ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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今回はハジメとユエの慣らし運転回。

なので久しぶりにあれを書いてみました。

なんかおかしいところがあれば後から修正するかも。


真祖主従の進撃

 首都アヴァターラの大広場。

 

 先ほどまで強大な力が渦巻いていたその場所には、束の間の安息が広がっている。

 

 そんな中、広場の中央に倒れていた一人の少年、南雲ハジメが目を覚ました。

 

「うぅ……ここは?」

「ハジメッッ!」

 

 ハジメが目を覚ました瞬間、傍で固唾を飲んで見守っていたユエがハジメに飛びつく。ハジメは飛びついたユエを受け止めると彼女の様子を確認し、自分が知っているユエであることを感じ取り、安堵の表情を浮かべた。

 

「ユエ……そうか……正気を……取り戻したんだな」

「馬鹿ッ、ハジメの馬鹿ッ! なんであんなことしたの!」

「いや、ユエを正気に戻すにはあれしかないと思ったというか……別に死ぬつもりはなかったというか」

「馬鹿、馬鹿ッ! ハジメの馬鹿ぁぁぁ、うわぁぁあああんっっ……」

 

 ハジメの言い訳など聞かず、ハジメに馬鹿という言葉を繰り返しながら泣きじゃくるユエをハジメは抱きしめる。その腕の中に存在する温もりを感じながらハジメは思う。

 

(ユエだ……俺の腕の中に……ユエがいる)

 

 あまりカッコいい形ではないし、ユエに心配をかけてしまったようだが、ようやく最愛の人を取り戻したとハジメは実感することができた。

 

(やっぱり俺……こいつのこと……好きなんだな)

 

 改めて自分がユエを愛していることをハジメは認識する。まさか自分がここまで一人の女に執着するなど、トータスに来る前の自分や両親に話しても信じないだろう。ハジメは両親の驚愕する光景を思い浮かべる。

 

 ユエと抱き合う中感じる温もりを手放さないために、ハジメはユエを抱きしめる力を強くする。やっと戻ってきた特別を二度と離さないように。

 

 

 

 

 それからしばらくの間、ユエが落ち着くまでハジメはユエを抱きしめていたが、だんだん身体の感覚が戻ってくると別のことが気になってくる。

 

「あー、ユエ、その……そろそろ離れてほしいんだが」

「ッッ」

 

 その言葉にユエは何を思ったのか急いで身体を起こし、ハジメから離れた。

 

「大丈夫ッ、ハジメ? どこか痛い?」

 

 今のハジメの身体は以前とは違う。ハジメの身体に思わぬ異常が出ているかもしれないとユエは焦る。

 

 だが、ハジメが言いたいことはそれではなかった。

 

「いや、身体の調子はすこぶる良好というか……良好だから困るというか。とりあえず……服を着ないか?」

「え?」

 

 そこでユエは、自分の姿が下着すら身に着けていない全裸状態であることをようやく認識した。

 

 

 現在ユエは身体年齢12歳ではなく、ハジメと同様の17歳程度に外見が成長している。

 

 ありていに言えば、以前よりずっと大人の女に近づいた現在のユエは、性的な意味での魅力が段違いに増していた。

 

 以前のユエも12歳という年齢にしては発育は良い方だったが、今の色々成長したユエの姿を見てしまうと、やはり12歳では女としてはまだまだ未成熟な(つぼみ)だったのだとハジメは思い知らされる。

 

 そこでハジメはユエとすれ違った日以降、おあずけ状態だったことを思い出し、さらに文字通り死の淵から蘇ったことにより、そういう本能が刺激されていることに気づき、いろいろ限界が迫っている。

 

 一方自身の姿を認識、ハジメの視線を受け止めるユエも変化していた。

 

「あっ……ッッ//////」

 

 顔が一気に赤くなり、ユエはとっさにハジメに対して背を向け、さらに両腕で身体を隠すようにして蹲ってしまう。

 

「えっ、いや……その、ユエ? なんというか……今更か?」

 

 ユエの反応がいつもと違うと感じたハジメは、ユエに疑問を抱く。

 

 赤裸々に語るなら、ハジメとユエは行きつくところまで行きついた恋人同士である。

 

 つまりもう何度もハジメはユエの隅から隅まで、それこそ恋人同士でしか触れられないし拝めない場所まで触れているのだ。裸を見られたくらいで恥ずかしがる段階はとっくに過ぎているとハジメは思っていた。

 

 だが、それは以前までのユエの話だ。

 

「……()()()は……まだ見せてない」

 

