ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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ステータスと武器

 翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

 

 集まった生徒達に手のひら大の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。騎士団長自ら指導とはなんともVIP待遇である。

 

 

 メルド団長本人は、むしろ面倒な雑事を部下に押し付ける理由ができて助かったと豪快に笑っていたが。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 非常に気楽な喋り方でメルド団長は説明を続けた。このプレートに血を垂らすことで所有者登録を行うこと。所持者のステータスをゲームのように表示してくれる便利なアーティファクトであるが、原理は不明であることなど。

 

 

 説明はほどほどに各自、ステータスプレートに血を擦り付け表示されるステータスを確認していった。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 蓮弥はステータスプレートに表示される数字を確認した。

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 藤澤蓮弥 17歳 男 レベル:1

 天職:■■■

 筋力:40

 体力:20

 耐性:18

 敏捷:38

 魔力:10

 魔耐:10

 技能:■■■■・剣術・縮地・言語理解

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「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

 どうやら某最期の幻想などのRPGみたいに敵を倒すと自動でレベルが上がるわけではないようだ。メルド団長の説明は続く。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放だぞ!」

 

 その例でいくと蓮弥は魔力が低いので成長率が低いということだろうか。大器晩成型という可能性もあるから最初から希望を捨てることはないと思うが。蓮弥は少し自分に言い聞かせる。

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

 その説明を聞き、蓮弥は問題の天職の部分に目を向ける。

 

(これはどういうことなんだ?)

 

 天職の部分が黒く塗りつぶされて読めない。

 これは天職が無いとこういう表示がされるのか、それとも他にない例外なのか。技能欄にも読めないところがあることに疑問が生じる。

 

 

 メルド団長に聞いてみたが過去に例がない事象だと蓮弥に説明した。ただ、技能が天職:剣士のものと類似してるのでそちらの方向で伸ばす方針で行くとのこと。

 

 

 蓮弥が周りを見渡すとハジメが冷や汗をかきながら周りを見渡している。ひょっとして良くないステータスだったのか。自分のステータスを確認した雫が蓮弥に声をかけてきた。

 

「蓮弥のステータスはどんな感じだったの? 私はこうだけど」

 

 見ると天職は戦闘系天職である剣士と書かれており、他と比較して敏捷の値が抜けて高い、身軽さ重視の雫らしいともいえるステータスであった。

 

「なるほど、まあ雫らしいステータスだな。天職はてっきり忍者か侍かと思ってたけど」

「? ……侍はまあ……‥分かるとしてなんで忍者なのよ?」

 

 雫は蓮弥の返答に疑問があるようである。なるほど、どうやら()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんとなくそう思っただけだよ、特に深い意味はないから気にしないでくれ」

 

 とりあえず蓮弥は適当にはぐらかすことにした。知らないなら自分がいうことではない。雫はイマイチ納得いかないという顔をしていたが話題が蓮弥の天職欄にいく。

 

「なんで蓮弥の天職は見えなくなってるの。……バグった?」

「お前の口からバグったなんて言葉がでたことに少し驚いたが……俺にわかるわけないだろう。他に例がないらしいし」

 

 そうこうしている内に全員の確認が終了したらしい。その中でもきわめて目立つステータスを持っている人間が数人いた。その中の一人は言わずもがな勇者くんである。

 

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 天之河光輝 17歳 男 レベル:1

 天職:勇者

 筋力:100

 体力:100

 耐性:100

 敏捷:100

 魔力:100

 魔耐:100

 技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

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 といった具合で、まさに勇者らしい並外れたステータスを誇っていた。俗に言うチート能力とはこれのことを言うのではないだろうか。

 本人も、メルド団長に褒められてまんざらでもなさそうだった。

 

 

 一方、逆の意味で目立っていたのはこれも案の定、一人だけ挙動がおかしかった南雲ハジメだった。

 

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 南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

 天職:錬成師

 筋力:10

 体力:10

 耐性:10

 敏捷:10

 魔力:10

 魔耐:10

 技能:錬成・言語理解

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 ステータスの全数値がこの世界の住人の平均値しかないのはもちろん、生徒の中ではただ一人の非戦闘職持ち。

 

 

 このステータスを見てメルド団長も困り顔だった、例の小悪党四人組もここぞとばかりにハジメをいじり始める。どうやらこの世界でもハジメの受難は続くようだった。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 全員のステータスの確認を終えた後、メルド団長が言っていたように各自の天職にあった装備を選ぶために国の宝物庫に足を運んでいた。

 

 

 宝物庫に入って見ると、いかにもファンタジーの世界でしかお目にかかれないような杖やら剣やらが区画ごとに並べられて保管されていた。

 

 

 その光景にはみなテンションが上がったらしく、天職とステータスの件で気落ちしていたハジメも顔を明るくしていた。

 

 

