色々と疲れたので一度フィーバーします。キャラ崩壊がありますので苦手な方は読まないことをお勧めします。本編にはあまり関係がない……はず。
「だ、誰かベルを止めろー!!?」
「私は団長一筋団長一筋団長一筋団長一筋団長一筋団長一筋」
「ッ待てぇ!! シルやリューまでやられてんじゃないかい!!」
地獄絵図。第一級、第二級。そして泣く子も黙る店の店主ですら彼を止められない。
なぜこんなことになったのか、フィンは目の前の惨劇をある種達観の域に達しながらしながら考えていた。
時間は一時間前に遡る。そう、宴が始まったその時まで。
「今日は久々の宴会や! 思う存分飲めぇーー!!!」
『『『オオォォォォォ!!!!』』』
各々がジョッキをぶつけ合う中、僕は幹部メンバーの席に座らされていた。
「あの、僕がここで本当にいいんでしょうか?」
「気にするな。他の団員たちが遠慮した結果、お前になったのだ」
僕が委縮しているとリヴェリアさんが嘆息しながら言った。
「別に誰も気にしないって」
「……ケッ」
「あうあうあぁぁ」
「若干名、は置いておいて、ベル改めて18階層ではご苦労だった」
つい先ほどダンジョンから帰ったばかりのフィンさんの言葉に、僕はむず痒いのを感じながら笑顔で答える。
「フィンさんたちも、間に合ってよかったですね!」
「……うん」
「リヴェリアとロキから聞いたよ。パーティを組むように言われたそうじゃないか」
「んぐぅッッ!!??」
フィンさんの言葉に先ほどから一心不乱に野菜を食べていたレフィーヤさんがむせた。
僕は慌てて水を持っていくとレフィーヤさんに手渡す。
「大丈夫ですか!? これ水です!」
「んんむ! んッ……んッ……はうぅ。助かりましたぁ」
「もう、気を付けてくださいね」
僕の指摘に顔を赤くして明後日の方向を向くレフィーヤさん。僕は首をかしげているけど他の皆は暖かい目を送っていた。
?
「まぁ、そのパーティの候補にレフィーヤが挙がっているんだ」
「レフィーヤさんがですか!? 僕まだレベル1なんですけど」
レフィーヤさんはレベル3だ。どう考えても釣り合わないだろう。
僕が顔を若干青くして首を振っているとリヴェリアさんが苦笑しながらフィンさんの言葉を肯定した。
「いや、悪くない考えだと私は思ったぞ」
「リヴェリア様ァ!!?」
「確かにレフィーヤはレベル3だ。それに魔法職としてはレベル4にも届くだろう。だが、レフィーヤはあくまで魔法職。今後下層への遠征に参加していけばモンスターとの近接戦闘もあり得ない話ではない。そしてレフィーヤのソロでの戦闘能力は良くてレベル2の中級だ」
リヴェリアさんの言葉にフィンさんが「彼女は生粋の魔法特化だからね」と補足を入れ、引き継ぐようにして話し続ける。
「これからランクアップを果たしていけばベルにも遠征に参加してもらうことがある。だからこそ、ここでベルには前衛としての心構えと役割を理解してもらいたいんだ」
「それにレフィーヤは腐ってもレベル3。ベルの潜る階層で後れを取ることはないじゃろう」
僕はフィンさんやガレスさんの言葉を受けて、拳を握りしめると大きく頷いた。
「はい!! レフィーヤさんもよろしくお願いします!」
「わ、私は……やるなんて、一言も……」
「いいなぁレフィーヤ。ねね、いつか私とも一緒に潜ろうよ!」
レフィーヤさんの声はティオナさんの声にかき消されてよく聞こえなかった。
それに僕が訪ねようとしたタイミングで、シルさんたちが追加のお酒を持ってきたことでうやむやになってしまった。
「ほれベル! これはうちからのおごりや!! じゃんじゃん飲めぇ!」
「は、はい。いただきます」
神様が僕の目の前にドンと置いたのはエールが並々と入ったジョッキだった。それもリヴェリアさんたちよりも一回り大きく、ガレスさんたちが飲んでいるのと同じ大きさのものだ。
僕は初めてのお酒に緊張し思わず喉を鳴らす。そうして僕が飲むのをためらっていると神様が見かねたように声をかけてきた。
「あかんあかん。ええかお酒っちゅうのは一気にググッと飲むもんやで!」
「馬鹿者! 初めての——」
ググッと……よ、よし、いくぞぉ!
