ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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半月に一度更新したいと言いながらしっかり一ヵ月掛かっているクソ雑魚作者です。月一更新は最低ライン。

今回はメインキャラではなくサブキャラクターの活躍。これでほとんどのキャラは出せたはず。


クラスメイト達の戦い

 世界各地で戦火が吹き荒れる中、当然ハイリヒ王国王都も戦火の渦に巻き込まれていた。

 

 世界各地が戦場となる中、非戦闘員である民間人を守るために、ある程度人を固める必要があるが、ハジメと真央により強化を施された大結界を有する王都は多くの民間人が避難している。

 

「お前らッ! ここが正念場だ。ハジメ達は必ずやってくれる! だからそれまでここを死守するんだ! 蟻一匹通すんじゃねーぞ!!」

『了解!』

 

 その民達を守るため、連合軍守衛部隊の指揮を命じられたメルド・ロギンズが連合兵に激励を飛ばす。

 

 彼らこそが力なき民の最後の砦。彼らより後ろには戦う術を持たない無辜の民しかいないのだ。激戦区で戦うガハルドとは違う意味で彼らの役割は大きい。

 

 そんな覚悟を籠めた激励を受けた兵士達がハジメが錬成したアーティファクトを駆使し、王都を破壊せんと襲撃する神の使徒や魔物群を全力で薙ぎ払っていく。

 

 ハジメのアーティファクトの力はここでも遺憾なく発揮され、ハジメ製アーティファクトの『誰が使っても同じ成果を上げる』というコンセプトに沿う戦果を出していた。

 

 

 そんな中、周囲の兵士達とは明らかに一線を画す活躍をしている集団が存在する。

 

「うぉおおおおっ!!」

 

 雄叫びと共に地面を爆ぜさせて突進し、兵士に襲い掛かろうとしていた神の使徒に体当たりを決めた男──永山重吾は、そのまま組み伏せた使徒が何かをする前に、その巌のような拳を使徒の顔面に突き落とした。

 

 見た目は美しい姿をした神の使徒の頭蓋が弾けるが、重吾に迷いは見られない。返り血で汚れた姿のまま平然とした様子で体勢を立て直し、そのまま次の使徒を打倒するための行動を開始する。

 

 彼の中にすでに人に近い生物を殺す戸惑いはない。ここに至るまでの訓練の日々。そして実際戦場に出て、殺されるかもしれないという恐怖。人を傷つけるかもしれないという忌避感。それらを乗り越えて今ここに立っている人物の一人だ。

 

 もちろん彼だけの力ではない。舌の上に存在する”悪魔への切符”の効果によるステータスと戦意の向上も大いに関係している。

 

 そして何よりも……彼は今、彼に相応しい装束を着ていた。

 

 そんな重吾に、使徒が背後から大剣を唐竹に振るう。

 

 しかし、重吾はバックステップでスっと相手の懐に潜り込むと、そのまま見事な背負投を決めて使徒を地面に叩きつけた。余りの威力に、地面が放射状に砕けて小さなクレーターができる。

 

 その一撃と衝撃により、神の使徒の中のコアが砕け散ったのだろう。神の使徒は倒れたまま動かなくなる。

 

「やはり……道着はいいな。身も心も引き締まる」

 

 永山重吾専用アーティファクト”戦鬼の装束(ベルセルク)

 

 一見黒を基調とした普通の柔道着だが、その材質は変成魔法と生成魔法を同時に使うことにより誕生した特殊合成繊維でできた特別な物であり、”悪魔への切符”の身体能力向上に加え、重格闘家である重吾にさらなる腕力と頑強さを与えるアーティファクトになっていた。シンプルに肉体を強化するだけのアーティファクトだが、その強化倍率は正面から神の使徒と戦えるレベルにまで達している。

 

 クラスメイト達の詳細なデータを考慮した上で、ハジメはクラスメイト専用アーティファクトを作成し、彼らに与えていたが、専用に作られたアーティファクトは連合の兵士に渡した汎用型のアーティファクトとは一線を画する力を戦場にて発揮していた。