 蓮弥は天職不明ながらもメルド団長により剣士相当の訓練を行うと宣言されていたので、他の戦士系天職持ちとともに武器の保管区画に来ていた。蓮弥のとなりには同じく武器を見に来た雫が歩いている。

 

「流石に圧巻だな。無駄に装飾が多い武器とかあるのが気になるが」

 

 蓮弥が一振りの剣に注目する。柄の部分を見ると無駄に宝石が散りばめられていた。

 

「たぶんメルド団長が言ってたアーティファクトというやつなんじゃないかしら。ほら、こういう宝石ってRPGだと一つ一つに違う能力があったり、つけ外しができたりするじゃない」

 

 雫が言ったことは確かに、RPGの定番といっていい設定だろう。だが蓮弥がそれよりも気になったのは……

 

「お前って、意外とこういうネタわかるのな。てっきりこういうのには興味ないかと思ってた」

「正直私自身はあんまり興味はないんだけど……香織がね」

 

 そう言って雫は光輝と一緒にいつつも、チラチラとハジメの方を気にしてる香織を見ていった。

 

「ああ、なるほど。南雲の趣味を理解するための勉強に付き合わされてるわけか。相変わらずオカンは大変だな」

 

 オカン言うなと抗議してくる雫を軽く流し、蓮弥は武器探しを再開する。雫も探し始め、剣に類するものを取ってみたり軽く振ってみたりしているがイマイチ反応が良くない。

 

「メルド団長曰く、ここらにあるものはどれも一級の装備から国宝のアーティファクトまで揃ってるらしいけど……気に入らないみたいだな」

「悪くはないと思うんだけど、やっぱり刀じゃないとしっくりこないと言うか……」

 

 なるほどと納得する。

 八重樫流は古流剣術であり、当たり前だが得物は刀を用いる。

 

 

 蓮弥はとある理由で()()()()()()()()()()()()()()()()()今は気にしなくてもいいだろう。

 要するに雫が本領を発揮できる武器がここにはなさそうだということだ。

 

 

 そうしていると光輝の周りがまた騒がしくなる。先導していたメルド団長が驚いた表情で光輝の方を見ている。

 蓮弥が光輝の方を見てみると、この宝物庫の中でもひときわ異彩を放つ一本の西洋剣を待っていた。その剣は薄く光っているように見えた。

 

「これは驚いた。これはハイリヒ王国の国宝の聖剣でな。大昔の偉大な冒険家以外誰も鞘から引き抜くことができなかったんだ。いやー、まさか伝説の聖剣に選ばれるとは流石だな。本当に頼もしいやつだよ、お前は」

 

 メルド団長に褒められて光輝もまんざらではなさそうに照れている。

 周りの奴らは流石とか、こいつなら当然だろ、という雰囲気を出している。それにしても聖剣ときたか。

 

 

 結局昨夜は午前0時を過ぎても、なにも起こらなかった。この世界の暦が蓮弥達の世界とずれているのか。それともなにか条件があるのか。判断はつかないが、それならそれで武器をまじめに選ばないといけない。

 

(そういえばDies_irae主人公、藤井蓮もこういう場所で聖遺物にであったんだったか)

 

 区画ごとに綺麗に整備されているからか、立札さえあれば美術館みたいだし。

 

 そう思ってた瞬間だった。

 

 

 

 ミツケタ

 

 

 

「っ!」

「どうかしたの?」

「どこからか声が聞こえてこなかったか? もちろんここにいる連中以外で」

「? 特に聞こえなかったけど」

 

 どうやら雫には聞こえなかったらしい。周囲を探すと閉じられた扉があったので扉を開き中に入る。

 

「ちょっと!? 勝手に入っちゃダメでしょ」

 

 申し訳ないが説教はスルーする。そして奥へ進んでいき、それを見つけた。

 

 それは木製の十字架だった。見上げるほどの大きさのそれはいかにも古ぼけた姿をしているが意外と形がしっかりしている。

 

「なにこれ? 十字架? なんでこんなものがここにあるの?」

「さあな、聖教教会とやらが使ってるのかもな」

 

 けれど本当は予想していた。藤澤蓮弥が手に入れるべきもの。つまりこれが聖遺物なのではないかと。

 

 

 近くで見てみると端の方に血がついているのがわかる。まるで磔にされたような跡だった。Dies_iraeではこういうシチュエーションでヒロインの一人である黄昏の女神ことマリィに出会ったわけだが。

 

 

 正直、浮ついていたのは否定できない。姿形の見窄らしさとは反比例するかのような存在感。……だがこちらに向かってきたのは金髪巨乳の美少女ではなく、……もっとドロドロした、得体のしれないナニカだった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 得体のしれないモノが通り抜ける不快感に蓮弥は意識が遠のく中思った。やっぱり主人公みたいにはいかないなと。




聖遺物らしきものと出会った主人公

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