ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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しばらく原作沿いが続きます。流石に大幅カットするので、大迷宮までそんなに話数はかからないはず。


ブルックの町へ

 蓮弥達が巨大神結晶のある洞窟から戻ってきた時、ハウリア族はその全てが変わっていた。

 

「ヒャッハ────!!!!」

「汚物は消毒だぁ────!!!!」

「大将首だ!! 大将首だろう!? なあ 大将首だろうおまえ。首置いてけ!! なあ!!! 」

「へっ! 汚ねえ花火だ……」

 

「……」

 

 おかしい。ほんの数時間前まで彼らは文字通り虫も殺せないほど温厚な種族だったはずだ。それがなぜ少し目を離しただけで魔物相手に無双する世紀末救世主伝説に出てくるモヒカンや島津の首切りマシーンや野菜王子みたいなキャラになるのだろう。

 

「……蓮弥……彼らは一体どうしたのですか?」

 

 どうやらユナにも同じものが見えているらしい。かつて出会ったハウリア族と比較して戸惑っているようだ。

 

 

 これは何事かと思い、彼らの側で見つけたハジメに問いただすも逆にこちらが驚かれた。

 

「蓮弥ッ、お前いったい()()()もどこで何やってたんだ!?」

 

 ……どうやらお互いに話し合わなければならないらしい。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 まずはハジメの話を聞くことにする。

 ハウリア族のことについてだが、どうやら鍛錬の賜物らしい。

 

 

 蓮弥はハジメがブチギレたところまで知っていたが、あの後ハー○マン式のスパルタ訓練を行った結果、タガが外れてあんな感じになったらしい。そこでもう一度彼らを見る蓮弥。彼らは帝国では愛玩奴隷として人気があるらしいが、このざまを見ると価値は大暴落だろう。

 

 

 次は蓮弥の話になった。ユナと共に洞窟に迷い込んだこと。洞窟を抜けた先に拳大の神結晶があったこと。蓮弥とユナの体感時間では数時間で出たはずなのにいつのまにか十日たっていたこと。ただし、蓮弥は意図的に巨大神結晶のことは話さなかった。ひょっとしたらハジメが手に入れようと動くかもしれなかったからだ。あれは人が手を出していい代物じゃない。

 

 

 話を聞いたハジメは割と素直に納得していた。このファンタジーワールドならなんでもありだと思ったらしい。オルクス大迷宮を乗り越えた二人である。すでにその程度で動揺するような浅い経験を蓮弥もハジメもしていない。

 

 

 話しているタイミングで修行が終わったらしいユエとシアが合流した。蓮弥の姿を確認すると二人に文句を言われた。蓮弥達を心配していたらしくシアには泣かれそうになった。言葉にはしなかったが、ユエも同じような気持ちみたいだったので蓮弥は素直に謝った。

 

 

 そのあとシアがハジメの魔改造によって生まれ変わった家族達の様子に卒倒しそうになったり、ハジメ達の旅についてくる発言をしたりした。もっともその際……

 

「ハジメさんの傍に居たいからですぅ! しゅきなのでぇ!」

 

 と若干噛みぎみな愛の告白をシアがハジメにするという展開があった。ユエという本命がいるにもかかわらず香織に次いでシアまでとは……どうやら蓮弥は友人に対する認識を改めなければならないと感じていた。

 

「……いいか、ユナ。あれを天然誑しっていうんだぞ、覚えておけ」

「ハジメ……不誠実なのはいけないと思います」

 

 蓮弥とユナが揃ってハジメに対してジト目を向ける。

 

「おい、こらお前ら。勝手なこと言ってんじゃねぇ。というか俺はユエ一筋だからな。 ……ユエもなんとか言ってやってくれ」

 

 ハジメは最愛の吸血姫にバトンを渡す。まだまだ長い付き合いだとは言えない二人だったが、培ってきた絆はそこらの恋人たちにも負けない自負がハジメにはあった。彼女ならハジメの意図を察してびしっと言ってくれるに違いないと期待するハジメ。

 

 そんなハジメに話を振られたユエだったが、その顔は苦虫を百匹くらい噛み潰したような表情であり、心底不本意そうにハジメに告げた。

 

