「ほ、ほな、いくで?」
ロキファミリアの主神の部屋では、今まさにベルのステイタスが更新されようとしていた。固唾をのんで見守る団長と副団長の視線にベルは酷く緊張する。
ロキはベルの背に馬乗りになると自身の指を切りつけ神の血を一滴たらした。
ベル・クラネル
レベル 1
力 : C 649
耐久 : C 601
器用 : B 796
俊敏 : C 668
魔力 : S 942
【スキル】
//憧憬願望//
早熟する。
思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。
限定的条件下におけるスキル補正。
・王律鍵 F
レベルに応じた宝物庫へのアクセス権
・器用貧乏
複数の武器を扱うほど、武器の扱いに補正
戦闘で得られる経験値の一部消費
【魔法】
ゲート・オブ・バビロン
詠唱破棄
宝物庫内の宝具の転送及び射出
英雄の号砲
神聖特攻宝具
全ステイタス、レベルを魔力に統合
使用後、レベルに応じた王律鍵の一時封印、及びステイタスの一時固定化
<詠唱文>
顕現せよ。今は遥か過去の偉業。時の水面に沈めども願いは劣らず、腐敗せず。民を守るは我が勤め。友を救うは我が願い。顕現せよ、世界を統べし王の残滓よ。
我求むは他の命、他の未来。血違えども一筋の灯り、絶えることなかれ。来たれ、燃えよ、幾千万の輝きもって敵撃ち滅ぼさん。
「あかん」
「なんだこれは」
「これは……」
三人の声が静かな部屋に響く。
ベルを除く全員がこの魔法に対して思う事があったのか顔を険しいものにした。
通常、魔法には詠唱文が存在し、それが長ければ長いほど魔法の効果は強力になっていく。例を言えば今この場にいるリヴェリアがまさにそれだ。
彼女の魔法もかなり珍しく、詠唱を連結させることで多様な効果の魔法を発動させることができる。そんな彼女の詠唱も長文であり、だからこそそれに見合った効果が得られるのだ。
そしてベルの魔法は超長文詠唱。威力は未知数だが、そんなことは関係なしに危険だと思わせる文がその後に続いていた。
神ロキはまた別の部分に目が言っているが、フィンとリヴェリアはその文章の内容を吟味していた。
「まるでお前のような魔法だな?」
「うんまぁ。君の部分も引いているようだけどね」
リヴェリアと同じ様な長文詠唱に、フィンと同じようなステイタスの変動。まあフィンの場合は加算であり、ベルの場合は統合ではあるが。
自分以外の反応があまり良くないことに、ベルはおずおずとロキに声をかける。
「あの、どうして僕に新しい魔法が出たんでしょうか。さっきリヴェリアさんが魔導書って」
ベルの言葉にロキは困った様な表情をするとベルを宥めるようにベルの頭を撫でた。
「あ~~、それはあんま気にせんでええ。指し向けたやつも大体わかっとんでな」
小声で「どうせあの色ボケが原因やろ」と呟くロキにベルは首をかしげた。
「そうなんですか?」
「おう。だからベルはあんま気負わんといてぇな?」
ロキの言葉に何か迷惑をかけたのではと思っていたベルは、とりあえず安堵の息を漏らした。
そんなベルは次に新しく発現した魔法に目を向ける。
その眼には好奇心と興奮がありありと浮かんでおり、ロキとリヴェリアは苦笑するしかなかった。
「えっと、これが僕の新しい魔法なんですよね?」
「ん~、まぁそうなんやけどな?」
「?」
歯切れの悪いロキに首をかしげるベル。
そんなベルにフィンは難しい顔をしながら言った。
「喜んでいるところすまないが、場合によってその魔法の使用を禁止するかもしれない」
「どうしてですか?」
眉を顰めてむっとするベルにフィンは苦笑しながら理由を述べる。
「色々と不安要素が多すぎてね。君一人で使うと危険すぎる。ベル、明日は僕とリヴェリアと一緒にダンジョンに潜ってもらうよ」
フィンからのいきなりの誘いに目を白黒させるベルだったが、続いてフィンが言った理由に納得する。
「長文の魔法は威力が高いことが多い。だから問題のないダンジョンで試そうと思うんだ」
「はい。わかりました」
「よろしい。それじゃあベルは夕食を食べてくるといいよ」
「フィンさんたちは行かないんですか?」
「僕たちは少し話さないことがあったからね」
フィンの言葉にベルは「分かりました」と笑顔で答え部屋を後にした。
因みにベルはその後食堂で質問攻めにあい、大して夕食を食べれなかったのは蛇足である。
速攻魔法を期待していた人はごめんなさい。
この後の展開的にどうしても必要だったのです。