 それはいかなる意味で言ったのか。

 

 文字通り吸血鬼の上位種である真祖になった身体のことを言っているのか。あるいはユエの中に明確に混ざり始めた本来の性格(アレーティア)を指すのか。

 

 

 だが……

 

 

「……ハジメのエッチ」

 

 身体を腕で隠しながら振り返り、目を潤ませながら恥ずかしそうにそんなことを言ってくるものだから、ハジメの理性が吹き飛びそうになる。

 

 以前のユエとは違う、どこかしおらしさを感じるしぐさに、ハジメは性欲と共に、以前にはなかった喉の渇きも感じていた。

 

「ユエ……」

 

 この衝動を抑えるには、もう交わるしかない。

 

 

 そう覚悟し、静かに顔を近づける二人を止めたのは、城跡から発生した膨大な魔力の奔流だった。

 

「ッッ……ハジメッ!」

「そりゃそうだよな。まだ何も終わってねぇんだから」

 

 膨大な魔力と共に世界が徐々に変化していく。

 

 崩れ落ちたはずの城はいつの間にか復活しており、以前より遥かに魔性の魔力と異様な気配を放つ。

 

 何よりその城の背後に現れたのは、地球でもトータスでもありえない、巨大な深紅の満月。

 

 この世界に何か起こり始めている。それを感知した以上、安寧の時間は終わりだ。

 

「ユエ……これを使え」

「うん」

 

 ハジメは宝物庫から適当に布を出し、ハジメが錬成魔法、ユエが変成魔法を使うことで見た目より頑丈な深紅のドレスとなりユエの身を包む。

 

 そして、錬成魔法を行使したハジメはようやく自分の身体の異常を知る。

 

「なんだ、これ……」

 

 魔力の色がより深い深紅へと変わり、その質と量が遥かに増していた。

 

「そういえば俺はなんで生きてるんだ? 香織が用意した蘇生術式が機能したわけでもねぇ。ユエ……俺に何があった?」

 

 死ぬつもりがなかったハジメは、万が一自分が死んだ時のために事前に蘇生術式を香織に施されている。回数に制限はあるし、蘇生限度はあるが、それに賭けてハジメはユエに血を全て与えたのだが、今の自分の身体は蘇生する前と全く違うと分かってしまう。

 

 ハジメの至極当然の疑問に、ユエが答えにくそうに告げる。

 

「あのねハジメ……ハジメは私の眷属……吸血鬼になったの」

「吸血鬼?」

 

 そこで口にも違和感があると思ったハジメが適当に鏡を錬成し、覗き込むと、長く伸びた牙が生えているのが分かった。

 

「私の……真祖の吸血鬼の固有技能みたい。自分が血を吸った相手を吸血鬼にすることができる。……ごめんなさい。それしか方法がなかったとはいえ、ハジメの許可なく、ハジメを吸血鬼にしてしまった」

 

 ユエはわかっている。この吸血鬼化が不可逆の変化であることを。少なくとも吸血鬼の親に当たる自分がいる限り、ハジメは人間には戻れない。寿命も大幅に伸びるし人とは違う時間を生きることになる。

 

 申し訳なさそうにするユエだが、当の本人であるハジメはさほど気にはしていなかった。

 

「気にするな。言っちゃあなんだが魔物食いをしてきたせいで、元々吉野や香織からは身体の構造が異形だって散々言われてきたしな。今更奈落産まれのごった煮キメラから吸血鬼に変わっても大して変わりゃしねぇよ。それに……」

 

 ハジメが魔力放出を行う。その力は以前とは比較にならないほど上がっており、もはや成長ではなく進化の領域にあることが分かる。

 

「身体の奥底からすさまじい力が漲ってくるのを感じる。今の俺にはこの力が必要だ。……あのおっさんにリターンマッチを仕掛けるためにはな」

「叔父様……」

 

 ユエは叔父のことを思う。

 

 再会した時、ユエの目から見た叔父ディンリードは、すれ違う前の優しかった頃の叔父そのものだった。

 

 だが、それが自分の願望か、客観的事実かどうか自分では判断がつかない。

 

「ハジメ、聞いてほしい」

 

 そこでユエは魔王城に連れてこられてからの日々をハジメと共有する。

 

 魔王城の一室で目を覚ました自分は魔力を失い、ただの無力な小娘になったことを知ったこと。

 

 捕虜であるはずの自分に不自由をさせないように配慮が行き届いていたこと。

 

 不忠者の魔人族に襲われた時、叔父様が助けてくれたこと。

 

