ありふれた日常へ永劫破壊   作:シオウ

76 / 165
そろそろ更新再開します。

設定集も同時更新しているのでよかったらそちらもご覧ください。

ありふれアニメ5話

雫ちゃんが活躍してうれしいとか、神結晶の色って赤だったけとか色々感想がありましたが、今回はこの一言。

深淵卿がシャァベッタァァァァァァ!!
もちろん設定集に反映済みです。


第5章 前編
海の街エリセン


 剣士の少女が伯父との修練の夢を見始めたのとほぼ同じ頃、少女は夢を見ていた。

 

 

 それはいつかの光景。

 

 

 始まりは些細なこと。

 

 

 料理上手な母親が調味料を切らしていることに気付き、それの買い出しを彼女が買って出ただけである。

 

 

 たまによくわからない調味料を買いに行かされることはあるが、彼女は母親の料理が大好きだったので、今日もおいしい料理が食べられるならと夕日が沈みつつある時間に彼女は外に出た。

 

 

 その日はとても夕日が綺麗で、外に出ているだけで気分が良くなったのを覚えている。

 

 

 生まれた時から過ごしている町のありふれた日常の風景。

 

 

 それが、唐突に変化することになるなど思ってもいなかったのだ。

 

 

 

 

「こんばんわ、お嬢ちゃん。いい月夜ね」

 

 

 突如変わる風景、響く爆音、異様に大きい紅い月とそこら中に倒れている異形。そこで出会った、紅い月を背に黒い服に銀色の髪を靡かせている少女のことを……なぜ最近まで忘れていたのか。

 

「見たところ一般人のようね。……結界に細工……なるほど、シズマね。まったくあの子は……」

「あのー……」

「ごめんなさいね。身内がどうやらおふざけをやったみたい。……本来姿を見られた以上、死んでもらうのが決まりなんだけど……これは? ……なるほど、これも盲打ちの面目躍如なのかしら」

 

 何やら死んでもらうなどという物騒な言葉が聞こえたが、少女にはそれの意味が理解できるほど状況を理解できていない。……ただ、目の前の光景に見惚れることしかできない。

 

「幸いあなたには適正がありそうだし。……いいわ、私が教え、導いてあげる」

「あなたは?」

 

 同い年か年下に見える少女に向かって敬語で話すのはその少女の纏う雰囲気が常人離れしているからか。

 

「あら、そういえば自己紹介がまだだったわね。そうね……私は……」

 

 紅い月を背後に、銀髪の少女は微笑む。

 

 

 

「逆襲の魔女……そう呼ばれているわ」

 

 

 

 これは彼女のオリジン。盲打ちに導かれて、意図せぬうちにこの世界の裏側に関わるようになってしまった彼女の物語。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 蓮弥達が王都を旅立って数週間が経過していた。

 

 途中、蓮弥からしたら胃が痛くなるようなイベントが発生したものの、旅の行程は順調だと言える。蓮弥達はエリセンへの通り道にあるアンカジ公国に到着していた。

 

「すごい行列ね……これ全部商人達なのかしら?」

「これは……少し時間がかかりそうですね」

 

 蓮弥達が入国手続きを取るためにアンカジ公国の入場門を訪れたのだが、商人の行列のせいで入国には時間がかかりそうだという感じだ。雫とユナも予想以上に時間がかかりそうなので少しげんなりしそうになっている。

 

「ひょっとしたら、この国に何かあったのかもな」

「おや? 兄ちゃん達、知らないのかい?」

 

 蓮弥の言葉を聞いていた商人の一人が蓮弥達にアンカジ公国に何が起きていたのか説明した。

 

 

 話によると、つい最近までこの街はオアシスの汚染による疫病が蔓延していたらしく、この街に出入りすることができなくなっていたという。もうアンカジ公国は滅びると誰もが思ったのだが、神は彼らを見捨てなかった。

 

 

 ある日、アンカジの領主の息子が神の使いの女神を連れてきたのだという。その女神は聖なる力を用いて人々の苦しみを和らげるだけでなく、今までないとされてきたアンカジの風土病の特効薬を生み出し、それを無償で病に苦しむ民に配ったのである。その薬により病人が次々と回復していき、街は奇跡の復活を遂げたということだ。

 

 

