光の軌跡・閃の軌跡   作:raira

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6月19日 ラインフォルトの使用人

「そこまで」

 

 チャイムの鐘の音と共にサラ教官が試験時間の終わりを告げた。

 

「いやっほぅ!終わったあっ!」

 

 中間試験で最後の教科の試験を終えた解放感に、私は握っていた鉛筆を机の上の答案用紙に放り投げて両腕を上げた。

 勉強に追われた二週間、そしてこの長い四日間の本番。勉強があまり好きではない私にとっては苦行に感じられた日々が今、やっと終ったのだ。

 

「ん、疲れた」

「フィー、どうだった?」

「実戦技術は余裕かな」

 

 隣の机でまるで猫のように上体を伸ばしているフィーに私は訊ねると、彼女は体を起こして向き直りながら返す。

 

「じゃあ、私達の勝利だね!」

「ブイだね」

 

 そして、二人の善戦に私達は両手でハイタッチを交わして喜びを分かち合う。

 

「ほら、良い気分なのは分かるけど騒がないの」

 

 丁度私の後ろの席、ラウラの横に立つサラ教官が答案用紙を回収ながら、私達へ注意する。

 

「はーい」

「むぅ」

 

 渋々、二人で返事をしながら答案用紙を教官に渡す。

 廊下側から回収を始めた為に私とフィーのが最後だったようだ。全ての答案用紙を集め終わったサラ教官は、ホームルームまで休憩の旨を伝えてそのまま教室を出て行ってしまった。

 

「アリサ、アリサ、2枚目の問4の最初ってAが答えだよね?」

「正解ね」

「やった! ここ不安だったんだよね。合ってて良かった良かった」

「まったく……全体だとどうなのかしらね?」

「まぁ、実践技術はエレナも大丈夫だと思う」

 

 目の前には呆れた仕草しながらも笑っているアリサ。

 実戦技術は彼女と共に勉強したのだ。そして、その勉強に少しフィーも手伝ってくれていた。

 

「フン、だが他の教科を落としていたら話にならんぞ」

 

 ユーシスは私の三番目の先生だ。一番厳しくて、一番面倒見の良い先生。

 女子で集まっている私達には少なからず近づきにくいだろうに、ちゃんとこうして私の様子を見に来てくれていたりする。

 

「でも苦手な数学や帝国史も結構解けたような気はするんだよねー、多分9割ぐらいは」

 

 そう、三人の先生に勉強を見て貰ったお陰もあり、今回の中間試験に私は自信がある。

 しかし、皆の反応はそうはいかないかった。

 

「それはあり得ないわ」

「勘違いですね……」

「絶望的過ぎて狂ったか?」

「失礼な!」

 

 アリサが、エマが、ユーシスが――私の先生達が厳しい言葉を浴びせてくる。

 

「みんな信じてくれない! フィー、助けてよ!」

「エレナ、私は信じてるよ」

「……どっちの意味で?」

「勿論、同志として」

 

 フィーの言葉に私は肩を落とす。

 こんなに頑張ったのに誰からも信じてもらえないだなんて、私は今までどんなにバカをしてきたのだろうか。少し今までの私を呪いたくなりそうだ。

 

 

 ・・・

 

 

 結果が良くても悪くても、試験終了後は清々しい解放感に満ち溢れている。

 それはⅦ組のみんなも同じようで、少し浮かれながら楽しくお喋りしながら第三学生寮までの帰り道を歩いていた。

 先程終ったばかりの試験の話や、人に会うために明日の夜まで帰らないという衝撃発言をしたサラ教官の話。特に後者は結構盛り上がったりした、主に絶対あり得ないという話で。

 まあサラ教官、かなり致命的にズボラだから仕方ないとも言えるだろう。でもこのⅦ組の男子組は、少しばかり女子に夢見過ぎな気もしなくもない。サラ教官程のズボラは確かにやばいけど、少しぐらい気を抜きたくなる時はいくらでもあるのだ。

 

 そして、話の話題はサラ教官の恋人疑惑からこの場にいない三人のクラスメート、特にラウラとフィーのものへと移った。

 もう男子を含めて皆気がついているが、最近この二人は少し避け合っているのだ。私が最初に何かを感じたのは二週間程前、フィーと共に質屋を訪ねた日に教室を出ようとした私達に注がれたラウラの視線。