 過去のことを共有し、自分の力を取り戻すために、アヴァタール王国に戻ってきたこと。

 

 そして……

 

 

「すまない、アレーティア。私にはもう……時間がないのだ」

 

 

 血の池に落とされる寸前の、叔父の声。

 

「あの時の私は魔力を失ってて、叔父様の状態が分からなかった。けど……今思い返せば、叔父様は何かに耐えているようだった」

「大災害……南の大陸に封じられているってのは確か淵魔って奴だったな。王国の資料を探しても碌な資料が出てこなかったが……」

「間違いなく今の叔父様と関わってる。私の知る叔父様はハジメが戦った時のような力はなかった」

「どのみちもう一度行かなきゃならねぇんだ……ここから生きて出るにはな」

 

 世界の変革は済んだ。その結果生まれたのは、魔界。

 

 周囲に漂う瘴気は並の生物の存在を許さないほど禍々しい気配を放ち、復活した城の周辺には今まで感知していなかった様々な気配が渦巻いている。

 

「こんな空間でむしろ力が湧いてくるのは吸血鬼化した影響か。どういう理由で俺の復活を認めたのか知らないが、今度は以前のようにはいかねぇ。いくぞ、ユエ。俺たち二人で、この大災害を乗り越えるんだ」

「……うん」

 

 ハジメはあえてそれ以上の言葉を言わなかった。

 

 本当は再会した時、言いたいこと、伝えたいことが山ほどあった。

 

 だが、今はその時ではない。今も世界中で仲間たちは命を懸けて戦っているのだろう。

 

 ならば自分たちもここで止まるわけにはいかない。

 

(想いを伝えるのは、全て終わった後だ)

 

 ハジメは改めて決意を固め、ユエと共に、魔界と化した旧王都を進み始めたのだった。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 魔界と化した王都、そこに足を踏み入れたハジメたちに最初に立ちふさがったのは、ハジメの認識でいうところの『ゾンビ』だった。

 

「がぁぁぁッ」

「あぁぁぁッ」

 

 ハジメとユエを見つけた瞬間、確かな敵意と共にハジメとユエに襲い掛かる。

 

 当然、殺意を向けた瞬間、ハジメのドンナーとシュラークが複数のゾンビの頭を吹き飛ばす。

 

 ゲームのゾンビならここで終了。だが魔界のゾンビは気合いが違うらしい。その場ですぐさま頭を生やすと何事もなかったかのようにハジメ達に襲い掛かる。

 

「ちッ、頭を吹っ飛ばされても死なないゾンビとか、ゾンビのキャラじゃねぇだろ」

 

 ゲーマ視点でものを言ってもしょうがないとハジメがもう少し大きい銃器を錬成しようとした瞬間。

 

「ふっ」

 

 ユエが腕を振るう。

 

 そして発生する暴風。

 

 ユエの腕の一振りで発生した暴力、たったそれだけで迫るゾンビが纏めて消し飛んだ。

 

「おいおい」

「すごい。魔力による身体強化なしで、この力……」

 

 今のユエにとって自動再生持ちのゾンビなど敵ではない。まずは身体能力からということでユエがユナより継承した体術にて無双を開始した。

 

 吸血鬼の能力に身体能力を強化した状態で腕を振るえばゾンビの集団がまとめて塵となるのだ。

 

「じゃあ俺も試してみるか」

 

 ハジメはあえて銃火器を取り出すのを辞め、柄にもない素手での攻防を選択する。

 

 ゾンビの一体がハジメに向かって腕を振り下ろすと地面が爆ぜて吹き飛んだ。

 

 その威力は少なくとも奈落の底の序盤程度の力があるのをハジメは瞬時に察する。

 

 そう、ハジメに動揺はない。戦闘モードに入った瞬間、賢者の石(エリクシル)も瞬光も使わず、視界がスローになったのだ。

 

 ハジメは右こぶしを握り締め、ゾンビの顔面に向かって突き出す。

 

 武術など知らないハジメが繰り出すただの暴力の塊のような攻撃は、一撃でゾンビを粉々にする戦果を挙げた。

 

(すげぇ、まだ全然本気なんざ出してなかったのに)

 

 軽いジャブのつもりで打った拳がこの威力。以前の身体能力でもこの結果は出せないことはなかっただろうが、実際動いてみて自分の力が大幅に上がっているのをハジメは実感していた。

 

 そしてユエが反対側で暴れまわる中、ハジメとユエの二人が王都のゾンビを駆逐するのにさほど時間は掛からなかった。

 

