光の軌跡・閃の軌跡   作:raira

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8月28日 月夜の照らす繋がりは

 新市街の官庁街にある準州憲兵の詰所でみんなと合流し、警邏の報告を済ませた私達。三時間以上も街中を歩き回ったら、減るものも減る、という事で、ホテルへ戻る道のりで晩ご飯を食べれそうな場所を探していたのだが……目ぼしいお店を見つける事は出来ずに、気付けばもう≪インペリアル大通り≫沿いの、通りと全く同じ名のホテルの建物が目に入ってしまっていた。

 

 新市街を回ったアリサ達が、あまり面白味が無い街と、ぼやいていたのも頷ける。造られた街だからか、区画ごとにしっかり棲み分けがなされていて、大通りは完全なオフィス街なのだ。

 ちなみに、クロウ先輩は私を置いてほっつき歩いてた時に見つけたらしい旧市街のカジノバーを提案するものの、アリサとマキアスのダブルリーダーのNGであっさり却下されてしまっている。それに、今から旧市街まで行くのは遠すぎだ。

 

 結局、もう時間も遅いという事でホテル内にあるレストランで済ませてしまう事で話は纏まった。

 

 

 ホテルの前の様子が少し変であった。

 大きなリムジンタイプの導力車がホテル正面のエントランス前に止まり、その周りを何故か灰色の制服の兵士――鉄道憲兵隊が警備をしている。更にその外側には何かを待っているような様子の人達が十数人ほど。その中には導力カメラっぽいものを首から下げている人もちらほらと見受けられた。

 

 お金持ちか貴族様でも来ているのかな。

 そんな光景に不思議に思いながらも、私達はその脇を通ってエントランスへと向かう。警備の兵士達と視線が合って少々緊張こそしたが、特に呼び止められたりすることは無く、静かに中に通る様に丁寧に指示されただけであった。

 

 何となくは気付いていたけど、エントランスホールに入った瞬間に、その原因の人物を目にすることが出来た。 ロビーの奥、丁度ラウンジやレストランのあるフロアへと続く階段の上、そのど真ん中で堂々と立ち話をする二人の男の姿。

 

「明日の演習、やはり考え直すつもりはないかね」

 

 見たことがない位の装飾が施された紫色の軍服を身に纏っている大柄な男。

 少々お腹は出ているけど、体格は良い中年の軍人。その左胸に沢山付けた勲章は、天井のシャンデリアよりも眩い輝きを放って彼の戦歴を物語っている。実際にこの目で見たことはないけど、私の頭の中の知識が告げていた。目の前に居るのは、間違いなく帝国正規軍の”将軍”であると。

 

「申し訳ありません、閣下。限りある予算を使った出張です。出来る限り市内の様々な場所を見させて頂き、実りある成果を持ち帰りたいと思いまして」

 

 そして、もう一人は行きの列車で一緒になった外国から来た旅行客の紳士。隣の将軍に比べれば大分小さな彼の声だが、異様に静まり返るロビーのお陰でここからでも聞き取る事が出来る。

 あの人、もしかして、かなり偉い人なんじゃ……。

 

「ふん……まあ、貴族共への義理立てもあるだろう。無理にとはいわん。だが、その配慮も近い内に無駄なものとなるかも知れんがな」

 

 対照的に”閣下”と呼ばれた将軍の声はとても大きく、言葉を口にする度にロビーの空気を揺らしていた。

 

「……まるで百年前の我が国の様な情勢ですな」

「面白い事を仰る――その点で帝国も貴国を追えるのであれば尚良しというものだ!」

 

 表情を曇らせる紳士に対して、将軍閣下は上機嫌そうに笑いを上げる。少しお酒が入っているのかその顔は赤みを帯びていた。

 

「それではな、市長殿。外の小蝿は私に任せて休むがいい」

 

 再び大きな声で笑いながら階段を降りて来た将軍の傍らに、見覚えのある灰色の軍服の女性士官が付き添っている事に気付いた。

 

「あっ……ドミニク少尉……!」

 

 知った顔に思わず声が出てしまい、慌てて口に手をやるけど、もう時既に遅しである。

 

「あら……?」

「ん?」

 

 少尉に釣られるように将軍も足を止め、こちらに顔を向ける。そして、何を思ったのか大股で私達の方へと近付いてきた。

 

「こ、この度は――」

「挨拶はいい。お前らが帝都から連絡のあったトールズの学生か」

 

 ここにいる全員を代表する様にマキアスが挨拶の言葉を口にするが、それを切り捨てる様に目の前の将軍は遮った。

 

「「は、はい、将軍閣下!」」

 

 私の前に居るマキアスとエリオット君がガッチガチに噛みながら直立不動で応える。私なんて、緊張のあまり声なんて出なかった。

 肩にある階級章の金色の刺繍の横線は……一、二、三、四――四、た、大将閣下!?

