英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

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ロキファミリアの入団試験。
それなのにロキや主要メンバーが一切出ていないという・・・。


しっかり出しますので・・・許して




英雄の欠片と試験

 

 

「い、いきます!」

 

僕は全力で走りながら右手に持ったナイフを振る。

 

「大振りすぎるよ。もっとコンパクトに」

 

が、フィンさんは僕の攻撃を余裕で回避した。

僕は慌てて振り返ると、眼前には木刀が迫っていた。

 

ガンッ!

 

「いでッ!?」

 

そのままの流れで回し蹴りを食らって数メートル吹き飛ぶ。

薄れていく意識の中で、最近蹴り飛ばされてばかりだなと思った。

 

 

 

 

 

 

「ふう。先は長そうだ」

 

「フィン。どういうことか、説明してもらおうか?」

 

「やあリヴェリア。彼だよ、この前久しぶりに親指がうずいたと言ったのは」

 

団員たちの中から現れたエルフ『リヴェリア・リヨス・アールヴ』。

深緑の長い髪をした彼女はレベル6の冒険者であり副団長でもある。

彼女の機嫌が悪そうなのは、普通、入団試験は幹部がそろって行うはずが、勝手に行ったので怒っているようだった。

そんな彼女だが僕のセリフに目を見開いた。

 

「この子が? ……それにしてもやりすぎじゃないのか?」

 

「もしこれでこの子の心が折れてしまえば、それまでだったというだけさ」

 

「はぁ。……ロキには言ったのか?」

 

ベルを治療しながらそんなことを聞いてくるリヴェリアに僕は思わず苦笑がこぼれた。

 

「君も知っているだろう?あの神がこんな面白いこと、見逃さないのを」

 

「……あぁ。そうだったな」

 

眉間を抑えながらもベルを甲斐甲斐しく治療するリヴェリアに

そういうところが「母親」と呼ばれる原因だと思うよ―――と言いたくなったのは内緒だ。

僕は気絶している彼をもう一度見つめる。

 

ベル……君は、どうして冒険者になりたいんだい?

 

 

 

 

 

 

 

「ん……あれ? ここって」

 

「起きたかい? 君は気絶してしまったんだけど」

 

フィンさんに言われて慌てて立ち上がる。

 

「す、すいません!!」

 

「なに、ただ当たり所が悪かっただけだよ。それで、続けるかい?」

 

そう言って木刀を構えるフィンさんに僕もナイフを構えて応える。

 

「お願いします!!」

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「も、もう一回お願いします」

 

「わかった」

 

ダブって見えるフィンさんにナイフを構える。

ポーションでは体力は回復しないということを気付いたのはどれくらい前だったか。

脚に力は入らないしナイフを持つ手も震え始めた。左腕は半ばから折れて今もひどく痛む。

うまく体が動かせないしもう駄目だと、気づいている。

自分は弱い。フィンさんはかなり手加減をしてくれているとおもう。

それでも、まともに切り合うこともできずに、躱されて背中に攻撃を入れられる。

分かってる。勝てっこない。弱すぎる……。

こんなのじゃ――――――――英雄にだって

 

僕の大ぶりの攻撃をフィンさんは木刀で弾く。

そのまま飛んでくる蹴りは流れるように僕の胴体に突き刺さった。

 

「ぅぁッ」

 

ひどくゆっくり見える時間の中で、僕は地面へ転がりうつ伏せの状態で転がった。

 

「——————。————」

 

周りの音がひどく遠くに聞こえる。

もう体を起こす力すら残っていなかった。

手足は縫い付けられたように動かなくなり、瞼も重くひとりでに閉じ始めた。

 

やっぱり、僕は英雄には、成れないのかな……

 

『戯けが。貴様ごときが英雄の名を冠するなど100年早いわ!』

 

またあの幻覚だ……

 

『そのような覚悟で、英雄(我が財)を名乗れると、使えるなどと思うなよ?』

 

か、覚悟ならあります。

でも、僕は

 

『……やはり我の見込み違いであったか。あの程度のことで折れるとはな』

 

だって……僕は弱い。大切な人一人、守れない……

僕は―――

 

