疾駆する二つの影はその中間で衝突する。
ミノタウロスの上段からの振り下ろしに対し、ベルはゲートから大盾を顕現させながら胸部の傷口を再び狙い穿とうと槍の切っ先を走らせる。
ゴガンッ と頭上から響く激突音。
それに対し全くおびえた様子もなく槍を振るうベルに、ミノタウロスはさせるものかと腕に力を籠め盾ごとその切っ先を叩き潰した。
しかしそれはベルに命中することはなく、背後から数打の衝撃を受ける。
変形し罅割れる盾を一瞥したベルは即座に攻撃を放棄、その速度のまま超低空からミノタウロスの脇を抜けたのだ。
光の粒子となって消える盾と槍の残骸を見ながら、ミノタウロスはその巨躯をしならせ暴風を振るう。
これにはベルも吹き飛ばされるが、空中でナイフを投擲し大剣や戦槌などの重武器を射出する。
飛来する閃光。それの片方を剣斧で相殺し、もう一方を左腕を犠牲に耐えたミノタウロスは大地を踏みしめ、あらん限りの力を以て跳躍した。
ドッ!!!
「な!?」
大地を歪め風邪を纏うミノタウロスはそのまま空中を落下するベルへ迫りその体躯のまま激突した。
「ぐぎぃっっ!?」
咄嗟に躱そうと身体を捻るも、左肩口に突き刺さる剣斧がベルの表情を歪める。
深々と突き刺さった自身の一撃を前に、ミノタウロスは勝利を確信する。
が次の瞬間、
ベルはミチミチと沈み込む剣斧を両手で抑え込み、歯を食いしばって
驚愕するミノタウロスを前に、ベルは自身から噴き出す鮮血を見つめながら叫ぶ。
「ッゲート、オブ・バビロン!!!!!」
ベルの叫びに呼応するかのように、彼らの頭上に開いたのは黄金の波紋。
しかし、それはベルの鮮血を取り込み、真紅の波紋へと変わっていく。
より大きく、より輝かしく、より苛烈に、より暖かく――。
ルベライトの輝きを放つ波紋は、二人を覆いつくすほどまで広がり、大気を震わせるほどの魔力を内包する。
ブモォッ!? ブオオオオオオオ!!!!!!!
ソレから放たれるであろう一撃は、先の致命打か、それ以上の脅威、恐怖であった。
ミノタウロスが生まれて初めて感じる畏怖の波動。
咄嗟に己が得物を捨て、その一撃から逃れようと藻掻くミノタウロスだったが、そんなミノタウロスを前にベルは肩口に突き刺さった剣斧を抜き捨てると、腰に帯刀していた魔石採取用の短剣を胸部の裂傷へと突き立てた。
ズッ、ブシュッ!
ブモォッ!?
普段なら歯牙にもかけない一撃。しかし魔石が罅割れていたミノタウロスは咄嗟に反応してしまった。
ベルを払い落とすように腕を振れば、ベルはそれを足蹴に波紋の外へと離脱。
残されたのは地面へと落下する己のみだった。
いよいよを以て輝きを増す波紋を前に、ミノタウロスは自身の最期を観た。
まるでダンジョンすらもを穿たんとするその一撃。自らに降り注ぐ真紅の輝きを見つめながら、
オオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ!!!!!!!!!
彼は万感の想いを込めて叫んだ。
それは死ぬことへの恐怖か。
それとも勝者への喝采か…。
そうして放たれた真紅の閃光はミノタウロスを穿ち、二人の初陣への終止符となった。
次こそは――――
ラスト駆け足ですが許して…