 大将といえば帝国正規軍の平時における最高階級である。軍の幹部なんていうレベルじゃなく、もはや重鎮というか軍を動かす最も高い地位にいる人だという事だ。

 

「ふむ、見覚えのある顔もおるか」

「えっと……」

 

 お父さんが軍の将官だといっていたエリオット君は、この将軍とも面識があるのか、後ろからでも分かるほど身体を強張らせる。その傍ら、突然の高官との遭遇にアリサが困惑した様な声を漏らした。

 名乗ってもくれない将軍閣下は、私達一人一人の顔を凝視してゆく。その青い眼差しは先程の立ち話の時とは打って変わった鋭さで、目の前の大柄な軍人がただ声の大きな将軍でない事を醸し出している。

 威圧しているつもりは無いのだろうが、精神的にかなりの圧迫を受ける私達に助け船を出したのは、ドミニク少尉であった。

 

「こちらはジュライ特区行政長官にして北西準州を統括されるバトラー副総督閣下です」

 

 州の統括者。それは、≪四大名門≫の大貴族に匹敵する権力を有するという事だ。勿論、北西は帝国政府の直轄地なので、皇帝陛下に代わって州の統治を任される職なだけで、貴族の様に一族が代々同じ土地を世襲統治するという事ではないが。それでも、皇帝陛下の代理人として統治する以上、事実上の権力は非常に大きい。

 

「二人か……宰相の奴は感心していたが、それ程の技量があるとは思えんな?」

 

 六人全員を一通り見た後、やっと将軍、いや副総督閣下は口を開いて、私達への感想を零した。

 二人の意味は大体わかる。きっと、”出来る”奴という事なんだろう。すみません、今回の実習の班分けは武器種別で分けられてるので、武闘派はレグラムなんです、なんて冗談はとても言える雰囲気ではない。

 

「彼らは先月の帝都での一件で目覚ましい活躍を――皇女殿下の奪還に彼らが大きな役割を果たしました」

「正規軍の精鋭たる鉄道憲兵が学生に助けられるとは。なんたる体たらく。嘆かわしい限りだ」

「……御もっともであります、閣下」

 

 ドミニク少尉の私達へのフォローは、違う意味で完全に裏目に出てしまっていた。今まであの事件の対応を批判するのは決まって≪貴族派≫だったけど、≪革新派≫である帝国政府の重鎮も批判的であった。

 

「ふん……体裁など構わずに、三殿下も第一師団に守らせれておれば良かったのだ。近衛などと宣う、あの悪趣味な派手男の私兵をのさばらせるからあんな事件が起きる」

 

 鼻を鳴らし、持論を展開した副総督は、今度は興味無さげに私達を一瞥する。

 あまり私達の活躍を認めたくないみたいだ。まぁ、正規軍は頭がお堅い軍人さんが多いので仕方の無いことかもしれないけど。副総督閣下の仰る『悪趣味な派手男』に私は思い当たりはないが、近衛兵が私兵と表現するなら、それは近衛軍へ兵力を拠出している西部ラマール州の統括者であるカイエン公爵の事を言っていると見て間違いない。

 

「まあ、いいだろう。特別実習だったか。お前たちの課題とやらは関係各所に一任している。精々励むことだ。以上」

 

 そう言うがいなや、興味を失ったと言わんばかりにさっさと私達の横を通り過ぎホテルの外へと出て行ってしまった。ドミニク少尉も私達に丁寧に一礼した後、副総督閣下を追ってゆく。

 

「なんというか――」

 

 急に騒がしくなる外の音の中、先程の人物について口にしようとしたマキアスだが、それは物凄く大きな咳払いによって途中で遮られる。

 

「今回の合意は≪バルフレイム宮(帝国政府)≫も既に了承済みだ。海運航路の拠点移転に関する協定に伴う自由港待遇に関しては、陛下の名代としての私は勿論、近年改善に向かう両国関係の更なる深化を望む陛下の御意向を汲んだ中央の決定である――さぁ、貴様ら道を開けんか! 何時だと思っている!」

 

 エントランスの方を向けば、二重のガラス扉の向こう側から導力カメラの眩いフラッシュの光が放たれている中、身振り手振りで大柄な体を忙しなく動かす副総督の姿。

 

「市長殿はもうお休みになられる! ええい、道を開けんか! カイエン? なぜ、我が陛下の州の地方間協定で貴族に口を出されなけれはいけない? ああん?」

 

 どうやら外で待っていたのは報道関係の記者の人達のようだ。それにしても、あの副総督閣下の声は大きい。外なのに丸聞こえである。

 

 

 ・・・

 

 

 あの後もホテルの前では演説かと思う程賑やかな副総督閣下と報道陣のやり取りが続き、ホテルの二階のサザーラント料理専門店のレストランまで聞こえて来たほどだ。苦情がフロントに殺到しそうな賑やかさだけど、来たところで州の最高権力者相手ではホテルも諦めるしかないのかも知れない。

