ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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想定外の進撃

 そこから先の攻略は劇的に変化した。

 

「シア、そこにトラップがあるので踏まないように。蓮弥はあそこの壁にある矢の射出口を破壊してください」

「おう、わかった」

 

 シアが地面のトラップを避け、蓮弥が壁のトラップを右腕で粉々にする。

 

「ハジメ、ここを通りすぎると周りからトリモチや粘液が多数吹き出します。出現する前に辺り一面吹き飛ばしてください」

「ヒャッハァァァァァァ!!」

 

 ハジメが新兵器である十二連回転弾倉付きロケット&ミサイルランチャー『オルカン』を今までの鬱憤を晴らすがごとく乱射して未起動の罠をまとめて吹き飛ばす。

 

 

「天井が落ちてきますが私が対処するので慌てないで下さい」

聖術(マギア)3章4節(3 : 4)……"聖柱"

 

 ユナが発動した土魔法により、落ちてくる天井が支えられる。

 その隙に一行は先へ進む。

 

「ここで止まってください。ここに罠と罠の隙間にできた抜け道があります。ユエ、水の刃で慎重にここを切断してください」

「ん……わかった」

 

もしかしたら製作者も知らないかもしれない、画面外の抜け道的な通路を通り抜けることで先にあった仕掛け全てをスルーする。

 

「シア、そのゴーレムはフェイクです。それを操る本体は……あそこです。あれを思う存分粉微塵にしてください」

「わかりました。殺ルで〜すぅ」

 

 シアが笑顔でありながら、全ての憎しみを込めて丹念に丹念に、ゴーレムを砂になるまで叩き潰す。

 

 

 一行は今までの苦労がなんだったのかというくらい順調に進んでいた。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……解析完了。大迷宮のシステム、把握しました」

 

 ユナは触れたものの思念や記憶を読み取る固有魔法『霊的感応能力』を所持している。以前蓮弥も例の巨大神結晶のところに行く際にお世話になったユナの技能だ。

 

 

 創作物には作者の想いが宿るとはよく聞くが、それは大迷宮も同じらしい。読み取るのに時間がかかったようだが、凝った仕掛けがあればあるほど思念や思考は多くなり、読み取れる情報も多くなる。オルクス大迷宮はその構造がある意味シンプルだった為にあまり役に立たなかったが、ここライセン大迷宮では、ユナの技能が思いっきり役に立っていた。

 

 

 今ユナにはどこにどのトラップがあってどうやって作動するか完全に把握できていた。もしくは頭の中に大迷宮の設計図が入っているといってもいい。まさか製作者も大迷宮のシステムに介入してソースコードを覗き見るハッカーがいるなんて思ってなかったに違いない。ちなみに聞いてみたが試練二割、警告三割、遊び心五割の構成で罠が作られているらしい。それを聞いて一同の殺意が増し、破壊活動がより過激になったのはいうまでもない。

 

「いやー、ユナさんまじパネェですぅ。これでこの大迷宮なんて怖くもなんともないですぅ」

 

 シアが例の石版にむかって、運営ザマァと中指を立てながら言っていた。

 

「本当に助かった。この大迷宮にはマジでストレスしか湧かなかったからな。ユナがいなかったら攻略の目処も立たなかったかもしれん」

 

 ハジメがしみじみ言う。その顔は運営の意図を粉々にするほどの破壊活動を繰り返したお陰でだいぶスッキリしている様子だった。

 

「油断しないでください。まだ攻略は終わっていません。もうすぐ最深部に着くはずですからそこまでは気を緩めないようにしてください」

 

 

 蓮弥もかねがね同意だった。まだ終わっていないのだ。オルクス大迷宮でも最後の試練があったように気を抜かないほうがいいだろう。

 

 

 そこでただ一人だんまりだったユエが疑問をぶつける。

 

「……ユナ、さっきから気になってたけど、どうやって魔法を使っているの?」

 

 この大迷宮で一番割りを食っているのはユエだ。魔法特化の彼女は魔力分解作用のあるこの大迷宮ではろくに魔法を使えない。一応ハジメが用意した超水鉄砲でカバーしていたが、ユナがなんの負担もなく魔法を使っているのが気になるのだろう。

 

 

 そういえば大峡谷でもユナは普通に魔法を使っていたことを思い出す。ひょっとしたらユナの魔法、厳密には聖術というやつは分解作用の影響を受けていないのだろうか。

 

 

 ユナに聞いてみたが彼女は首を横に振った。

 

「いえ、この大迷宮での魔力分解作用の影響を受けてはいますよ。けれどユエもわかっている通り、この環境でも魔法を使う方法はあります。魔力を圧縮して使えばいいんですよ」

