ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

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作者の執筆時のBGM「とある変態のテーマ」


動き出す王都の闇

 その者らはある部屋に集まっていた。

 

 

 その少し広めの部屋の真ん中には円卓のテーブルが置かれている。部屋の内部は暗い。数本のろうそくの明かりだけが部屋の中を怪しく照らしている。

 

 

 既に円卓の椅子はすべて黒ローブを被った集団で埋まっている。ここにいる者たちは等しく同士。そこに表での上下の関係などない。名前もコードネームで呼び合い皆対等に接する、それゆえに円卓。

 

 

 そう、その者たちはある目的で集まっていた。

 

「……シスターローズ。報告を……」

「はい、シスターアリア。では、私があの者を観察していた記録を提示いたします」

 

 シスターローズと呼ばれた者はあらかじめ用意していた資料を各自に展開する。部屋の中は暗いが、手元の資料はわざわざ光るように無駄に加工されているので問題なく目を通すことができる。

 

 

「では、始めましょう。使徒の皆々様方。今宵、異端者藤澤蓮弥への処遇の決定を……」

 

 

 彼女達の正体は秘密結社ソウルシスターズ。異世界より来訪した華麗なる剣士、八重樫雫を義姉と信仰している。王都の闇に広がりつつある暗部である。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~

 

 まずは彼女達視点で、八重樫雫とはどのような人物であるのか語らなければならない。

 

 

 お姉さまこと八重樫雫。彼女への信仰が広まったのはある王女付きの近衛騎士がきっかけだった。その騎士は訓練を行う際に、女性の使徒達への気遣いによって近衛騎士でありながら使徒の指導係として借り出されていた。

 

 

 そして魔物との戦闘時、その女性騎士は、初の実戦ということもあり、恐怖で半ばパニックに陥った使徒の魔法の暴発によって軽い怪我を負ってしまったのだ。

 

 

 その時、女性騎士は何事もなかったようにふるまっていたのだが、医務室向かっていた女性騎士を雫が突然お姫様抱っこしたのだ。

 

「あの時、足を痛めていたんですね。すみません、もっと早く気が付いていれば……そういうわけだから蓮弥、私はこのまま彼女を医務室に連れて行くから」

 

「まあ、メルド団長にはうまく伝えといてやるけどな。……またあんまりそういうことしてると、後でどうなっても知らないからな……」

 

 なにやら容姿が比較的マシな類人猿も傍にいたが、そんなことは女性騎士にとってどうでも良かった。

 

 

 その後も、選ばれたイケメンにしか似合わない口説き文句の連続で、女性騎士はすっかり覚醒してしまったのだ。

 

 

 そう、義妹(ソウルシスター)として。

 

 

 それからは怒涛の日々が続いた。次々量産されていくソウルシスターの間で、真のソウルシスターを決める聖妹戦争という血で血を洗う闘争が水面下で繰り広げられたが、最終的に秘密結社ソウルシスターズを結成することで戦争は終息した。

 

 

 そう、ソウルシスターズにとって、お姉様こと八重樫雫はまさに神のような人物であった。彼女のためならば大事な職務を放棄しても全然OKと思えるくらいには。そして、そんなソウルシスターズだからこそ。彼女の側には厄介な虫が引っ付いていることに当然気づいていた。

 

 

 名前は藤澤蓮弥。シスターズが雫を日々観察した結果、この男はどうやら雫の幼馴染らしいことがわかった。他にも幼馴染を名乗る勇者もいたが、あちらはソウルシスターズにとって、特に気にしなくてもいい雑魚だと判明したので早々に意識から外した。

 

 

 まさに藤澤蓮弥という類人猿はソウルシスターズにとって敵そのものと言えた。

 

 

 まず、雫との距離が他の生徒達と全然違う。雫自身はどういう理由からか、生徒達の前ではあまり仲が良く見えないようにしていたみたいだが、ソウルシスターズの目はごまかせない。精神的にも物理的にも圧倒的に距離が近い。

 

 

 その様子は、女性騎士ことシスターアリアが蓮弥に思わず、大事な時にクシャミが止まらない闇属性魔法をかけようとするくらいには仲が親密だった。その時はクゼリー隊長にばれてシスターアリアがしこたま殴られたことで事なきを得たが。

 

 

 だがそんな日々に転機が訪れる。その蓮弥がオルクス大迷宮で亡くなったということだった。それからの雫はソウルシスターズの目からみても無理をしているのがバレバレで、その表情は痛々しいものだった。

 

 