 

 帝都に本店がある高級ホテルなだけあってレストランも充実しており、ラマール料理、クロイツェン料理、ノルティア料理、サザーラント料理と帝国の各地方の料理の専門店は勿論の事、土地柄かレミフェリア料理のお店まであった。ちなみに幸いな事に帝都料理はない。あった所で、客入りが異常に少なそうなのは想像するに易いが。

 

 既に時計は夜の十時半を回り、晩ご飯をたっぷり時間をかけて愉しむ帝国南部風の内装のお店でも、そろそろ終わりが近付く雰囲気の時間だ。私達ももう食後のドルチェの時間であり、それぞれの頼んだ一品の甘美な時間を愉しんでいたりする。 やっぱり、料理は南部が一番だよね。四州で最も経済的に遅れてて導力化もあまり進んでないから、南部の人間は怠け者とか言われる事も多いけど、温暖な気候と豊かな土地に育まれた多彩な食文化はサザーランド州の領民が最も誇りに思っている事だ。

 

 マキアスはここの食後の珈琲がお気に召したのか、上品なウェイトレスのお姉さんに勧められて既に二杯目のお替りだったりする。なんでも、相当良い豆を使っていないと引き出せない味と香りらしいが、勧められた時に鼻の下が伸びていた辺り、珈琲の香りより美人のお姉さんの方がお好みのようだけど。

 私はというと、苦い珈琲なんかよりクロウ先輩がよく飲んでる炭酸飲料の方が好みだ。ただ、食後の飲み物は紅茶か珈琲の二択であり、少しに悩んでから、ドルチェのジェラートに合わせる様にレモンティーを頼んだ。

 

「まさか、夕方から課題があるなんてね」

「文句言いたくなるのも分かるわ」

「人遣い荒いよね」

 

 バニラ味のジェラートの前で溜息混じりにぼやくエリオット君。そんな彼に、ティラミスをスプーンに掬いながらアリサが同意し、私も乗っかる。

 

 食事中も話題はもっぱら先程の課題で見回った市内のことだった。新市街の駅側を回ったアリサとフィー、新市街の海側を回ったマキアスとエリオット君の話は旧市街しか回っていない私達にとっては興味深く、クロウ先輩も珍しくおちゃらけずに真面目に聞き入っていた。

 

 先輩が冗談を挟んだのは、マキアスとエリオット君が歓楽街で客引きのお姉さんに捕まりそうになった話の下りだけだ。まったく、人の事は言えないけど、マキアスとエリオット君も何やってるんだが……どうせ、マキアスなんてさっきのウェイトレスのお姉さんの時みたいにデレデレしてたに違いない。エリオット君は――まぁ、違う意味でモテモテだからなぁ。

 

「だがまあ、課題としては良心的というか、逆に狙ってる感はあるな」

「狙ってる、ですか?」

「フィー嬢ちゃんなら分かるだろ?」

 

 クロウ先輩の言葉の真意が分からずに訊ねたマキアスだが、先輩は自分では答えずにフィーに振った。

 私のと同じレモンのジェラートを丁度口に含んだばかりの彼女は、スプーンを咥えたまま「まっへ」と零した。もう、行儀悪いんだから。

 

「……ん、土地勘のない私達に市内を巡回させて身体で把握させようって魂胆だろうね」

「あのオッサン、口では自分は無関係みたいな言い方してたが――実際はとんだ食わせもんかも知れねぇなぁ」

 

 北西準州の統括者、副総督にしてジュライ特区の行政長官、正規軍大将。間違いなく、帝国政府と帝国軍、つまり≪革新派≫に属する大物だ。

 

「マキアスのお父さんとどっちが偉いんだろ?」

「……それを僕に聞くか?」

「……あはは」

 

 眉をハの字にして、困惑したような顔を浮かべるマキアス。無邪気というか考え無しというか、このフィーの質問にはエリオット君も苦笑いだ。

 

「レーグニッツ帝都知事はオズボーン宰相の盟友で、革新派のナンバー2なのは間違いないんじゃないかしら」

「政治家としての地位は文句なしにマキアスの親父さんだろうなぁ。なんせあの帝都のボスだからな。カイエン公と張り合う、辺境の大将とはちょっと毛並みが違うと思うぜ」

 

 身内の事なので言い辛いマキアスの代わりに、アリサとクロウ先輩がそれぞれの意見を口にする。

 

「だが、一州の統括者として駐留する軍の指揮権も持ってる事を考えると……権限としてはあのオッサンの方が強いかもな」

 

 先輩は仮定付きで、もう一つの意見も続けると、マキアスはこちら側に頷いた。

 