 実のところバリアハートから帰って来て以来、フィーと一緒にいることの多い私はあまりラウラと話していない。だから、当初は私がラウラに避けられているのかと勘違いし、かなり落ち込んだものだ。

 

「……ひょっとしたら報告会が原因かも知れないな」

 

 マキアスが彼の中で思い当たる出来事を口にした。

 

「報告会って特別実習のか?」

「何かあったかしら?」

 

 リィンとアリサが首を傾げる。

 

「あの時、フィーの過去についても報告しただろう?フィーがその事を話した時、ラウラの表情が一瞬だが険しくなったように見えたんだ。すぐに元に戻ったから気のせいだと思っていたんだが……」

 

 ああ、なるほど。私は心の中で納得した。

 つまり、ラウラも私と同じ所を気にしたのだ。

 

「でも、それがどうして?」

 

 と、エマ。本当にわからないのだろうかと少し不思議にも思う。

 

「そこまではわからないが……でも……」

「元、猟兵だから――じゃないかな?」

 

 マキアスを遮るような形で、思わず私は一番考えうる理由を口にしていた。

 そしてストレートな一言を投げ込んだ私に皆の視線が集まるが、その中に非難するような視線が無かったのに安堵を覚える。

 

「フン……確かにな。不思議ではない」

 

 みんなが押し黙る中、一人ユーシスが私に同意してくれた。

 

「私も……バリアハートの地下水道で最初にフィーが打ち明けてくれた時……少し戸惑ったから」

 

 正直、”少し戸惑った”では済まなかったのだが、それをみんなに話すのは憚られた。

 

「私が子供の時の話だけど……その頃の帝国南部は治安があまり良くなくて、その……傭兵崩れの出没騒ぎなんかがあったりして結構物騒だったんだ」

 

 出来るだけ言葉を選んで詳細はオブラートに包むが、私はあの事件を今でも鮮明に思い出せる。

 

 それは戦争が起きる直前、休暇中だったお父さんが招集を受けて居なくなって1か月程の出来事だった。

 村に突然現れた汚い身なりの数人の傭兵が酒場で暴れ、発砲した挙句に人質をとって立て篭もり、船と莫大なお金を要求したのだ。

 偶々近辺を移動中であった正規軍部隊が村の異変に気付いて駆け付けた為、村の人々に死人や怪我人が出る前に事件は速やかに解決されたのは不幸中の幸いだった。もしもパルム市の領邦軍が来るのを待っていたら、村の金目の物は全て奪われてしまっていただろうとその後にお祖母ちゃんも言っていた。

 

 しかし、どんなに奇跡的な解決をされても事件は私にとって今でも恐怖そのものだ。その日村の近くで起きていた小さな山火事によって煙と煤で澱んだ夜空、気分が悪くなる程の血の臭いを漂わせた傭兵達、正規軍兵士の酒場への突入による激しい銃声と断末魔の叫び――そのどれもが、当時4歳だった私に恐怖を刻み付けるのに充分な出来事だった。

 

「それにお父さんが正規軍の軍人だったから、どうしても傭兵とか猟兵が敵に思えちゃって……」

 

 お父さんが再び帝国北西部に派遣されていた際には、傭兵と戦っていたという話を聞いたこともあった。あの事件とお父さんと戦っている敵――私の傭兵に対する印象は最悪だった。だから、フィーが傭兵の中の傭兵と謂われる猟兵だと告白した時、私は受け入れる事は出来なかったのだ。

 彼女からあの日の傭兵達のように血の匂いを漂ってようで、そして綺麗な銀髪が彼女の殺めた人間の血で染まっている様に見えて。

 

「確かに、それはちょっと複雑だね……」

 

 そう反応したエリオット君の表情と碧翠色の瞳が少しばかり真剣な色を帯びていた。

 もしかしたら彼に近い人に軍人がいるのだろうか。まあ、帝国では軍関係の職に就く人はかなり多いので不思議ではないのだが、もしそうだとしたら少し親近感を感じる。

 

 そして、気付けば道のど真ん中で立ち止まって私達は黙りこんでいた。

 深く考えこむリィン、心配そうなアリサ、困惑するマキアス、思案顔のユーシス、そして複雑な表情のエリオット君と真剣な眼差しのエマ。

 