 

 

 そんな重吾を侮れない強敵と判断した神の使徒が五体、彼を挟撃しようと迫る。神の使徒も敵対勢力の中に突出して強い固体がいくらかいることに気付いたのだ。

 

 だがこの戦場にいるのは彼だけではない。

 

「──”白皇蛇ノ威吹”」

 

 白煙が、風に乗って蛇のように宙を駆け、重吾の周囲で防壁となるように渦巻いた。重吾に迫っていた五体の使徒は僅かに白煙に巻かれたものの、銀翼を使って吹き飛ばしながら一度退避する。

 

「っ、石化など」

 

 白煙に触れた先からビキビキッと石化していく光景に、使徒は小癪だと言いたげな表情をしながら分解の魔力で解呪を試みる。

 

「無駄だよ」

 

 石化の白煙を吹かせた術者──野村健太郎が、奈落に住む石化の魔眼を持つ大蛇の魔石を用いて作られた指揮棒型アーティファクト”蛇王の邪眼(バジリスク)”を振るった途端、重吾を守るように逆巻いていた白煙が二手に別れて退避した使徒三体を襲い、抵抗する間もなく一瞬で神の使徒を美術品めいた彫像に変化させる。

 

「”土流壁”」

 

 さらに追加で土属性魔法を行使し、健太郎の攻撃から逃れた残り二体の神の使徒の退路に壁が出現する。そして当然のように、三体の使徒を飲み込んだ白煙は残りの使徒を彫像に変えようと襲い掛かるのだ。

 

「その程度で、私達が倒せるものか!」

 

 だが神の使徒だって負けていない。神の使徒は本来一人で一騎当千の兵器なのだ。それが二体揃っていれば、分解にて白煙と土壁を破壊することは容易だ。

 

 だが何度も言うが、戦っているのは彼だけではない。

 

「なッ、これは……」

「身体が……」

 

 神の使徒が同時に見えない何かで拘束される。

 

「──捉えたよ」

 

 愛ちゃん護衛隊の一人、黒い手袋を嵌めた菅原妙子が両手の十指を動かしながらそう宣言する。

 

 視力を強化することができればわかっただろう。彼女の黒い手袋の十指の先から視力を強化して辛うじて見えるというレベルの超極細超合金ワイヤーが伸び、神の使徒に絡みついて拘束しているのが。

 

 菅原妙子専用アーティファクト”女郎蜘蛛の糸(フラウ・シュピーネ)

 

 オスカーの研究室にて見つかった黒手袋というアーティファクトの設計図を参考に、操鞭師菅原妙子専用としてハジメが開発したアーティファクトだ。

 

 戦争が始まった当初より、彼女の十本の指先から伸びる鋼糸が、縦横無尽に戦場に駆け回り、幾度も的確に敵を拘束、もしくは切断している。

 

『操鞭師が紐状のものを自由に操れる天職なら、頑張れば超極細の金属ワイヤーも操れるだろ』

 

などと宣うハジメに対し、最初はなんて無茶なと思った妙子だったが、今は想像以上にしっくり来ていた。

 

 魔力操作にて魔力を流すことでより繊細に操ることができるようになった糸は、センサーの代わりにもなる。まるで身体の感覚器官が増えたような感覚に慣れてしまえば、以前よりもずっと視界が広がったように感じていた。

 

 そして連携により彼女の罠に誘い込まれた神の使徒の末路は一つだ。

 

「はぁぁぁぁぁぁ──ッッ!」

 

 斬った相手の魔力を奪い、それを刃の切れ味に変換することのできる二刀一対のアーティファクト”虚空ノ双牙(コクウノソウガ)"を振るう玉井 淳史が神の使徒の一体の首を跳ね……

 

「いくよぉぉ──”氷獄”」

 

 奈落の底のエリアボスの一体である氷結鳥の魔石から作られた杖型アーティファクト”氷結鳥の息吹(フリージア)”を操る宮崎 奈々が放った氷属性最上級魔法が一体を氷漬けにした後、粉砕する。