「……僕もそう思う。宝剣付双翼馬大綬章なんて初めて見たぞ……」

「なにそれ?」

「皇帝陛下が直々に授与する勲章だ。……ここ数年、授与者は居なかったはずだが……」

 

 ジュエリーショップもビックリな、あのいっぱい付けてた勲章の中にそんな大層な物があるのか。うちのお父さんのだと思うけど、なんか実家に転がってた小さい銀色の奴は、フレールが昔よく胸に付けて自慢して回ってたけど。

 

「そういえば、北西の帝国軍ってどれぐらいの規模なんだろ?」

 

 お父さんの長年の任地だったからか、ちょっと気になった。アリサとかならラインフォルト社の関連で知ってるかもしれないし。

 大将が総指揮を執るってことは今なお師団規模以上の戦力が駐留してるという事なのだろうか。

 

「正規軍の三個機甲師団が各方面に分散配備されてて、あと準州憲兵隊が師団規模でいる。確か、ここ数年で再編されて更に増強が進んでる筈」

「詳しいな、フィー嬢ちゃん」

「どこで知ったの、フィー?」

「……ま、仕事柄ね」

 

 予想以上の詳細な情報にみんなが目を丸くして驚いた。

 猟兵団ってそういう情報も必要なのだろうか。いや、情報が必要って事は、まさか――。

 

「どうかしたの?」

 

 アリサの声に引き戻された私は、先ほどまで脳裏に過った考えを捨て去る。

 人の過去を憶測混じりで詮索してするなんて良くない事だ。だから、今度は私とクロウ先輩の回った旧市街の話に話題を変えた。

 

「課題中にちょっと住民の人と話したんだけど……」

 

 居酒屋での出来事を出来るだけ生の言葉通りにみんなに話す。新市街の成り立ちの事、旧市街の事、そして、この街に及んだ内戦の影響について。あのカウンターの雰囲気ががらりと変わった私の一言も隠さずに。

 

「戦争、か」

「帝国から見れば単なる辺境の小国の”内戦”だったんだろうが、この街の奴らからしたら隣でドンパチしてるのは間違いなく”戦争”だろうからなぁ」

「私、自分の生まれた場所が知りたくて……気付いたら無神経な事、聞いちゃってた」

 

 お父さんとお母さんが出会った場所で、お父さんが兵士として十年以上も戦っていた場所が知りたくて。そんな自分の事ばかりしか考えないで、あの場に居た人たちの心の傷を抉る様な真似をしてしまった。そんな私の反省を、「次からは気を付けねぇとな」と締める先輩。

 

「それにしても、あんな短い間によくそれだけの情報を集めれたな」

「ええ、やるじゃない」

 

 珍しくマキアスとアリサが私の事を褒めてくれる。まぁ、数十分は情報収集に徹してたからね。その成果があったという事だろう。

 

「エレナ、すごいよ!」

「えへへ、そうかなー」

 

 胸が弾み、一気に口元が緩んだ。まるで甘い物を食べてほっぺたがおちそうな位。

 

「でも、私はただお店でお喋り……っ」

「……お店でお喋り?」

 

 アリサが首を傾げ、クロウ先輩が口笛を吹く。その意味の分かるアリサが今度は訝し気な視線を私達に向けた。

 やばっ、口が滑った。

 

「あなた達、まさか……」

「……まさかとは思いますけど、先輩?」

「ち、違うよ? ちゃんと≪黒鴎≫とかいう不良達の事も憲兵隊に報告してたでしょ? ね、ですよね、先輩?」

 

 返事どころか、言葉なく首を横に振り、肩をすくめる先輩。なにお腹をすぐに見せる犬みたいに、あっさり無条件降伏しちゃってるんですか!

 

「……怪しいわね。ちょっと事情聴取が必要かしら」

「サボり、ダメだよ。羨ましい」

 

 さっきはめっちゃ笑顔で褒めてくれたエリオット君も、ただの苦笑い。あと、ちょっとフィーは本音がだだ洩れじゃないか。

 

 

 ・・・

 

 

 街灯以外の灯りの殆どが落ちて真っ暗な新市街の中心部。遠く大通りの向こう側には港湾施設や海沿いの歓楽街の明かりだろうか。遠く西側には旧市街の明かりも望める。

 十階にある私達の部屋からの眺めは良い。この≪インペリアル・ホテル≫より高い建物は特区内に数える程しか存在しないためだ。

 

 北西の港町を一望する夜景に少々贅沢すぎる気分に浸りながら、私は≪ARCUS≫からの声に耳を傾けていた。

 

<――バトラー副総督ですか――>

「ええ、少し太……大きくて勲章いっぱいつけてる人です」

 

 流石に現役軍人である大尉に、帝国政府の重鎮の悪口をいう訳にはいかず、慌てて言い直した。

 

