遠藤くんにあるまじき出番の多さ。それと雫ちゃんに久しぶりに出番があってよかったです。けどやっぱり勇者パーティーが少なすぎる気がしますね。
第5章前半『エリセン編』完結です。
あとがきにいつものお知らせあり。
あの大災害との死闘の二日後。
悪食戦の翌日は流石に全員疲れ果てたのか、出ていくはずだったレミア邸に幾度目かのとんぼ返りをし、ほぼ全員泥のように眠ることになった。
そして誰もが眠ることに費やした一日を過ぎた二日目の朝。
八重樫雫は香織が安らかに眠る部屋で一人座り込んでいた。そう、彼女だけは他のメンバーが眠る中、一人だけ起きていたのだ。元より邯鄲に足を踏み入れた時点で深い眠りという行為と縁遠くなった身体である。眠っても明晰夢の世界である夢界で目覚めるだけだ。なら起きていても大した違いはなかった。
いや、仮に眠れる体質だったとしても雫は眠れなかっただろう。それだけ他のメンバーより受けたショックは大きかった。
なぜ香織に無茶をさせなくてはいけなかったのか。他に自分のできることはなかったのか。ずっとそれだけ考え続けている。
雫とてわかっているのだ。あの場で自分にできることなど何もなかったし、香織が限界を超えなくてはあの戦いに勝利することはできず、今頃エリセンは赤い海の底に沈んでいたということぐらいは。
だけど理屈ではわかっていても、感情が納得できるかはまた別の話だ。もし自分があの時ということは考えてはきりがないとわかっているのに。
「香織……」
「……どうしたの? そんな暗い顔しちゃって」
「!?」
雫は弾かれたように香織の方を向き……
「おはよう。雫ちゃん」
「……おはよう、香織」
あの場から無事生還することに成功した香織の目覚めを祝福したのだった。
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なぜ、香織は生還することができたのか。
あの日、目を閉じて動かなくなった香織の体調が何故か回復し始めて、その時は奇跡が起きたと嬉しく思っていた一行だったが、落ち着いてみると、なぜ回復し始めたのかわからないことに内心悶々としていた蓮弥達は全員、二日振りに目覚めた香織の部屋に集合していた。
「えーと、そのー」
「さあ話しなさい、香織。皆に心配をかけたのだから説明する義務があると思うわ、私」
香織は言いたくないことを隠すかのように動揺しているが、その逃避行動をバッサリと斬り捨て、雫が回復した香織に詰め寄りはじめる。こういうことは幼馴染に任せるに限ると思った他のメンバーは雫に一任している。
「……あの時、あなたには神水を生命力に変えるだけの魔力も残ってなかったって話なわけだけど……」
雫があの時の状況を説明する。確かにユナ曰く、神水の魔力を生命力に変える力もないから回復できないという話だった。ということは香織はどうやってか自分の魔力を自力で確保することに成功したことになる。
「えーと、そのー、……私の魔力は近くにあったというか、なんというか」
「香織ッ、はっきり喋りなさい!」
「うー、はぁ、わかったよ。確かにあの時、魔力が無さ過ぎて死にそうになってたのは間違いないよ。けど途中で自分の魔力を回収したの……その……ハジメ君の中から」
「…………は?」
突如自分の名前が出てきたことで首をかしげるハジメ。
そこから、色々観念したのか香織が正直に話し出す。
何でも、ハジメの特殊な身体を調整するためのマッサージを行う際に、治療に使うための香織の魔力の一部をハジメの魔力内にこっそりプールしていたらしい。そしてあの時、キスを交わしたのは最期の挨拶でもなんでもなく、ハジメの唾液からハジメの魔力、正確にはハジメの魔力に溶け込んでいた自身の魔力を吸い出していたということだ。
後はほんの少し回復した魔力で神水の魔力を生命力に変換することで一命をとりとめたということ。尤も流石にそれだけでは魔力が足りず、魔力回復のために丸一日眠ることになってしまったらしいが。
そこでユナは納得したように頷く。
「なるほど、納得しました。香織は魔力の操作に長けているとは思っていましたが、まさかこれほどとは思いませんでした。香織の魔力がハジメの体内に残っているからこそ、ステータスプレートにハジメのバイタルサインを映せるようにできたのですね」
「えっ?」
「えっ?」