「ユエ、一度いいか?」

「何? どうしたの?」

「そういえば預かってたなと思ってな」

 

 ハジメが宝物庫から取り出したものをユエに投げ渡した。掌に収まるそれをユエは受け取るとそれが自分のものだということがすぐに分かる。

 

「これ、ステータスプレート?」

「ああ、ここで自分の状態を一度把握するのは必須だと思う。一度見てみようか」

 

 そしてハジメも自身の宝物庫からステータスプレートを取り出し、中身を表示させる。

 

 

 

 ====================================

 

 ユエ・アレーティア・アヴァタール 323歳 女 レベル:1

 

 天職:神子   職業:冒険者   ランク:金 

 

 筋力:125000

 体力:105250

 耐性:100001

 敏捷:118000

 魔力:385000

 魔耐:385000

 

 技能:真祖[+死徒創造][+魅了の魔眼][+変身]・自動再生[+痛覚操作][+再生操作][+超速再生]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収][+身体強化][+魔素生成]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動][+ラプラスの小悪魔]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+血盟契約][+眷属強化]・神ノ律法[+魂殻霊装][+遅延装填][+二重装填][+術式解放]・高速魔力回復・生成魔法・重力魔法・空間魔法・再生魔法・魂魄魔法・昇華魔法・変成魔法

 

 称号:真祖の吸血鬼

 

 ====================================

 

 ====================================

 

 南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

 

 天職:錬成師 職業:冒険者   ランク:金

 

 筋力:50950

 体力:48190

 耐性:58200

 敏捷:45450

 魔力:84780

 魔耐:84780

 

 技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+集束錬成][+想像構成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・自動再生[+痛覚操作][+再生操作][+超速再生]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+血盟契約]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・鋼纏衣・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破[+覇潰]・生成魔法[+無機物干渉魔法]・重力魔法・空間魔法・再生魔法・魂魄魔法・昇華魔法・変成魔法・言語理解

 

 称号:真祖の眷属

 

 ====================================

 

「これは……」

「……すごい」

 

 まず二人がステータスを見た感想がそれだった。

 

 技能の方は後で詳細含めて確認するとして、やはり目を見張るのがステータスの激増である。

 

 真祖の吸血鬼というのがどういう存在かはまだいまいち理解できていないが、そのステータスを見るだけで魔族の王を名乗れるのが納得の数値である。

 

 ハジメのステータスに関してはユエに比べれば低いが元々ハジメの強さはアーティファクトありきの強さだ。このステータスに加え、魔人の鎧(フォース・アーマー)も加えればさらに数値を上げることは可能だ。

 

 ステータスや技能が戦いの全てを決めるわけではない。それについてはハジメもユエも今までの旅の中で重々承知の上だし、上には上がいることも知っている。だが、この力を使いこなせば、必ず悲願は達成することができる。

 

 

 ──仲間たちと共に、地球へ帰還する。

 

 

 ハジメとユエはその未来に向かって、さらに一歩前進し始めた。

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~

 

 その後もハジメとユエの進行は続く。

 

 広場のゾンビやミイラ、巨大蝙蝠や巨大骸骨などのいかにもオカルトじみた敵を力だけで薙ぎ払っていくうちに、出てくる魔物の種類が変わる。

 

 

 魔王の城に続く道に沿うようにして建てられた石柱の頂点に設置されていた石像の悪魔、ガーゴイルが動き出したのだ。

 

 ハジメがすかさずシュラーゲンの一撃を叩き込むが、ガーゴイルには傷一つ入らない。

 

「あいつ硬いな。物理は効かないから魔法に弱いタイプと見た」

「なら私の本領──”緋槍”」

 

 今まで素手だけで戦ってきたユエがようやく魔法の使用に踏み切る。

 

「んん……」

「大丈夫か?」

「大丈夫……ちょっと感覚が変わったのが慣れなかったけど……これなら」

 

 どうやら今まで魔法で戦わなかったのは、新しい身体に流れる魔力が今までと性質が異なるがためだったらしい。

 

 身体強化を用いて身体に魔力を流すことから始めたユエは、ようやく魔法を使う感覚を掴んだらしい。それでも想像構成を使わずにわざわざ魔法陣を展開するあたり用心しているのがハジメにも伝わる。

 

 だが、ユエの心配を他所に、ユエの放った魔法は正しく発動した。

 

 

 ユエの想像を超える形で。

 

 

 真っすぐ放たれた業火の槍は、回転を加えながらガーゴイルの軍団に向かって突き進んでいく。

 