 

「やっば、このアーティファクト凄すぎ。前使ってたのと全然違うんだけど……」

「全くだな。もう南雲には頭が上がらねぇよ」

 

 奈々と淳史は以前とは比較にならないほど強力になったアーティファクトに戦慄する。気分は店で売っていた装備で満足していた冒険家が、ダンジョンに眠る伝説の武器を手に入れたような感じだ。

 

「ぐぁぁぁ!」

「ッ、待っててください、今行きます。"聖典”!」

 

 怪我をした兵隊がいても関係ない。

 治癒師としての技能を大幅に上げるアーティファクト”治療女神の杖(ディアン・ケト)”を携えた辻綾子が傷を跡形もなく癒す。

 

 神の使徒相手に善戦どころか圧倒する生徒達。

 

 その頼もしい姿は連合の士気を上昇させ、つられて連合兵士が負けじと敵の戦線を押し返す。

 

 だが敵とて負けてはいない。まるで在庫を一斉に処分するかの勢いで神域から送られてくる神の使徒。

 

 空を埋め尽くす大軍勢は、今もなお純粋な殺意で持って地上の人間を見下ろしている。

 

「うぇ、まだあんなにいるしー」

「感情がないのは厄介だな。恐怖による躊躇がない。不利になったから撤退するという思考も存在しないのだろうな」

 

 うんざりした表情を隠さない奈々に対して、重悟が顔を険しくする。

 

 今はこちらが圧倒している。だがこちらは無限に戦えるわけではないのだ。物量による攻撃を続けられたら、いずれ限界が訪れるのは自明の理。

 

 だからこそ、この戦場では……彼女こそが最重要人物なのだ。

 

「"聖寵"!」

 

 その可憐な声と共に、生徒達に幾度目かの祝福が与えられる。

 

 降り注ぐ光が、彼らに無尽蔵の魔力を齎した。

 

「きたきた。よーし。もうひと頑張りしますか!」

「だな。みんな頑張ってるんだ。ここで倒れてなんていられねぇよな!」

 

 彼らの魔力が切れそうになる度に度々行われるのは彼らの先生、畑山愛子の加護だった。

 この世界に来て蓄えられた信仰によって、愛子は一種の神域に達しており、それにより彼女の神の使徒である生徒達に無尽蔵の魔力を与えられている。

 

「豊穣の女神様の加護だ!」

「彼女こそが真なる神の代理人だ。皆の者ッ、必ず邪神の使徒を討ち取るのだ! 大義は我らにあり!」

「おお──!!」

 

 そして生徒達ほどではないが、愛子の恩恵を受けることになった連合騎士達の士気が上がっていく。

 

 それにより神の使徒軍団相手でも互角以上に渡り合えているわけだが、当然神の使徒は愛子の重要性を理解しており、彼女がいる司令塔には数十を超える使徒が常に押し寄せていた。

 