僕はジョッキを勢いよく掴むと中身を思いっきり煽った。
「馬鹿者! 初めて酒を飲む者にそんなッ!? ベル待て!!」
リヴェリアの静止むなしく、ベルは大ジョッキを一気に飲んでしまう。ロキ自身もまさか本当に一気に飲んでしまうとは思わず、酔いが引いていくのを感じていた。
それはロキだけでなく、この時テーブルに座っている冒険者たち——一名を除いて——全員が数年前のとある少女の騒動を思い出していたからだ。
酒場全体が盛り上がっている中、妙に静かな幹部席周辺。その幹部たちの視線を一身に受けている白髪の少年は煽っていたジョッキを口から離すと—―――――――
机に叩きつけた。
バアァァン!! という音が響き、周囲の冒険者も何事だとそちらを見る。
店の店主は既にこの時、嫌な予感を感じ取っていた。
「べ、ベル?」
俯きながら頭を左右にふらふらと揺らすベル・クラネルにロキが代表して声をかける。
数秒ほど静かな空気の後、ベルが顔を上げる。そしてロキは気づく「やってしまった」と。
「かみしゃまあぁ・・・おさけっておいしぃですねぇぇ」
頬を真っ赤に上気させながら、とろんとした瞳で笑みを浮かべるその姿は、酷く魅惑的で妖艶な雰囲気を溢れさせていた。
思わず団員たちが二度見してしまうほどに。
「ベル? 大丈夫?」
普段とは全く違うベルの様子にティオナが恐る恐るといった様子で声をかける。
ベルは体を左右に揺らしながらゆっくりとティオナを見ると
「えへへ。ティオナしゃんはすきですよ~?」
「はぅ!?」
純粋無垢な笑みを向けた。
その笑みが繰り出した一撃は、オラリオでもトップクラスの耐久ステイタスを貫通し、アマゾネスとしての性をも突き破って少女のハートにクリティカルヒットした。
ベルの言葉に胸を抑え見悶えながら撃沈するティオナに姉のティオネが駆け寄る。
「ちょっとティオナ!? ベルもあんた酔いすぎ」
「ティオネしゃんは~、おねえさんみたいでかっこよくて~すき」
「ぐふっ。だ、ダメよ。私には団長という」
ベルの暴走は止まらない。今度は妹を助けにきた姉にその純粋な瞳がむけられる。
ティオネは内から湧き上がる保護欲のようなものに襲われながらも、己の愛する人を支えに何とか首の皮一枚で踏みとどまった。しかし、ベルは非常にも追い打ちをかけた。
「ティオネしゃんは、ぼくのこときらい、ですか?」
「うぐっ……別に嫌いじゃないわよ」
「やった。ティオネおねえしゃんだいすき!」
「ッカハ!!」
涙目の上目使いからの花が咲いたような満面の笑みのコンボに、ティオネは口から吐血しながら撃沈した。また、その小動物を思わせるような愛くるしい表情と目尻に溜まった涙に他の団員——主に女性冒険者——も共に沈んでいった。
リヴェリアたちが戦慄しているなか、ベルはというとニコニコしながら追加のお酒を飲みはじめる。
ここでこれ以上被害が出てはまずいとリヴェリアは慌てて動き出す。
「ま、待てベル。それ以上の飲酒は」
「ぇ……」
ベルが口を付けようとしたジョッキを取り上げるとベルは笑顔から一転、絶望に染まった顔でリヴェリアを見る。
先程ティオネに見せた以上に悲し気な表情に、リヴェリアは一瞬たじろぐが多大な精神力を消費して険しい表情のまま首を横に振った。
「そ、そんな顔で見てもダメだ」
「……うぅ」
「すまない、リヴェリア。君は正しいはずなのに僕には君が鬼のように見えてしまうのはなぜだろうか」
「うちもそうみえるんやけど」
「な!? 私はベルの事を思って! 大体これはロキの悪ふざけが原因だろう!!」
突然のフィンとロキからの横やりに今度こそ表情を苦悶に歪めるリヴェリア。更に周りからも同じような視線を幾つか感じるリヴェリアは自身の中に暴れまわる感情を制するのに精一杯になる。
因みに、フィンやロキ以外の視線は、別段自分たちに害はなく普段ではまず見られないような幹部たちの一面が露見しているので、今
そんなことは露知らず未だ葛藤の中にいるリヴェリアに豊穣の女主人の店員であるシルが駆け寄っていく。
「リヴェリアさん、ちょっとそのお酒、貸してもらえませんか?」
「む。いや、もう任せよう」
一瞬躊躇ったリヴェリアだったが、この状況から抜け出せるのであればと半ば思考を放棄してジョッキをシルへと手渡す。
その時、リヴェリアは見ていなかった……シルの浮かべていたのが悪魔的笑みであったのを
書いててあまりにも長くなったので半分に切ります。