「……………………………………ハジメ、シアを連れて行こう」

「なん、だと……」

 

 信じていた恋人の裏切りにあったような表情でハジメはポツリと零した。まさかの恋人から援護射撃を受けたハジメはどうしたらいいのかわからず呆然としていた。もちろんユエは事情を説明する。

 

 

 どうやらハジメはユエとシアが旅の同行を認めるかどうかで賭けをしていたことを知らなかったらしく、今日ついにシアがユエに傷をつけることに成功し、ユエはシアの旅の同行を認めるようハジメを説得しなければならなかったというわけである。なおシアは身体強化に特化しており、それに関しては化物クラスらしい。

 

 

 蓮弥としては、ついてくる力があるなら別に構わないと思っていた。大迷宮は難関だ。足手まといならともかく、何かに特化した能力持ちなら活躍する機会はあるかもしれない。

 

 

 そして霧も晴れた当日、大迷宮があるとされる大樹の下に向かうことになった。途中完全武装した熊人族が襲いかかってきたが、ハジメによってスパルタ兵なみの魔改造を受けたハウリア族の前では敵ではなかった。

 

 

 ……うん、本当に以前の原型も残っていない。熊人族の方達もなにが起きているのかわからない顔していたし、シアも年少の男の子の変わりようにメソメソ泣いていたくらいだ。まあ、流石に相手を虐殺しようとした時は止めたし、ハジメも謝っていたが。

 

 

 そしてそんなトラブルがありつつも一行は目的地である大樹の下にたどり着いたのだが……結論から言うと真の大迷宮には入れなかった。

 

 

 “四つの証”

 “再生の力”

 “紡がれた絆の道標”

 “全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう”

 

 

 大迷宮の入口と思しきところにあった印に、オルクスの指輪をはめた際に出てきたメッセージである。どうやら少なくとも4つの大迷宮を攻略するに加えて、その中の再生の力とやらを手に入れなくてはならないらしい。

 

 

 これは仕方ないと、一行は先に別の大迷宮を回ることになった。だがその前に装備を整えるためと、いい加減まともな食事にありつくために、近くにあるブルックの町によっていくことになったのだった。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 遠くに町が見える。周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町だ。街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。おそらく門番の詰所だろう。小規模といっても、門番を配置する程度の規模はあるようだ。

 

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

 RPGのNPCみたいに先程から訪れる人々に同じ質問を門番が繰り返していた。蓮弥やハジメは、門番の質問に答えながらステータスプレートを取り出した。

 

「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」

「後は装備も整えたい」

 

 ちなみに蓮弥もハジメもステータスプレートの中身はいじってある。もしいじっていなければ各パラメータ一万越えの化物が二人いることになってしまう。一人だけなら壊れたと言い訳できるかもしれないが二人だと言い訳に苦労してしまうと蓮弥がステータスをいじることを提案した。

 

「確かに、拝見させてもらった。後ろの二人のプレートは?」

 

 ここで門番は後ろに控えていたユエとシアに注意を移す。そして硬直した。みるみると顔を真っ赤に染め上げると、ボーと焦点の合わない目でユエとシアを交互に見ている。ユエは精巧なビスクドールと見紛う程の美少女だし、シアも喋らなければ神秘性溢れる美少女だ。つまり、門番の男は二人に見惚れて正気を失っているのだ。ちなみに二人に負けない美少女であるユナは聖遺物に戻ってもらっている。

 

「道中魔物の襲撃にあったせいでな、こっちの子のは失くしちまったんだ。こっちの兎人族は……わかるだろ?」

 

 そのハジメの言葉で門番は納得したのか、なるほどと頷いた。この町に入るにあたって、出たり消えたりできるユナと違ってどうしても目立つシアは、ハジメの奴隷という扱いで入ることになった。兎人族は奴隷として人気であり、ましてやシアは紛うことなき美少女。誰かが所有権を主張しないと人攫いが相次いでブルックの町が血の海に沈んでしまう、主に人攫いの血で。

 

「なるほど、随分な綺麗どころを手に入れたな。まあいい、通っていいぞ」

 

 