 

 ~~~~~~~~~

 

 司令塔にて幾度目かの"聖寵"により自身の教え子に魔力を送った愛子は、ずっと祈り続けていた。

 

「愛子、少し下がってはどうですか? 魔力を送るのも楽ではないのでしょ?」

「いいえ。皆が戦っているのに、私だけ休むわけにはいきません。まだまだいけます!」

 

 リリィの心配する声を他所に、愛子は疲れを他所に気勢を上げる。

 

 この場所はこの戦いでの文字通り司令塔なのだ。自分がいることでより狙われることがわかっている以上、自分が臆するわけにはいかない。

 

 その想いに反応したのか、司令塔目掛けて次の神の使徒の部隊が押し寄せてきた。

 

「反応多数! ちくしょう、まだあんなにッ……」

 

 司令塔にて観測魔法を使用していた魔導士が思わず苦言を漏らす。

 

 空からこちらに現れる邪神の使徒はさらに数十体追加されていた。おまけに地上では無数の魔物が真っ向から結界を破ろうと捨て身の突進をしてくる。敵の無尽蔵の戦力を見て、トータスの住民は異世界人である愛子達がいなかった時のことを考えてゾッとする思いを抱いていた。

 

 天空の使徒が分解砲撃を司令塔に叩きこむ。それはハジメがより強固に作り上げた対分解処置が施された結界によって阻まれるが、対分解処置にも限界はある。それがわかっているからこそ、神の使徒は数による攻撃を辞めないのだ。

 

「じゃあ、そろそろ俺も行きますね。先生」

「仁村君……気を付けてください」

「大丈夫です。南雲が作ってくれたアーティファクトと、先生の加護があれば、いくらでも戦えますよ」

 

 その自信のある言葉と共に、眼鏡を手で上げるのは愛ちゃん護衛隊の一人である弓術師、仁村明人。

 

 この司令塔を守る守護者の一人だ。

 

 

 司令塔には屋上に続くせりのようなものが組み込まれており、それにより屋上に到達した明人は、手に持つ大型の弓を構える。

 

 仁村明人専用アーティファクト”月女神の蒼穹(アルテミス)

 

 原始的な弓に見えるが、実は高度なコンピュータ処理により使い手の命中精度を上げ、魔法式加速機構により神の使徒すら捉えられない高速の矢を放つことを可能にする。

 

「より取り見取り大量だな。じゃあ……狙い撃たせてもらう!」

 

 明人は矢を番え、敵に向けて構える。もちろんその矢もハジメ謹製の特別性だ。アザンチウム鉱石を主原料に、数多の金属を配合して作った超合金に加え、幾重にも魔法処理を施された無二の一品。

 

 ユナにより提供された増殖術式により、魔力さえ切れなければコピーも無限に作れる優れものだ。

 

 そんな矢が司令塔の屋上から放たれる。そしてその結果を明人は手を離した瞬間にわかっていた。

 

 自身の射程圏外から真っすぐ核を撃ち抜かれ、墜落する神の使徒。すぐさま警戒を露わにするが、次々飛来する矢の前に成す術なく倒れていく。

 

 弓術師の天職は、中近距離に適性のある投術師とは違い、長距離狙撃に高い適正を示す。その天職の性質上、大迷宮などの狭い場所では真価を発揮し辛いが、野戦などでは極めて強力な力を発揮する天職だった。

 

 その天職の力を遺憾なく発揮し、仁村明人は神の使徒をただの一体も司令塔に近づけさせない。

 

「さて、地上は……問題ないな。あいつが暴れてる」

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~

 

 

 

 地上にて無数の魔物が群れを成して王都に突撃する光景は、魔物の襲撃に慣れたこの世界の住人をして絶望に膝を付きそうになるものだった。

 

 なぜなら魔物の数もそうだが、何より全ての魔物が異常だ。魔物とて生き物である以上、そこには生物としての生態系というものがある。

 

 そう、そこには曲がりなりにも生きる意思があるのだ。

 

 だが、今突撃してきている魔物は違う。

 

 どの個体も目が血走り、同種族であろうと踏みつぶし、自身の身体が砕けようとも関係なく王都の大結界に突撃する。

 

 その姿に真っ当な生物の様相はない。まさしくこの世界を破壊するためだけに存在するおぞましい生物。

 

 大災害『群体』とはまた違った脅威の姿だった。

 

 連合軍の兵士達もハジメから齎されたアーティファクトにて薙ぎ払うようにして攻撃しているが、神の使徒以上の数に次第に対応しきれなくなってきている。

 

「クソ、撃て撃て撃て!」

 