「……それは無理、十倍に圧縮しても数秒維持するのが限界……」

「なら、百倍の魔力を圧縮して使えばいいではありませんか」

 

 ユナが語る方法とは完全な力押しだった。十倍でダメなら百倍の魔力を込めて使えばいい。たしかに言うだけなら簡単だが……

 

「おい、まて。そんなことしたら直ぐに魔力が枯渇しちまうだろ?」

「いえ、この程度ならまだまだ大丈夫ですよ」

 

 ハジメが当たり前の疑問を出す。ユエほどではないがハジメもこのエリアの影響を受けていた。魔力量一万を超える彼でもその理屈だと数回ぐらいしか魔法を使えない計算になる。それでも大迷宮攻略から何度もユナは魔法行使を行なっているが一度も枯渇している様子はない。それはつまり……

 

「マジか、どんだけ魔力あるんだよ」

「……魔力怪獣」

 

 そういうことである。いつか機会があったらステータスプレートを手に入れようと蓮弥は決めた。とんでもない数字がでてきそうだ。

 後に一行はユナのステータスを見て納得することになる。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 数時間後、ユナの案内によって大迷宮最深部前に到着した。あれから順調にトラップを避け続けることができ、ふりだしに戻るも踏むことはなかった。ユナがいなければ一週間くらいかかったかもしれない。

 

 

 その部屋はゴーレム騎士が何体も並んでおり目の前にはオルクス大迷宮でも見たような仰々しい扉が佇んでいた。

 

 

「ここって一度入口に戻された部屋じゃねーか」

「大丈夫です?」

 

 ハジメとシアが言うが、ユナは自信を持って答える。

 

「大丈夫です。この部屋にたどり着くまでの順路によってあの扉の先が変わります。正しい順路で到達しないと入口に戻される仕組みです」

「なるほど。なにか条件があってそれを満たさないとふりだしに戻るが発動するわけか」

 

 蓮弥はループを繰り返してユナのいう警告と試練の部屋を網羅することが条件じゃないかと予想する。

 

 

 部屋に入ると似たような部屋で遭遇したゴーレムと同じく動き出す。前回はダミーは無視して本体を狙ったわけだが、今回も同じ方法でいけるか。

 

「ダメです。ここに本体はいません。……というより」

 

 ユナの声が淀み出す。予想外のことがあったようだった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。このままだと入口に戻されるかもしれません」

「っ! それはどういうことだ?」

 

 蓮弥の問いにユナは若干焦って答える。

 

「何者かが大迷宮に直接介入しています。そうでないと説明できません」

 

 それはおかしい。つまり何千年も前に作られた大迷宮を改造できるやつがいることになる。それはつまり……

 

「蓮弥ッ、考えるのは後だ。ユナの話が本当ならその改造とやらが終わる前に突破しないとまずいんだろ」

「冗談じゃないですぅ。このまま入口に戻されてはたまりませんよ」

「……強行突破」

 

 皆が構える。あまり時間はないようだから急いだ方がいい。

 ユナも武装に変わり、蓮弥は構える。

 

「くるぞッ」

 

 ハジメの声と共にゴーレム騎士が一斉に襲いかかってくる。四方八方どころではない。どういう仕組みか、天井を走ってこちらに向かってくる。

 

「明らかに重力が仕事してないぞ。どうなってやがる」

「重力さんのストライキですぅ」

「……キモい」

 

 ハジメとシアが対処しつつも驚愕していた。ユエは壁にわらわらついているそれに何か嫌なものを連想してのか気持ち悪そうにしている。

 

 

「お前ら急ぐぞ」

聖術(マギア)4章2節(4 : 2)……"白雷"

 

 電撃の斬撃によりまとめてゴーレムを吹き飛ばしながら蓮弥は先に進む。この大迷宮では魔法が使えない前提だからか強度自体たいしたことがない。十分強行突破できるはずだ。

 

 シアがドリュッケンを振り回し、ゴーレムを鉄くずに変えていく。時々洩らしているものに対してはユエがシアのサポートをする形で対応している。何だかんだいいコンビになりつつある二人である。

 

 

 ハジメもオルカンを用いてまとめて爆撃している。だが四方八方から襲ってくるゴーレムに思うように進まない。

 

 

 そうしているうちに奥の扉が閉まり始めた。どうやら改造が終わりつつあるらしい。

 

「クソッ、間に合わないか」

 

 蓮弥も纏めて吹き飛ばすがギリギリ間に合わないかもしれない。

 

『蓮弥、私を扉に突き刺してください。』

 

 ユナが念話で語りかけてくる。何か策があるらしい。

 

「ユナ、いくぞッ」

 