 奇跡の復活を遂げたとはいえ、汚染により駄目になってしまった食料やその他物資は必要になる。だからこそ、ハイリヒ王国からの要請により、各種商隊が支援のためにここアンカジに集まっているのだという。

 

 

 ハイリヒ王国王都とて余裕があるわけではないのにアンカジにまで気を回していると聞き、蓮弥はまたあの王女様が必死に働いているんだろうなと思っていた。

 

 

「そういうことなら仕方ない。ハジメ達と早く合流したいとは思っているが、順番を待って……」

「失礼する。先ほど蓮弥と呼ばれていたが、もしやあなたは藤澤蓮弥殿では?」

 

 蓮弥達が振り返ってみると、そこには民族衣装に身を包んだ若い青年が立っていた。

 

「あんたは?」

「これは失礼した。私はビィズ、ここアンカジ領主のランズィ・フォウワード・ゼンゲンの息子だ」

 

 どうやらアンカジの領主の息子らしい。なぜそんな偉い人がわざわざ蓮弥の元に来たのか。

 

「君たちのことはハジメ殿に聞いている。よって私の権限で特例で入国を認めさせてもらう。私についてきてくれないか」

 

 一応ステータスプレートで蓮弥の身分を確認したビィズは、蓮弥達を連れて別口からアンカジ公国への入国の手続きを行う。

 

 

 その際に、ハジメ達の話を聞いた。

 

 

 つい先日、とうとう領主の周囲の人間の中からも病に倒れるものが現れ、一か八かハイリヒ王国まで直接救助を依頼するためにビィズがグリューエン大砂漠を渡ろうとして途中で力尽きて倒れたこと。

 もう駄目だと諦めの境地に達していたビィズを香織が癒してくれたこと。地獄に女神を見つけたビィズが彼ら一行に救助を依頼したこと。

 静因石を持ってきてくれるだけでなく、長年アンカジという土地の風土病であった病の治療薬を作って無償で提供してくれたこと。それはそれは熱く語ってくれた。

 

 

 特に香織に対する感謝の念はすさまじく、香織に対する感謝の祈りを毎朝捧げているものもアンカジ中にいるらしい。近い内に銅像ができる予定だとも言っていた。

 

「お前の幼馴染、なんか凄いことになってるな」

「そうね。確かに治癒魔法の開発なんかもやってたけど、香織の魔法がここまで凄いとは流石に思わなかったわ」

「魔法の開発……ですか?」

 

 雫がどこか誇らしげに幼馴染のことを語るのに対して、ユナが疑問を投げかける。

 

「そういえばユナは寝てたから会ったことがなかったわね。私には香織という天職が治癒師の幼馴染がいてね。いつか南雲君が帰って来た時に、どんな傷や病を負っていても絶対に治してみせると意気込んで、いくつか新しい魔法を開発していたわ」

「…………それはすごいですね」

 

 香織が新しい魔法を作ったということを聞いてユナが少し考え込む仕草を行う。どうやらユナにとってそれは意外なことだったらしい。

 

「……蓮弥には以前、話しましたがこの世界の魔法はどこか歪です。当時の私は記憶を失っていたのではっきりしたことが言えなかったのですが……今ならはっきりわかります。おそらく神によってこの世界の魔法体系は意図的に歪められている」

「つまり、エヒトは人類が魔法を発展させることが都合が悪いと思っていたということか?」

 

 以前ユナが言っていたが、そもそも魔法や聖術などの異能の力を使うために必要な魔力を操作する技術は全ての基礎となる部分のはずなのだ。それを意図的に禁忌扱いして排斥対象にしてしまえば確かに、魔法の発展は遅れるような気がする。

 

「そういえば、メルド団長が講義で言ってたわね。既存の魔法の詠唱を省略したり、使いやすくするためにアレンジすることはあっても、新しい魔法なんて滅多に生まれないって……だからこそ香織が新しい魔法を開発したことにこの世界の人達は驚いていたわ」

 

 雫が補足を加える。そんな状態だから魔法は既存のものを使用するだけで新しい魔法を作ろうという発想がこの世界の人々にはないらしい。そもそも魔法とは、神エヒトによって人族にのみ齎された奇跡の法であり、それを生み出すなどもってのほかだという人もいるらしい。香織が新しい魔法を開発しても許されたのは、それが人族にとってメリットを生み出すものであったことと、香織が神の使徒という立場だったからこそだろうと蓮弥は推測する。