ハジメが意外なことを聞いたというような声を出す。それに対して、てっきり既知の情報だと思っていたユナも奇妙な声を漏らしてしまった。
沈黙が場を支配する。そこで香織の方を観察してみると、顔を逸らしてなにやら冷や汗らしきものをかいているのがわかる。
「…………香織、どういうこと?」
雫が満面の笑みを香織に向ける。ただ、蓮弥は直接向けられたわけじゃないのに場の空気がひんやりしてくるような気配を漂わせている。
「…………全て正直に話しなさい」
「えーと、あのね。そのー」
「返事は!」
「はい!」
その有無を言わさぬ雫の迫力に香織がビクッと反応して勢いよく返事をする。何故かは知らないが雫の香織に向けられた一喝に対して、ティオがはぁはぁしだす。
そしてどうやら無断でハジメの体温とか血圧とかの個人情報を習得していたらしい香織に対して、雫の雷が落ちた。
「このおバカッ!!」
突如香織の頭を掴み、アイアンクローを始める雫。
「痛たたたたたたッッ! 痛い痛い、頭割れる割れちゃうから痛たたたッッ!!」
「前からずっっっっっっっっと思ってたけど、あなたの南雲君への行動は少々目に余るところがあるわね。……ちょうどいい機会だわ、ここでまとめて説教の時間よ。ここに直りなさい」
「雫ちゃん、私一応まだ本調子じゃないッッ、うん、そんなの関係なかったよねッ!」
再びアイアンクローの構えを見せる雫に対して香織は潔く床に正座する。
そこから当人であるはずのハジメを置いて始まる説教の数々。
曰く、あなたは考えずに暴走しすぎ、さらに曰くそれを止める私がいかに苦労してきたか。正直結構ギリギリだからね、あなた……etc etc。説教の時間が三十分を過ぎるころには香織の目から光が消えていた。
「な、なあ、八重樫。もうその辺にしてやれ。別に俺は気にしてねぇし」
雫の鬼気迫る気配に被害者であるハジメの方が委縮してしまう。説教中の香織の話を聞くあたり、勝手に観察していたのは体温や血圧や血糖値などの、所謂バイタルサインと呼ばれるものであり、盗聴や盗撮していたわけではないらしい。正直に言ってハジメは個人情報とは言ってもその情報がミクロすぎてピンと来ていなかった。これがハジメの日常やユエとのあれこれを無断で観察されていたというのなら怒ることもあったのだろうが、率直に言えば、血糖値を毎日観察されていたからなんだという話である。
”ハジメ君。ちょっと今日は血糖値高めだから、甘いものは控えたほうがいいよ”
せいぜい言われてこれくらいしか思いつかない。同級生に言われるのは結構あれかもしれないが、一応主治医にいつの間にか決まってしまった香織が指摘すると違和感がなくなるような気さえしてくる。
「南雲君! 私の親友がほんっっとうにごめんなさい! これからは暴走しないように厳しく見張るから。ほら、香織も謝りなさい!」
「ハジメクン、勝手ニ個人情報ヲ見テゴメンナサイ」
「いや、だから気にしてねぇから。次からはちゃんと事前に言ってくれればそれでいいから」
雫の止まらない説教を受けて表情が死んで片言になっている香織を見ると益々怒る気がなくなってしまうハジメ。だがいつの間にか恋人のプライベートゾーンを侵されていたと知ったユエが動く。
「駄目……許さない」
そこには真剣な表情で香織を見るユエの姿。もしかしたらここでガチ修羅場が発生するかもしれないと思った蓮弥はさり気に逃げ道を確認する。正直ガチ修羅場は自分関係だけでこりごりな蓮弥としては、他人の恋愛事情でガチ修羅場なんぞ巻き込まれてはたまらないと思っていた。ハジメを生贄に捧げて逃げる準備は万端である。
だが、意外にも剣呑な気配を出していないユエが香織に自身のステータスプレートをずいっと差し出す。
「……香織だけずるい。恋人である私のステータスプレートにもハジメのばいたるさいんとやらがわかるようにするべき」
「あー、ずるいですよユエさん。私も知りたいですぅ」
「ちょ、ちょっとあなた達!?」
「妾としては逆に妾のそういう情報をご主人様に知って貰いたいのぉ。そこでわかってほしいのじゃ。いかに妾がご主人様の折檻で快楽を得ておるのかの……おふぅ」
「ちょっとティオッ!? 話がややこしくなるから黙っていてちょうだい」
ツッコミ不在の恐怖。
ただ一人ツッコミ役である雫が四方八方にツッコミを行っているがまるで追い付いていない。当事者であるハジメは……愛する恋人まで自身のバイタルサインに興味津々なその光景から目をそらすように錬成を始める。