 流石のソウルシスターズも雫の大事な幼馴染が死んで良かったというものはいなかった。だからこそソウルシスターズ総出で色々貢物を送ったのだ。無駄にセクシーなランジェリーとか。愛の妙薬という名の媚薬とか。全てはお姉様に元気になってもらうために……次の日にはほとんど捨てられていたが。捨てられていた理由をソウルシスターズは未だにわかっていない。

 

 

 その後も、帝国最強の皇帝相手に始終優位に立つという勇姿を皆で見ていたり、その皇帝が求婚したのを即座に断ってソウルシスター一同ざまぁとか思っていたりした。もちろん、その後も雫へのお姉様愛(ソウル)を送り続けた。少しでも雫の心の傷が癒えるように。もっとも、そのお姉様愛(ソウル)のほとんどが雫にとって意味がないものだったが。

 

 

 そして再び雫がオルクス大迷宮に赴き、帰還した後、ソウルシスターズの間で衝撃が走った。

 

 

 あの憎き類人猿、藤澤蓮弥が生きて帰還したということだった。

 

 それから雫は誰の目から見ても明るくなった。笑顔が増え、精神的に余裕があるのか、放棄していた世話焼きもやるようになっていた。

 

 

 それ自体はソウルシスターズ達に文句はない。むしろ敬愛するお姉様が元気になられたのだから、ソウルシスターズといえど、無事に藤澤蓮弥が帰ってきたことを評価した。だが近い。以前よりも蓮弥と雫の距離が近くなっていた。以前はクラスメイトの前では自重していた態度が完全にリミッター解除されているような感じだった。

 

 

 そのあまりのうらやまけしからん状態に、ソウルシスターズ達は藤澤蓮弥の処遇に関する緊急会議を行うことになったのだ。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「それではまずはシスターローズ。異端者がお姉様に行った所業を上げていきなさい」

「では説明させていただきます。これはシスターAからの目撃情報なのですが……」

 

 ~~シスターAの目撃情報~~

 

 その日、メイドの一人であるシスターAは雫の部屋の前を掃除していた。朝早くだったが、ここにいれば雫に偶然を装って会えるかもしれないという期待を胸に、数十分同じ場所を掃いていたシスターAだが、あろうことか、敬愛するお姉様の声が三つ隣の部屋から聞こえてきたのだという。

 

「今日は教会の一般公開エリアを見に行くんでしょ。なら急ぎましょう」

「いや、朝早くから稽古に付き合わせたのお前だからな……まあ、いいや。じゃあ行くか」

 

 思わず影に隠れたシスターAは影から様子を覗き見る。そこには同じ部屋から飛び出してくる雫と蓮弥の姿があった。そこで……

 

「ちょっと待って……ネクタイ曲がってるわよ」

 

 そう言った後、背の高い雫よりさらに高い蓮弥に近づき、その首元に手を伸ばしてネクタイを直す雫の姿があった。

 

「全く、教会に行った後はリリィとも会うんだから身だしなみはしっかりしないと……」

「あいかわらずオカンか、お前は」

「失礼ね。私は蓮弥の母親じゃないわよ」

 

 その通りだろう。なぜならシスターAの目には、ネクタイを直す雫の姿が、仕事に出る夫を見送る妻にしか見えなかったのだから。

 

 ~~シスターAの目撃情報 完~~

 

「な、なんという、うらやましいシチュエーション」

「お姉様にやってほしい行動トップ5に入る”タイが曲がっていてよ”をやる、だと……」

 

 シスターAの目撃情報にその場に集まるソウルシスターの間に動揺が走る。

 

「落ち着きなさい。……シスターローズ、続きを」

「はい、これはシスターBが共有食堂を利用していた時の目撃情報です」

 

 

 ~~シスターBの目撃情報~~

 これは、護衛騎士の一人であるシスターBが昼食の際に見た記録である。

 

 

 その日、勇者一行は午前中のより厳しさを増した訓練を終え、つかの間の休憩を行っている時だった。本来、この訓練を免除されている雫や、王都で用事があった蓮弥も今日はこの場所で昼食を取っていた。

 

 

 クラスのムードメーカー谷口鈴はせっかくなので一緒に食べないかと二人に持ち掛け、それを雫と蓮弥が快く了承したことで、クラス一同での昼食になったのだ。その様子を少し離れたところで観察していたシスターB。

 

 

 蓮弥が帰ってくるまではクラスメイトとの交流がめっきり減っていた雫だったが、蓮弥次第だが、以前のようにクラスとの交流を持つようになっていた。それを微笑みながら、じっくりねっとり観察するシスターB。食堂であるにも関わらず食事をとろうとしないシスターBに怪訝な視線が集まりつつあるがそんなものは気にしない。クラスメイトの世話を焼く雫もまた良きものなり、その思いで一心に観察を続ける。

