英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

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へへへ、大分投稿期間が開いちまったぜ


皆さまは身体の方は大丈夫ですか?
私は外出規制によって外に出られず、悶々とした日々を送っています。
花見がしたかった。
ただ今は少しでも感染を抑えるため、と自分に言い聞かせております。
読者の皆様も過度な外出などは控え、私のような雑魚筆者の作品を鼻で笑う生活をしましょう。
そしてこれを気に小説を書いてみるのもいいかもしれません。(一緒に沼に沈もうぜ)


主神(母)の想い

『なあフィン、ちょっとこれ見てくれへんか?』

 

神ロキは、背後にエイナ・チュールを連れながら今朝の事を思い出していた。

あれはベルとレフィーヤがステイタスの更新をした直ぐ後の事だった。

 

ベルたちとの模擬戦で着いた汚れを洗い落としたフィンに手渡したのはつい先ほどのステイタス洋紙。

フィンはその紙を見て数秒、何かを堪えるように天井を仰ぎ見ると、深いため息とともにソファへ脱力した。

ロキは数分前の自分の姿に内心苦笑いしつつも、自らの疑問をフィンへとぶつける。

 

『どう思う?』

 

『……そもそもステイタスの限界とされるSを軽く突破している事実に、僕は頭を抱えたいけどね。ふぅ…ロキ、ベルは”これでも”ランクアップはしていないんだね?』

 

『うちが子供の『おめでた』をためらうとでも思うとるん?』

 

ロキの軽口はしかし、ほんのりと焦燥の臭いが漏れていた。

ロキの応えに、フィンは数秒の間を開けてから再び口を開く。

 

『ランクアップ、器の昇華は多少の制約はあっても、神々が偉業と認めれば成り立つはず。そしてベルのこれまでを鑑みても、明らかに偉業を成しているはずだ』

 

ランクアップの条件は大きく分けて二つ

 

基本アビリティのどれかがD以上であること。

そしてもう一つが、自身の限界を超え神々が認める「偉業」を成すこと。

 

ベルのステイタスは全てB以上なので一つ目の条件は既にクリアされている。

残るはもう一つの条件なのだが……

 

『18階層での巨大食人花の単独討伐に第一級冒険者との戦闘。後者は模擬戦と言われてしまえばそれまでだが、実質的にアイズと僕を相手取ったわけだから経験値として安いわけがない。それ以外を加味しても明らかに偉業を成しているはずだ』

 

『せやよなぁ』

 

脱力するロキ。そんなロキを前にフィンはでもと続けた。

 

『もし——————』

 

 

 

 

 

「ついたで、まあその辺に座りいや」

 

私は神ロキに連れられるままロキファミリアのホームへと入り、神の書斎へと案内された。

 

道中、同じ種族の仲間に憐みの目を向けられていたことが気になるが、部屋は小奇麗に整えられていて特にこれと言って変わった所はなかった。

 

私は神ロキが指さしたソファにそっと腰かけると、神ロキは何処からか取り出した酒瓶を片手に私の対面へと座った。

 

「自分もいるか?」

 

「い、いえ。私は」

 

「ほか。なら失礼して」

 

そう言って酒盛りを始めてしまう神ロキ。

グラスに大きめの氷を入れ、二度三度傾ける。

もう一杯を注ぎ直したところで、神ロキは唐突に話し始めた。

 

「ベルのサポーターっちゅうんはソーマんとこの子やろ?」

 

「ッ……ご存じだったんですか」

 

「当たり前やで。その子の周りに、いけ好かん虫がついとんのもな」

 

グラスを傾けながらそう言う神ロキは、しかしその瞳に酔いは見られなかった。

神ロキから漏れる沸々とした怒りはグラスの氷に罅を入れ、私の心を竦ませる。

 

「ベル君を、止めようとは思わないんですか?」

 

「ん? 何をや?」

 

「え? あの、そのサポーターとの」

 

「あほ。そんなことするかい。ドチビやあるまいし」

 

どこか遠くを見つめながらグラスを机に叩きつける神ロキ。

先程の怒りとはまた別のベクトルの怒りに困惑する私に、神ロキは腕を組みながら鋭い視線を向けた。

 

「ベルは何処で育ったんか詳しいことは知らんけどな。あの子は人間の黒いもんを知らなさすぎや。別にそれを悪いとも思わへんし、今回のをつこうて教えようとしとるんでもないで?」

 

「な、なら」

 

なぜ止めないのか。そう聞こうとした私は、続く神の言葉に二の句を出せなくなってしまった。

 

「あの子が選んだ道やからや」

 

そう言った神ロキの目には慈しみと悲しみの感情が揺らめいていた。

 

「うちも昔な、一時そういうことしとったことあったんよ。まだ中堅のころに、ちょっとでも子を守ろう、いい未来に行ってもらおうてな? でもそうやって守った子ほど長続きはせんかった。結構目かけて守っとった子が死んだときにごっつうへこんで……んでエロ爺に言われたんや『お前のそれは愛やない。エゴだ』ってな」

 

「あの爺、こっちが本気でへこんどんのに隣で酒飲みながら笑って言いよったわ。『儂らは只見てるだけでいい。儂らが子の人生に介入してみろ。それはもう決まったレールしか走れんトロッコと一緒だ。儂らは只見守るだけでいい。子はトロッコじゃのうて炭鉱者じゃなけりゃあかん。時に躓いて、時に泥にまみれて。道半ばで生き埋めになる事もある。でもな』」

 

神ロキは酒に指を浸し、グラスの縁をなぞる。

 

「『そうやって自分の脚で道を切り開いた者だけが、儂らも知らん場所に行ける。知らん景色に出会える。だから儂らは、ただ子が築いた宝石を載せるトロッコであればいい』……その後、適当ぬかすなやって怒鳴ったら『バレたか』とか言って逃げていきよったわ。………やっぱただのエロ爺やんけ! ああ! あんの爺! あの時の酒代まだ返してもらっとらんぞ!!?」

 

さっきまでの神妙な空気は何処へ行ったのか。神ロキは髪を掻きむしり叫ぶと、酒瓶をラッパ飲みし始めたのだった。

 

 

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