結局、今後香織がハジメに対して何かする際には、緊急時を除いて必ず事前承諾を取ること。ユエ達のステータスプレートにハジメの心音だけ見えるようにすることで合意されたようだ。
「ふふふ、ハジメの心臓の音。……ハジメの暖かくておいしい血がたくさん流れてる音。ふふふ」
さっそくステータスプレートでハジメの心音を確認してトリップしているユエ。
「まったくあなた達は揃いも揃って……」
「……そんなこと言ったって、雫ちゃんもできるなら藤澤君の心音とかいつでも聞いていたいでしょ?」
「………………ノーコメントで」
実はちょっぴり悪くないかもと考えている同じ穴の狢な雫。
……どうして誰もが病んでしまうのだろうか。蓮弥は割と自分を棚に上げて嘆きの声を心の中で上げる。
「…………頼むからユナだけはそのままでいてくれよ」
「?」
蓮弥の期待が籠った言葉に、ユナは首をかしげるのだった。
そしてそれからさらに三日後。香織の体調が完全に回復したころ合いで、ハジメはさんざん先延ばしにしていた問題にようやく向き合う時が来た。
「……パパは、ずっとミュウのパパでいてくれる?」
ハジメがここから去らなければならないと知ったミュウが着ているワンピースの裾を両手でギュッと握り締め、懸命に泣くのを堪えて言った言葉である。
それに対してミュウが望むのならと返したハジメ。ハジメの想いを受け取りハジメによく似た笑みを返すミュウ。
人が親になることに血の繋がりも時間も関係ないのかもしれない。この二人の絆は少なくとも、最近嫌でも耳にする育児放棄を行う親などよりもよっぽど深い。
またハジメに大事なものが一つ増えたことに内心笑みを浮かべる蓮弥。こうしてこの親友は一つ一つ人間性を取り戻していくのだろう。そのことを確信させる光景に、蓮弥は彼らの旅の行く末をきっとより善き場所に繋げて見せることを自分自身に誓った。
そして蓮弥達一行は、いつもよりも遥かに長く滞在したエリセンを後にしたのだ。
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「う~、雫ちゃん。相変わらず怒ると怖いんだからな~」
香織は一行の旅路での野営中、野営地点から少し外れた場所で一人星を眺めていた。
何となく一人になりたい気分だったのだ。決してイチャイチャ空間を発生させ始めたハジメやユエに特攻を仕掛けて、雫に少しは空気を読みなさいと怒られたわけではないのだ。……雫は蓮弥と恋人になってから、ハジメとユエがイチャイチャする空間に過剰干渉することに反対し始めた。おそらく自分の立場で考えて、蓮弥との時間を邪魔されたら嫌だからだろうと香織は推理している。いつの間にか自分を置いて彼氏持ちになってしまった親友を少しだけ恨みたくなった。
「まあ、いいけど。私は私で勝手にやらせてもらうからね。……今のところ計画は順調だし」
散々雫に説教をされて凹んでいた香織だったが、ただでは起きなかった。なんだかんだ言ってハジメにこれからもバイタルチェックを許可してもらったのは大きい。バイタルチェックを許可してもらったということは香織の魔力をハジメの中に残すことを許されたということである。
魔力をハジメの身体に残すということ。それは香織がいつでもハジメに干渉することができるということを意味していた。もちろん肉体改造や精神改造など難易度が低いわけではないし、そういうことをハジメの許可なくやることを全面的に禁止されている。それに流石の香織もハジメを洗脳して手に入れたいとは思っていない。それでは本当に欲しいハジメは手に入らない。
この場合、重要なのはハジメの情報をより深く知れるということだろう。バイタルサインなど受信できる情報の入口にすぎないのだ。干渉魔術を使えば、より深い魔力の波長やその人物の身体の波長までわかる。
それはハジメの根源であり、詳細な存在の情報。それを改ざんするのは困難であり禁止されていようとも、それに合わせて
例えば、思わずハジメだけが抗えないほど反応してしまうようなフェロモンを生成する体質に変えることは理論上可能だし、それを通じてその先の関係に至ることができれば、目的は達成したも同然だろう。
(そう、私が狙うのはたった一つ、私の真の目的はッ!)