 

「なんていうか……蓮弥のそれ……まさに異世界料理って感じよね」

 

 雫はどうやら蓮弥の食べている料理が気になる模様。それは一見すると少し気味が悪い、シロトカゲの丸焼きだった。シスターBにとってはありふれた料理の一つにすぎないのだが、どうやら神の使徒の方々にとってはその見た目は中々受け入れがたいもののようだった。

 

「奈落の底では贅沢に食べ物を選んでいる余裕なんてなかったからな。何しろ魔物しか食べるものがないなんていう劣悪な環境だったし」

 

 その言葉に思わず食事の手を止めるクラスメイト一同。蓮弥達が帰還してからそこそこの時間が経過しているが当然、教会だけでなくクラスメイト達も奈落に落ちてからどうやって生き延びてきたのか気になって問いただしていた。もっとも流石に気を使って遠慮がちにだが。そんなクラスメイトに対して、蓮弥は話してもいい内容は話していた。その聞いているだけでもわかる悲惨な状況にクラスメイト達はいかに自分達が恵まれていたのかがわかり、ハジメの態度も納得がいくと思っていた。

 

「おっと、なんか食事中に悪いな、みんな気にせずに食べてくれ。……それに見た目は悪いけど結構うまいぞこれ。たぶん雫が好きな味だ、ほら……」

 

 そうして一口サイズに切り分けた肉をフォークに突き刺し無造作に雫に突き出す蓮弥。それをこちらも無造作に髪を耳元にかきあげ、突き出された肉を口に運ぶ雫。その行為に、クラスメイト達は先ほどとは別の意味で食事の手を止める。

 

「……本当。意外とおいしい……」

「だろ?」

「でもこっちも悪くないわよ。はい……」

 

 今度は逆に雫が蓮弥にフォークを突き出す。そして蓮弥もまた、無造作にフォークの中身を口に入れる。

 

「……たしかに、結構いけるな」

 

 なん、だと。

 シスターBの脳機能が一瞬停止した。お姉様にやってほしい行動トップ5の一つである、食べさせ合いをいとも容易く達成したからだ。結構人前でやるには勇気がいる行為だと思うのだが、二人はごく自然体で行なっていた。一種の照れもなく、浮かれたカップルのような雰囲気もない、まるでこういうことは何度もやってきて慣れているというように。

 

 

 その後副菜に手を出そうとして周りをキョロキョロし始める蓮弥、シスターBにはわからないが、たぶん何か調味料を探しているようだ。

 

「はい、これでしょ」

「サンキュ」

 

 何も示唆していないにも関わらず蓮弥の必要としているものをすばやく察して手渡す雫。これこれと言いながら食事を再開する蓮弥。クラスメイト達はさっきから少しも食事が進んでいない。シスターBの手の方からギリッと拳が握りしめられる音が聞こえる。

 

「ほら、これだろ」

「ありがと」

 

 逆に雫が探していた付け合わせのサラダにつけるドレッシングを聞かれずとも手渡す蓮弥。雫の手元にドレッシングを置く寸前に先を越されたシスターBは後ろに下がりながらプルプル体を震わせている。

 

「蓮弥……髪に食べカスついてるわよ」

「えっ、マジか。どこだ?」

「ここよ……」

 

 雫が蓮弥に体を寄せ、髪についている食べカスを手で取り、それをペロッと舌で舐め口に入れる。

 

 

 もはや殺気を向けないように必死で我慢するシスターB。お姉様にやってほしいことトップ5の一つミルフィル*1が髪についてるぜを目の前でやられてよく我慢したものだ。

 

 

「急いで食べるからそうなるのよ。もっと落ち着いて食べなさい」

「お前は俺のオカンか」

「失礼ね。私は蓮弥の母親じゃないわよ」

 

 その通りだろう。さっきから延々と繰り返される二人のやり取りはシスターBの目から見て……

 

 

 それを心の中で形にする前に、二人のそういうやり取りをシスターBと同じく延々と目の前で見せ付けられたクラスメイトの代表として鈴が食卓をバンと叩き、立ち上がりながら心からの叫びをあげる。

 

 

 「夫婦か!!」

 

 

「うぉっ!? た、谷口!? どうしたんだ突然」

「何かあったの鈴? さっきから全然箸が進んでないみたいだけど」

 

 突然叫び出したクラスメイトに驚く蓮弥と雫。その反応から自分達がどういう風に見られていたかまったく自覚がないらしいことが伝わる。

 

