英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

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唐突にベルに『王の財宝』を持たせてみたくなったので書きました。

基本的に艦これの方を優先するのであちらより亀更新になると思います。



暖かい目で見て(・・;)


僕の英雄

いつだってあの人がいた。

 

『ベル、男はハーレムを目指さんといかん』

 

『はーれむ?』

 

意味がわからずに首をかしげると柔和な笑みを浮かべながら

 

『そう、ハーレムじゃ』

 

僕の頭を撫でるあの人の手は、大きくて優しかった。

 

 

 

 

『ベル!逃げろ!!』

 

魔物から僕を守ろうとする背中は、誰よりも大きく見えた。

 

けれど・・・

あの人はもういない。

どれだけ泣いただろう、声を枯らしただろう。

悔しかった、悲しかった。

何もできなかった自分が情けなくて、あの人のいない日常が寂しくて・・・。

 

今日も悲しみの海に沈みかけた僕の視界に、ふとあるものが視界に写る。

霞んだ視界の中でなぜかはっきりと見えたソレは、あの人が僕のために書いていた英雄譚だった。

英雄王。そう名のつけられた本。背表紙には長い鎖が複雑に描かれている不思議な本・・・それが僕を呼んでいるように、窓からさす日に照らされていた。

ページをめくる。そこに小さな紙切れが挟まっていた。

それを見た僕の目からは、大粒の滴がこぼれた。

 

『ハーレムを目指せ』

 

少し弱々しく、しかしいつも通りの口調に僕は自然と笑ってしまう。視界はグシャグシャで涙が止まらないけれど、それでも必死に涙を拭きながらページをめくる―――。

 

 

 

 

『英雄とはなんだ?小僧』

 

ふと、声が聞こえた。

いつの間にか僕は真っ白な空間に立っていた。

知らない人の声が頭に響く。

いつもなら慌てふためくのに、何故か冷静にその問いに答えていた。

 

 

誰かを救う人

 

 

『否、英雄とは我のことだ』

 

脳裏に浮かんだその人影は金色の鎧を身につけ両手を掲げた。

 

『ありとあらゆる財を持ち、すべての種を統べる我が、我こそが!英雄の頂点、英雄王である!!』

 

僕はその人の解に待ったをかけた。

 

それは英雄じゃない

 

『……なに?』

 

それはきっと英雄じゃなくてもできること……

たくさんのお金をもって、いろんな人を導く、

すごいことだし、ものすごく大変だと思う……それでも、英雄とは違うと思う。

 

『…………では英雄とはなんだ? 返答次第では只では済まさぬぞ? 雑種』

 

2度目の問いに、僕は秘めた夢を、あの人の口癖を口に出していた。

 

 

己を賭したもの

 

 

『……』

 

 

あらゆる財をもった人でもない

剣を握ったものでもない

盾をかざしたものでも、誰かを癒したものでもない

 

己をとしたものこそが、英雄と呼ばれるのだ。

 

仲間を守れ、女を救え、己を賭けろ。

 

あの人の口癖が、教えが、姿が……僕の英雄だ

 

おじいちゃん。僕、英雄になりたい。あなたのような―――英雄に。

 

『……くくく』

 

その声は噛み殺したように笑うと、初めて僕の目を見た気がした。

 

『そうか、己を賭す……幾年ぶりに聞いた台詞よの。おい雑種……いや、ベル・クラネル』

 

そう言ってこちらを見るその人が、初めて僕の目を見た。

 

『我は英雄王だ。それは変わらん。だが、民に英雄ではないと言われて黙っているのも興がない』

 

そう言ってどこかから小さな鍵を取りだすと、ソレを僕に渡してきた。

 

『我の宝物庫の鍵だ。光栄に思え、ベル・クラネル。今までその鍵を渡した奴はおらん。そもそも王の宝物庫だからな』

 

『お前がその鍵を使うに値した時、その鍵は応える』

 

そう言い残すと人影は徐々に薄まって行く。

 

『ゆめゆめ忘れるな、お前に価値が見いだせなければ、ソレは容赦なくお前を飲み込むぞ。フハハハハハハハハハ!!』

 

 

 

 

 

あれから数日。

僕はオラリオ行きの馬車に乗り込んだ。

 

「おじいちゃん・・・行ってくるね」

 

首にかけられた小さな鍵を握りしめながら、少年は世界の中心へと歩み出す。

 

 




ちゃんとギル様してた?

これ以降ギル様は出てきません・・・・たぶん


修正と加筆しました。

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