 蓮弥は振りかぶり、人外の膂力にて扉に刀をぶん投げた。

聖術(マギア)5章1節(5 : 1)……"風突"

 

 ユナのマギアにより貫通力が増した刀がゴーレムの壁を突き破り、扉に刺さる。

 

聖術(マギア)9章2節(9 : 2)……"断魔"

 

 刀から回路が広がっていく。まるで侵食しているみたいだ。

 

『魔力で改竄を妨害しています。長くは持ちませんので急いでください』

 

「わかったッ、ハジメ急げッ」

 

 蓮弥はユナの元に最速で到達する。ハジメ達は苦戦しているようだ。

 

「ちっ、キリがねえ。……シア、アレ使え」

 

「っ! わかりました」

 

 シアが魔力を集中し出す。これは若干溜めのいる技だったからだ。

 当然シアが無防備になるわけだが、ハジメとユエが近づけさせない。

 そしてシアの準備が完了する。

 

「轟天! 爆砕!!」

 

 気合の掛け声と共にドリュッケンを振りかぶる。オスカーの部屋にてハジメと蓮弥が研究し、ユナの聖術付与によって完成した込めた魔力分だけ質量が増す特殊合金により、その大きさが十倍以上に膨れ上がったドリュッケンを構え、振り下ろす。

 

「ギガントクラァァァッシュ!!」

 

 その巨大質量はそれだけで武器であり、正面にいるゴーレム騎士を数十体まとめて押しつぶした。その衝撃で潰されなかったゴーレムも周囲に吹き飛ばされる。道ができた。

 

「ハジメさん、ユエさん、捕まってください。縮む勢いで飛びます」

 

 その言葉と共にハジメとユエがシアの腰に捕まる。シアが魔力を閉じる。急激に膨らんだ質量が魔力減少により勢いよく縮む。その反動でドリュッケンの先まで飛んでいく三人。

 

 そしてユナを回収した蓮弥と共に閉じかけた扉をくぐり抜けることに成功した。

 

「なんとか突破できたな」

「ん……シアは頑張った」

「あ、ありがとうこざいますぅ」

 

 シアがヘトヘトになりながら答える。あれは魔力の消耗が大きい。今のシアでは無理しても一日ニ回が限度だろう。

 

「それで、ここはどこなんだろうな」

「周りの石が全部浮いてるぞ。天空の城じゃあるまいし」

 

 周りを見回すハジメ、蓮弥も周りを見回すが何もない。

 その時、

「っ!」

 

 シアがハジメとユエを抱えて飛び上がり、その場を離脱する。ハジメ達がいたところに隕石のようなものが降り注ぎ、その一部が方向変換して蓮弥を襲う。

 

聖術(マギア)7章3節(7 : 3)……"聖壁"

 

 ユナがシールドを展開して防ぐ。蓮弥自身は大丈夫でも足場を吹き飛ばされるところだった。

 

 

 どうやらシアが未来視で回避したらしい。大技プラス未来視で魔力が枯渇したのかへばっていたので蓮弥は自分の神結晶から抽出した神水を飲ませてやる。ここでシアに倒れられるわけにはいかない。

 

 

 そしてそれは出現する。

 

「おいおい、マジかよ」

「……すごく……大きい」

「お、親玉って感じですね」

「ここまで来ると巨大ロボだな」

 

 それは宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。全身甲冑はそのままだが、全長が二十メートル弱はある。右手はヒートナックルとでも言うのか赤熱化しており、先ほどブロックを爆砕したのはこれが原因かもしれない。左手には鎖がジャラジャラと巻きついていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。

 

 蓮弥達は警戒する。明らかに他とは一線を画する。

 

 だがそこで聞こえてきたのは気が抜けるような挨拶だった。

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

「「「「……は?」」」」

 

 ライセン大迷宮最後の試練が始まる。




シアの技の元ネタは鉄槌の騎士。シアの最強装備を考えたら中ハンマー。

おまけ
地味に苛立っていたユナによりライセン大迷宮の設計図が流出して十年後、もしミレディがまだ大迷宮にいたら。

ミレディ「ふふふ、今日も楽しく挑戦者の観察をしようかな〜。さあ、今日のお客様は……」

ムッムッホァイ

ミレディ「!!?(突然どこともしれない場所から吹き飛んできた変態に驚くミレディ)」

?「キ○ン流奥義!!」

ミレディ「!!!!?(目の前で変態が分身してミレディゴーレムをボコボコにし始めたのを驚きながら見るしかないミレディ)」

NKT……
\デレデレデェェェェン!!/

攻略法が研究され尽くしてタイムアタックに命をかける変態が出没するようになる。

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