「お兄さん、お兄さん、白髪のお兄さん。サポーターを探してはいませんか?」
ダンジョンへ向かう途中、大通りの噴水のある広場で。僕は少女との再会を果たした。
「えっと、僕?」
「はい! リリはお兄さんに話しかけていますよ」
レフィーヤさんとパーティを組むことになって最初の日。
僕は先にダンジョン入り口まで行ってしまったレフィーヤさんを追いかけていた。
そんな僕に背後から声をかけてきたのは、大人が入りそうなほど大きなバックを背負った少女だった。
「……君って、あの時の小人族だよね?」
「私はお兄さんとは初対面ですよ? それに私は
そう言って目の前の少女がフードを取り去ると、深い亜久里色の髪に二つの山がひょこりと生えていた。
その山はピクピクッ、と動いて本物であることを証明しているようだった。僕は首をかしげながらその耳へと手を伸ばす。
ふわっとした手触りで、触られるのに慣れていないのかピクピクと動くその耳に、僕は夢中になってさわ……もふり続けた。
「うわあぁ! すごいね!!」
触ったことのない感触に僕は感動していた。
だからだろうか。目の前の少女が今どんなことになっているのかしばらくの間気づかなかったのは。
「ふぅ。あぅ……んんっ。そのっ……やめっ!」
「…………ッ!?」
バッ、と手を引っ込めたがすでに遅い。
解放された少女は頬を上気させ、両手で耳を守りながら座り込んでしまった。
「ママ、見て~」
「こらッ、見ちゃいけません!」
……いたたまれない。
いや、僕が原因なんだけど!
僕は慌てて神様から教わった土下座を繰り出す。
「ご、ごごご、ごめんなさい!」
僕が必死に頭を下げていると少女は瞳を潤ませながら呟いた。
「い、いえ……ただ、あんなことまでされたのに、雇ってもらえないとなると」
「ごめんなさいぃ! 雇います! 雇いますからぁ!!?」
僕が罪悪感に押しつぶされてそう言うと、少女は一瞬俯き次には満面の笑みでほほ笑んだ。
「これからよろしくお願いします!」
……は、嵌められた!?
もしかして背が低い人は策士が多いんだろうかと、ファミリアの団長を思い出しているなか、目の前の少女は特に気にした様子もなく契約内容の説明に移っていった。
その頃、とあるファミリアのホームでは小人族がくしゃみをしていたとかなんとか。
とりあえず犬人、リリルカさんから仮契約でいいと言われたので僕はそれに頷き、リリルカさんを連れてダンジョンに向かった、んだけど……
「で、誰なんですか? その子」
「えっと、その、すいません」
そこには顔から表情の抜けたレフィーヤさんが仁王立ちをしていた。青い瞳から光が抜け落ち、背筋を凍り憑かせるような死線を送ってくる。
因みに僕は正座だ。
「リ、リリはリリルカ・アーデと申します! 失礼ですが
「はい、そうですが。で、貴女はなんでベルと一緒にいたんですか?」
「リリルカさんはサポーターで」
「ベルには聞いていません!」
「はい! すいませんでした!!」
レフィーヤさん恐い
「その、リリは弱いサポーターなのでお強そうな冒険者のベル様やウィリディス様のサポートができたらなぁ、と」
レフィーヤさんの謎の見幕に押されながらもリリルカさんがそう答えると、レフィーヤさんは脱力したように大きなため息を吐いた。
「はぁぁぁぁぁ。わかってました。わかっていましたよ。朝から胸騒ぎはしたんです」
「あの、レフィーヤさん?」
「ベル!」
鬼の形相でこちらを見るレフィーヤさんに僕は背筋を限界まで伸ばした。
「あなたがリリルカさんと契約したんだから、あなたがこのパーティのリーダーです! 無責任な行動はしないでくださいね!」
「はいい!!!」
「何時まで座ってるんですか!? 早くいきますよ!!」
「ご、ごめんなさいいぃ!!」
足早にダンジョンの方へ歩いていくレフィーヤさんの後を僕は慌てて追う。
「頑張って稼いでくださいね? ぼうけんしゃさま」
————その後ろで、誰かの嗤い声が聞えた気がした。
この作品のリリは結構ドライというか暗めです、はい。
次回はもしかしたら今日中にあげられるかも(*´艸`*)←フラグ