「ご飯なんてもういいよッ。というかさっきから胸もお腹もいっぱいだよコンチクショウごちそうさまです」

「俺ももういいや、なんか胸焼けがしてきたし」

 

 鈴が席を立つのと同時に他のクラスメイト達が席から立ち上がる。中には黒茶*2を貰って帰るクラスメイトもいるぐらいだった。

 

 

 最後まで意味がわかっていない雫と蓮弥が印象的だった。

 

 

 ちなみに「雫は優しいな。いい加減藤澤は雫に迷惑をかけるなよ」といった類のいつもの勇者節を聖約で禁じられている自称幼馴染な勇者も……

 

「雫、悪いけどそれ、取ってもらえるか?」

 

 と別のやり方で二人のやり取りに介入するというある意味で勇者していたが、

 

「それってどれのことよ? それに反対側にも調味料が光輝の手の届く位置にあるんだから横着しないで自分で取りなさい」

 

 とまるで息子を叱るオカンのようなセリフを返され撃沈した。それ以降は何も言えない。勇者は伺いを立てることはできるが、それをきっぱり拒否されたらその意思に従うしかなくなるのだ。

 

 

 これにはシスターBも内心ざまぁと思っていた。

 

 ~~シスターBの目撃情報 完~~

 

「な、な、な」

「藤澤蓮弥……よもやそこまで……」

 

 ソウルシスターズの面々は藤澤蓮弥の自身らの想像を超えた戦闘力に戦慄を禁じ得ない。中には蓮弥に対して呪詛を撒き始めているものや、無言で机に頭を打ち付けるものも出てくる。

 

「では続いて、シスターCの目撃情報を……」

 

 ~~シスターCの目撃情報 ~~

 

 これはシスターCが夜、深夜の頃に例の野郎の部屋になんとかして入れないものかと考えていた時のこと。

 

 

 なぜそんなことを考えたいたのかと言うと、お姉様が藤澤蓮弥の部屋に入っていったからだ。シスターCがそれとなく聞き耳を立てていたが怪しい物音は聞こえない。だがお姉様を自室に連れ込む時点で万死に値する行為。しかし一部のメイドの奇行が問題視されたからか、用事もないのに神の使徒の部屋に立ち入ってはならないと厳格に言われ始めたのでシスターCにはどうすることもできなかった。

 

 

 このままお姉様があの野郎の毒牙にかかるのを黙っていることしかできないのか、シスターCが絶望しかけていたその時。

 

「あの、どうかしたんですか?」

 

 そこにはお姉様の自称幼馴染の自称勇者が立っていた。

 

「はい、実は……」

 

 シスターCはチャンスだと思った。この自称幼馴染を利用すれば奴の部屋に突入できる。

 

 

 シスターCはあることないこと勇者に吹き込んだ。お姉様に話があったけど、ちょっと怖い印象がある藤澤蓮弥の部屋に入ってしまい、どうしようか悩んでいたこと、ひょっとしたらお姉様の身が危険かもしれない、その他etcetc

 

 

 その話をすっかり信じ込んだ勇者が俺に任せてといい、藤澤蓮弥の部屋に突入しました。

 

「おい、藤澤! お前何をや……って……」

 

 そこには椅子に座った蓮弥と雫、そしてベッドには、女神が眠っていた。

 

 

 月の光に照らされて光り輝く銀髪、女神とはこのような存在だと言われてもすぐに納得してしまいそうな容姿。

 

 

 お姉様一筋を公言しているシスターCも思わず見惚れてしまう美少女がベッドで横たわっていた。

 

「おい、藤澤。その女の子は誰だ? 部屋に連れ込んでどうするつもりだ!」

「……なんでそうなるんだよ」

 

 何やら自称幼馴染(笑)が言い出したが、蓮弥はそれに対してどのような対応を取るべきか迷っているようだとシスターCは判断した。なにやら誓約がどうこう、ユナは対象に入ってなかったうんぬん言っているが今がチャンスとばかりにシスターCはお姉様である雫に話しかけようとして言葉を失った。

 

 

 ある意味美しい横顔だった。その眠り続ける少女を見つめる雫は切ない表情をしているようにも見えるし、彼女に対して闘志を燃やしているようにも見える。一言では言い表せない複雑な表情をした雫に、そのような表情にさせた男に対して敵対心が湧いてくる。

 

「るいじ、おっほん。藤澤蓮弥様、失礼ですがこの方はどちら様でいらっしゃるのでしょうか? 見たところ神の使徒ではないようですが、ここは王宮です。いくら神の使徒であろうと見知らぬ女性を部屋に連れ込むのはご遠慮願いたいのですが」