「既 成 事 実!」
ドンという背景文字が似合いそうな勢いで星に向かって威勢よく宣言する現役女子高生、白崎香織。
これを雫が聞いたら、頭を抱えながらまた小一時間ほど説教が始まりそうな香織の宣言だが、本人は大マジである。
先日のミュウへの対応で香織は確信を深めた。ハジメは子煩悩であり、自分の子供を産んだ相手を無視することなんて絶対にできないと。
高校生で妊娠から出産までするとなると世間体がどうこう気になるかもしれないが、そんなものどうとでもできるのだ。それにこの世界から生きて生還することができれば、おそらく香織なら地球で引く手数多になるだろう。そしてそれはハジメとて同様だと確信していた。つまり高校生でも稼ごうと思ったらいくらでも稼げる。
(それにアヤちゃんも言ってたしね。『例え相手に妻や恋人がいようとも、先に既成事実を作った方が勝ちなのです』って)
魔女マイナを通じて知り合った八重樫一族とは別の忍者である霧隠一族出身の友人を思い出す。彼女は彼女である人物を幼馴染達で現在、包囲している最中だという。その友人に後れを取るわけにはいかない。
後はどうやって事に及ぶかが問題だ。
一回でも事に及ぶことができれば、その際ハジメの身体と波長を合わせて、自分の身体をハジメ相手なら百パーセント命中する身体に改造できるのだが。
「いや最悪ハジメ君のアレさえ入手できればなんとでもできる気がするけどやっぱりそれは女の子としてというか人としてどうかとも思うしだけどユエとの親密度を考えるとそれほど猶予は……」
「あのー、香織さん? さっきから何をぶつぶつ言ってるですか?」
「ひゃああああああああ!?」
背後から聞こえてきた声に対して、香織は思わず紋章を起動してしまう。両腕が光ることで待機状態になった魔法陣を展開し指を向けると後ろの人物、シアも驚いてしまう。
「か、香織さん私ですよ、私。いきなり魔法を向けないでください。腐った兎ペーストになりたくないですぅ」
「ああ、ごめんねシア。ちょっと考え事してた時に話しかけられたからつい、というか……聞いてた?」
恐る恐るシアに尋ねる香織。計画がばれると間違いなく雫にまた説教される上に、流石のハジメやユエも警戒するだろう。いつの間にか他の女が子供を作ったなど警戒しないはずがない。
「えーと、何をするかまでは具体的にわかりませんでしたが、あれを見ても香織さんの戦意が衰えていないことだけは伝わりました」
その苦笑交じりのセリフから、どうやらシアもハジメとユエのイチャイチャ空間から抜けてきたようである。どうやら本当に理解していないようだと判断した香織はほっと溜息を吐く。
「それでどうしたのシア?」
「……あの、香織さん。少し話を聞いてもらってもいいですか?」
なにやら真剣な顔をして言ってくるシアに香織は少し緩んでいた頭のネジを締め直す。こういうのはメリハリが大事なのだ。万年脳みそピンク色ではいられないのである。
何かな何かなと期待して待っていると真剣な表情をしたシアが己の想いを語った。
「香織さんにお願いがあります。私に……魔力の使い方を教えてください!」
香織の目が、魔術師の目に切り替わった。
一方、蓮弥とユナと雫は、三人で何かを決めている最中だった。
「これが俺の考えなんだけど……二人とも何か異論はあるか?」
「いいえ、大丈夫です。アンカジについたらそのようにしましょう」
「ええ、私もそれでいいと思うわ」
蓮弥の提案に、ユナと雫が何やら納得した返事を行う。
この三人が揃って何をしていたのかというと。いい加減、恋人らしいことの一つでもしようという話になったのである。
蓮弥はユナと雫。二人の少女と同時に交際している。蓮弥は二人同時に平等に愛するということを決めているが、それが簡単なことのはずがない。まずは既に二人との関係の進展具合が違っているし、それに合わせて現在、ユナやなにより蓮弥に色々と我慢を強いている状況に陥っている。遠慮なくどこでもイチャイチャするハジメとユエを見るとなおさらだった。
だからこそ、この機会にデートしようということになったのだ。三人で行動するのもいいが、ユナと雫からしてみたら蓮弥と二人っきりの時間を確保したいと思うのが本音。ということは時間や場所などを細かく設定しないとバランスが取れなくなる。
ユナと雫は死闘と言っていい戦いの果てにユナの強制共感能力によって深く互いを知ることができたが、それでも嫉妬心や独占欲を抱くことを避けられない。ユナと雫はできればお互い同士も仲良くしたいと考えているので三人でどうしたらいいか意見を出し合っていたのである。そして決まったプランは必然的に蓮弥の負担が大きくなるが、そんなこと初めから承知の上だ。
アンカジ公国には明日の昼頃到着予定だ。ということはプランを実行に移すのは明後日以降になるだろう。
そしてそろそろ戻ろうかとなった時。
