったわ。逞しくなったあなたにもね』
「モナ……」
シアの隣に立ったカムが妻の名前を呼ぶ。親子が並び立つその光景を見て、光が笑ったような気がした。
『私達の愛すべき家族達。あなた達の幸せを……上の世界で見守っているわ』
そして光が上空に昇っていき、森に満ちようとしていた穢れと共に昇天した。
そして残るのは穢れを禊ぎ、穏やかな気を漂わせる神樹『ウーア・アルト』のみ。
ハジメ達は未だに事態の全貌が掴めないままに。突然出てきた母の偉大な愛によって。大災害の危機は跡形もなく去っていったのだった。
「うう、ひく、えっぐ」
「シア……」
地面に座って泣き出したシアを慰めるようにユエが近づいて頭を撫でる。
「なんというか……すごい人だったんだな。シアの母親は」
「本当……私はあの人を解放しただけで悪魔や大災害に対して特に手を出したわけじゃないのに……」
ハジメからしたら、言い方は悪いが突然嵐のようにやってきた肝っ玉母ちゃんが、世界の危機も家族の危機も変わらないと言わんばかりに何もかも全て持っていったというところだろう。
雫もまた、自分がキッカケになったとはいえ、ここまで上手くいくと思っていなかったので驚きっぱなしだ。
「あの人は……私達にとっても母親みたいな人でしたから……」
「ま、モナさんなら仕方ないよな。あの人にはそれで済ませられる妙な凄みがあったから」
「あの人が死んだことを当初は信じられなかったけど。やっぱり俺達を見守っててくれてたんだな。流石だぜ」
だがハウリア達はそれほど驚いていないようだ。まるであの人なら仕方ないと言わんばかりの言葉から、いかにハウリア達からしたらシアの母が偉大な人物だったのか伝わってくるというものだ。
「悪いな。最後まで参加できなくて……」
『不覚です。今後はこのような術式に対する対策もしなくては』
そして闇の結界から解放された蓮弥達も戻ってくる。本人達は真っ先に脱落させられたことで悔しそうにしていた。
「なんにせよ。もうここから離れましょう。行かなければならない場所もあるしね」
雫の提案に全員が賛同する。
それは戦いの最中に見せられた帝国の様子。
悪魔がやったことなのではったりである可能性もなくはない。だが同時に本当である可能性も否定できないのだ。
特にガハルドなどは一縷の望みをかけ、帝国に向かいたいだろう。あの光景を見て、流石に帝国へ行かないという選択を取る者はいなかった。
一行は再び帝都へ戻る。そこで待ち受ける光景を知らずに。
~~~~~~~~~~~
「…………なぁぁに、これぇぇ……」
現実へ自身を繋ぎとめていた核を失い、夢と現実の間を漂っていた悪魔は完全に不完全燃焼だった。もう悪魔は消えるしかないが、それでも納得できないことはある。
「……一応さぁ、筋は通ってるんだよ。亜人族の怨念の塊である僕が、人類への恨みの塊である僕がさぁ、同胞である亜人族に対してはどーしてもサービスしなけりゃいけないのはキャラだし。そこは仕方ないと思うんだけどさぁ」
道中までハジメ達を圧倒していた悪魔。だがおそらく、自身が顕象する前から、滅びの末路は決まっていた。
「たぶんだけど、亜人族の怨念渦巻く魂の中で
彼女の発する無意識のSOSを察知して駆け付けたハウリア達。それによりある程度悪魔に対抗できるようになったのは間違いない。そして彼らへの接触で彼女が目覚めるのを嫌がった悪魔が多少無理して本気出そうとした。
「そこで盧生の急段発動。モナ・ハウリアという弱所を見切られ、いや、彼女風に言うなら『見斬られ』てかな。それで彼女と盧生との間で協力強制が成立。宿業を斬り裂く神剣によって晴れて彼女は悪魔という檻から解放されて困難に抗う仲間が増えました。ここまではいい。だけどさぁ……」
悪魔がうんざりしているのはこれからだった。
「それであっさり、はい終了っていうのはどうなんだよ。もっとこうさ、あっただろ? 僕だってまだ進化形態を出してなかったし、なにより大災害『樹樹』っていう激しいバトル必須の血沸き肉踊る特大のイベントがあったんだよ。なのにさぁ、それを全部丸っと無視してあっさり解決とか……」
悪魔が吐き捨てるように言うのは、雫によって解放された
「数千年分の怨念だぜ!? そう簡単に払われるわけないと普通思うじゃん。なのにお黙りというあの女の一喝だけで委縮するとか正直ないわー。おまけにウーア・アルトまであっさり身を引いて浄化されちゃうしさ。ああああああああッッ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁ!! これだから『光狂い』は大っ嫌いなんだよ。丁寧に積み上げてきた
それは悪魔が古代の時代から……特に救世主とその弟子の十二使徒辺りで散々煮え湯を飲まされ続けてきた概念。それが光狂い、光の奴隷、光の亡者、光の殉教者などと呼ばれる、己の強靭な意志力のみで道理を超越する人間の中から血筋、環境、人種関係なしに稀に生まれる珍種。彼ら悪魔にとっても脚本家としても天敵ともいえる存在だった。
「何かあると気力に覚悟、絆、覚醒。僕達が趣向を凝らせば凝らすほど鬱陶しくなってくる。正直うんざりだ」
