英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

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ちょっと無理矢理ですが18階層までです。

この作品のレフィーヤのアイズ愛は抑え目です(今更)……たぶん


英雄の欠片と第一級冒険者

目覚めよ(テンペスト)

 

目の前で切り刻まれていくキラーアントの群れに、僕は乾いた笑いしか出てこなかった。リヴェリアさんも眉間を抑えながらため息をこぼしている。

どうしてこうなったんだろう?

僕は少し前の出来事を思い出しながらそんなことを思った。

 

 

 

 

「えっと、キラーアントは瀕死になると特殊な鳴き声で仲間を呼ぶ……でしたっけ」

 

7階層から出現するモンスターを思い浮かべながらリヴェリアさんの問いに答える。

 

「そうだ。さらに言えば上層の中でも上位に入る硬さを持っている。だからこそ新米冒険者は仕留め損なうことが多く、そのせいでキラーアントの大群に襲われることも少なくない」

 

だから十分注意するように、そう念を押すリヴェリアさんに頷いて、僕は目の前で行われている戦闘に目を向ける。

そこではティオナさんが大双刃(ウルガ)でウォーシャドーの群れを薙ぎ払い、ティオネさんが投げナイフで残党を処理するという連携を繰り広げていた。

リヴェリアさんやレフィーヤさんは魔力の温存と云う事で戦闘には参加していない。一応、僕も魔力で武器を取り出すので温存させるという名目の上、リヴェリアさんの特別講習を受けている。

ちなみに、アイズさんは戦闘に参加しようとしていたが、僕の勉強の為に二人の戦いぶりを見せたいということで、フィンさんに見張りのごとく隣に立たれ戦闘に参加できずにいた。

あれからずっと無表情なのにどこか機嫌が悪い人特有の雰囲気を感じた僕は恐る恐るアイズさんに話しかける。

 

「えっと、アイズさんはそのサーベル? を使うんですか?」

 

僕に話しかけられたのが意外だったのかアイズさんは僕でもわかるくらいに目を見開く。

隣りにいたフィンさんは僕の行動に笑みを受けべるだけで成り行きを見守っている。

アイズさんは目をパチクリとさせていたが、やがてサーベルを抜いた。

 

「うん。使いやすかった、から。……触って、みる?」

 

「わぁ! いいんですか!!」

 

僕が笑顔で頷くと、アイズさんはサーベルを一度鞘にしまってから僕に手渡してくる。

スキルで出した武器以外を触るなんて久しぶりだなと思いながら僕はサーベルを抜き放つ。

細く長い刀身がダンジョン内の光を鈍く反射した。暫くサーベルを振ってみたり鞘にしまったりを繰り返した後アイズさんに返す。

 

「ありがとうございました!!」

 

「ううん。いいよ」

 

ちょうどそのタイミングで魔石の回収を終えたティオナさんとティオネさんが戻ってきた。

 

「いやぁ、暴れたよ~」

 

「まったく、サポートするこっちの身にもなりなさいよね」

 

ご機嫌なティオナさんにティオネさんが愚痴を溢す。ただティオナの「暴れた」の部分に反応した人がいた。

アイズさんだ。羨まし気な視線をティオナさんに送り続けているとフィンさんは苦笑をこぼしながら槍で肩を叩く。

 

「はぁ。良いよアイズ。ちょうど次のお客さんが来たようだし」

 

そう言ってフィンさんは正規ルートの方に視線を送ればそこからキラーアントの大群が現れる。

その中の数匹が顎先に滴る液体を付着させていた……

 

「他の冒険者がやられたのか」

 

リヴェリアさんが目を細めながらそう呟く。僕は無意識に槍を取り出すと固く握りしめた。

ティオナさんやティオネさんも自身の得物を構え——

 

「私が行く」

 

アイズさんが一歩前に出た。

呆ける僕を置いて他の人たちは武器を下げてしまう。

混乱する僕にフィンさんが口を開く。

 

「いいかい、ベル。よく見ておくんだ」

 

そう言っている間にもアイズさんはサーベルを抜き放ち、一言

 

「「目覚めよ(テンペスト)」」

 

「彼女の剣技を」

 

そう零した。

突如として暴風が吹き荒れ、アイズさんを中心に風の帯が産まれる。それは彼女に襲い掛かろうとしたキラーアントを粉砕し絶命させた。

 

「いくよ」

 

そう言って駆け出すアイズさん。次の瞬間にはその姿を捉えることができなくなった。

目の前でいつの間にか切り刻まれ灰になっていくキラーアントの群れに、僕は乾いた笑いしか出てこなかった。

リヴェリアさんも眉間を抑えながらため息をこぼしている。僕に見ているように言ったフィンさんも「これじゃあ見れないね」なんて呟いてるし。

 

遠いなぁ……でも、何時か追いつきたい、追いつかなきゃ。

 

拳を握りしめながら、僕は新しくできた目標に静かに闘志を燃やしていく。

 

 

 

 

 

その後、調子に乗った(鬱憤を晴らすように)アイズさんがほとんどのモンスターを僕が視界に入れる前に倒してしまい、碌に確認もできずに17階層前まで来てしまった。

 

ミノタウロスの鳴き声が聞こえた気がするけど次に聞こえたのは断末魔だったよ。

 

「ベル……道中はアイズがすまなかった」

 

いつもより肩が下がっているように感じるリヴェリアさんの謝罪に僕は遠い目をしながら首を振った。

 

「いいんです。アイズさんが満足そうなので……」

 

因みに、件のアイズさんとティオナさんは、フィンさんが安全確認と言う名目で先に18階層に行かせ、ティオネさんもフィンさんからのお願いで後を追っていった。

 

「……本当にすまん」

 

もう一度、本当にすまなそうに謝るリヴェリアさんに流石に見ていられなくなったのかフィンさんが僕に声をかけてくる。

 

「えっと、ベル。次の17階層には何がいるのか知っているかい?」

 

フィンさんからの質問に正気に戻った僕は慌てて答える。

 

「最初の迷宮の孤王(モンスターレックス)、ゴライアスが出現する階層です」

 

「そうだ。今はまだインターバル中でゴライアスは居ない。が、これからここへ来るようになったらインターバルのサイクルには注意しておくように」

 

「はい!」

 

僕の返事に軽く頷いたフィンさんは、次に苦笑を零し「それじゃあアイズたちと合流しようか」と言って先頭を歩きだした。

リヴェリアさんも眉間に手を当てながらついていく。その苦労人の背中に僕とレフィーヤさんは心の中で謝るのだった。

 

 




次回、リヴィラ殺人事件です
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