 ガトリングレールガンの一斉掃射が魔物の一部をひき肉に変えるが、それを気にすることなく後続の魔物達が押し寄せてくる。

 

 まるで無限に押し寄せてくる津波を相手にする感覚に弾切れが近づく度に恐怖が増してくる。

 

 弾より敵の方が多ければ、この大結界は破られる。

 

 生半可な量をハジメは残していないが、敵の数とて計り知れない。

 

 そんな戦場に恐怖が蔓延しそうになっている中……

 

 

 ──そいつは現れた。

 

「イヤァホォォォゥ──ッッ!!」

 

 ある種の頭の悪い叫びと共に、何かが飛来する。

 

 それは少し離れたところにある丘から真っすぐに魔物の群れに突っ込んでいく。

 

 その姿は一筋の流星を思わせ、まばゆい光と熱量を伴い、すさまじいスピードで魔物に激突し、半径数十メートルを丸ごと吹き飛ばした。

 

「■■■■■■ッ!?」

 

 まるで隕石の衝突のような光景を前に、一部の魔物が理性を取り戻し、その爆心地を警戒し始める。

 

「OK、いい感じだ。俺の相棒もご機嫌だぜッ!」

 

 その声はアクセル音を豪快にならしながら爆心地の中から姿を見せる。

 

「ロォォッックンロォォォォル! さあ、楽しいパーティの始まりだぜベイビィ!!」

 

 そこに現れたのは軍用バイクに乗りながら、テンションを爆上げしている愛ちゃん護衛隊の一人、騎兵の天職を持つ相川昇だった。

 

 相川昇専用アーティファクト”暴風の破壊獣(フェンリス・ヴォルフ)

 

 蓮弥が使っていた移動用バイク”ヴァナルガンド”をベースにより戦闘向きに、より凶悪に改造した代物だ。

 

 常に攻撃に転じられるバリアを纏っており、そのまま超高速で突っ込むだけであらゆるものを引き潰す破壊を齎す。

 

 欠点はその扱い辛さであり、ピーキーな速度の上昇やハンドル周りの不便さは下手な素人が使えばそれだけで自爆してしまうだろう。

 

 だが……彼にその心配はいっさい無用。

 

「お前達全員……俺の相棒の轍にしてやるぅッ! 逃げられるものなら、逃げてみろよぉぉぉぉ──ッッ!!」

 

 一切躊躇なくアクセルをフルスロットルにした相川は魔物の前から消え、一筋の流星と化した。

 

 縦横無尽に魔物の群れに飛び込み、質量と速度こそがエネルギーだと言わんばかりの破壊を繰り返す。

 

 相川昇の天職は騎兵。トータスでは文字通り騎兵として天性の素質があり、ハイリヒ王国でも連絡兵や前線の騎兵部隊が備えている傾向が強い天職だ。

 

 騎兵という天職も弓術師と同じく、狭い大迷宮では真価を発揮し辛い天職であり、ハイリヒ王国側も愛子の親衛隊になった際に昇に軍用馬を提供しようという話になったのだが昇は断っている。

 

 なぜなら馬など乗ったこともないし、世話もできないからだ。

 

 だからこそ、戦闘職の中でも上位に位置するそのステータスの高さで今まで戦ってきたのだが、その天職の真価を発揮できているわけではなかった。

 

『騎兵か……つまり乗り物ならなんでも乗れるってことだろ。なら作ってやるよ。お前専用の……翼ってやつをよ』

 

 ハジメがノリと勢いで怪物マシーンを組み立てるまでは。

 

 バイクが趣味である昇本人の要望なども取り入れて作られた暴風の破壊獣(フェンリス・ヴォルフ)(蓮弥命名)は彼の真価を遺憾なく発揮していた。

 

「無駄無駄無駄無駄ぁぁ! 今の俺は誰にも止められねぇ、俺が、俺が最速だぁ!」

 

 ハジメが組み込んだ神代魔法により摩擦、慣性、重力加速、作用反作用の法則等、運動方程式を自在に操り、物理常識を無視した動きが可能になった暴風の破壊獣(フェンリス・ヴォルフ)にて足自慢の魔物をぶっちぎり、その先の魔物群を轢き潰しながら昇は最高潮のテンションで見事なドリフトをかましながら戦場を駆け回る。

 

 魔力を与えれば与えるほど速度が速くなる機構により、最高速という概念が消失した暴風の破壊獣(フェンリス・ヴォルフ)は既に亜音速の領域に達しており、地上にて魔物を轢き潰した轍が形成されていく。

 

 余談ではあるが、愛ちゃん護衛隊に所属していた時の相川昇という少年は極めて大人しい部類の少年であり、間違っても戦場で奇声を上げながら叫んだりすることはなかった。

 

 どうやら相川昇はハンドルを持つと性格が変わるタイプだとアーティファクトのテスト中に判断したハジメはこの戦いが終わったら暴風の破壊獣(フェンリス・ヴォルフ)を回収することを誓い、愛ちゃん護衛隊の仲間は間違っても彼の後ろの座席には乗らないと硬く決意した。

 

 