 

「話を戻します。だからこそ、そんな環境で一から新しい魔法を作ることは困難を極めたはず。……そうですね、例えば想像構成という技能のおかげで、イメージだけで魔法式を組み立てられるユエのような天才ならともかく、本来新しい魔法を作るという行為そのものが簡単にできるわけではありません」

 

 どうやら、頭の中でイメージしただけで魔法を組み立てられるユエは相当特別らしい。そういう意味ではユナも既存の魔法体系を使っているのでセンスではユエには及ばないのかもしれない。

 

「だから香織は相当魔法のセンスに優れているのか、或いは……」

「ユナ?」

「いいえ、何でもないです」

 

(或いは、ここに来る前に魔法を作れるだけの下地があったのか)

 

 ユナはあえてその言葉を言わなかった。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 一日アンカジに滞在した後、アンカジ領主子息ビィズの見送りを受け、無事に海の町エリセンに辿りついた蓮弥一行。早速ハジメ達と合流するために、バイクにまたがりながら彼らを探そうとする。

 

 

 だがその必要はなかった。なぜなら蓮弥は見た。

 

「いぃぃぃやっほうぅぅ!!」

 

 燦燦と輝く太陽の下、水着にサングラスを着用したハジメがテンションを爆上げしながら、ミュウを乗せたビニールボートを引き、水上バイクで爆走している光景を……

 

「パパすごいのー。おじちゃんより、ずっとはやいのー」

「なっ!? ぐぅ、そんなインチキアーティファクトさえなければ、俺の方が……」

 

 側で見ていた海人族と思わしき男性はミュウの歓声にショックを受けてハジメを恨めしい目で睨んでいる。

 

「行きますよ、ユエさん。受けてみてください、これが今の私の全力です!」

「こい、バグウサギ。返り討ちにしてくれる」

 

 視点を変えてみると、ビーチボールを持ったピンク色のビキニ着用のシアがコートの対面にいる同じく黒ビキニ着用のユエに対して闘志を燃やしている。

 

 

 そしてシアは飛び上がり、ユエに向かってその人外の膂力を込めた強烈なサーブを叩き込む。

 

 

 それに対し、ユエは風魔法を応用してその強烈なサーブを受け止めてシアに叩き返す。それをシアは受け止め再びユエの元へ、どんな競技をしているのか判別できないが、中々スリリングなことをしている。

 

 

 蓮弥が再び視点を変えると、首以外地中に埋まっているティオを発見する。聖遺物の使徒の聴覚ではぁはぁしているティオのセリフを聞くと、放置プレイと地中圧迫プレイも中々とか言っていたので早々無視することにした。

 

 

 彼らは、完全にバカンスを楽しんでいた。

 

「……思ってたより全力でバカンスしてるな、あいつら……」

「そうね……香織の姿が見えないのは気になるけど……」

 

 

 てっきりハジメのことだから大迷宮攻略のためにひたすら準備をおこなっていると思っていたので意外だった。この美しい大海原を見て、ハジメも童心に帰ったのだろうか。確かにエメラルドの海が広がるエリセンの光景は、中々テンションが上がるものだった。

 

 

「あっ! おーい、雫ちゃーん」

 

 そこで一人パラソルの下で法衣姿のまま座っていた香織が蓮弥と雫に気付いたようで声を駆け寄ってくる。

 

「香織!」

 

 雫がバイクの後部から降り、香織に向かって駆けだす。なんだかんだ香織のことを雫はとても心配していたので、無事な姿を見てほっとしているのだろう。顔がいつもより緩んでいるのが傍から見ても確認できた。

 

「会いたかったよー雫ちゃん。元気だった?」

「ええ、なんとかね。香織も南雲君達に迷惑かけてないみたいね」

「当たり前だよ。大迷宮でも頑張ったし、神代魔法だって手に入れたんだから。それと……雫ちゃん随分変わったね。服装も……力も」

「そうね、私だって遊んでたわけじゃないわ。香織も無茶してないでしようね? 色々と……」

「えーと、あはは……」

 

 幼馴染二人が久しぶりの会話に華を咲かせる中、シアが蓮弥の存在に気づいたらしく、球技を中止する。

 

「あ、ユエさん! 蓮弥さん、到着したみたいですよ」

「ん……ハジメ! 蓮弥が到着したから戻ってきて」

 

