英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

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手、手が震えてきやがりますよ。


英雄の欠片の特訓と…

「魔力が多過ぎです!!?」

 

壁を貫通して、地面を大きく抉った惨劇に私は叫んだ。

 

 

 

私は、彼が魔法を行使するのを見て、まず違和感が、それに続いて呆然とした。

彼の魔法には限界がみえなかったから。

 

普通、どんな魔法にも最低限必要な魔力と、込められる魔力の限界値がある。

当然のように魔力が必要量足りていなければ魔法は発動できないし、余分に注げば注ぐほど威力は上がるものの制御が難しく、暴発しやすい。それに限界を越えて注ぎ込んでも溢れて無駄になるだけだ。

 

なのに……

彼の魔法は、無尽蔵とも呼べるほどに魔力を飲み込んでいる。

同じ武器でも魔力量が数倍以上の差があるときもあった。

さらに、不可解なこともあった。

込めた魔力が、ある一定の量に達すると性能は上がらなくなった。

そこが限界値かと思ってみても、溢れるはずの魔力は見えなかった。威力は上がらないのに限界はまだこない。まるでわざとその威力までしかでないようにしてあるかのような……そんな考えさえ浮かんだ。

 

そんな不可解な魔法に興味もあったが、彼がフラフラになってしまったところで一旦休憩。

取り敢えずは最適な魔力で魔法を使えるようになる特訓をするとこにした。

 

 

「この壁だけ割れるように魔力を込めてください」

 

そう言って指差したのは厚さ三センチほどの板?壁のようなものだった。

その裏に瓶を置き、壁だけを砕くように魔力を調整する特訓なのだけど……。

 

 

 

 

「難しくないですか!?」

 

割れた瓶を片付けながら僕は悲鳴を上げる。ほんの少し魔力が多いだけで簡単にビンが砕けてしまう。

的確に壁だけを壊すなんてと思いながら僕は何度も挑戦していく。

 

因みに、この壁は厚さや強度などを自由に変えられる魔道具で、神様が女湯に仕込もうとしたところを没収され、こういう実験台になっているらしい。

 

…………神様。

 

 

 

 

 

「ロキ、入るっ……どれだけ酒を飲んだんだッ!!?」

 

「マ゛マ゛ァァ!!」

 

私が部屋にはいいた瞬間、酷く濃い酒の臭いと一緒にバカ(ロキ)が飛びついてきた。

 

「誰がママだッ! というか離れろ!!」

 

無理やり引きはがすと、それでもロキは足にしがみついてきた。泣きながら……

主神の威厳丸潰しである……もともとないようなものだが。

ロキはガチ泣きしながら紙を渡してくる。

 

「こんなんどないせぇっちゅうねんやぁ゛?!」

 

 

 

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力  : G 276

耐久 : F 308

器用 : G 245

俊敏 : F 338

魔力 : E 412

 

 

【スキル】

 

//憧憬願望//

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正。

 

 

 

・王律鍵 H

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

 

 

【魔法】

 

ゲート・オブ・バビロン

詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

 

 

「ッ?!」

 

内容を見た瞬間、私は凍り付いたように動けなくなった。

フィンの扱きを考えても、いや、どう考えたって上がりすぎて(・・・・・・)いる。

 

「ロキ! これはいったいなんだ!?」

 

「だからぁ、ベルの…………マ、ママ?!」

 

ロキは私の顔を改めて見て顔を青くする。

一体誰と話しているつもりだったんだ。

 

「教えろ。ロキ」

 

「いやぁ……えっと…そのぉ」

 

冷や汗をダラダラとたらしながら必死に言い訳を考えるロキに私は紙を握りしめながら言った。

 

「言えないなら、このステイタスの伸びがおかしいことをベルに伝えようか」

 

「それだけは堪忍やぁぁ?!?!!」

 

「なら、言え」

 

「ひぃッ……わかりました」

 

 

 

 

 

 

「はぁ……それで、このスキルの影響で間違いないのか?」

 

「そ、そや。ベルの想いによって効果が変わる超レアスキルや」

 

確かに、これは口外できるものではないし、これならばベルの異様な成長速度にも納得がいく。

 

「これをフィンには?」

 

「言うてへんけど」

 

「なら伝えるべきだ。このスキルを持っているのがベルなら、尚更だ」

 

私はもう一度大きなため息をついた後、天井を見あげた。

フィンが言っていた……英雄になる、か。

本当にどれだけ純粋なんだと、私は苦笑をこぼしながらそう思った。

 

 

 

 

「はぁぁ…………ふっ!!」

 

魔力が少なくなってきて意識も朦朧としてきた、その時、確かな手応えと共に槍を射出する。

 

「……やりましたね!ベル」

 

「や、やった?」

 

レフィーヤさんがそう笑顔で振り向く。

僕の放った槍は壁を貫き、ビンに当たる数センチ手前で止まっていた。

 

「やったッ」

 

僕がガッツポーズをするとレフィーヤさんは新しい瓶をセットする。

 

「今の感覚を忘れないように、もう一回行きますよ!」

 

「はい!!」

 

僕は全身の気だるさも忘れて再び魔力を練り始めた。

 

 

 


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