「……あっ、ごめん! 空気暗くしてた! そんなことがあっても今は気にしてないし、私はフィーの事大好きだから!」

 

 あの出来事を気にしてないは嘘だ。それでもフィーの事は私は完全に受け入れられる。それはフィーとの間には確かな友情があるから。

 

「ふふ、知ってますよ」

「特別実習からずっと仲いいものね」

「うんうん、だからラウラもフィーもその内仲直りできると思うし、大丈夫だよ!」

 

 もっともラウラが何故避けているか、その詳しい理由までは私には分からないのだが。

 特別実習以来フィーとよく絡んでいる私はここ三週間程はラウラとあまり話してすら居ないのだし、そもそも彼女とよく話す様にしているアリサにすらラウラは何も明かしていないのだ。

 

「フン、まあ事情は人それぞれだろうからな」

 

 そしてユーシスはアリサが未だ家名を隠していることに突っ込み、アリサがそれに少々慌てながら反発する。

 そういえば二週間ほど前にアリサが風邪をひいて、ユーシスと共にあのハーブチャウダーを作った時にそんな話をしたような気がする。

 

「それにお前の家名については大方予想が付いているからな」

「「そ、そうなの?」」

 

 ユーシスの言葉に全く同じ反応をする私とエリオット君。

 本当に気になるじゃないか。

 

「あなたねぇ……」

 

 ユーシスにジト目を向けるアリサをエマが宥める。

 

「前から言っているようにアリサが教えてくれる気になるまでは詮索したりはしないからさ」

 

 そんなリィンの言葉に顔を赤らめて、モジモジしながら言い訳のように理由を口にするアリサ。

 もう、この二人は……。

 

 それにしてもアリサの家名は少し気になる。彼女はユーシスがお嬢様だと認める位であるから帝国の最上流階級であるのは確かなのだ。しかし、貴族ではなく平民でその階級にいるということは、彼女の親は相当な地位や影響力を持つ人間ということになる。

 それこそ帝国政府の閣僚や要人だったり、各地の大商会を束ねて帝国全土で商売をする商社等――本当に限られた一握りだ。

 

 しかし、真実は私の想像をかけ離れていた。

 

「――お嬢様、お帰りなさいませ」

「え――」

 

 丁度、声の主は第三学生寮の前に紫色の髪をショートカットにした綺麗な人が立っていた。

 

「シャ、シャ、シャ……シャロン!?」

 

 アリサが驚愕の表情をしてその人の名前を呼ぶ。

 シャロン……その名前どっかで聞いたことが……ある様な。

 しかし、彼女の次の言葉に私の思考は完全に吹き飛ばされてしまうこととなる。

 

「初めまして――シャロン・クルーガーと申します。アリサお嬢様のご実家、ラインフォルト家の使用人として仕えさせて頂いております」

 

(……ラ、ラ、ラインフォルト!?)

 

 

 ・・・

 

 

「あ、ガイウス」

 

 晩ご飯を食べた後の時間、リィンとエリオット君と共に一階のロビーの机を囲んでいた私は、ドアの開く音と共に寮へ帰って来たガイウスに気づいた。

 

「結構遅かったな、何かあったのか?」

「そういえば、学院長のところに行ってたって聞いたけど」

 

 リィンとエリオット君の二人に少し困ったような顔を作るガイウス。

 どうやら彼は今までヴァンダイク学院長と夕飯を共にしていた様だ。

 学院で一番偉い人と一体何を話したのか気になって内容を訊ねると、色黒で体躯の良い彼にはあまり似合わないすまなそうな表情を私に向けた。

 

「すまないが、まだ皆に教える訳にはいかなくてな……。その内、皆にも教えられると思うのだが、それまでは気にしないでおいてもらえないか?」

「えっと……学院を辞めるとか、じゃないよね?」

 

 エリオット君の少し心配そうな声色。

 

「万が一にも、それはないな。折角送り出してくれた故郷にも、推薦して貰った恩人にも顔向け出来ない」

「はぁ、よかったぁ」

 

 先程とは打って変わって力強く断言するガイウスに胸を撫で下ろすエリオット君。

 

「ガイウスは推薦で士官学院に来たのか」

「ああ、とても世話になった帝国軍の将官に推薦して頂いた」

 

