英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

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今回、微妙かな・・・

さぁ、批判よこい!((((;゜Д゜)))


原点再起

「あのガキには精々道化がお似合いだ」

 

そういい放つ狼の青年、ベートに僕はほんの僅かに怒気を含ませて言う。

 

「ベート、これ以上(家族)の夢を笑うことは許さないよ」

 

「……ケッ」

 

僕の言葉に興味を無くしたかのように吐き捨てる彼に、それにと続けた。

 

「あまり彼を見くびっていると、すぐに追い抜かれるよ……彼は、英雄になる子だからね」

 

僕がそう言って笑うと、ベートは鼻で笑って出ていった。

 

「ふぅ。リヴェリアも珍しく熱くなっていたね」

 

僕がそう言うとリヴェリアは少したじろいだあと咳払いをして誤魔化した。

 

「ベルは大丈夫なのか?」

 

「それはどちらの意味でだい?」

 

「両方だ」

 

「問題ないよ」

 

「なぜ言い切れる」

 

「……(ベル)は僕らのファミリアの子だからね」

 

僕の言葉に数秒動きを止めた彼女はふっと笑った。

 

「そうだな、ベルはロキ・ファミリアだ。あの程度で挫けることはないな」

 

そう言いながら微笑む彼女のそれは、母親のそれだ——と、言わない方がいいのかな。

 

「……うち、空気やん」

 

 

 

 

ダンジョンを駆けながら考える。

 

ピエロ……道化。

確かに、僕はそうかもしれない。

お爺ちゃんの夢を借りて、フィンさんの武器を借りて、リヴェリアさんに知識を借りた。

それでも慢心し、踊るように逃げ、笑いを取るように転がった。

やっぱり僕は英雄にはなれない。

僕は自分自身に理解させるために、口を開いた。

そして

 

「悔しいっ」

 

漏れた言葉は感情だった。

理性と心が分離した。

 

僕なんかには無理だと、弱い僕には不可能だと理性が訴える。

でも口から零れ出すのは心の叫びだった。

 

「悔しいッ」

 

仕方ない、僕は弱いんだから

背中が痛い。心が苦しい。

 

「強くなりたいッ」

 

無理だ。僕は英雄じゃない

荒い呼吸を繰り返す。鈍痛に肺が軋む。

 

夢中になって走って、たどり着いたのはドーム状の行き止まり。僕が逃げ込んだ場所。

壁がピキリと割れるなか、僕は自分()を縛る自分(理性)に叫んだ。

 

「英雄に、皆を守れる英雄になりたいッッ」

 

無理だ。誰かの夢を借りた(やつ)には。

壁から生まれる数多のモンスター

 

「仲間を、家族を守れる強さがほしいっ」

 

無理だ。きっとあのときみたいに逃げ出す。

十数体前後の群れを前に僕は叫び続ける。

 

「僕に(原点)をくれたあの人に」

 

自身の夢を掴むように胸を抱き、

 

英雄(自分自身)を託してくれたあの人に」

 

誓うように鍵を掴む。

 

「あの人たちに負けないような。笑われないような」

 

僕は己の内()を叫んだ。

 

「誇れる英雄に、認められる英雄に、僕はなりたいッ!」

 

 

 

 

あぁ、なんて不確かで不明瞭で朧げな夢だ。

 

 

 

 

 

 

 

でも、それがお前(ぼく)だ。

 

うん。それが僕だ。

 

 

その時、僕のなかで何かが変わった。

 

グギャァァアアアア!!!!

 

眼前まで迫っているモンスターを前に、僕は新しい知識(・・)に笑みをこぼしながら呟いた。

 

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

 

僕の背後に広がる黄金の二つの波紋。

これもあの人に借りたもの。それでもいつか、自分のもの()にできるよう、頑張ろう。

 

波紋から出る剣の切っ先一瞬の溜めのあと、射出する。

 

ギェァァアッ?!

 

高速で飛び出した武器はゴブリンを貫通し壁に突き刺さる。

 

モンスターたちに生まれる一瞬の動揺に僕はすかさず武器を取り出す。

槍を一本取り出しながらもう一方で再度攻撃する。

ただ狙いが甘かったのか、コボルトの腕を切り飛ばしただけだった。

 

僕は槍を振るって片腕を失ったコボルトに止めを刺す。

 

ギェアアアアア!!!

 

ガガガ!!

 

ギャギャ!!!

 

モンスターたちもこのままでは不味いと感じたのか一斉に襲いかかってきた。

 

「ふぅ・・・はぁ!!!」

 

僕は強くなるために、追い付けるように、モンスターへと駆け出した。

 

 

 

「まだベルは見つからんのかいな!?」

 

「館は隅々まで探したけど見つからなかったね」

 

「ま、まさか家出か!? うおぉぉぉ、おのれモンスター、しばきまわしたろかぁ!!」

 

「落ち着いてください! ロキ様」

 

早朝、ベルが部屋からいなくなっていることが判明し、捜索を始めてから数時間。既に日は高く登り楽観視していた団員にも焦りが見えていた。

普段ならともかく、瀕死の重症をおった人間がなんの言伝ても無しに居なくなるのは可笑しい。それに居なくなったのがあのベルのような子であれば尚更だ。

 

全員が探索範囲を広げようと動き始めたとき、扉が開け放たれた。

 

「ロキ~、クラネルさん見つけました~!」

 

そう言って入ってきたのは傷だらけのベルを背負ったエルフの少女、レフィーヤだった。

 

「どどど、どないしたんや!?」

 

床に寝かされたベルに駆け寄るロキとファミリアの子供たち。

それに対して少し顔の赤いレフィーヤは説明しようとする。

 

「ええっと、その、私が外に出たらダンジョンの方からクラネルさんが歩いてくるのが見えて」

 

ポーションをベルに飲ませるところを見届けたロキは心底ほっとしたように息を漏らす。

 

「そか、とりあえず無事みたいやし、ほんま良かったわ」

 

とりあえずは一件落着ということでロキは「手伝ってくれた奴には今度酒奢ったるわ!」といつもの調子で騒ぎ始めた。

それに盛り上がる団員たちと眉間を押さえながらため息をこぼす幹部。

 

まだ彼らは、少年の変化に気づいてはいなかった。

 

 




最後意味深みたいに書きましたが別に伏線とかではないのであしからず

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