<――あの方は、オズボーン閣下の正規軍時代の同期――そう聞いています――>

「同期、ですか?」

<――正規軍では百戦錬磨の勇猛果敢な指揮官として知られています。北西準州副総督に任命された今も正規軍大将として、駐留する北西軍の総指揮を執られる地位にある方です――>

 

 丁度、十五分ほど前だろうか。お風呂から出てバスローブに袖を通したところで、脱いだ制服の固まりから規則的な電子音が鳴った。予告通りに十一時半ピッタリのそれは、待ちに待った憧れの人からの通信を知らせるもので、私は慌ててバスルームから部屋を通り抜けてベランダへと直行して、今に至る。

 

 ジュライ特区でも≪ARCUS≫が普通に使える事には驚かされたが、それは遠方地との間の通信を確立させる為に、大尉がわざわざ軍用の有線回線を利用して私に通信を掛けて来てくれたからだ。

 普段は帝都近郊のトリスタで暮らしているので中々気付かないが、本来の≪ARCUS≫同士の近距離回線では半径数十セルジュ程度、精々市内での通信が精一杯という限られた能力しかない。相手との距離を気にせずに通信を繋げられるのは、遠距離通信用の広域設備が試験導入されている帝都とその近郊のトリスタの間位なものなのだ。

 だから、今まさに遥か数千セルジュ彼方と私の右手のこの小さな戦術導力器が繋がり、通信していると考えると夢が膨らむ話でもある。

 

「一つ、聞いていいですか?」

<――私に答えれることでしたら――>

「ジュライ特区……いえ、旧ジュライ市国併合の理由についてです」

<――……なるほど。ですが、その件に関して、私がお話しできる事は限られたものでしかありません――>

「帝国政府には後ろめたい事情があるのですか」

 

 満足出来ない大尉の返答に、自分でも驚くほど強い口調だった。

 

<――……”後ろめたい”かどうかは置いておいて――帝国正規軍の一軍人として、私には帝国政府の立場を肯定する以外の言葉は持ち合わせていませんから――>

 

 年上のお姉さんのクレアさんではなく、鉄道憲兵隊のリーヴェルト大尉としての彼女の言葉だった。

 上の命令に従う事が最も重要とする軍人さんに、私はなんて子供な言葉をぶつけてしまったのだろう。これでは、まるで言いがかりじゃないか。

 

「すみません……」

<――いいんですよ。私としても一方的な物事の一面を押し付けるのは本意ではありませんし、エレナさんはまだ学生なのですから――>

 

 それは、まだ学生の立場にある私に対しての最大限の配慮に思えた。大尉の立場として語れない、違う一面の存在を否定しなかったのだから。

 

<――それに――Ⅶ組の皆さんの特別実習とは、その土地を訪れて自ら見聞きし、自分なりの答えを導き出す事を目的としているのではなかったでしょうか――>

 

 優しく諭す様な声色で、私が忘れていた特別実習の大切な事を思い出させてくれる。

 つまらない、身も蓋もない言い方をすれば自分で考えろ、だが、大尉の気持ちは充分すぎるほど私に伝わっていた。

 

――これからも色んな事を見て、聞いて、実践して、あなたは学ぶ時期にある。ま、将来の身の振り方は卒業してから考えなさいな――

 

 帝都での特別実習からの帰り、サラ教官が私に告げた言葉が想い起こされる。クレア大尉も言外にサラ教官と同じ事を伝えてくれてるのだ。

 まだ色に染まっていない学生の内に、色んな立ち位置から物事を見て、知って、考えておくべきだと。

 

 

「なんだなんだぁ、内緒話か」

「げっ……」

 

 通信が終わった後、おぼろげな月光に照らされる北海の穏やかな水平線に目を向けた私に、耳心地の良い、軽い調子の声が掛けられた。

 独立して繋がってはいない隣の部屋のバルコニーから、私と同じく体を柵に預ける様に上半身を出していたのはクロウ先輩。そのニヤケ面がなんか良く分からないけど少しウザくて、どこか懐かしい。

 いったい、いつからそこにいたんだろう。

 

「いたんですか、クロウ先輩」

「おう、通信の相手はエリオット……じゃあないよな。もう寝てるし、いうて隣だしな」

「……別に、誰だっていいじゃないですか」

 

 通信の相手がクレア大尉だというのは別に隠す事でもないのだけど。ただ、憧れの人との二人っきりの会話を聞かれてたっていうのは、正直いい気はしない。

 

「いつから聞いていましたか」

「最後の方を、少しな」

 

 ホントかどうだか。思わず盛大な溜息が零れた。

 

「まぁ、なんだ。小難しい事ばっか考えてっと、教頭みたいに禿げるぞ」

「気になったんです。どうしてこの街が帝国になったのか」

 

 軽口を叩くクロウ先輩を無視すると、今度は向こう側から溜息の音がした。そして、少しだけ硬くした横顔が私に続きを促す。

 