『折れても、挫けても……それでも己を賭すと……お前は我に言った』

 

ッ……。

かつてこの人に、そして自分自身に放った言葉。

大切な人の言葉、僕の原点。

この人の言葉にかつでの光景が走馬灯のように甦った。

あの時の決意が、想いが全身を焼き尽くすような熱と共に駆け巡る。

 

『あの矮小な()の言葉であるのは遺憾だが……我はお前の内に見た。だからこそ、その鍵を、我が財を、我が力を……我自身を懸けたのだ』

 

胸にかけられた鍵を握る。それは手が焼き切れそうなほど熱く、胸が破れそうなほど輝いていた。

 

『まあ、我が力と言っても我自身も残滓に過ぎんがな……』

 

『お前の、ベル・クラネルの、想いを、願いを……言ってみろ』

 

そう言って不敵に笑うその人(英雄)に、僕は英雄の残滓を見た。

 

『僕は―――』

 

 

 

 

 

 

満身創痍の彼の攻撃を弾いて蹴り飛ばす。

彼は倒れこんだまま動かなくなってしまった。

左腕はあらぬ方向に曲がって全身傷だらけ、リヴェリアや周りの団員も何人かが駆け寄ろうとする……だが。

 

「フィン! やりすぎだ!!」

 

「まて!! リヴェリア!」

 

治療に行こうとした人間を止める。

きた・・・疼きが・・・親指の疼きが!

脱力していた彼の身体が僅かに動き始める。

体の痺れが取れていくように、徐々に起き上がっていく。

 

「ぼ、くは」

 

右手を地面について這いずるように、焦点のあっていない目でゆっくりと確実に。

 

「僕は、なりたい」

 

足を引き摺りながら、だらりと下がった左腕を引き摺りながら立ち上がり始める。

 

「なりたいッ!」

 

そして、彼はボロボロの状態で、立ち上がった。

何度も大きく息をしている。それでも双眸はしっかりと僕を捉えていた。

 

「僕は、英雄になりたいッ!」

 

その瞬間、親指の疼きが今日一番の反応を示す。

 

 

 

 

 

 

『いいか、ベル・クラネル。お前が鍵を開けられるのは精々3回だ。心してゆけよ』

 

ありがとうございます。

僕は目を閉じて大きく息をする。二度三度と繰り返し、正面のフィンさんを捉える。

 

「っふ!」

 

全力で駆けだした。

何度かこけそうになるが無理やり走り続けてフィンさんの2メートル手前までたどり着く。

ここで!

僕は右手を大きく振り上げる。

ちょうど剣を持っていれば、切り下せるであろう位置に。

怪訝な表情のフィンさんめがけて振り下ろす!

 

「ッ?!!!?!?」

 

ガキィンッッ!!!

 

フィンさんの木刀との間に火花が散った。

振り上げるまで何も握っていなかった僕の手には真新しい片手直剣が握られていた。

……木刀なんですか……それホントに。

防がれたことに驚きながらも火花を散らす木刀を見てそんなことを思った。

 

「一体どういうことかな。僕にはいきなり武器が出てきたように見たんだけど」

 

フィンさんが訪ねてくるが気にせずにもう一度切り上げる。

しかし、今度は簡単に避けられ直剣を横から弾かれてしまう。

 

「ぐぅッ」

 

目眩がさっきよりも酷くなってきたせいで体勢が崩れた。

その隙をフィンさんが見逃すはずもなく木刀が振り下ろされる。

僕は、強引に後退しながら振り下ろされた木刀との間に右手を滑り込ませる。

次はここで!

 

ガァアンッッ!!

 

「今度は盾か!次は何かな!!」

 

「はぁ。はぁ。はぁッこれで、最後です!」

 

「なにをッッグ!??」

 

途切れる寸前に扉を開け……僕の意識は暗転した。

 

 




うまく書けたでしょうか?
戦闘描写は苦手です。

それと皆さんが期待していた『王の財宝』の使い方とはかけ離れているとは思いますが大目に見てください。m(__)m


明日・・・あげられるかな・・・。(´・ω・`)

修正と加筆しました

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