 その言葉に私とリィンは少なからず驚いた。ガイウスの故郷であるノルド高原は帝国の外なのにも関わらず帝国軍の軍人、それも将官の知り合いがいた事に。

 

「帝国軍の……」

「軍の将官に知り合いがいるなんて……すごい……」

 

 将官といえば正規軍でも領邦軍でも軍組織のトップにいる軍人だ。

 主に師団や軍団といった万を超える兵士を擁する大部隊や要塞等の重要な軍事拠点の司令官、そしてそれらを更に上から指揮する中央の人間だったりする。

 領邦軍では《四大名門》の子弟やその傘下の有力な貴族がその地位を与えられる事もある様だが、実力主義の正規軍において将官にまで出世出来るのは本当に優秀な人の中でもほんの一握りなのだ。

 

 まあ、どう転んでも士官学校を出ていないうちのお父さんはなれる筈も無い、絶対に有り得ない階級だと思う。

 もう数年会っていない懐かしいお父さんの顔を思い浮かべていると、私は微妙な違和感を感じて向かいに座るエリオット目を遣る。気のせいだろうか、彼の表情が少し暗く黙り込んでいる様に見えた。

 

「エリオット、どうかしたの?」

「あ、ううん。なんでもないよ」

 

 私は少し心配になり声をかけるものの、すぐにいつもの人懐っこい笑顔に戻ってしまう彼に、あまり深く考えることも無く彼から机の上のマグカップへと目線を移した。

 

「話は変わるが、リィン。明日の自由行動日だが、旧校舎の調査に向かうのならオレも手伝わせてくれないか?」

 

 ああ勿論だ、と快諾するリィン。彼にとってもガイウスの戦力は心強いに違いない。

 私も、早く強くならなくてはならない。

 

「オレも久々に体を動かしたいしな。座学の勉強も楽しいが、やはり体を動かしている方が性に合う様だ」

「はは、ガイウスらしいな。そういえばエレナはどうかな?」

「あー……私は午後から《キルシェ》のバイトなんだよね……ごめん」

 

 そう明日は《ケインズ書房》ではなく、喫茶店《キルシェ》での仕事なのだ。

 もっとも私は働くのは一日限り。実はバイトをダブルブッキングしてしまったベッキーから急に頼まれたというだけの話なのだが。

 

「それは仕方が無いな」

「あれ、エレナって《キルシェ》でも働いてたの?」

「ちょっと頼まれちゃって……お金は欲しいし、試験も終わったから働ける時働きたいなぁって」

「そういえば結構頑張ってるよな。何か買いたい物でもあるのか?」

 

 私が当初アルバイトを始めた一番の理由は、経営が楽ではない実家のお店から仕送りを貰いたくなかったといったものだ。

 しかし、そこに新しい武器として中古のライフルを買うという数万ミラ規模の特別出費の予定が入ってしまったので、今後数か月はなりふり構わず働かなくてはならないのは確実である。

 

「ええっと……」

 

 正直に新しい銃が欲しくて頑張っています、なんて言うのも何か違うような気がして口に出すのを憚られるのだ。

 この場は実際は可愛い服がとか、アクセが、とか言っておくべき所の様な気がしなくもないのだが……。あまりお洒落が得意ではない私にそんな大それた嘘は付けない。

 どうしようかと考えていると、私にとって思わぬ助け舟ならぬ救世主が階段を降りて現れた。

 

「あら……?」

 

 階段を降りてきたのは今日からこの第三学生寮の管理人となったシャロンさん。彼女はロビーの机を囲む私達と目が合うと優しい笑顔を浮かべて会釈する。

 

「お初にお目にかかります、ガイウス様」

 

 先ほどまで外出していた為に初対面のガイウスに彼女は挨拶をし、それに彼もそれに丁寧に返す。そして、一通りの挨拶と自己紹介を終えたシャロンさんは、深く一礼をして食堂の方へ足を向けていった。

 

「あの女性が今日からこの寮の管理人となるのか」

「結構綺麗な人だよね」

「ああ、本当だよな」

 

 リィン、暫くの間は思ったことでもアリサの前で言わないようにね?