「北西準州は分かるんです。内戦の悪化が帝国本土にも及んだから、それを鎮める必要があったから。でも、帝国軍が撤退した後、また治安が悪くなって――結局、恒久的な軍の駐留と北西部の安定の為には帝国領へと編入するしかなかった」

 

 いわば、帝国の安全保障上の理由だ。

 

「……北西編入条約か。詳しいんだな?」

「いちおう、私の生まれ故郷ですから。一通りの事は調べたことがあります」

 

 地理的に遠い故郷のサザーラントの片田舎ではそんな知識は手に入らなかったので、全部この学院に来てから図書館で調べたことだ。丁度、パトリック様に……罵られたあの実技テストの頃に。マキアスが今朝苦労したと語っていた様に、学院の蔵書数をもってしても北西に関して書かれた書籍は非常に少なく、辺境の出来事にこの帝国の人々は全く関心が無いという事を改めて知らしめされた。

 

「でも、この街を併合する理由はないじゃないですか」

 

 テロまで起きる有様だったと聞いているが、それは、当時の市長の犯行というよく分からないものである。北西動乱の余波で大変だったらしいが、帝国領となる根拠自体は少ない様に思えた。

 ラマール州と北西準州の間に挟まれる形になるから? 流石に、そんな理由で編入されるのはどうかと思う。それに、この街は平和的に帝国に編入されたのだ。

 

「理由ねぇ……それこそ、『領土拡張主義』なんじゃないか」

「ミラの為に、併合したっていうことですか?」

 

 オズボーン宰相の政策の二本柱として挙げられてはいるが、あれはどちらかといえば《貴族派》のいちゃもんに近いと思っていたのだけど。

 二十年近くに及んだ内戦で荒廃した北西の場合、編入で得られる税収を遥かに超える莫大な復興支出が掛かっているだろうし、治安維持の為に駐留している軍の費用だってタダじゃない。近年帝国に編入された地域の多くが併合以前に内情不安だった事を考えると、≪貴族派≫との対立の為の資金集めに周辺地域を併合しているというのは、あまりに暴論であると思う。

 

「……お偉いさんの考えてる事なんて、オレ様に分かるかよ」

「クロウ先輩、意外とこういうの詳しいし、私なんかより頭も良いじゃないですか」

「理由が分かったところで、政治屋の論理なんて理解したいとは思えないしな。ましてや、納得なんざ出来そうにねぇからな」

 

 そう言われると、確かにそう思えてくる。物事の理由が必ずしも理解できて、尚且つ納得のいくものだとは限らないのだから。貴族領邦の大増税の様に。

 

「……なぁ、お前さんの珍しく真面目な話の途中悪いんだが……」

 

 珍しくて悪かったですね。曲がりなりにも、私にとって生まれ故郷に近い場所なんですよっ!

 

「前、はだけてんぞ」

「っ!?」

 

 先輩の指摘に、目を落とし、自らの体を腕で抱く。

 石造りの柵に乗り出していたお陰か、はたまたアリサと比べれば大分控えめなお陰か、胸元が少々乱れている他は大事な所はしっかり隠れている。ただ、紐が完全にほどけてしまっていただけだ。

 

「……どこみてんですか、ヘンタイ」

 

 中を見られてなくても、そっちに視線が向けられていたというだけで、恥ずかしさから変に身体が熱くなる。

 それにしても、人生、何があるか分からないものである。まさか、あまり膨らんでくれなかったこの胸に感謝する夜が来るとは思わなかった。

 

 

 部屋に戻った時はもう日付は回っていて、あまり落ち着かないバスローブからパジャマに着替えたら、ふかふかなホテルのベッドに飛び込もうと思ったのに。

 宿泊用に宛がわれた広めのジュニアスイートの部屋には、ベッドが一つ、ベッドが二つ。左側のベッドではアリサが寝る前の美容ストレッチを、右側ではフィーが枕に突っ伏している。

 

「あれ……エクストラベッド頼んだ、よね?」

「え……あっ」

 

 なにその今思い出しましたって顔!

 脚を大きく開いてストレッチしている最中だったから、少しギャップが面白いけど。

 

「ちょっと、アリサ、酷い! ≪ARCUS≫忘れの罰は床で寝ろってこと……?」

「そ、そんな訳ないじゃない……!」

 

 慌てて否定してくれた後、彼女は申し訳なさそうな顔をした。

 

「……ごめんなさい、すっかり忘れてたわ」

 

 もっとも、私も自分が寝るベッドなのに、リーダーだからってアリサに任せっきりにしちゃったのもあるんだけど……。

 元々、しっかり者の割に結構抜けていたりするのが可愛い年上の親友だけど、朝のシャロンさんが作ってくれたお昼といい、今日のアリサはどこか凡ミスが多い気がする。

 でも、どうしよう。この時間にフロントまで行ってベッド入れてくださいって言うのも考えさせられるし、廊下に出る為にはもう一度制服に着替えなくてはいけない。

 