 その後、門番から換金所やギルドの場所の情報を得て、蓮弥達は門をくぐりブルックの町へと入っていく。

 

「なかなか活気がある町だな」

「ん……」

「なんというか、周りに人がいるってだけで安心できるよな」

「……」

 

 町中は、それなりに活気があった。蓮弥達が、かつてオルクス大迷宮に潜るために泊まった近郊の町ホルアドほどではないが、露店も結構出ており、呼び込みの声や、白熱した値切り交渉の喧騒が聞こえてくる。

 

 

 こういう騒がしさは訳もなく気分を高揚させるものだ。蓮弥やハジメはもちろん、町なんてものを訪れるのが三百年ぶりのユエも楽しげに目元を和らげている。しかし、シアだけは首輪の件で納得していないのか先程からぷるぷると震えて、涙目でハジメを睨んでいたが。

 

「……シア、お前いつまでそうやってるんだよ」

 

 ハジメがうじうじするシアの態度に我慢できなくなったらしい。

 

「この首輪、まるで奴隷みたいなものじゃないですか」

「仕方ないだろ。兎人族は奴隷として人気なんだから」

 

 ハジメの言葉にまだ納得していないシア。そこに町の影でしれっと形成したユナが慰めに入る。

 

「シア、ものは考えようです。これはハジメがシアのために送った贈り物だと思えばいいのです。シアは可愛いですし、ハジメも不安なのですよ」

 

「そ、そうですかね……えへへ」

 

 ユナの言葉を聞いたシアが、照れたように頬を赤らめイヤンイヤンし始めた。ユエが冷めた表情でシアを見ている。

 

「……シア、調子に乗らない……ユナも甘やかさない」

 

 ユエがダメ出しした。シアはユエの体罰をくらい悶絶した。

 

 その後、一行はこの町のギルドへ向かった。ゲームでいうならギルドという場所は、酒場が兼用になっていたりしてとても騒がしい場所、という勝手なイメージが蓮弥の中にあったのだが、イメージとは違いとても綺麗にされている場所だった。左手には飲食店街があるみたいだが、酒を飲んでいる客は一人もいない。どうやら酒場とは別扱いのようだった。

 

 

 ギルドのカウンターには恰幅のいい、人の良さそうなおばちゃん──キャサリンというらしい──が座っていた。隣のハジメなんかは美人の受け付けなんかを想像したのかもしれないが、あいにく精神年齢なら三十を超えている身なのでその辺の現実は知っているつもりだ。

 

 

 そのおばちゃんに魔物の素材の換金とやたら出来のいいマップを貰った後、一行はマサカの宿というところで宿を取ることになったのだが。ここで問題が起きる。

 

 

 部屋が二人部屋と三人部屋しかなかったのだ。男二人に女三人なのだからなんの問題もないように見えるが、ユエがこう主張した。

 

「……私とハジメで二人部屋。シアと蓮弥とユナで、三人部屋を使うといい……それで完璧!」

 

 それは明らかに二人部屋でナニするからお前ら邪魔だと暗に伝えていた。当然反発するものが現れる。

 

「ちょっ、何でですか! ユエさんだけハジメさんと同じ部屋なんてずるいですぅ。……それなら私もハジメさんと同じ部屋がいいです!」

 

 シアも負けておらず公衆の面前で堂々とハジメと同衾希望であることを公言する。なんというかハジメに対する周りの男たちの殺気がどんどん高まっていくような気がする。受け付けの子は顔を赤くして何やら考えに耽っているようだった。

 

 

 ユエとシアの剣呑とした空気が周りに広がり始める。このままじゃまずいと思った蓮弥はさっさと行動することにした。

 

「なあ、君……」

「は、はひっ!」

「……‥三人部屋と二人部屋ね。割り当ては俺とこの子の二人とあの三人で」

「わ、わかりました」

 

 二人がもめている間に部屋を決めてしまう。シアを蓮弥達の部屋に入れても隣のハジメ達の部屋に突撃する様子が思い浮かぶからだ。蓮弥の決定にユエだけは文句がありそうな目で見てくるが、最終的にハジメがそれでいいと受け入れたことでこの話の決着はついたのだった。

 

 




次回はユナ視点予定

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