つまるところ悪魔の敗因とは、怨念や絶望と言った負の闇の塊であるはずの悪魔の核に、とんでもない極光が混ざっていたことに他ならない。
「ま、いいか。どうせ中途半端な召喚だったしぃぃ」
いくら条件が整っていたとはいえ、流石に異世界に召喚するというのはかなりの無理があった。もしかしたらそれによって悪魔の存在強度が緩んだために起きたことだと思えば多少留飲は下がる。それに……
「それに……種は蒔いてきたからねぇぇ」
悪魔が口が裂けるほどの笑みを浮かべる。
悪魔はただでは消えない。たとえ消えたとしても後々まで引きずるような爪痕を残してこその
「芽吹くのはおそらくすぐだ。僕はその芽がどのような混乱をもたらすのか。じっくり眺めさせてもらおうか。キーハッハッハッハッハ!」
悪魔と縁ができてしまうことは不幸だ。彼らには彼との縁ができてしまったがゆえに、これから悪魔にとって鑑賞すべき娯楽の一部に成り下がる。
いずれ起きる愉悦を想い、悪魔は普遍無意識の海へと溶けていった。
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種別:邯鄲の夢
元ネタ:千子村正(Fate)
雫の五常・急ノ段
協力強制の条件は「相手に隠していることがあり、それを雫が見斬ることで相手が見破られたと認識すること」
協力強制の条件は厳密に言えば雫本人が暴く必要はなく、雫がきっかけになれば成立する。ただし誰に頼ってもいいが、相手が雫を認識していなかったり、結果的に相手が暴かれたと認めなければ協力強制は成立しない。
例えるなら
「犯人はお前だ」「はっ? 証拠はあるの?」→急段不成立。
「犯人はお前だ。証拠は〇〇」「罪を認めます」→急段成立。
それにより解法と、特に戟法・迅による光速を超えた斬撃が発生。雫の剣は因果や宿業などの目に見えないものを斬れるようになる神剣と化す。因果律をも超えるため急段が成立すれば回避も防御も不可能。
相手の隠している弱点を斬り裂くという使い方が主だが、何らかの事情により斬ってほしいという願望、つまり現状からの解放や自滅衝動がある相手に対しては特攻の効果を発揮する。今回は弱点を隠していた悪魔だけでなくモナに対しても悪魔の核からの解放という願望をかなえた形で条件が成立している。
ちなみにですが雫の破段、急段は全て三種の神器が関わっています。
>モナ・ハウリア
シアの母親でカムの妻。故人。優しくて聡明な性格。臆病で争いことが苦手なハウリア族とは違い、敵から大事な家族を守れるような英雄に憧れていた。自分が化物ではないかと思い悩んでいた子供時代のシアに「人とは違う事が出来て羨ましい」と励ました。病弱だったためにシアが10歳になる前に亡くなった。――Wikipediaより抜粋
本作独自設定
ハウリア族のグレートマザー。
ウルトラトンチキ!
彼女は生涯一度だけ使える未来視最終派生技能『未来視・極定』という技能を持っていた。それは命と引き換えに望んだ未来を手繰りよせ決定することができる未来決定能力というものであり、死の直前に愛する娘や家族達が幸せに笑っている未来を見出したがゆえにあっさり死亡。
ただし、彼女が死ぬ前にシアの存在が他の亜人族に露見して追放されることになった場合、以下のことが起きていた。
①病弱アピールと他種族からもファンがいるほどの美貌を駆使して周囲の同情を買い、追放までの執行猶予期間を捥ぎ取る。
②その捥ぎ取った執行猶予期間を全て家族の魔改造に当てる。ハジメより家族のことを熟知しているのでよりハードな魔改造が可能。その間に自身は気合と根性で病弱を克服。
③ハウリア達が「気合と努力と魔改造だ。つまりは心技体ってやつだよ。分かれや、阿呆」とか言い出すようになる。機甲巨人化創星録に大変身
④家族達と共に樹海でクーデターを起こす。フェアベルゲンの族長たちはハウリアのあまりの豹変ぶりに唖然とし、狂暴な外来種と化したハウリアに対処する間もなくあっさり制圧。ハウリア族による独裁体制を成立させ、モナはフェアベルゲンの女王に。
「生きるということは戦うこと。今こそ立ち上がれ家族たち。樹海の王に私はなる!」
⑤原作開始時には、亜人族全てが彼女の光の亡者と化し、帝国に対して徹底抗戦を行う。その頃には亜人一人攫うのに帝国の精鋭部隊が壊滅するようになる。しかもわざと殺さずに四肢切断、動物を見るだけでPTSDを起こす、帝国にとって未知の毒による酷い後遺症などで苦しむなどを抱えた兵士を大量生産することで兵士達の士気低下と医療院と帝国の財政を激しく圧迫するというおまけ付き。
⑥そのうち亜人奴隷は費用対効果が全く釣り合わないものというガハルドの認識により樹海に不干渉という法律が帝国に制定される。
⑦仮にモナが死んだとしても光の殉教者はしぶとく生き残るのでフェアベルゲンは闘気に目覚めた者が多数いる強国へと進化する。
この設定のきっかけはありふれた学園です。あれ見るとシア母を光狂いにしても面白いかなと思いました。
タイトル詐欺? 錆白兵という戦闘シーンが一文字も書かれなかった日本最強の剣士がおってだな。
そして次回、第六章完結。