 そう心の中で彼に忠告しながら、私は紫色の髪の管理人さんの後ろ姿に目をやった。

 

 実際、シャロンさんは物凄く綺麗な人で、なんといってもスタイルは凄い。

 あんなメイド服を着てなお魅力的で大きな胸は私にとっては少し分けて頂きたい程羨ましいもので、リィンの視線が釘付けにされるのも仕方ないのだろうが……。

 

「……それにしても昼間はビックリしたよね」

「ああ……アリサがまさかあのラインフォルトのお嬢様だったなんてな」

「ラインフォルトというと帝国最大の企業と聞くが……それ程に凄いものなのか?」

「凄いも何も、銃弾から飛行客船までありとあらゆる導力製品を作ってる大きな会社だよ。帝国に住んでいたらラインフォルトの物を使わない日は無い、ってよく言われてたりするし」

「ほお……」

 

 エリオット君の簡潔な説明に目を丸くするガイウス。

 

 帝国最大の企業と名高いラインフォルト・インダストリー・グループは、同時に大陸最大級の導力製品メーカーだ。

 帝国五大都市の一に数えられる本拠地のノルティア州ルーレ市に所在する本社ビルは帝国本土で最も高いビルとして知られ、更にルーレ市では労働力人口の殆ど――その数十万人を超える市民がラインフォルトの関連企業で働いているという話があるぐらい巨大な存在なのだ。

 

 そのラインフォルトの創業家の一人娘。つまり、アリサはラインフォルトグループを将来的に継承して、あの巨大な存在を導く立場にある人間なのだ。

 本質的には同じ筈なのに辺境の田舎の酒屋の娘の私とは、とんでも無い程にまで桁違い過ぎる。

 

 その後、暫く三人でラインフォルトが如何に凄い会社なのかということをガイウスに説明する流れとなる。もっとも最後の方は面白可笑しいジョークも混じっていたが。

 

「それはそうと――肝心のアリサはどうしてるんだ?」

 

 リィンが周りを見渡してから不思議そうに私に訊ねた。

 きっとついほんの一時間ほど前まで喚いていたアリサの姿を探したのだろう。

 

「結構前からベッドで不貞寝中かな。さっきシャロンさんの事話したら拗ねちゃった」

「はは……シャロンさんの前だと少し子供っぽかったよな」

 

 基本的にアリサはしっかりした子なのだが、たまに急に子供っぽくなったりする。

 今まではそんなことはリィン関連でしか見れなかったのだが、今回シャロンさんというアリサに親しい人の登場によってある意味素の彼女が曝け出されていた。

 見方を変えればただシャロンさんにアリサが遊ばれているだけの様にも見えなくはないのだが。

 

「本当はもっと仲の良い……うーん、なんて言うんだろう……」

 

 私はアリサが風邪を引いて寝込んでいた時の出来事を思い出していた。

 あの時、シャロンという名前を確かに彼女の寝言から聞いている。この様な関係をなんていうのだろうか。

 

「使用人って言う割には対等な感じというか……長く一緒にいる様な雰囲気だったな」

「確かにそうだね」

「ふむ……」

 

 私はやっと言葉を思い出していた。

 そう、きっとアリサにとってシャロンさんは……長く一緒にいた大切な人なのだ。

 それは雇い主と使用人という関係ではなく、幼馴染という訳でもなく、きっと――。

 




こんばんは、rairaです。
さて前回で番外編だった「風邪ひきアリサ編」は終了し、今回からは3章の本編部分となります。
私が感じるだけかも知れないのですが、原作でⅦ組が一番学生学生しているのって3章な気がするんですよね。中間試験といういかにも学生イベントがあるという事を差し引いても、学生生活をのびのびとおくれているような気がします。これ以後はノルドでの両国一触即発や帝国解放戦線の暗躍、革新派と貴族派の対立の激化、と帝国の国内情勢も著しく悪化していきますしね。

エレナの傭兵や猟兵に対する恐怖の理由となる出来事。家族や大切な人を殺害されなくても、充分子供心に恐怖を植え付け、尚且つフィーを受け入れても違和感が無い、という位の出来事を作るのに少し苦労しました。
そして勘の良い方は気付いたでしょうか、例のあの事件と関連があるという設定です。

次回は自由行動日のお話となります。

最後まで読んで頂きありがとうございました。楽しんで頂けましたら幸いです。

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