 ~~~~~~~~~~~

 

 

 真・神話大戦の戦線戦況

 

 戦場:王都周辺、非戦闘民の最終防波堤

 

 豊穣の女神愛子&真・神の使徒&守備連合軍 VS 邪神エヒトの量産使徒&魔物群

 

 戦線状況:最終防波堤ではあるが、敵はどこからでも現れるので常に強い緊張を強いられるも豊穣の女神愛子陣営の優勢で戦闘継続中




あとがき

>専用アーティファクト
錬成師南雲ハジメが持てる技術の粋を集めて使ったクラスメイト達の新たな武器。ヘファイストスによりステータスから身体情報、魔力の波長すら合わせて作られた唯一無二のユニーク武器であり、渡された本人以外はハジメすら使いこなせない。
それゆえに効果は絶大であり、トータスから見たチート異世界人集団の真価を発揮させることができる。
使った本人達曰く、店で売ってる武器を使ってたらいきなり伝説の武器を渡されたような感じ。


個別状況

畑山愛子
天職:作農師
専用アーティファクト:現状無し

この戦いの要。クラスメイト達は愛子から供給される無尽蔵の魔力により力と活力を維持している状態。彼女が倒れれば即座に戦線が瓦解するも、極めて頑強な護りと彼女のためなら命を懸ける教会騎士四人。それに複数のクラスメイトが守護しているので現在は安泰。
生徒を戦線に出して自分だけ後方にいることに思うところがないわけではないが、周囲の想像以上に強大な神の力を自身の器を超えて使用することだけはしない。

「神の力を得ても、先生ならきっと間違った使い方をしない」

かつて語った蓮弥の信頼に応えるべく、彼女は今できることを精一杯行う覚悟がある。


永山重吾
天職:重格闘家
専用アーティファクト:戦鬼の装束(ベルセルク)

ハジメが作ったアーティファクトによって身体能力が大幅に向上。愛子の加護もあり、真っ向から神の使徒を打ち破れるようになる。人に近い姿をしている神の使徒を屠ることに対する抵抗はすでにない。

「何のために力を振るうのか」

かつて蓮弥に貰ったアドバイスを受けとめ、彼なりの答えを持って戦場に立つ。


野村健太郎
天職:土術師
専用アーティファクト:蛇王の邪眼(バジリスク)

魔法使いタイプということであまり凝ったギミックが搭載されたアーティファクトは授からなかったが、彼もまたこの時までに力を磨いてきたので戦力は大幅にアップしている。
辻綾子とは良い感じだが、まだ恋人には至らない模様。

辻綾子
天職:治癒師
専用アーティファクト:治療女神の杖(ディアン・ケト)

治癒能力が大幅に上がるアーティファクトにて戦場の負傷者を癒す戦線維持の要の一人。かつては同じ治癒師であるはずの香織との差にコンプレックスを抱いていたが、準備時間の間に香織には裏の事情があることを知り、割り切る。
健太郎とは良い感じだが、恋人にはまだ一歩足りない。

宮崎奈々
天職:氷術師
専用アーティファクト:氷結鳥の息吹(フリージア)

同じく魔法使い組故にシンプルな杖型アーティファクトをハジメにより授かるが、それにより氷属性魔法の威力が大幅に向上。彼女の魔法の射線上には幾重もの氷の彫像が生成されている。
ここではない別のところで戦っている優花に負けないように、自身を奮い立たせて戦いに挑む。


菅原妙子
天職:操鞭師
専用アーティファクト:女郎蜘蛛の糸(フラウ・シュピーネ)