 ユエの魔法を感知したガーゴイルは身体を硬質化するために身体を黒く変えたのだろう。元々シュラーゲンでさえ傷一つ付かない強度がさらに高まったとみるが、ユエの魔法はそれを力づくで蹂躙する。

 

 どちらかというと石像と炎は相性が良くないと思われたが、そんなもの関係なしに群がるガーゴイルを燃やしていく。

 

 放った炎の槍が数十メートル先まで到達すると、通り道に存在していたガーゴイルの軍団は悉く溶解して朽ちていた。

 

 

「……すごい」

 

 本日何度目かわからないユエの驚嘆の声。ハジメの魔眼石で見ても、まだ慣らし運転のユエが全力を出したとは思えない。にもかかわらず以前よりも魔法の力が遥かに増しているのは間違いなかった。

 

「なら今度は俺の番だな」

 

 ユエが倒した第一波に反応して、城の奥からガーゴイルを始めに、バジリスクや大カラス、黒狼などの魔物が次々押し寄せてくる。

 

 そんな中ハジメは冷静に手を合わせて、軽く足を踏み鳴らす。

 

 その瞬間錬成反応と共に、大地が隆起し、地上を這っていた黒狼や大蛇などの魔物が地面から錬成された鋼鉄の槍に刺し貫かれる。

 

「錬成速度、範囲、そして錬成精度。どれも以前とは比較にならねぇな」

 

 自身の最大の武器である錬成魔法の精度が著しく向上していることに、ハジメは確かな手ごたえを感じていた。

 

 戦闘中もハジメは脳をフル回転させて思考を続ける。

 

 この向上したステータスや錬成魔法によって何ができるのかを。

 

 以前は不可能だと思っていた仮説。可能だがコストとリスクが高すぎて実用に値しないと考えていた理論。

 

 ハジメの頭の中でそれらの情報が最新にアップデートされていく。

 

 

 一方ユエもまた、押し寄せる魔界の魔物を倒している内に自身の新たな肉体に適合していく。

 

 

 感じるのは、以前とは比較にならない完成度。

 

 元々ユエは吸血鬼の先祖返りとして破格の能力を持っていたわけだが、真祖の吸血鬼になったことで以前までの自分を真祖の成り損ないだと判断せざるを得ない。

 

 身体の底からあふれ出す純粋な力。身体の内を色濃く流れる純粋な魔としての魔力。そして復元、増築された魔力回路に乗って出力される魔法。

 

 どれを取っても次元違い。現状肉体のスペックが高すぎて、むしろ持て余しているくらいだ。

 

「”蒼天”」

 

 かつて自身を跡形もなく消滅させたユナの『聖炎』かと見まごうその業火によって、地を這う数千の小悪魔が纏めて蒸発する。

 

 

 こうしてハジメとユエは順調すぎるほどに順調に魔王の城を攻略していく。

 

 

 そして……

 

 

 

「ようこそ、アレーティア。そしてその眷属にして新たな同胞よ」

 

 

 巨大な紅の満月を背に、玉座に座る。

 

 

 魔王ディンリードが笑顔で二人を迎え入れた。

 

 




>ハジメ、あっさり復活する
特に騒動もなくあっさり復活。やはり人間とはいえ、元々キメラ的な生き物なので吸血鬼化も早かった。むしろ吸血鬼になったことで魔物の技能も将来的に強化されるかも

>ユエ・アレーティア・アヴァタール
ステータスプレートに記されたその名は、一度は過去の自分と共に捨て去ったもの。再び名乗ることで、過去の自分と向き合う覚悟を決めたという証を示す。


私の独自の解釈ですが、少なくとも本作のユエという人格(あるいは性格)はハジメに名前を付けられてから誕生したペルソナという設定。
そしてハジメとすれ違ってユエの仮面に亀裂が入り、最後の大迷宮の試練で粉々にされ、ユナの助力とシアとの大喧嘩によって、ユエとアレーティアが混ざり再構築され始めたのが今のユエになります。

>ハジメのエッチ
「「私はユエでもアレーティアでもない。私はハジメ(の理性)を倒す者だ!!」」
当然、今までのユエとは少し性格が変わってきます。肝心の過去のアレーティアに関する公式の情報がほぼ皆無なのでほぼオリジナル設定になりますがご了承ください。
個人的にもっとしおらしいユエとかも見てみたいのです。


次回、叔父様への挨拶リターンズ。
今度は嫁と同伴で挨拶に向かうハジメ。今度こそ上手に挨拶はできるのか。
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