英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

42 / 58
漸くというか、ベルとアイズとの絡みです

今回は読みにくいと思います。すいません(´・ω・`)


英雄の欠片と剣姫

「行くよ」

 

「はい!!」

 

僕が返事をするとほぼ同時に、アイズさんの姿がブレる。

注視していたにもかかわらず、ほとんど捉えられない動きに僕は一瞬気圧されたが、負けるものかと槍を滑らせるように走らせた。

 

 

 

 

 

 

「ベルとレフィーヤも、今から帰るの?」

 

「はい! アイズさんも一緒に帰りましょう!」

 

アイズさんの問いに元気よく頷くレフィーヤさん。

終始興奮状態のレフィーヤさんに引っ張られる形で、僕たちはホームへの帰路についた。

 

 

「あ、そうだ」

 

道中、アイズさんが突然そう零すと僕の方へ首を回した。

 

「えっと、この前の魔法。すごかった、よ?」

 

「あ、えっと、ありがとうございます」

 

第一級冒険者であるアイズさんからの賛辞だったが、今の僕は素直に喜べなかった。

 

「? どうかしたの?」

 

「えっと、アイズさん。実は——――」

 

僕の表情が曇ったことに首をかしげるアイズさん。

そんなアイズさんに、事情を知っているレフィーヤさんが僕を気にしながら事情を説明してくれた。

 

「あの、ベル。ごめんね」

 

「いえ、アイズさんが謝る事じゃないですよ」

 

そう言って笑顔で答えるが、無理をしているのがバレバレで3人の中に気まずい雰囲気が流れてしまう。

レフィーヤさんもオロオロとして、視線を僕とアイズさんで行ったり来たりさせている。

 

そんな雰囲気がしばらく続く……と思ったとき、アイズさんが再び口を開いた。

 

「えっと、強くなりたいの?」

 

「え?」

 

「……戦い方。教えようか? 私、教えるのあまりうまくないけど」

 

アイズさんから言われた言葉を理解するのに、僕は数秒の時間を要した。

突然立ち止まった僕に、アイズさんたちも歩くのを止める。

 

それから数秒後、

 

「ほ、ほんとですか!」

 

「えっと、ベルさえよければ」

 

「よろしくお願いします!!」

 

僕はアイズさんからの提案に飛びついていた。

フィンさんとは違う第一級冒険者。なにかが掴めるかもしれない。

そう直感にも似た何かが僕を突き動かしていた。

僕が衝動のままに頭を下げると、今まで蚊帳の外だったレフィーヤさんが、

 

「ま、待ってください! だったら私も! 私も一緒にお願いします!!」

 

と頬を赤くしながら叫ぶ。

目をぱちくりとさせるアイズさんは、数秒後「うん。いいよ」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

アイズさんに稽古をつけてもらうことになったが、今すぐというわけにもいかないので翌日の早朝に三人でやることになった。

 

いつもと同じ時間に目が覚めた僕は訓練場に行き、軽い運動ということで槍を取り出す。

槍を構えた僕は、フィンさんの動きを頭で思い浮かべながら槍を振り始めた。

 

そうこうしていると、訓練場の入り口から近づいてくる人影が薄らと見えた。

月明かりに照らされて金色に輝く髪を靡かせながら、アイズさんは言う。

 

「おはよう」

 

「おはようございます! アイズさん」

 

アイズさんは暫く僕の全身を眺めたあと、ぽつりと呟く。

 

「ベルは早いね」

 

「早い、ですか?」

 

「うん」

 

僕の呟きにアイズさんはこくりと頷く。

 

速い? フィンさんに比べれば全然だと思うんだけどな

 

アイズさんの言葉の意味が分からなかった僕は首をかしげるばかりだ。

と、足早に近づいてくる人影がもう一つ現れた。

レフィーヤさんだ。

 

「遅れてすみません!」

 

「ううん。大丈夫だよ……それじゃあ、始めよっか」

 

そう言ったアイズさんに、僕たちは大きく返事をして頷いた。

 

 

 

 

 

 

「えっと、ベルは普段槍を使うんだよね?」

 

ベルの戦闘スタイルは以前フィンから教わっていたため、確認の意味合いでベルへと尋ねるアイズ。

ベルはその問いに頷きで答え、手元に一本の槍を取り出して見せた。

 

「他にも出せるんですけど、どうしても慣れてる武器が最初に出るので」

 

そう言って笑うベルにコクリと頷き返すアイズ。自身も一般的な武器は使えるようにしているが、やはり自身が愛用している武器種、しいては愛剣の方が数倍も戦いやすいというものだ。

 

しかし一方で多様な武器を使い分ける相手は手ごわいものだということをアイズは理解していた。

団員の中ではティオネが比較的にその傾向がある。場面、相手に応じて多様な武器―——―ティオネの場合投げナイフか肉弾戦かのどちらかが多いが—――—を使いわけ、リーチを自在に変化させる相手というのはとても戦いづらいのだ。

そう言った相手との戦闘では一瞬の油断が致命傷へとつながる。

 

ベルの魔法はその点において、誰よりも脅威であるとアイズは思っていた。

魔法なので精神力に依存する部分は確かに存在するが、逆にいえばそれさえ何とかしてしまえば自分でも対処が難しくなる。

さらに、最近は槍以外の武器も扱えるように模擬戦を繰り返しているようで、全く触ってこなかった武器を数日で、振るえるようになるその成長速度は異様だった。

 

できるならば、どうやればそれほどまでに早く強くなれるのかを知りたい。というのがアイズの心の奥にあった打算なわけだが、ベルやレフィーヤがそのことに気づくはずもない。

 

アイズは訓練場の倉庫に入れてある古びた槍を取り出すとフィンを姿を思い浮かべながら構える。

しかし、普段使わない武器を持ってみても様になるはずがなく、アイズの構えは何とも言えない不格好というか、慣れていない新人感丸出しの格好になってしまった。

 

「……」

 

「……」

 

「……やっぱりやめよう」

 

二人の痛い視線を受けて、アイズは構えを解くと倉庫へ武器を戻しにいく。

戻ってきたアイズは自身の腰から愛剣を鞘ごと抜くと剣本体を遠くへ放り、鞘を構えた。

 

「戦おう。これが多分、一番いいと思う」

 

そう言うとアイズはベルとレフィーヤを軽く威圧する。

 

「「ッッ!」」

 

突然の事だったが、二人は直ぐに体勢を整え、アイズと対峙する。

想像よりも素早い動きに、アイズは軽く目を見張るがすぐに微笑を浮かべた。

 

「行くよ」

 

「はい!!」

 

アイズはレベル1でもぎりぎり視認できる速度でベルたちへ肉薄していった。

 




原作よりも早くアイズとの特訓が始まりました。

次回はアイズとの特訓+リリの変化です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。