英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

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ここ最近の投稿頻度が高いのはシンフォギアのおかげ←要はモチベ

哲学兵装に浪漫を感じる今日この頃……全く関係ないですねハイ





英雄の欠片と裏路地での遭遇

「ハァッ!」

 

「甘いっす!!」

 

キィンという金属音と共に僕の持っていた短剣が弾かれる。

手に残る痺れが力負けしたんだと教えてくれると男性は長剣を腰にしまって駆け寄ってくる。

 

「大丈夫っすか?」

 

「いえ、気にしないでください!」

 

「本当っすか? それにしてもベルさん! 随分うまくなったっすね」

 

「ホントですか!」

 

僕が喜びに震えていると男性は「でも、まだまだっすよ」といって僕の肩を叩く。

彼は僕に短剣の扱いを教えてくれている人でラウルさん。他にもハンマーの使い方を教えてくれるアマゾネスの女の人や大剣に刀、長剣を教えてもらっている人だっている。

最初は訝しんでいた人たちも事情を説明すると快く承諾してもらえた。

因みに大剣はティオナさんに教えてもらっている。アイズさんにも教えてもらいたかったけど、18階層の事件の後フィンさんと深層の方に行ってしまった。

 

 

やっぱりいい人たちばかりだ。

僕はこのファミリアに入って良かったと思いながら、ふと訓練場の入り口から僕を見ている人を見つけた。

 

「……フン」

 

「ベートさん」

 

ただ、全員が首を縦に振ってくれたわけじゃない。ダンジョンに行かなきゃいけない人もいたし一部の女性からはなぜか邪険にされたりしている。その中でもベートさんには、口すら聞いてもらっていなかった。

 

僕が何かしてしまったのかと神様に相談してみても

 

「別に嫌っとるわけやない」

 

としか教えてくれなかった。

神様との会話を思い出しながら僕がベートさんの方を見ているとラウルさんが首をかしげていた。

 

「どうかしたんですか? ベルさん」

 

「あ、いえ、続きお願いします!」

 

「いいっすよ! 自分もいろんな武器を使うベルさんのおかげでいい訓練になるっす!」

 

今は訓練に集中しなきゃ!

僕は気持ちを切り替えて短剣を取り出すと、砂地を蹴ってラウルさんへ疾駆した。

 

 

 

 

 

 

「ほい、ステイタスの更新完了やで」

 

「ありがとうございます、神様!」

 

昼食を終えた後、僕は神様にステイタスの更新をお願いした。

三日ぶりの更新で訓練での成果が出ているのかが気になったからだ。

 

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力  : D 571

耐久 : D 523

器用 : C 689

俊敏 : D 540

魔力 : A 886

 

【スキル】

//憧憬願望//

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正。

 

・王律鍵 G

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

・器用貧乏

複数の武器を扱うほど、武器の扱いに補正

戦闘で得られる経験値の一部消費

 

【魔法】

ゲート・オブ・バビロン

詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

 

「もうすぐで魔力は900になりますね!」

 

「せ、せやな。今調子で頑張るんやで?」

 

「はい!」

 

僕が上機嫌で浮かれていると神様は何かを思いついたように手を叩いた。

 

「そや! 久しぶりに宴開くんやけどベル、お酒飲めるか?」

 

「お酒ですか? 飲んだことがないので」

 

僕が上着から顔を出すと神様は楽しそうに笑った。

 

「ほな今晩、豊穣の女主人ちゅう店行くで!」

 

「わかりました。それじゃあそれまでちょっと僕買いたいものがあるので出かけますね!」

 

僕がそう言って扉に向かうと神様は手を振ってくる。

 

「気いつけてや~」

 

「はーい」

 

僕も神様に手を振り返して消耗品の買い物へ出かけた。

 

 

 

 

 

「回復薬に携帯食料、あとは……ん?」

 

冒険者通りからホームの方へ歩きながら紙袋の携帯食料を数えていると、裏路地の方から何かが聞えてきた。

僕は紙袋を閉じると陰の射す路地へと歩いていく。

 

「……めて……さい!」

 

「うる…え!!」

 

段々と聞えて来る声に僕は歩調を速めていく。そして

 

「ッ!! 何をやっているんですか!!」

 

小人族の少女に武器を振り下ろそうとしている人がいた。

僕は一気に加速して間に割り込むと地面につき立てるようにして槍を取り出す。

振り下ろした剣が槍に阻まれ驚愕に顔を歪めた男の人は更に激昂する。

 

「誰だてめえ!!! その餓鬼を庇うってのか!!」

 

「一体この子が何をしたっていうんですか!」

 

僕は後ろの少女を庇いながら目の前の男を睨みつける。

少女は突然のことに驚いていたが僕の槍を見た瞬間、目が座った気がした。

 

「そいつが俺の金をちょろまかしやがったんだよ!!!」

 

「……リリは、そんなことしていません」

 

「どちらにしたって武器で切りつけるのは可笑しいです」

 

そう言うと男性は我慢の限界がきたのか再び武器を振り上げた。

僕は迎撃できるように槍を引き抜いて下段に構え——

 

「何をしている」

 

男の背後から声がかかった。

何処かで聞いたことがあるその声に僕が覗き込むとそこにはリューさんが立っていた。

 

「リューさん!? どうしてこんなところに」

 

「クラネルさんでしたか。私は買い出しに出ていたところです。が」

 

そう言って言葉をきると、普段のリューさんからは想像もできないような殺気が男性に放たれた。

男性はいきなりの殺気に冷や汗を垂らすが虚勢をはってリューさんに怒鳴り散らす。

 

「う、うるせー! 邪魔すんなら」

 

「吠えるな」

 

「ッ……」

 

「私はいつも、やりすぎてしまう」

 

袖口からナイフを取り出したリューさんを見て男性は数歩後ずさると舌打ちをして逃げていった。

僕は軽く息を吐き出して槍をしまうとリューさんが僕の方まで歩いてくる。

 

「ご無事ですか」

 

「はい。ありがとうございます。君も……あれ?」

 

振り返るとさっきまでいた少女は忽然と姿を消していた。

 

「どうかされましたか?」

 

「あ、いえ」

 

「そうですか。そう言えば本日ご予約されていたのはロキ・ファミリアでしたね。クラネルさんも?」

 

リューさんが思い出したようにそう言ったので僕は笑顔で「はい!」と答える。

 

「良かった。シルが喜びます」

 

リューさんは「それではまた」と言って軽くお辞儀をすると冒険者通りの方へと歩いていった。

 

「……僕も急がなきゃ」

 

先程の少女の事が気になりつつも、僕はファミリアのホームへ慌てて帰るのだった。

 

 

 




次回、再び豊穣の女主人へ。そしてベル、初の飲酒

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