英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

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ダンジョンに行くまでにいったいどれだけかかってるんだろうかw

一部修正


英雄の欠片とダンジョンへの誘い

「20階層ですか!?」

 

「うん。今の君なら十分に着いてこれると判断したうえだよ」

 

フィンさんの言葉に少しの嬉しさと大きな不安が入り交じり、僕の中で暴れまわる。

 

 

 

 

午前中、リヴェリアさんとの買い物を終えた僕は自室で早速防具の試着……というか待ちきれなくてダンジョンに潜る準備をしていた。

白を基調とし、赤色の模様が施された防具を付けていく。

脚や腕の防具を付け、ベルトを締めて胸当てを固定する。

防具をすべて着た後、体を捻ったりして全身を見回してみれば、思わず笑みがこぼれる。

そうやって自室で一人ニヤニヤしていると扉がノックされたのでニヤニヤの状態で扉を開けた。

 

「やあベル……似合っているよ。それに、嬉しそうで何よりだ」

 

いつもとは違った格好のフィンさんが若干の苦笑交じりに微笑む。

僕は恥ずかしさで顔が赤くなるけど、フィンさんの格好に気づいて首を傾げた。

 

「あれ、フィンさんもダンジョンに行くんですか?」

 

「ああ、最近ダンジョンに潜っていなくて、体も鈍っているからね」

 

ならなんで僕のところに来たんだろうと僕が悩んでいると、フィンさんは「それで」と前置きを言ってから

 

「ベルも一緒に行かないか誘いに来たんだよ」

 

そう僕に告げた。

硬直する僕。フィンさんと、一緒に? ダンジョンへ?

 

「どうだい? 一応は日帰りだから20階層辺りまでは予定しているんだ」

 

「に、20階層ですか?!!」

 

仰天する僕にフィンさんは朗らかに笑いながら話し続ける。

 

「うん。今の君なら十分に着いてこれると判断したうえだよ。それにリヴェリアやアイズ。ティオナたちも一緒に行くつもりだしベルの安全を考慮したうえで動く。それにベルにはいい勉強にもなると思う」

 

「えっと……」

 

フィンさんの言葉に少しの嬉しさと大きな不安が入り交じってすぐに返答できない。

そうして言いよどんでいる僕に、フィンさんは改めて僕の目を見ていった。

 

「この前、色々な武器の使い方を覚えるように言った手前もある。実戦での戦いを見ていたほうが得るものも多いと思うんだ。無理にとは言わない、けれど君の目標のためなら利用できるものを利用しない手はないんじゃないかな?」

 

その言葉にはっとする。僕を思うフィンさんの言葉に胸が熱くなるのを感じながら、深く頷いた。

 

「ッ……いきます。連れていってください!」

 

「……それでこそだ」

 

フィンさんは「それじゃあ門の前で待っているよ」というと先に歩いていく。

僕はすぐにポーチを腰に巻き付けると、精神回復薬などを入れて急いで玄関へと向かった。

 

 

 

 

「あ、ベルじゃん! ベルも一緒に行くの?」

 

「はい! よろしくお願いします」

 

「ちょっと待て、フィン」

 

ティオナさんが笑顔で「任せてね!」と騒いでいる中でリヴェリアさんはフィンさんに詰め寄ると首根っこを掴んで端の方へ引き摺って行く。

フィンさんが笑いながら「苦しいよリヴァリア」と言っているのを僕は口元を引きつらせて見ていることしかできなかった。

 

ふわりと誰かが僕の前に立った。正面に視線を戻すと――

 

「確か……ベル、だよね?」

 

金の髪をなびかせながら、小首をかしげる女性がいた。

色白の肌に美しい金色の瞳に見惚れていた僕に、女性は反応がなかったからか、さらに近づくように前屈みになって顔を近づけてくる。

余りの近さに僕がりんごのように真っ赤になっていると、横から山吹色のエルフが割って入った。

 

「アイズさん近すぎです!! ベルも離れるなりしてください!」

 

耳を赤くしながら大声で叫ぶレフィーヤさんに僕はぺこぺこと頭を下げて謝る。

アイズ? さんは首をかしげるだけでなぜレフィーヤさんが怒っているのか理解していないようだった。……まあ僕もよく分からなかったけど。

 

「えっと、ごめんね。ベル、レフィーヤ」

 

「え、いやえっと」

 

僕がまたしどろもどろになるとレフィーヤさんはキッと一睨みした後、大きく項垂れる。

 

「はぁ……もういいです。ベルはアイズさんに直接会うのは初めてでしたよね」

 

コクコクと頷く僕と若干疲れたように肩を下げるレフィーヤさんという構図にティオナさんは笑い、ティオネさんは苦笑をこぼすだけだった。

アイズさんは終始首をかしげていたけど。

 

僕とアイズさんが、取り敢えずの自己紹介を終えたタイミングでフィンさんとリヴェリアさんが戻ってきた。

まだ僕が中層に行くことに納得がいっていないのか不満顔のリヴェリアさんに、僕は不安になって眉尻を下げる。

 

「えっと、リヴェリアさん……ダメ、ですか?」

 

その言葉に大きくたじろぐリヴェリアさん。

……? なんでリヴェリアさんがたじろぐのだろう

 

背後でレフィーヤさんが「ベルも天然ですか……」と呟いた気がする。

僕がそんなことを思っているとフィンさんがリヴェリアさんに「君の負けだよ」と言うとリヴェリアさんは眉間を抑えて頷いた。

 

「もういい。わかった、連れていくから」

 

パアっと明るくなる僕に周りは生暖かい表情を浮かべるのだった。

 

「ただし、道中でもう一度教えた事の復習をするからな」

 

「はい!」

 

そうしてようやく僕たちはダンジョンへと向かい始めるのだった。

 




次回、道中をちょっとはしょるかもしれませんがいよいよ18階層です。

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