英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

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今回はレフィーヤvs巨大モンスターだといったな・・・・・・あれは嘘だ。


いや、一様描写としてはあるんですけどね。いかんせんベルのが伸びちゃった。

あと、リヴェリア様の魔法詠唱。フルで載ってるサイトとかってないんですかね?
アニメでも確か所々切れてたと思うし……。


英雄の欠片と山吹妖精

「『解き放つ一条の光、聖木の弓幹(ゆがら)。汝、弓の名手なり』アルクス・レイ!!」

 

「アアアアアア!!」

 

私の攻撃を食らったモンスターは、表面が軽く抉れた程度で何事もないように再生していく。そしてそのお返しと言わんばかりに、幾つもの触手が鞭のように私に襲い掛かってくる。

 

地面をえぐり砂埃をたてる触手を何とか回避しながら、私は現状に苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべる。

私が対峙した時、散々暴れまわっていたこのモンスターはなぜか執拗に私を狙い始めた。そのせいでまともに詠唱に入れずに回避一辺倒になってしまった。

 

もっと強い魔法なら倒せるかもしれないけど!

 

「この状況じゃ無理です!!?」

 

先程から続く鞭の嵐は、止むどころかどんどん激しさを増してきている。

さっきまでは避けれた攻撃も段々と避けきれずに体に掠るようになってきた。

 

やっぱり私じゃ無理なのかな。

 

「レフィーヤ!」

 

私が諦めかけた時、巨大な斬撃と共にティオナさんが割り込み、触手を数本まとめて切断した!

 

「頑張ってるねぇ! 私も手伝うよ!」

 

「馬鹿ティオナ! 一人で突っ込むなって言ってるでしょ!」

 

笑顔でこちらに手を振るティオナさんに、遅れてやってきたティオネさんが罵倒と拳骨を飛ばす。

私は胸が熱くなるのを感じながら叫んだ。

 

「ティオナさん! ティオネさん!!」

 

「レフィーヤ! 前は私たちが抑えててあげるから、デカいの頼んだわよ?」

 

そう不敵に笑って触手を捌きにかかるティオネさん。

私は目元に溜まったものを拭いながら立ち止まって杖を構える。

 

大丈夫。攻撃はあの二人が止めてくれる。私は私にできることをするんだ。

 

『ウィーシェの名のもとに願う 森の先人よ』

 

私の持つ、第三の魔法。

 

『誇り高き同胞よ 我が声に応じ草原へと来れ』

 

『繋ぐ絆 楽宴の契り 円環を廻し舞い踊れ』

 

私が唯一、リヴェリア様に勝てる魔法。

 

『至れ 妖精の輪 どうか ― 力を貸し与えてほしい』

 

私を中心に膨大な量の魔力が溢れかえり、それが大きな魔法陣へと変化していく。

私はそこで詠唱を止めることなく、紡ぎ続ける。

 

『ウィーシェの名のもとに願う 』

 

自分の中で暴れ出しそうになる魔力を抑え込み、私は詠唱を続けた。

私の詠唱が続くにつれて周りの食人花までもが魔力につられて集まってくる。

恐怖に止まりそうになる自分に叱咤をかけ詠唱を続ける。

 

大丈夫、仲間を信じるんだ!

 

『三度の厳冬  終焉の訪れ』

 

『焼き尽くせ、スルトの剣  我が名はアールヴ』

 

「『レア・ラーヴァテイン』!!!」

 

詠唱が完了し広範囲殲滅魔法が放たれる。

ティオネさんとティオナさんは魔法が完成する直前に離脱している。

私はありったけの魔力も込めて巨大モンスターをまわりの食人花ごと焼き払った。

 

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!?!!!

 

絶叫。複数の火柱に全身を貫かれ、再生すら間に合わない速度で全身を焼かれもがき苦しむモンスター。

 

「やるう!」

 

ティオナさんの賞賛の声が朦朧とする意識の隅で聞こえた。

 

 

 

 

 

憎い。辛い。悲しい。痛い。苦しい。

 

『煩いぞ、亡者めが』

 

煩わしそうに彼の人が一括すると、僕に纏わりついていたドロドロの塊はパシャリと弾けた。

 

英雄王さん……僕。

 

『ええい、顔を伏せるでないわ!』

 

不機嫌そうに眉を顰める英雄王さんに、僕は伏せようとした顔をもう一度上げた。

 

『今のお前ではアレの相手はできん。我でもアレの相手は骨が折れるからな』

 

さっきのは、いったい何なんでしょうか?

 

『その前にこれを飲め』

 

そう言って英雄王さんは何処からともなく杯を取り出すと僕に渡してくる。中には少しとろみのついた液体が入っていた。

 

『アレの呪いは強力だ。早く飲まねば死ぬぞ?』

 

死ぬ?!