 続いて蓮弥の存在に気付いたユエとシアが蓮弥の元に集まってくる。そしてユエの言葉を聞きつけたハジメが水上バイクから降りてこちらに向かってくる。

 

「おう、遅かったじゃねぇか、蓮弥。もう少し来るのが遅かったら先に攻略しちまうところだったぞ」

「それにしてはずいぶんエリセンの海を堪能していたように見えるけどな」

「大迷宮攻略は夜まで待たなくちゃならなくてな。それで……」

 

 ハジメが無言で蓮弥に問いかける。わざわざ別行動までした成果を見せろと。

 

 ユエとシアも、遅れてやってきたティオも黙って蓮弥の方をジッと見てくる。

 

「ああ、もう大丈夫だ。ユナ」

 

 蓮弥はバイクから下車し、ユナを形成する。

 

 蓮弥の側で光が溢れ、そこから一人の女の子が姿を現す。その当然の現象に、事情を全く知らない海人族やその他人族はその現象だけでも驚愕に値するのに、そこから姿を現した女の子の姿を見て呆然とするしかない。

 

 輝く銀色の髪、美しい碧眼、黒を基調とした制服に身を包んでいるのは、ハジメ達と別れるきっかけになった少女。彼女が倒れたことにより、彼らの進路は大きく変更せざるを得なかった。

 

「「ユナ(さん)!」」

「皆さん、ご心配をおかけして申し訳ありません。この通りもう大丈夫です」

 

 ユエとシアの歓声にユナが微笑みながら謝罪と無事である宣言を行う。

 

「ううう、ユナさん、よかったですぅ」

「ん……心配した」

「ごめんなさい。もう大丈夫ですから」

 

 心配していたと聞いていたがどうやら想像以上に心配していたらしい。シアが感極まってユナに抱き着き、ユエもうれしそうな表情をしている。彼女達からしたら、ユナも初期からいる大切な仲間なのだ。その仲間の姿に感極まっても仕方ないだろう。

 

「どうやら大丈夫そうだな。じゃあ今からお互い攻略した大迷宮の情報を共有しとくか」

「そんなのは後でいいじゃないですかぁ、ハジメさん。それよりユナさんも雫さんも一緒に泳ぎましょうよ。水着だって貸してもらえるんですから」

「パパー。もう一度ボートに乗せてほしいのー」

「わかったよ。というわけでそれは後だ。今はミュウに付き合ってやらないとな」

 

 早速大迷宮の情報を共有するつもりだったハジメだったが、シアの一言で止められる。情報の共有は後でもできると思い直したのかミュウの言葉に惹かれたのかハジメがミュウの元に駆け足で向かっていく。しばらく見ていない内にどんどん親バカが進行しているように見える。

 

「そういえば香織。あなただけ何で法衣のままなのよ。どこか体調でも悪いの?」

「えーと、それはね……」

 

 他のメンバーが水着なのに香織一人法衣のままなのが気になったのか雫が香織に問いただすも、香織は曖昧な返事を返すだけである。だがその態度で雫は何かを察したようだった。

 

「ああ、なるほど。……まったく、まだ話してないのね?」

「あはは……」

 

 呆れる雫の態度に香織が苦笑いを浮かべる。

 

「いいわ、一緒に着替えに行きましょう。……私が何とかしてあげるから。ほらユナも一緒に、蓮弥は少し待っててね」

「あ、ああ。いいけど」

 

 あたりまえだが女性陣の着替えについていくわけにはいかない。蓮弥も男子用の水着に着替えるべく別方向にある店に向かうのだった。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 それから、蓮弥はパラソルの下で爆走するハジメを眺めたり、ユエとシアがもはや戦闘と言い換えてもいいかもしれない攻防を繰り広げているのを眺めていたり、地中に埋まっている変態が今度はサンドワームプレイなるものをしているのを視界に入れないようにしたりしていた。

 

「……遅い」

 

 女性の着替えは遅くなるものだとはわかっているのだが、どうしてもそわそわしてしまう。蓮弥は当たりを見回すがそこには水産物を牛耳っているがゆえに唯一迫害対象ではない亜人である海人族だけでなく、人族の姿もちらちら見える。どうやらアンカジの閉鎖が解かれたことで、商人だけでなく純粋にビーチにバカンスに来たものもいるらしい。

 

 

 雫がいるから大丈夫だとは思うが、もしやナンパでもされているのではと蓮弥がこちらから迎えに行こうかと思っていたら……

 

「お待たせしました蓮弥。……どう、ですか?」

 

 そこには白ビキニをつけて、髪をアップでまとめているユナの姿があった。

 

(おお!)