「ごめん。少しいい?」
ハジメの側から離れたユエが後ろに立っていたのだ。
「どうしたユエ。何かハジメとの生活に不満でも出てきたか」
「ハジメとの生活に不満などあるはずがない。いつでも充実している。……そうではなく、私はユナに少し用事がある」
「私ですか?」
ユエと雫はまだあったばかりだし、蓮弥個人にユエが用事があるというのはイメージし辛い。必然的にユナが目当てになるわけだが、一体何の用事だろうか。
「今回、あの悪食戦を通じて私は思った。私は、まだまだ弱い。だからこそ単刀直入に言う……」
「ユナ……私を、鍛えてほしい」
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一つの大災害を超え、再生魔法という新たな力を手に入れた蓮弥達一行。
しかし大災害という規格外の存在と遭遇して各々思うことはあった。
錬成師の少年は、今回使用したアーティファクトのデータからさらなる力を得るためにアーティファクトの完成を目指して知恵を絞り──
吸血姫の少女は己の力不足を痛感し、自分が師事するのに一番適していると考える聖女に教えを請い──
兎の少女はもっと自身の力をうまく使えるように魔女の英知を借り受ける。
竜人族の女は変態だが、この中で一番聡明なのも彼女だ。なんだかんだきっと更なる上を目指すことだろう。
そして聖遺物の使徒と裏切りの聖女、未完の盧生はこんな時だからこそ愛しい人との日常を大切にする。
想いが力となる彼らにとって、彼、彼女と絆を深めることこそが強くなるための最短の道だということを知っているから。
砂漠の国を通り、彼らは再び王都へと帰還することになる。だがその時彼らを待ち受けるものは何なのか。
これから彼らに襲い来るであろう更なる艱難辛苦を、座の女神が微笑みながら見守っていた。
>香織、無事生還
一部の方の予想通り、ハジメとのキスによりハジメの中に存在した自身の魔力を吸い出して一命をとりとめました。実は本当に危なかったので割とキスが情熱的になったのは生命の危機と魔術師の本能混じり。
>香織の野望
ここで香織に追加されたヒロイン属性である『アマツ』について説明を。
元々アマツとは、シルヴァリオシリーズの日本人の血を引いている――あの世界では日本人の血統はある理由で優等人種である証――人物達のことなのですが。極めて愛の重い一族です。
シルヴァリオシリーズの作者曰く、死んだ恋人を蘇らせようとする行いはアマツとして一般的な反応。思い人に家庭があっても「せめて思い出(子ども)だけでも」と詰め寄る位は朝飯前。数年後に「あなたの子よ」と詰め寄る位良くやる手口、との事。正直地雷女
つまりヤンデレなのですが、一応恋敵とも仲良くできるタイプのヤンデレになります(所謂ルートヒロインにアマツが複数いても仲良くできる)
>霧隠アヤ
香織の友達。魔女マイナ繋がりで知り合いになった。上記記載のアマツ系統の女子。彼女により恋とは何かを教わっていたのだが、それを実感するのはハジメが自分の元から消えてからだった。
>ユエとシアの強化フラグ
各々悪食戦にて力不足、特に魔境地球人と比較して後れを取っていると思った二人の強化が始まります。
あとがき
第五章前編完結
原作にある程度合わせるという理由と別の理由で章は変更しませんが、次回以降王都編へと移行します。
エリセン編は難産でした。
ただ原作にオリ主が存在しているだけで良かった第1章~第3章、逆に原作に縛られることなく自由に書いてよかった4章と4.5章。
なら第5章以降は原作沿いでありながらオリジナリティのあるものにしようと考えていると中々アイディアが浮かんでこず、結果的に更新頻度が下がることになりました。おそらくこれからもこのような感じの更新頻度になると思われます。
第5章後半ですが、再び舞台は王都に戻るのですが、ここでやりたいのは『原作主要パーティーの強化』です。
武器の強さ=自分の強さなハジメはともかく、ユエとシアはここで各々師匠によって強化が齎されるはずです。
一方本作主人公である蓮弥周りは恋愛事情が中心になるかもしれません。実はそろそろ作者が公開しているもう一つの小説の方の更新も考えようかなという時期に来ているという事情もあります。
他にもサブヒロイン優花も再登場予定ですし、地味に蓮弥を狙っているかもしれない先生や王女様の動向。そしてなにより蓮弥が二度と会いたくないし会うこともないと思っている例の女の参戦もあるかもしれません。
他にも書きたい話はありますので、例によって王都編の更新は少し遅くなるかもしれません。書きたいことがいっぱいあるけどまとまっていないので。そこはご了承ください。
ですがその前に幕間を入れる予定です。今話にあったデートイベントとユエシアの修行シーンの一部を入れる予定。
では第5章の後半もお楽しみに。