 

 ついでにお姉様に近づくなと言ってやりたかったが流石に自重した。ちなみにシスターCはこれでも王宮内ではそこそこ偉い方の人物である。

 

「この子は旅の連れだよ。だから怪しいものじゃない」

「怪しくないとおっしゃるのであれば、後ほど彼女と共に我々のところに顔を出すようにお願いします」

「いや、それも難しい。訳あってこの子、ユナは眠ったままで起きないんだ。だから挨拶にもいけないと言うか……できればユナの存在は秘密にしてもらいたい」

 

秘密にしてほしいというのは中々怪しい。秘密にしてほしいと言われてはいそうですかというわけにはいかないが、シスターCはとりあえず話を最後まで聞くことにする。

 

「眠ったまま? 魔法でもかけられているのか?」

「いや、そういうわけではないんだが似たようなものかもな。……というかお前まだいるんだな」

「ならここは俺に任せてほしい。俺が必ずユナを目覚めさせる方法を見つけてみせる」

 

 これはチャンスだ、ひょっとしたら藤澤蓮弥の弱みを握ったかもしれない。何やら自称幼馴染(笑)兼自称勇者(笑)が眠っている少女を勝手に救う宣言をしているがそれを無視し、シスターCが話を続ける。

 

 

「先程も申しました通り、ここは王宮です。身分のしれないものを置いておくわけにはいきません。場合によっては王宮から退去してもらう必要もでてくるのですが……」

 

 うまくいけばこの男を追い出せるかもしれない。シスターCは追い詰める。

 

「あの、もしよろしければ彼女のこと黙っていただけませんか? 私も彼女が怪しいものではないことは保証しますので、お願いします」

「わかりました。今日私は何も見ていないことにいたします」

「おい……いいのかよそれで」

 

 雫のその言葉に手のひらをクルクルさせるシスターC。お姉様のお願いは王宮のルールより優先されるので仕方ない。

 

「光輝も彼女のことは私と蓮弥に任せて余計なことはしないでちょうだい」

「うぐっ……わかった」

 

 こうしてシスターCと勇者(笑)は退出させられてしまった。お姉様だけでは飽き足らず、あのような絶世の美貌を持つ少女まで毒牙にかける蓮弥に対しての殺意は増していた。

 

 ~~シスターCの目撃情報 完~~

 

「おのれ、藤澤蓮弥。お姉様だけではなく他の女にまで」

「切ない顔をしたお姉様も見てみたいが、そのような顔をさせること自体が許し難き所業」

 

「では、皆さま採決します。藤澤蓮弥は罰されるべきものか否か」

 

水面下では小競り合いを繰り広げていた彼女達はここで思いを一つにする。すなわち……

 

「藤澤蓮弥、死すべし!」

「かの者に我らシスターズの制裁を!」

 

 その後も次々と賛同する声が上がる。

 

 クリーク! クリーク!という言葉まで出始めた。

 

 そこで始まりの義妹であるシスターアリアが総括する。

 

「よろしい、ならば戦争(クリーク)です。あの異端者に、我らの想いをたっぷり思い知らせてやりましょう」

 

 王都に潜む闇が今動き出す。

*1
トータスの芋を使ったお菓子。日本でいう芋け◯ぴに似ている

*2
トータスの薬草のお茶。そのまま飲むと苦いので砂糖やミルクを入れて飲むのが一般的




>秘密結社ソウルシスターズ
雫を語る上で外せない義妹による集団。ここで語られるのは本気で雫とワンナイトラブを狙うガチ勢。今もなお増殖中とのこと

>雫、リミッター解除
実はある理由でクラスメイト達の前では蓮弥と仲のいいアピールをしてこなかった雫。蓮弥と離れ離れになったことでリミットブレイクした。ちなみにこんなことになっているのは二人の両親による全面協力のたまもの(特に母親)

>勇者君、目標を追加する
南雲ハジメから白崎香織を取り戻す。
卑怯なことをする人殺しの危険人物である藤澤蓮弥から雫を守る。
NEW 勇者として眠り続けるお姫様を目覚めさせてあげる。
なお、どれも難易度ルナティックな模様

>ユナ、月夜で眠る
ユナは意識がないとなぜか聖遺物の中の十字架に磔状態がデフォルトになってしまうーー鎖拘束マリィのイメージーーので、蓮弥は暇があれば形成して柔らかいベッドで寝かせることにしている。もちろん片時も離れない。流石に雫が部屋に来た時には戻そうかと思ったが凄味がある雫にそのままでいいと言われた。

次回、第二次義妹襲撃事件

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