「じゃ、こっち来る?」

 

 そう提案してくれたのは、右側のベッドで突っ伏していたフィーだ。猫が伸びをするようにお尻を小さく突き出して起き上がると、ポンポンとベッドの左半分を叩いた。

 やっぱ、そうなるよね。

 

「どうせこれ、サイズ的にはダブルだし」

 

 それは見ればわかる。随分大きなベッドだとは思った。実家のもこれぐらい大きくしてくれれば、寝相で落ちずに済んだのに。あぁ、でも、それだとフレールと一緒に寝る時に密着出来なかったから、やっぱりあの狭いベッドで良かったのかも知れない。

 

「でも、バリアハートの時みたいに抱き付かないでね」

 

 また昔の事を……と思うものの、いまはフィー様のご機嫌を損なってはダメだ。ベッドに入れて貰うまでは。

 

「あと、ブリオニアの時みたいに変なところ触らないで」

 

 はい? ちょっとこれは聞き捨てならない。いつもエマ相手にセクハラしてるのはフィー様ではありませんか。最近はミリアムにお株を奪われ気味ですけど。

 

「胸触って来たの、フィーの方じゃないか。おかげでマキアスとエリオット君にも見られたし」

「む、エレナも同罪な筈」

「貴女達、実習中に何やってるのよ……女の子同士で……」

 

 前屈運動を終えたアリサは少し頬をぽっと染めながら、呆れ半分にぼやいた。

 

 

 灯りの消えた部屋。

 右隣のベッドからはアリサの小さな寝息が聞こえる。夢でもみているのか、たまに私のよく知る名前が聞こえてくるのが、また微笑ましい。一体どんな夢を見ているのだろう、その夢が彼女にとって幸せな、そして、現実に叶うように私は祈りたい。

 

 消灯してから、どのぐらの時間が経ったのだろう。ここ数日、あまり私は寝つきが良くないくて眠れない。ベッドに入っても頭の中では色んな事がぐるぐる回り、気付けばいつも長い時間が経ってしまっている。なのに、いつの間にかどこかで意識を刈り取られるのだ。要するに、寝れないのに、いつ寝たのか覚えていない。

 

 そして、寝起きも中々悪い。これは今更だけど、最近は本当に起きるのが辛い。今週は特別実習だけど、来週になったら朝練が不安で仕方がない。

 

「起きてる?」

 

 年上の親友の幸せそうな寝顔を目を凝らして眺めていた私の背中に、小さな声が掛けられた。

 起きてるのは私だけかと思ったけど、もう一人いたみたい。ベッドの左側、声の方向に身体を直すと、同じベッドでちょっとだけ離れた場所からこちらに顔を向けるフィーと目が合った。

 

「エレナ。私、エレナに言わなきゃいけない事がある」

「うん?」

 

 その顔は彼女にしては珍しく強い感情がこもっていて、それは、恐れの色を帯びていた様に感じた。

 小さく息を吸って吐き、意を決したように私を直視する彼女。

 

「……私のいた団は、北西動乱に関わっていた。二度共……その後も」

 

 そこで、フィーの言葉はいったん途切れた。そして、彼女のかんらん石の様に透き通った緑色の瞳が揺れる。

 

「帝国軍の敵として」

「……そっか。お父さん達と戦ったんだ」

 

 なんとなく、予想はしていた事だった。先月、フィーが話してくれた彼女の生い立ち、彼女の居た≪西風の旅団≫は大陸でも有名どころの猟兵団らしいから。それに、もしかしたら――。

 当時、お父さんの所属していた第十一機甲師団を主力とする帝国正規軍が第二次北西動乱で相手にしたのは、現地の反政府勢力といくつかの猟兵団だ。そんな情勢だったものだから、編入条約を経て北西準州が成立した後も北西部の治安は良くない時期が続き、散発的に武力衝突も発生していた。やっと落ち着きを取り戻したのはここ数年の事なのである。 そして、治安情勢の改善に合わせる様に駐留する帝国軍の再編が行われ、うちのお父さんも長年の任地を離れて東部方面への配属が決まった。

 

 帝国の多くの人は辺境の事柄に関心を抱いていないが、たかが小国の武装勢力に大陸最強と謳われる帝国正規軍を手間取らせるだけの数の猟兵団と契約する能力がある訳がない。当時から北西動乱の背後に帝国と対立する別の大きな勢力の影が疑われていただろうが、フィーの告げた≪西風の旅団≫が『帝国軍の敵として』雇われて内戦に関わっていた事実は、この地域の戦乱を煽って長引かせることを目的とした意思の存在を肯定する確固たる証拠だった。そう、地理的に帝国の裏庭とも言うべき、この北西部へ楔を打ち込む意思――勢力の存在の。