魔法使い組とは逆に、ハジメと蓮弥と作者の趣味と実益を兼ねたキワモノのアーティファクトを与えられるが、ハジメの無茶振りに応え、短い間に鋼糸を使った操糸術を習得。かつての優花と同じく、厨二戦闘の花形の一つである糸使いとして戦場デビューする。

戦場に張り巡らせた糸をセンサーにも使用でき、それを応用して現在は広い範囲で戦線をカバーしている。
余談だが、捕えられた神の使徒の一部は、何でそんな縛り方知ってるんだよッと仲間が突っ込みたくなるような際どい縛り方をされてたりする。

玉井淳史
天職:曲刀師
専用アーティファクト:虚空ノ双牙(コクウノソウガ)

愛ちゃん護衛隊の一応サブリーダー格の男子。
やたら禍々しい形をしたアーティファクトを与えられるが、その切れ味は抜群。派手ではないが堅実にキルスコアーを伸ばす実力者。
脈無しが明らかな優花を除く、他二人との関係は現状不明。

相川昇
天職:騎兵
専用アーティファクト:暴風の破壊獣(フェンリス・ヴォルフ)

愛ちゃん護衛隊のメンバー……のはず。
アニメ一期では存在を否定され、RoGa先生の漫画版にて辛うじて存在しているくらいの深淵卿より影の薄いキャラ。
一応アニメ二期一話でワンカットだけ彼らしき人物が登場しており、作者的に生意気そうな方を彼だと仮定。

天職も不明であり、彼に関して唯一わかっているのがバイク好きという情報だけなので騎兵の天職を持つとした(原作に見落としがあっても本作ではこの設定を通します)
Fateでいうライダー。

天職の性質上、大迷宮攻略には向いていないというのも愛ちゃん護衛隊に入った理由の一つ。

妙子と同じく趣味と実益を兼ねたアーティファクトを与えられたが、斜め上の強化をしており、バイクに乗ると性格が変わると判明。味方を攻撃することはないが、色々な意味で危険なので神話大戦後はこのアーティファクトを没収する予定。

仁村明人
天職:弓術師
専用アーティファクト:月女神の蒼穹(アルテミス)

愛ちゃん護衛隊のメンバー……かな?
アニメ一期では存在を否定されただけでなく、なんとRoGa先生の漫画版ですら存在しないことにされた、何だかんだ目立つ遠藤浩介を超え、ネームドキャラの中で一番影の薄い男と言っても過言ではない。

一応アニメ二期一話で(消去法的に考えて)彼らしき人物が登場しており、作者的に眼鏡をかけている方が彼だと仮定。

眼鏡をかけているので弓術師の天職を与えられた。Fateでいうアーチャー

相川と同じく大迷宮攻略には活かし辛い天職を持ったのも愛ちゃん護衛隊に志願した理由の一つ。

影が薄すぎてあまり活躍させてあげられなかったが、与えられた仕事はきっちりこなす仕事人タイプ。
公式に関わる人は彼にも出番を与えてあげてください。


メルド・ロギンス
天職:聖騎士
専用アーティファクト:???

原作ではすでに故人であり、本作ではすでに覚醒していた遠藤のおかげで生き残っている人。ハイリヒ王国の人材の中でもトップクラスの有能さを遺憾なく発揮し、守備軍を指揮している。
実は蓮弥に頼み、隠れて魔力操作を習得しており、原作よりも大幅に戦闘力が上がっている人物の一人。
アーティファクトは余裕があれば公開予定。

おまけ

ガハルド・D・ヘルシャ―
天職:不明

かつての部下であるグリッドと死闘を繰り広げるも、彼の不死身に徐々に追い詰められる。
ここまでかと覚悟を決めたその時に、恵里が封印されグリッドの不死身が解除。最期までみっともない姿をさらす部下に直々に引導を渡す。(恵里編の書き損ねた捕捉)




次回はシアかティオか。
原作でもそうだったし二人合わせて短めにまとめるかもしれない。

早くその次のハジメ編が書きたい。

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