 

 思わず心の中で声を上げてしまう蓮弥。それほど目の前の光景は絶景だった。

 

 

 ユナが身に付ける白ビキニは非常にシンプルなものだったが、派手な飾りなど無用というばかりのユナのボディがかえって際立っている。太っているわけではなく痩せすぎでもない、程よい肉付きの身体。そしてその圧倒的な胸は男だったら誰もが視線を釘付けにされるだろう。

 

 

 こんな悩ましい身体付きをした美少女が、生前聖女をしていたというのだから世も末である。

 

 

 まさに、『このおっぱいで聖女は無理でしょ』の言葉が相応しい。

 

 

「蓮弥……あんまりじろじろ見られると……少し恥ずかしいです」

「ああ、ごめん。つい、な。……似合ってるよ、綺麗だ」

「ありがとうございます」

 

 蓮弥の視線に気づいたのか少し恥ずかしそうな顔を浮かべるも、蓮弥に褒められてはにかむ姿は可愛いの一言だ。今更だがユナを恋人にした自覚が出てきて少しこちらも照れ臭くなる。

 

「こら、二人の世界に入らない……まったく、意外と抜け目ないんだからユナは」

 

 香織を伴い遅れてやってきた雫は黒のビキニ着用だった。その高い身長と無駄な贅肉が付いていないしなやかな筋肉に覆われた身体付きは同性も憧れるモデル体型といっていい。それに加えユナに負けない胸が黒のビキニで強調されている。雫の水着姿など過去を遡っても滅多に見たことがないが、その姿は蓮弥の記憶よりも圧倒的に女として魅力を増していた。

 

「雫も似合ってるぞ、水着なんて滅多に見なかったけど、随分女らしくなったんだな。可愛いよ、雫」

「……ありがと」

 

 とにかく可愛い女の子扱いに弱い雫は、それだけで顔を赤くしてそっぽを向く。

 

 

 蓮弥と雫のいつもと違う反応にキラキラした目で見る香織。

 

「ねぇねぇ、雫ちゃん。もしかして……」

「その話は後でしてあげるから……さあ、行きましょう。香織だって南雲君に見せにいきたいでしょ」

「そうだね。おーい、ハジメくーん」

 

 そう言ってハジメの方に特攻していく水着の香織。その間にユエが立ち塞がり何やら攻防しているようだが、どうやら仲は悪くなさそうである。

 

「なんというか、これから大迷宮攻略だというのに、こんな調子でいいのか」

「いいじゃないですか。……私はずっと記憶はありませんでしたが、記憶がなかったころの経験がなくなったわけではありません。みんな変わってなくて……だからこそ、こういう雰囲気も素敵だと思いますよ」

「まあ、流石にカオスすぎるような気がするけどね。……まったく、いつの間に南雲君はあんなハーレムを築くようになったのかしらね」

 

 ハジメに向かって香織が特攻していき、それをユエにガードされる。そこにどさくさ紛れにシアが参戦し、ハジメを困惑させる。そしてティオが相変わらずハジメに罵倒されてハァハァしている。

 

 

 この世界に来てから、よく見るようになったありふれた景色。奈落の底ですべてを捨てたハジメの周りも、いつの間にかにぎやかになったものである。

 

「じゃあ、俺達も行くかユナ、雫。あのメンバーに男一人だと流石にハジメが不憫だしな」

「そうね。私もそろそろ香織の暴走を止めないと……こら、香織! その辺にしておきなさい!」

 

 そのありふれた光景に蓮弥達も参加する。

 

 

 きっとこの光景が、いつかありふれた日常へと変わっていくという予感と共に。

 

 




>逆襲の魔女 CV:木村あやか
例によってトータス編では特に出番がない地球在住の人。過去ある少女と出会い魔導へと引き込む。なおその少女はなぜか最近まで彼女の存在を忘れていたらしい。同僚のやんちゃの責任を取ることになった苦労人。摩が悪かったのだ。

次回は大所帯で大迷宮へ突入します。

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。