 

僕は驚愕の事実に慌てて中の液体を煽る。ほんのりと甘い液体が喉を通り過ぎていき、気のせいか体が軽くなった気がする。

 

『いいか、アレに触れればお前の周りにいる雑種程度では一瞬で飲み込まれる。アレはそういった類のものだ』

 

そう言ってから英雄王さんは苛立ちげに髪の毛をかき上げると、深い溜息を吐いた。

 

『本来ならお前の道化っぷりと成長を座して見るつもりであったが、アレは我の不始末でもある』

 

英雄王さんがそう言うと僕の持っている鍵が光始める。

 

『火種はくれてやる! それを生かすも殺すもお前次第よ……ベル・クラネル』

 

 

 

 

 

重い瞼を開けると遥か高くに水晶の天井が見える。すると犬人(シアンスロープ)の女の子が僕の視界に飛び込んできた。

 

「あ! 起きたのか!?」

 

「……ぁなたは」

 

「あたしはルルネだ。お前はもういいのか?」

 

僕は数秒の間を空けて飛び起きると当たりを確認する。

 

「あのモンスターは!? レフィーヤさんたちは何処ですか!!」

 

「うわああぁ!!? 落ち着け、落ち着けって!? あのエルフならお前をここに降ろした後戻って」

 

彼女が言い切るよりも早く、中央樹の方が劫火に包まれた。至る所から上がる無数の火柱がモンスターを焼き灰へと変える。

僕は反射的にそちらへ疾駆した。

背後でルルネさんの叫び声が聞こえるがそれを置き去りにして走る。あれだけじゃあ倒せないから!

 

木々の間を縫い、岩を飛び越え崖を駆け上がった。

 

 

 

「ッレフィーヤさん!!」

 

僕の視界の先、そこには倒れているレフィーヤさんを守る様に立つティオナさんとティオネさん。そして全身の至る所を炭化させ、その胴体に開いた大穴から黒い泥を垂れ流す人型モンスターの姿があった。

 

「ベル! あなた今までどこに!?」

 

「ティオネさんティオナさん! 絶対にあの泥には触れないでください!!」

 

僕がレフィーヤさんたちのところへたどり着くとティオネさんの問いに答えずにそう叫ぶ。

レフィーヤさんは気絶しているだけだったようで静かな寝息を立てていた。

僕が安堵の息を漏らしているとティオネさんは泥を垂れ流すモンスターを指さした。

 

「ベルはアレが何かわかるの?」

 

「……分かりません。でも、分かります」

 

「ちょっと、どういう意味よ」

 

「まぁまぁ。確かに私もアレには触りたくないから」

 

ティオネさんが尚も僕に聞こうとすると、間にティオナさんが入ってきて溢れ出した泥を見て眉を垂らす。

そこには残っていた木々を腐らせながら広がる泥の池が広がっていた。

 

「はぁ。まあいいわ。私も触りたくないのは一緒だし。それで、ベルはどうしたいの?」

 

ティオネさんは諦めたように首を振ると僕にもう一度聞いてくる。

 

「なんとかあの泥ごとモンスターを倒したいんですけど」

 

今の僕には無理だ。そう思っていると背後から声がかかった。

 

「なら、私がやろう」

 

「リヴェリア!」

 

「リヴェリアさん!!」

 

そこには大きな杖を片手に持ったリヴェリアさんが立っていた。

 

「あのモンスターを倒せばいいのだろう? ここまであまり働いていないんだ。一度ぐらいはしっかりと働かないとな」

 

そう言って杖を掲げるリヴェリアさんに僕は覚悟を決めると武器を取り出しながら言う。

 

「僕があのモンスターの魔石を砕きます。そのタイミングでリヴェリアさんは周りの泥を」

 

「ちょっと、ベル一人で突っ込むつもり?」

 

「私も行くよ!」

 

僕の提案にティオネさんとティオナさんが待ったをかけるが、僕は首を横に振る。

 

「お二人にはレフィーヤさんとリヴェリアさんをお願いします」

 

僕はまっすぐティオネさんを見つめる。譲らないと僕を威圧していた目は数秒後呆れたように緩んだ。

 

「まったく、あんたも変なところで頑固よね。ま、嫌いじゃないわよ? そういうの」

 

「ちょっと、ティオネ!」

 

姉であるティオネさんが折れた事に驚くティオナさんに、ティオネさんは「諦めなさい」と言って

 

「ティオナも、後輩が男見せようとしてるんだから、邪魔しちゃ悪いわ」

 

と妹の肩を叩いた。

そんなことを言われては断れないとティオナさんは唸っていたがティオネさんは改めて僕の方を向くと真剣な表情で口を開く。

 

「……ただしベル、絶対死ぬんじゃないわよ」

 

拳を突き出してくるティオネさんに僕も笑顔で拳を突き出す。

 

「はい! いってきます!!」

 

 




次回、英雄の欠片と宝具……ベルの放つ宝具とは?!

宝具撃てるかなぁ

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