 

「私はまだ実戦には出てなかったけど、北西の正規軍は精鋭揃いだったって聞いてる」

 

 まるでうちのお父さんの事を云われてるみたいで、娘からすると誇らしくもあり微妙に複雑でもあるけど、そんな気持ちを口にすることは出来なかった。なぜなら、彼女は先程と同じ顔をしていたから。

 揺れた瞳が瞼の奥へと消える。それは、私からみれば何かの感情を隠すために目を瞑ったのではないかと思わせた。

 きっと、言葉にしないだけで、フィーも少なからず悲しい思いをしたのではないだろうか。彼女は猟兵団で家族同然の様に育てられたのだから。猟兵といえど人間、不死身ではない。

 

「エレナには話しておきたかった。初めて私が猟兵だったって言ったとき――」

 

 そっか、あの時の事、フィーも気付いてたんだ。

 

「あの時はあの時。いまはいま。お父さん達の敵でもあった猟兵は嫌いだし、村で暴れた傭兵は怖い」

 

 もう十二年も前、ちょうどこの北西の地から故郷の村に移り住んですぐに起きた、あの事件の恐怖は忘れることは出来ない。誰も死ななかった、奇跡の解決劇だなんて言われたけど。あの傭兵たちは、”私達の”村で人を殺さなかっただけだ。いまでも記憶に脳裏に焼き付き、思い出せば吐き気を催すほど気分が悪くなる、おびただしい量の血の染みついた匂いを漂わす数人組の姿。彼らが、どこで、なにをやって私達の村に来たのかは、私は今も知らない。でも、あいつ等が沢山の人の命をあの手で奪ったのだけは、間違いないから。

 

「……確かに、フィーの事を怖いと思った事もあった」

 

 口に出すのは憚られた。何よりも大切なⅦ組のクラスメイトで、この数か月、一緒の時を過ごした目の前の大好きな少女に、そんな言葉を告げたくなった。

 でも、彼女は覚悟を決めて私に打ち明けてくれた。だから、私も隠しっこは無しだ。大事なのは今で、昔ではない。

 

 今更だけど、あの時はよくも平静を保てたものだと思う。バリアハートの地下水道で、彼女の口から告げられた時、一瞬、頭の中ではあの傭兵たちの顔がフィーに置き換わったのに。

 でも、それでも、私は元猟兵である事も含めて彼女を受け入れる事が出来た。大怪我は覚悟した窮地に身一つで助けに来てくれた彼女の、仲間という言葉は何よりも暖かかった。

 

「……でもね、私にとってフィーは猟兵である以上に大切な仲間だもん」

 

 多少無理やりフィーの身体の下に左腕を突っ込む。そして、もう片方の腕を彼女の背中に回した。私よりもずっと軽くて、頭一つ小さな華奢な身体がぐっと近づいて、頬と頬が触れる。

 

「これでわかった?」

 

 小さく動いた彼女の頬。

 もう、私にとってはⅦ組のみんなは家族みたいなものだから。フィーは、妹みたいなものだから。

 

 それに、もしかしたら――まだ小さな彼女が、たったひとりでさ迷っていた”戦場”は――私の生まれ故郷なのかもしれない。




こんばんは、rairaです。
さて、今回は8月28日の夜、ジュライ特区内での特別実習一日目のお話になります。

この章からミリアムとクロウ先輩がⅦ組に編入していますが、本作品の主人公エレナを含めたⅦ組のメンバーの身の上話を新加入の二人は殆ど知らないという設定です。(学院生のクロウ先輩は多少は知る事の出来る話もあるでしょうが、ミリアムに至ってはリィンとアリサの旧校舎事件すらも知らなかった位ですので)

第五章A班の特別実習にてレグラムに現れたカイエン公と対になるような、オリジナルの《革新派》の高官に登場させて頂きました。《貴族派》は沢山キャラクターがいるのに《革新派》は名前有のキャラクターが少なくて本当に困ってしまいます。「空」のリベール王国軍は多かったのに…。

後半部は二章バリアハート編後半部から繋がる、一連のフィー編とも言うべき流れの最終話でもあります。確かな絆を得てから打ち明けれる心の内もあるという、”仲間”から”家族”へとⅦ組の関係性が変化してゆく一幕でした。

また、今回のお話の最後に触れたフィーが《猟兵王》に拾われた「どこかの国の辺境の紛争地帯」の場所ですが、本作品の捏造設定として”現帝国領のノーザンブリアに縁のある土地”としております。ただ、個人的には軌跡シリーズ続編への繋がりを考えるに一番有力なのはノーザンブリアか共和国だと思っていたりしますが。

次回は、翌8月29日、第五章特別実習の二日目のお話となります。

最後までお読み頂きありがとうございました。お楽しみ頂けましたら幸いです。

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